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俺は人生を捧げない、私は全てを取り戻す!  作者: ふりがな
第3章 その献身は、誰が為
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第40話 護神

朝のニュースを見終え、今日の予定が決まらない私は、

ネット検索に励むことにした。


会社が廃業し、天明さんがやってきた。

半ば選択肢のない答えを強要され、色々な無茶を強いられた。


護衛としてクランベリーさんが着いてくれたが、

それでも危険は無くならない。


このまま、このプロジェクトに参加し続ければ、

やがては、取り返しのつかない事になるかもしれない。


私は、同僚二人のような覚悟が、今だ持てていないのだ。


天明さんとクランベリーさん、二人の同僚との関係は良好だ。


昨日判明した給与も、私のような中途採用のおっさんには、

願ってもみないほどの金額だった。


「これで、命の危険とかなければなあ。」


と思わず口に出た本音。


一応、私も怪物から身を守る方法を探してはいる。


今も、機動隊用の防弾仕様の盾とか見ている。


チョッキ型や盾型の重装備品だ。

今の給与なら十分買える額だ。


欧米各国で採用されているNATO弾、

所謂ライフル弾に対応しており、十分な防御性能を誇る。


ふむ、性能の割には安い。


しかし、検索によれば、

どうやら銃弾と獣の攻撃を防ぐ用の物は、種別が違うらしい。


高速弾を防ぐ防弾盾は、

そもそもから、一点突破の貫通攻撃に対応するものだ。


そして、獣用は、その強靭な身体から繰り出される

重量級の引っ掻きや噛みつきに対応している。


現実問題、銃弾は、人間の身体を貫通して臓器等を傷つける。


しかし、獣の引っ掻きや噛みつきは、

場合によって手や足をもぎ取り、

その打撃で身体の骨などを粉砕してしまうのだ。


どちらが危ないか?


どっちも危ないが正解だが、

今必要なのは、獣用の防護手段だろう。


こっちは割と高めである。

倍くらい値段が違う。


正直、私は今までこんなものが、

売られていることを知らなかった。


今までの社会生活で、必要としていなかったからだ。


うーん、ヘルハウンドやクマくらいなら、

なんとか耐えられるかもしれない。


もちろん、相応の訓練が必要だろうが。


引っ掻きや噛みつきを諸に喰らったとしても、

ヘッドバンドの治療効果で、治せるはずだ。


しかし、あのデカい竜や特殊能力持ちの狼は、

どうにもならん。


落雷より破壊力のある稲妻の息吹や、

防御不能の噛みつきなど、対応できるわけがない。


それと、ヘルハウンドやクマなら

金剛で十分対応できそうだ。


色々、危険に対しての対応を調べていると、

お隣の扉を叩く音がした。


うん、お金返してくれるかな?


時刻を確認すると、午前11時20分。

しばらくすると、我が家の扉を乱打が襲う。


はあ、と溜息を付き、天明さん達を迎え入れる。


「こんにちは、天明さん。

 クランベリーさんもこんにちは。」


と挨拶を交わす。


天明さんは、例の研究所からここへ来たようだ。

クランベリーさんは、早朝からどこかへ行っていた。


うむ、ジョギングに誘われなかったので、

いないことは分かっていた。


「昨日はご迷惑をお掛けしました。」


と言って、封筒を渡してくる。

昨日のお金だろう。


うん?

うら若き女性が大金を持ち歩いて、危険ではないか?


その疑問は、天明さんの怪力を見てから言ってくれ。

クランベリーさんほどではないが、彼女も十分に強い。


「どうも、今度からは、

 ちゃんと財布を持ち歩いてくださいね。」


と、忠告する私。


それからは、この間の一件を会社に報告した結果、

今のまま活動するのは、

リスクが大きすぎると判断されたそうだ。


クランベリーさんの警備部門では、

人を増員する案も出たそうだが、事態が重すぎるため、

被害が拡大するだけ、という結論らしい。


だが、会社側の答えとして、

プロジェクトの中止は、あり得ないそうだ。


どうして、このプロジェクトをそこまでして推進するのか?

私には分からない。


しかし、前回までの危険を踏まえても、

同僚二人は、やる気みたいだ。


そこで、二人の同僚が、警備側とシステム側の両方からの答えを

伝えてきた。


まず、クランベリーさん。

「今のままでは、七福殿の安全を確保できない。

 また、普通の警護官を増員しても対処不能だ。

 そこで、七福殿の金剛殿を鍛える案が出た。」


「金剛殿は、戦闘特化型のゴーレムだろう。

 その力は、通常に使用しても例の妖どもを跳ね返せる。」


「七福殿を鍛えるのもアリだと私は思うのだが、

 他の警備担当職員から

 一般人にそれを期待するのは、酷だと言われた。」


「なので、金剛殿に戦闘技術を学習させる案になった。」


と続けるクランベリーさんに、私は疑問を投げかける。


「金剛は、既に強いのでは?

 そもそも、武術を学習とかできるんですか?」


そういう私に、彼女は、


「うむ、金剛殿は、見たところ基本的な戦闘行動はできる。

 しかし、その動きはまだまだ鈍重で、無駄が多い。」


「本来ならば、その膂力と身体能力であの狼と対等に

 戦えるはずだ。」


「実際、古代研究の成果で、分かったことだが、

 その昔、タロスと呼ばれるゴーレムが、古の獣を掃討するために

 使われていたそうだ。」

 

「もはや神々の時代の遺物だが、

 ヨーロッパの本部には、その現物が保管されている。」


「まあ、信じられないかもしれないが、

 今、七福殿が持っている

 金剛殿の高性能版と考えれば、納得してもらえるだろう。」


うーむ、金剛があるのだから、そんなこともあるかもしれない。

そもそも、右藤住職は、コレの他にも2体持っていた。


金剛は、量産型なのかもしれない。


しかし、ロボを鍛えるって言ってもなあ。

そんな疑問にクランベリーさんが答えてくれる。


「金剛殿は、一応は精霊の類なのだ。」

 

「戦闘技術を覚えさせ、今より戦闘に最適化すれば、

 今ある力を十全に発揮できるようになるだろう。」


「また、霊的エネルギーの蓄積により、

 金剛殿の力は増していくそうだ。」


「霊的エネルギーは、誰かからの信頼や信仰により、

 増大する。

 金剛殿はそのエネルギーを集める素体として機能する。」


「宗教上のシンボル、

 例えば仏像の素体は木だったり、土だったりするだろう?

 人は、この素体を拝んだり、敬ったりする。

 その素体に、ある種の信仰が集まると、

 自然と霊的存在が生まれるのだ。」


「初めは、意思など存在しないのだが、

 人々の想いが、幾重にも重なり霊的な格を増していく。」


「そうやって生まれるのが精霊なのだ。」


「金剛殿はまだ、意思などの部分が薄い。

 しかし、これから色々な技術を得て、

 戦いの中で成長していけば、今の力を超えていけるはずだ。」


「もともと、人を怪物から守るために生まれたであろう、

 金剛殿には、まだまだ伸びしろがある。」


「強力な精霊は、時に竜などにも匹敵する能力を持つ。

 金剛殿がそこまでの力を持てるかどうかは分からないが。」


はあ、金剛がそんな凄いとは。

要するに、金剛は、現実にレベルアップしていくと言う事か。


まあ、戦闘特化だから、

成長には怪物たちとのエンカウントが避けられないが。


戦う技術を覚えさせれば、今でも強力な力を発揮できそうだ。


「護衛担当として、七福殿を守るには有効だと判断する。」


クランベリーさんは、そう言って話を締めくくった。


金剛が、竜クラスになるか、、、

壮大だが、、


続いて、天明さんも何か持ってきたようだ。


「わたしのところからも、ご提案をもってきましたよぉ。」


そんな緊張感のない彼女の言葉を聞きながら、

現金の入った封筒を見つめる私。


大丈夫だろうか?


「本社から、ヘッドギアの機能アップデートで、

 ステルス技能を使用できるようにしたらと意見がありました。」


はあ、ステルス?

なんだそれは、と全然分かっていない私に、

続けて説明する天明さん。


「七福さん、この間、遭遇したモンスターたちですが、

 あれらは、かなりの実力を持っていますよねぇ。」


「あのモンスターたちは、霊的に進化した存在です。

 彼らは、生命維持のための食事などをとる必要性がありません。

 彼らが、何かを襲うのは自身の存在の格を上げるためです。」


「流行りのゲームで言うと、

 所謂レベルアップのために、戦闘を繰り返すんです。

 相手のエネルギーを取り込んで、更なる進化を遂げるため、

 彼らは戦っています。」


「七福さん、ゲームで敵を倒すと経験値が入りますよね。

 ゲームやっていると、自分より遥かに格下の敵は、

 鬱陶しいと思いませんか?」


「時間を取るのは同じなのに、

 格下ゆえに、手に入る経験値が少ない。

 正直、相手にするのは時間の無駄。

 そう感じたことはないですか?」


「この度の提案は、それと同じです。

 この間のモンスターたちも、本能的にアテナを

 最初の目標としていました。」


”別に、攻撃を受けていたという理由だけじゃないんです。”


更に続ける天明さん。


「今回の提案は、ヘッドギアの機能で、

 私達の姿をその辺の石ころ程度に偽装することで、

 モンスターの敵意を向けられないようにすることです。」


「相手が襲ってこないなら、

 危険の度合いはかなり下がるはずです。」


うーん、なろほど、この間のように、

明確な指示役がいなければ モンスターに襲われない。

そもそも相手にするのが鬱陶しい存在に見せかけるのか。


その後も、色々な意見交換をした私達は、

例によってファミレスで昼食を食べ、解散した。


ーーーーー


夜、私は、自室で眠りについていた。


なにか寝苦しい、

そんな思いを抱えて、1時間。

ようやく、寝付いた私だった。


夢の中、何かの声が響く。


”主が、七福とか言う小僧か?”


なんだ?

あんた、誰だ!


”ふん、そう構えるな。

別に取って食おうという訳ではない。”


何の用だ!

もう、怪物騒動は間に合っているぞ!


”粋がるな、小僧。

儂の話を聞けば、その悩み解決するかもしれんぞ”


あんたは、誰だ?


”ただの通りすがりだ。

主は、随分色々なものに、好かれておるな。

その分、悩みも深いだろう?”


はあ、あんたには関係ないだろ。


”主は、今迷っているな?

少し、記憶を覗かせてもらったが、

何故迷うのだ?”


”これは、主のような只人が、関わって良いものではないぞ”


記憶を覗く?

最近は、こんなのばかりだな。


なら、わかるだろ。

どうやって、危険を回避するか?

色々あるが、もう手に余る。


”ふん、なら何故迷う?

主は、もう答えを出しているのに気づかないのか?”


何を、、


”人は、真にどうしようもない事では迷わん。

主の事情なら、辞める、避難する、関わらないと決める。

これが、唯一の選択だ。”


”しかし、主は迷っておる。”


言い返せない私。


”ならば、儂の話を聞くと良い。

その悩みは、どうせ異郷のものが関わっているのだろう?

その頭にある狼程度なら、儂が何とかしてやる。”


”代わりに、あるモノを探して欲しい”


”最近、主の近くで目覚めたはずだ”


うん?

何が目覚めたんだ?


”我が娘に関わるモノだ”


”一応言っておくが、娘はやらんぞ!

想像もするな、小僧!”


会った事もないのに、どうやって想像しろと?

第一、娘さんの持ち物を探すだけだろうが!


”最近は、持ち物やら何かから、相手を特定するという。

主のような普通の奴が、そうして犯行に及ぶのだ。

いいか、儂の言葉を、頭に刻み付けておくのだ。

手を出したら、我が刀で微塵に切り裂いてやろうぞ!”


”ではな!”


ーーーーー


朝、まだひんやりとする空気に触れて、

汗びっしょりの私は、


「何だったんだ!」と叫ぶのだった。


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