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第29話 特殊装備開発課

ヘッドバンドの驚異的なアップデートを聞かされ、

一喜一憂していた私。


そんな私に、クランベリーさんが、


「七福殿、すまないが、私のところにも、

 付き合ってくれないか?」


と、声を掛けてきた。


何かあるんですか?と聞き返す私に、


「実は、警備部門で、七福殿が入手した金剛殿が、

 話題なんだ。」


「特に装備開発部の知り合いが、

 七福殿を何とか連れてきて欲しいと言われてな。」


どうだろうか?と尋ねてくるクランベリーさん。


帰りの時間には、まだ早い。


別にいいですよ、と私が答えると、


「そうか、色々あったところにすまない。」


と、申し訳なさそうに言う彼女。


私に着いて来てくれ。そう言って私達を先導する。


実は、今日はもう帰宅する予定なのだ。


もともと、1泊2日という時間の限れた日程で、

今回の本社訪問の予定は計画されていた。


実は、訪問の一番の目的は、

プロジェクトの最高責任者である鳴神氏との顔見せだった。


何でも例のヘッドバンドの機能制限を一部解除するのに、

彼の許可が、必要だったそうだ。


今回、連続して特異な事件に遭遇した私を守るために、

制限解除の要請を、天明さんが本社に行った結果、

私の人となりを面接してからという条件が出たそうだ。


まあ、分からなくもない。

身元調査は、事前にしているみたいだが、

それだけで、人は判断できない。


どんなに良い人でも、今回アップデートされた機能は、

異常だ。


そう、今回の制限解除で、出来るようになったことは、

人を良くも悪くも変えかねない。


それだけ、慎重な判断が、必要だったのだろう。


思考の海に潜っていた私だったが、


着いたぞ と言うクランベリーさんの言葉に、

意識を浮上させた。


研究区画と反対側にあるセクションで、

ここは、人が多く見られる。


皆一応に、制服だが警棒などで武装している人もいる。


ここは各部屋の壁が、ガラス張りになっており、

各種訓練をしている人の集団も見かける。


私達が向かっているのは、

警備に使う装備開発を行っている部署らしい。


研究区画と違って、気分的にも明るい通路を進む私達。


しばらくすると、分厚い扉があった。

クランベリーさんが、社員用端末を翳すと、扉が開く。


中は、PCが並ぶ制御室のような場所であり、

その横面には、隣の部屋だろうか?

ガラスで仕切られた大きな部屋がある。


中にいた私と同じくらいの年齢の男性が、

声を掛けてくる。


「クランベリー主任、連れてきてくれたのだね。

 そちらが、七福さんかな?」


その言葉に、


「ああ、そうだ。

 七福殿、こちらの男性が、特殊装備開発課の三枝木殿だ。」


初めまして、と一礼して挨拶した私に、

三枝木と呼ばれた男性も自己紹介してくる。


「忙しいところ、申し訳ない。

 私の部署では、色々な特殊な状況に当たる人員に対し、

 有効な装備を開発している。」


「特殊な状況って、何かの心霊現象とかですか?」


と聞き返す私に、三枝木さんは、


「そうだ、一般的には、そんなことを信じる人はそういない。

 しかし、近年、不可思議なことが頻発するようになってね。

 警備している人員にも被害が出るようになった。」


そう答えを返してきた。

さらに、クランベリーさんも彼の言葉に補足を入れる。


「私達警備部門は、身辺警護から美術品などの運搬時の警備、

 そして、遺跡を調査する我が社の調査員に付き添ったりもする。

 以前は、通常の警備体制でも対処できていたのだが、

 最近は、警備に際して、負傷する隊員も現れている。

 原因不明で、いきなり何者かの攻撃に合ったり、

 その割には、相手の痕跡がないことが多いのだ。」


「主任の言う通りの状況でね。

 だが、最新の研究でやっと正体を掴めそうなんだよ。

 そんな中、七福さんのことを聞いてね。

 貴方の金剛という個体を見せてくれないかね?」


と三枝木さんは言いながら、


”こちらも、いいものを用意している。

きっと興味惹かれことだろう”


と付け加える。


はあ、と生返事をしながら、私は了承し、


「それで、どうすればいいんですか?」


と聞くと、


「あちらにある部屋を見てくれ。

 ああ、そのガラスで仕切られた部屋だよ。」


隣の大きな部屋を指し示し、


「あっちの部屋は、防弾防爆防音の耐久性が高い試験室でね。

 いくつかの特殊装備の試験運用が行えるようになっている。

 ちなみに、この部屋は、向こうで行われる試験を観測して、

 結果を分析、評価するために設置されている。」


「七福さんの金剛殿は、ここからあちらの部屋に呼び出せるかな?」


と、聞いてくる三枝木さん。


今日は帰るため、荷物は全て持ってきている。

最近色々あったため、護身用として金剛の召喚道具も持ってきた。


うーん、自宅アパートの試したときは、

呼んだら目の前に現れたからなあ。


「やってみないことには、どうにも答えられないですね。

 試してみても?」


と答えると、


「そうか、ちょっと準備をするので待ってほしい。

 まあ、できない場合は、あちら側に移動してもらって、

 試験に参加してもらえれば。」


そう言って、

周りで、忙しく準備している研究員であろう人達に指示する。


試験室と呼んでいた部屋は、今いるデータ分析室なる部屋より、

高さも広さも大きい。


そんな室内に、ひと際目立つものが搬入されてきた。


まだシートがかかっていて、何かは分からないが、

3メートル近い高さを持つ物体だ。


「七福さん、ちょっとこの部屋から金剛殿を呼んでみてくれ。」


と、準備が終わったのか、三枝木さんが声を掛けてくる。


やってみるか、荷物から召喚道具を取り出し、

私は、経典である巻物を左手に、右手に錫杖を構える。


召喚位置は、隣の部屋だな。


ああ、あと例のヘッドバンドが必要か。

同時に気が付いたのか、天明さんが、慌ててヘッドバンドを取り出して、

渡してきた。


”対象者の装着を確認”

”システムのアップデートを適応します”

”制限付きオンラインモードに切り替えます”

”起動”


視界が、今までより明るくなったように感じる。


まあ、今はそんなことを気にしている場合ではないか。


錫杖の先を、隣の試験室中央に向け、金剛を呼び出そうと

念じる。


”霊装を起動します。”

”個体名:金剛”


金色の光を放ち、金属質な肌を持つ金剛が、

隣の試験室中央に現れた。


「上手くいきましたけど」


と、三枝木さんに伝える。


ふーむ、これは興味深いね。と考え込む彼は、

じっと試験室中央を睨みつける。


うん?

ああ、そうか、ヘッドバンドなしだと、

金剛は見えないのか。


そのことを伝えようとすると、


「いや、大丈夫だよ。」


そう返す三枝木さんは、観測用の機器を動かしている研究員に

何かを伝える。


うん?なんかスポットライトみたいな光が、試験室を照らし始めた。

その光は、金剛のいる中央部分に焦点を合わせ始める。


おお、と室内にどよめきが起こる。


金剛は光に照らされ、いつもより輝いて見える。


「ふむ、実験は一先ず成功だな!」


と三枝木さんは言う。


何がだ?


「ああ、七福さんは、金剛殿が見えているのだったね。

 説明すると、金剛殿に特殊な電磁波を当てることで、

 私たちのような一般人にも見えるようになったのだよ。」


「まあ、この装置は、今のところ不安定で、

 見える時もあれば、見えない時もあると言う状態でね。」


”ふーむ、おそらく金剛殿のようなある程度の影響力がないと、

見えないのかもしれないな”


と、疑問に思っている私に説明してくれる。


「それでは、こちらも七福さんに面白いものを見せよう。」


「特殊状況制圧車両 起動開始」


試験室の奥に搬入されていた物体のシートが、剥がされた。


その正体は高さ3メートル、大きな二本の腕を持ち二足歩行する、

所謂人型ロボットだった。

イメージとしては人間というより、直立したゴリラに近い。


「これは、ある事故を調査していて、

 観測された巨大生物に対抗するため、開発したものでね。

 名をランドナックルと言う。」


「ちょっとスパーリングに付き合ってくれないかな?」


どうすればいいんだ?と聞き返すと


「そのままの意味だよ。

 ランドナックルの拳を、金剛殿に受け止めてもらいたい。

 ああ、もちろん両手でだよ。

 ランドナックルも本気で殴ったりしないからね。」


と、伝えてくる三枝木さん。


金剛に、あのロボの拳を防御するように指示する私。


「準備はいいかな?」


いいと答える私。


「それでは、始めよう。」


少し大振りなランドナックルという名のロボのパンチを、

何なく捌く金剛。


何回か同じ行動を繰り返すと、

データを取っていた研究員から何かを伝えられる。


「はあ、良かったよ!

 どうやら、成功のようだ。」


うん?何がだ。

ここに来て、同じような疑問が何回も浮かび上がる。


私は、

「うーん、良く分からないのですが、

 何か発見があったのですか?」

と笑顔の三枝木さんに聞く。


ほっとしたような三枝木さんは、


「なるほど、七福さんは、このプロジェクトに関わる前は

 一般の方と聞いていたのだが、

 今まで余程、危険な目にあったようだね。」


「そうだな、七福さん、貴方の呼んだ金剛殿は、

 一般人には見えないし、触れない存在だ。

 聞いたところによると、

 どこぞの寺院からいただいたモノらしいが、

 正直、この金剛殿は、同じような特殊存在に

 対応するためのものだろう。」


確かに、あのお寺には、謎の妖怪軍団が攻め入っていた。

あの右藤住職は、防衛手段として金剛を使っている。


金剛は、ヘッドバンドを外すと見えなくなる。


しかし、ロボとのスパーリングに何か意味があるのか?


そう尋ねると、


「ふむ、よく考えてみてくれ。

 今まで、

 あの金剛殿のような存在には、こちらからは干渉できなかった。

 そして、あちら側の見えない存在から攻撃されれば、

 こちらに被害が出る。」


「触れられない存在相手では、いくら装備を用意しても、

 意味がない。

 しかし、今回ランドナックルの拳は金剛殿に受け止められている。

 つまり、こちら側の存在であるランドナックルは触れられるのだよ。」


「ランドナックルの拳部分には、

 金剛殿を照らしている電磁波と

 同じ波長を発信する器具が、装着されている。」


「この装置を改良していけば、私達の装備でも、

 特殊災害に対応できるようになるかもしれない。」


”大いに意義のある試験だったよ。本当に有難う。”


と、言って撤収作業にかかる三枝木さん達。


最後に、


「今回の協力に、ささやかながら謝礼を用意した。

 帰りに経理部で受け取ってくれ。」


と一言言い添えて、私達を送り出す三枝木さん。


ーーーーー


安アパートの一室。


あれから、社内食堂で昼食をとり、

経理部と言う大勢が働く事務所へ寄った私達は、

一路、我が家のある地方都市へと帰ってきた。


天明さんとは、京都駅で別れ、

更に電車を乗り継ぎ、

クランベリーさんと共に、アパートへ帰還。


彼女は、自室に戻り、

私は特殊装備開発課からの謝礼を確認した。

正確には給与明細書だが。


今回、一番嬉しかったことは、

ようやく現金収入を得たことだ。

日雇いのアルバイト扱いであり、

報酬は口座振込済みだそうだ。


3万円。

日当としては高いが、金剛を手に入れた経緯を見れば、

危険手当として、いいとは言えない。

だが、現状貯金を食いつぶしている状況では、有難い報酬だった。

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