表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
36/39

第35話 決戦!加具茂寺 後編

気が付けば、あの不可思議な人影は消えていた。


代わりに、圧倒的な存在感を放つ巨狼が、

私達の前に立ちはだかっている。


その大きさは、およそ3メートル程。


普通の狼が、大きくて2メートルくらい。

目の前のこの狼は、通常より一回り大きい個体である。


私は、金剛を呼び出し、新しい機能である仲間を保護する能力を、

使用した。


金剛を含めた皆が、淡い光に包まれる。


ヘッドバンドの警告によれば、

この巨狼は、前回のドラゴンクラスの大物らしい。


巨狼は、私への攻撃を阻止したクランベリーさんを狙って、

跳びかかってくる。


あのクマと対峙していた時より、

輝きを増した光を放つクランベリーさん。


巨狼の噛みつきに対して、回し蹴りを決める。

どんな力があればこうなるのか、巨狼が横へと吹き飛ぶ。


かなりの打撃になったはすだが、

巨狼は空中で体勢を整え、着地。


その大きな顔を一度振るわせて、こちらを値踏みし始める。


唸りながら、私達を睨みつける巨狼。

その視線は、先程から攻撃を邪魔するクランベリーさんを見つめ、

止まった。


クランベリーさんもそれを意識してか、

私や天明さんから少し離れる。


ワオォヲォォォ____


咆哮を上げ、その姿が周囲の闇に溶け込んだ。


危ない!

私は、反射的に、クランベリーさんの元へ金剛を向かわせる。


その時、彼女の頭上の闇が、狼の顎のように変貌し襲い掛かる。

その横合いに、金剛が突進。


ギャォ_ン__


間一髪、クランベリーさんに攻撃は届かず、

闇に溶け込んでいた巨狼は、吹き飛ばされた。


今度こそ、かなり効いたはずだ。


「早く金剛殿を戻して!」


クランベリーさんの警告が、私の耳に入る。


うん?

ダメージを与えたはずの巨狼の姿が消えている。


慌てて、金剛を防御に呼び戻す。


あの狼は、何処に行った?


周辺を見回す私だったが、

その目の端に、闇が形を持って襲ってくるのが映る。


防御態勢の金剛が盾となり、金属めいた左腕で顎を受け止めた。


確かに、攻撃は止めた。

しかし、その顎は金剛の腕を食い千切る。


なんだこれは!

金剛は、5メートルはあるロボ顔負けの力を持つ巨人だ。

その膂力も、大鬼などと遜色ない。


そして、今はヘッドバンドの防護効果も付いている。

なのに、あっさり食い破るとは!


それまで、後ろで手を出さなかった天明さんが、警告してくる。


「あの能力は、危険です。

 闇に溶け込むだけじゃなく、その闇を操り、

 対象の空間ごと食い千切っているようです。

 あらゆる防御効果が、無効化されています。」


「しばらく時間を稼いでください」と言って、

瞑想を始めた天明さん。


そんな馬鹿な!


「七福殿、監査官殿をお願いする」


呆然とする私を置いて、クランベリーさんが前に出た。


これまで、私の安全を優先していたのか、

積極的な攻撃はしなかった彼女だが、今眩い光を放ち、

巨狼に格闘戦を仕掛けている。


跳びかかる巨狼に対し、鼻先へ拳打を浴びせ、

素早く身をかわす彼女。


出鼻を挫かれた巨狼が、身を立て直す前にその胴体へ、

蹴りが跳ぶ。


とにかく、必殺能力を封じるために、

クランベリーさんの猛攻が続く。


巨狼は、今のところ、その攻撃に翻弄されている。

そんな中、巨狼は大きく跳躍した。


クランベリーさんとの間合いを取ったのだ。

させじとその後を追う彼女だったが、

ここで巨狼は、息を大きく吸い込み吐き出した。


その息吹は、猛烈な炎を伴い、クランベリーさんを飲み込んだ。


「クランベリーさん!!」


叫ぶ私は、金剛を天明さんの防御に残し、

駆け出した。


何が出来る?


私は、闇に溶け込もうとする巨狼を睨みつけ、

ヘッドバンドの機能である対話能力を使用する。


その声が、出来るだけ大きくなるよう意識して声を発した。


できるかどうかは、疑問だった、

しかし、会話には感情が入るものだ。


ヘッドバンドの機能だが、

感情を表現するため、声の大きさなどを再現しているのではないか?


それに、今までは考えてこなかったが、

人間より大きな、もしくは小さな種族はいる可能性がある。

そんな時、声の大きさを変える必要性があるはずだ。


巨人たちの会話は、

きっと人間にとっては相当な騒音になると思う。


果たして、効果は絶大だった。

かの巨狼は、どうやら耳が良すぎたらしい。


闇への同化どころではないショックを受けたらしく、

悶えていた。


その間に、クランベリーさんの元に辿り着く私。


その場にしゃがみ込んでいた彼女。


炎の息吹を一応は腕で防いだらしいが、

そこかしこに火傷の跡が見える。


素早くヘッドバンドの治癒機能を発動。

淡い緑の光が、クランベリーさんを包む。


しかし、この時、先に立ち直った巨狼が、

こちらを襲おうと闇に溶け込んだ。


くっ、もう立ち直ったのか、

歯嚙みする私。


その時、瞑想中だった天明さんが、辺りに響く凛とした声を発する。


「 天霊光輪 」


声に合わせたように、天明さんの身体を光が包む。

その光は、辺りの闇を吹き散らし、

寺の境内を輝きで照らし出した。


襲い掛かろうとしていた巨狼は、その姿を暴かれ、

私達から距離を取る。


「七福殿、金剛殿で監査官殿を!

 貴方は私が守る!」


巨狼は、闇に同化できず、

邪魔をする光を放つ天明さんに、攻撃に矛先を向ける。


しかし、その時、鮮やかに輝く光を纏ったクランベリーさんが、

立ち上がり、その手を巨狼に向ける。


轟音と共に、その手から発せられた強烈な稲妻が、巨狼を襲う。


光と音が収まる頃、かなりの深手を負ったであろう巨狼が、

こちらにぎらついた眼を向けていた。


巨狼は、その身に残る力を活性化させ、更なる巨躯へと変貌。

その大きさは5メートルを超える。


これが、本来の姿なのか?

それは分からない。


しかし、今まで受けた傷は治っていない。


本来の身体能力を抑えていたため、防護する力を発揮できず、

思わぬ深手を負ってしまった巨狼。


巨狼にとって、痛恨の失敗だった。

だが、今残る力を解放し、この目の前にいるものを駆逐する。


グルゥゥゥ___


傷は後で癒せばいい。

そんな執念が、唸り声から伝わってくる。


私は、天明さんのガードを金剛に任せた。

この大きさでは、金剛でも勝てないだろうが、

時間稼ぎはできる。


今の状態で、また闇に同化されれば手の打ちようがない。


そして、巨狼は、痛打を与えたクランベリーさんと私の方に、

意識を向けていた。


次の跳躍で仕留める!


その巨躯に見合わない速度での跳躍。

私では避けられない。


目の前に迫った巨狼を睨みつけ、


「来なさい、アイギス!」


と、クランベリーさんが言い放った。


目の前に巨狼が迫る中、

私達との間に、虹色に光り輝く盾のようなものが現れる。


2メートルに達する大きさの輝く盾は、巨狼の攻撃を完全に止めた。

さらに、跳躍中の巨狼は時間が停止したように、

その空間から動かない。


重力に従って下に落ちることも、盾に弾き返されることもなく、

その空間に縫い留められている。


「七福殿、金剛殿で攻撃を!

 私は、これの維持で動けない。」


と、告げてくるクランベリーさん。


その声に我に返り、金剛に巨狼への攻撃を指示する私。


大きさだけなら、本性を出した巨狼にも負けない金剛は、

健在な右腕に全ての力を込めて、拳を放った。


その拳は、巨狼の頭を打ち貫いた。


巨狼の頭は、ハンマーで叩き潰されたガラス細工のように、

粉々に砕かれ、その全身も崩れ落ちた。


その後、不思議な光が舞い、巨狼の亡骸は夜空に消えていった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ