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第2話 新感覚VR技術「疑似霊視能力」

妙に楽しそうなスーツ姿の女性、天明さんを恨みがましく観察する私。


見た目は、20代前半、如何にもデキると言った感じではなく

どこか抜けた感じの漂う美人さんである。


美人?

正直に言おう、表現に困るが

有体に言うとその容姿に何か際立った特徴はない。

顔立ちについても整ってはいるが、どういうわけか印象に残りづらい感覚を覚える。


しかし、その特徴の無さが人に好かれる要素なのではないか?

そんな感じがする。


何か捉えづらい彼女の印象が、逆に好奇心を掻き立て、ある種の神秘的な魅力を醸しだしている。


今は楽しそうに笑顔を浮かべているが、実際のところ、今彼女の脳裏に何が浮かんでいるのか

私には想像すらできない。


そう、私にはこれから何が起こるのか、何が自分に降りかかってくるのか不安しかない。

この天明という女性がもってきた事案により、私は3億という法外な借金を負うことになったのだから。


”まだ大丈夫、俺はこんなところでは終わらない!”

そう私は、必死に自分に言い聞かせていた。


今までの人生、色々なことがあった。

人並みに苦労を知っているはずだし、社会経験も積んできたはずだ。

今回もきっと乗り越えられる。


くそ、女性にモテたことなどない人生だったが、

まさか今頃、こんな美人が寄ってくるとは!


本来なら狂喜乱舞する出来事だろうな

借金やら厄介事がなければ!


そんな思いとは裏腹に、謎の企業からの刺客、天明さんは「少し待っていてくださいね」と言い残し

アパートの自室から出ていく。


はあっと息をつく私。

思った以上に疲れているようだ。


数分後、天明さんは、大きな金属製のスーツケースを携え戻ってきた。

デカいスーツケースだな、というか女性が持つには明らかに重そうだが

天明さんは軽々と片手で持ってきた、、


「それでは、七福様。

 本プロジェクトの開始に伴い、機材のセットアップを行いますのでご協力お願いいたします。」


スーツケースに付いている何かの装置に、自分のスマホをかざす天明さん。


”認証を確認しました。ロックを解除します”

スーツケースから電子音のアナウンスが聞こえてくる。


なんだこれは、驚く私を置いて、ケースを開ける天明さん。

ケース内を見ようと覗き込む私だったが、PCなどの機材は特に見当たらない。


ただ天明さんの手でケースの中身が取り出されていくと

中央部に丁寧に包装された黒いヘッドバンドのようなものが現れる。


どうやらケース内にあるのは、梱包材とこのヘッドバンドらしきものだけのようだ。


注意深く包装を取り除き、謎のヘッドバンドを両手に保持する天明さん。


「これは我が社で新開発したVRシステムです。

 このヘッドギアは装着した人の脳とダイレクトにリンクし、従来のVR用のヘッドセットなどを省略

 使用者は機器としてのディスプレイを必要とせず、脳の働きに特定の情報を入出力することで

 人の認識を自由に変更できます。」


「説明するより、体感していただいた方がより簡単に理解できるでしょう。

 それでは、このヘッドギアを装着してください。安全基準は満たしており、危険はありません。」


差し出されたヘッドギア? おい!これただの黒いヘッドバンドだろ、、

何も未来的な部分はないぞ!


さあ、さあと急かす天明さんに気圧され

ヘッドバンドを頭に着ける。


”生体への装着を確認。”

”該当する生命体の登録データを検索”

”管理権限:%&?*??#$ 管理者 天明かぐら”

”指定固体 七福源治丸 ホモ・サピエンス”

”使用目的 秘匿情報により閲覧要求が却下されました”

”通常モードの使用が承認されました。”

”オフライン設定 起動します。 ”


「どうですか?」

突然、頭の中に流れ始めたアナウンスに戸惑う私に、話しかけてくる天明さん。


「いや、なんだこれ。

 何か頭に響くが、変わった事は何もないぞ。」


私の答えに、「大丈夫そうですね、次のテストへ移りましょう」と呟く天明さん。


「それでは、まずこのシステムの使い方をご説明いたします。

 そうですね、まず私を見て集中してください。」


はあ、何を言ってるんだ?

訝し気な私に対し


「まあ、そう疑わず。

 とにかくやってみてください」


と、天明さんは柔らかに促す。


やってやろうじゃないか。

上手くいかないなら、この話自体が流れることになる。

相手側の機材トラブルでのプロジェクト中止、、

これなら契約金の返還という条項にも異論がでるはずだ。


私は柔らかな笑顔を浮かべる天明さんを睨みつける。


ふんっっっ!


うん?なんだこれは、、


天明さんの姿に重なるように、文字が表示される。

少々ぼやけた文字に集中してみるとはっきりと表示が見える。


#所属(株)ガイア神話連盟 

#プロジェクトNo12026 担当監査員

#プロジェクトリーダー 固体名称 天明かぐら


と表示される。

文字を見ると天明さんの姿がぼやける感じだ。


「どうですか?」と聞いてくる天明さんに


「あんたの名前とか色々表示されてる。

 なんだこれは、おかしな感じだ」


と答えると


「気分とか悪くないですか?

 何か体調に異常はありませんか?」


と再度質問される。


「それはないな。

 なにか表示されたりしているが、頭が痛いとか眩暈がするとか

 そういう感じはしない。」


というか、何か感覚がすっきりするような気がする。

おっさんと呼ばれるようになって、所々痛かったりする身体が不思議と楽になっている。


「そうですか。適合したみたいですね。

 システムをサンプルモードからシフト。

 プロジェクト仕様で起動」


不思議と響く天明さんの声に答えるように、頭の中へと何かのイメージが入り込んでくる。


地方都市にある安アパートの一室だった我が家の光景が、万華鏡のように変化する。


光が溢れ、思わず目を瞑った私が再び目を開けると


一人用としては、大きなアンティークな机と立派な椅子、そして日の丸の国旗が目に入る。


元の自室とは、まったくの別物だ。

部屋の各所には、各種、調度品が置かれている。

大量の専門書が並ぶ書棚に、なんだ生け花か?

すべてが高級品のようだが、その価値は私と縁のないものだろう、さっぱり分からん。


大会社の社長室とかいうもののイメージに似ているが、趣というか古さが目立つ。

まあ歴史があると言えばそうなのだろう。

アパート住まいの私にはわからんが、、


そして、どうみても我が家の自室とは比べ物にならないほど広い!

おかしいのは、私の目なのだろうか?


まったく訳が分からんが、ここは何処なんだ!

場所を確かめようとして一歩進む直前。


声が掛けられる。


「あっ気を付けてください。

 今はオフライン仕様なので

 部屋自体の大きさは変わっていません、

 見えなくなっている自宅の壁に、ぶつかったりしますよ。」


この問題が始まってから、ずっと聞き覚えた柔らかな印象の女性の声。


その声のした方を見る。

豪奢にして古びたアンティーク調の机の横にたたずむ髪の長い女性の姿。


安っぽいリクルートスーツではなく、

かっちりとした高級ブランドであろう白いスーツに身を包む女性、天明かぐらさんがそこにいた。


そして、続く言葉が発せられる。


「ようこそ、日本国総理大臣執務室へ。

 ここはVR技術を使い、現実空間に投影された架空の首相官邸です。

 本プロジェクトでは、この場所を拠点として実際に政務を行っていただきます。」


「なお現在はオフラインモードのため、

 しばらくは私、天明かぐらが首相補佐官を兼任させていただきます。」


私の驚きが限界を突破した瞬間だった!


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