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第34話 決戦!加具茂寺 前編

目の前に、居並ぶ幽玄の軍団。


月明かりのない夜、加具茂寺の前は、戦場と化していた。


いつか見た光景、

右藤住職が呼んだ金剛と大鬼や異形の巨人がぶつかり合う。


寺に集った僧侶たちの経をあげる声が、辺りに響き、

金色の光を放つ僧兵たちが、幽鬼の兵たちと切り結んでいる。


双方、互角の戦いを繰り広げている。


以前は、僧侶たちの経によって動きが鈍った異形たち。


だが、今回、稲水乃姫が乗る牛車の周りに、

笛や弦、太鼓などの楽器を奏でる神職であろう一団が配置されており、

その音色が、異形たちの力を底上げしているようだった。


「右藤殿、どうじゃ?

 そなたも、災いを受ける民の姿など見たくあるまい。

 今からでも、我が家宝を返さぬかえ。」


と、右藤住職に語り掛ける稲水乃姫。


それに対し、


「それは無理だな、囚われの姫よ。

 私達は、悪鬼などに屈することはない。

 姫よ、貴女が言う龍神とやらは、本物かな?」


と問い返す右藤住職。


天明さんとクランベリーさん、私の3人は、

経をあげる僧侶たちの隣に控えている。

例のヘッドバンドは装着済みだ。


サリエル・ローランドと名乗る外国人とその仲間5人も、

私達と同様、寺の門側に控えている。


言葉を交わす二人に割って入る私。


ヘッドバンドの制限解除で使えるようになった、

視認している相手と意思疎通ができる機能を使用した。


”もうやめてくれ!

龍神だか何だか知らないが、今は当時とは違う。

人間は、成長したんだ。

今ならある程度のことには耐えられる。

戦いをやめて、協力し合えば真相に近づくこともできる。

貴女の言う龍神が、何に怒っているのか?

まだ分かっていないだろう。”


そう話しかける私だったが、


「ふむ、この前のよそ者か。

 確かに、お主の言う通り、龍神殿が何を怒っているのか?

 妾にも分からぬ。

 しかしな、お主は見ておらぬ。

 あの飢えを、あの渇きを、あのような民の姿、もう見とうない。

 人は成長したかも知れぬ。

 だが、龍神殿の怒りを目の当たりにすれば、

 お主にも理解できるだろう。」


”人では、神には敵わぬと”


そう言って稲水乃姫は、会話を断ち切った。


もう、交渉の余地はないのか?


寺に殺到する幽鬼の兵たちが、心無しか増えてきている。


牛車の周りに、一際大きな鎧武者が3体現れ、

こちらに向かって来ようとしている。


「こりゃヤバイ!」


行け!

とローランドが連れてきた数人の外国人に指示する。


外国人たちは、一瞬輪郭がぼやけたあと、

その姿は、武装した天使のものに変わった。


3メートルに達する鎧武者と人の身長と変わらない天使たち。


鎧武者の振るう大太刀を受けて、突っ込んだ天使の一人が吹き飛ぶ。

しかし、その後に続く天使は盾を構え、俊敏に剣を鎧に突き立てる。


5人いた天使な外国人の集団は、鎧武者1体に対して2人から3人で

対応する。


膂力もそうだが、

この鎧武者の太刀筋は鋭く、動きは達人の域に達している。


天使という超常の存在に対し、それでも鎧武者の力が圧し勝っている。

2体を相手に苦戦する天使たち、

その戦闘を横目にフリーになっている3体目の鎧武者がこちらへ、

向かってきた。


残っているローランドが、天使姿になり迎撃に出る。

あのドラゴンと一騎打ちしたほどの腕前だが、

予想に反して、激しい剣戟の応酬になる。


僧兵と幽鬼の兵たち、

右藤住職の金剛たちが大鬼と天狗、巨人を相手に大立ち回り。


稲水乃姫の切り札なのか、

出現した3体の大きな鎧武者は天使たちが迎撃中だ。


今、自由に行動できるのは、私達のみ。


稲水乃姫と対決すべきか?

判断に迷う。


今回は、クランベリーさんもいる。

更に私には金剛という戦力もある。


皆が、それぞれの持ち場で奮戦している。

どうすべきか?


束の間の迷い、

その時、戦況が動いた。


「 法力・闇暁縛鎖 」


右藤住職の気迫の籠った声と共に、何かの術が発動。

前回の戦いで、稲水乃姫の動きを縛った術のようだ。


途端に、古来の楽器を奏でる神職姿の一団の動きが止まる。


僧侶たちの念仏が、辺りの幽玄の軍団を圧し始める。


状況は、こちら側に有利に転がった。


少しずつだが、稲水乃姫の軍団を押し返し始めている。

前回、あのドラゴンが現れ、効果を覆されたが、

今回は何時まで経っても出てこない。


牛車側へと、押し戻される軍団。


戦線は、敵側である稲水乃姫の牛車近くにまで迫る。

総大将である稲水乃姫を倒せば、この戦いに勝てるだろう。


勢い込んで、突っ込む寺の守り手たち。


ドォオォォ___ン__


加具茂寺の境内、

門の内側から轟音が鳴り響く。


戦闘に参加していなかった私達は、

すぐ後ろにある門を抜け、境内に入る。


破壊されたのか、

本殿の奥と思われる建物から土埃などの煙が上がっている。


目を凝らすと、

一人の欧米人風の外国人がこちらへと歩いてくる様子が見えた。


おかしい、

その外国人は、男性に見えたり、女性に見えたり、

若者になったり、老人であったり、その姿をころころと変化させている。


「ふう、もう用事は済みましたよ、お姫様。」


その声は男性なのか、女性なのか、判断が付かない。

中性的な声というのではなく、単純に男性の低い声と女性の高い声が、

同時に発せられている感じなのだ。


これはなんなんだ。

その外国人に意識を集中しようとしたが、


「おっと、まだ証拠になるような記録は残したくないんだ。

 憶測はどうであれ、僕を認識し記録されたくはない。」


”相手をしてあげて”

その男性か女性か分からない声が告げる。


深い暗闇が、辺りを覆う。

明かりがなくても、今までは不思議な光が辺りを照らしていた。

しかし、今は闇が侵食している。


オオォォォ___


狼のような遠吠えが、響き、


ドガッ___という打撃音が、目の前で発せられた。


見ると、クランベリーさんが光を纏い、

着地したような体勢でいて、彼女は素早く格闘術のような構えをとる。


彼女が、見据えるその先には、闇色の巨大な狼がいた。


どうやら、私は襲われたようだ。

多分、クランベリーさんが、狼の攻撃を逸らしてくれたのだろう。


”エマージェンシーコール”

”外的領域からの訪問者を認識”

”訪問者の所属を確認”

”所属:九界彷徨う道化師”

”個体識別に成功”

”当該個体の名称「ガルム」”

”敵対意思の有無を判定中”

”当該個体の敵意を検知”


”種族:冥界を疾駆する飢えし狼”

”脅威度:B”

”大規模な破壊を起こす能力はないが、

格闘能力に優れ、狩場である冥界においては竜族にすら勝る”

”闇に潜む特殊能力故に、神兵をもってしても対抗不能”

”現地域からの即時撤退を推奨”


突然流れ出した一連の敵の情報。


闇統べる餓狼との一戦が、幕を開けた。

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