第23話 仏門法具
続いて、もう一話、こっそり投稿。
盛大に、寝過ごした私達は、やっと我が家である安アパートに到着した。
今回は大変だった。
そもそも、天明さんの職場訪問自体が日帰りのはずだったのだ。
それが、今回の大事件。
テレビでは、京都で大規模な落雷や突風が起きたと報じている。
建物の外壁とかが、崩落したのも最近の異常気象の余波だということだ。
現場になったあの寺の一帯には、不思議と人がいなかった。
あの時間、家屋やマンション、アパートなどの住人は
不思議とどこかに出かけていた。
ニュースでは、不幸中の幸いとコメントされていたが、
ネットでは、陰謀論や不可思議なこの現象を都市伝説として扱っていた。
まあ、おかしいわな!
ちなみに、昼は京都の駅弁を買っておいた。
非常に美味だった。
そして、ここまで電車で眠りこけたので、
はっきりした頭は、再び右藤住職から貰った謎の品についての
疑問に囚われている。
今は天明さんもいる。
彼女は我が家で、適当にテレビを見て笑っている。
今日は休みだそうなので、隣のクランベリーさんが帰ってくるのを
待っているそうだ。
クランベリーさんも、昨日は会議に出席するため出かけていた。
私達が、一日京都での滞在を伸ばすことを天明さんが連絡したのだが、
その時、クランベリーさんのほうも会議が予定より長引き、
こちらに戻るのは、翌日の今日になるとの事だったらしい。
さて、貰った包みを開けてみる私。
中には、昨日見た通り、経典らしき巻物と短い錫杖があった。
うん、経典は達筆らしい墨を使った漢字で綴られており、
はっきり言って読めん!
錫杖を振ったり、なんやりしても何も起きない。
気が付いたら、天明さんがにやにやしながら、こちらを見つめていた。
「何してるんですぅ。
七福さん、ぷぷっ」
くそ、笑いをこらえて見てやがった!
噴き出しながら天明さんは、楽しそうにこちらを揶揄ってくる。
「七福さんも、男の子だったんですねぇ。
ぷぷぷっ」
こういう時の彼女は、妙に馴れ馴れしい。
いやぁ、夢がありますよねぇ。
浪漫ですよねぇ。
としきりに私を煽る彼女。
「おい! いい加減にしろ!
これはなんなんだ。」
ぷぷっとまだ噴き出しながら、こちらをにやにや見つめていた
天明さんは、ようやく真面目な顔をして、
私が指し示すモノを確かめる。
「そんなに怒らないでくださいよぉ。」
と言いながら、
「はて、何でしょうね。
とりあえず、解析にかけてみましょう。」
と言って、例のヘッドバンドを渡してくる。
もはや、ケースに入っていないヘッドバンド。
彼女の私物であるバックに入っていたようだ。
そのことをつついてみると、
「いやぁ、警察とかいましたからね。
あの専用バックは結構特殊ですから。
怪しいと疑われると、面倒ですし。
後から回収してもらいましたよ。」
「また今度来るときは、あのバックに詰めることになりますけど。」
今回はねぇ、と誤魔化す彼女。
とにかく、例のヘッドバンドを着けて、
「どうするんだ?」と天明さんに聞く私。
「ちょっとそれらを持って、集中してみてください。」
言われた通り、集中する私。
”霊的エネルギーを確認”
”形状:ワンド 道具名称:ワンド型制御キー:固有名称:識別不能”
”スキャン開始:霊的エネルギーの流れを検知”
”物体の詳細を推測”
”ワンド型霊装のレプリカ”
”特定のキーワードにより霊的エネルギーを制御することが出来る。”
”既定のキーワードの使用者が告げることで起動”
”キーワードは複数設定可能”
「天明さん、何かキーワードが必要とか言ってるが?」
私が問うと、
「なるほど、となると、この巻物を読んだりするんですかねぇ」
ちょっと巻物を開く天明さんが、うっ、と唸る。
「これは達筆ですねぇ。読めません。」
あっさり投げ出した彼女は、
「この巻物を持って、集中してみてください。」
と言ってくる。
はあっ、どうするんだ?
とりあえず、言われた通りに巻物を手に持ち集中してみる。
”霊的エネルギーを確認”
”形状:スクロール 道具名称:経典:詠唱式術具”
”スキャン開始”
”物体の詳細を推測”
”指定キーワードの詠唱代行補助術具”
”霊的エネルギーに意味を与え、
摂理を施行するためのキーワードの詠唱を代行する”
”霊的エネルギーを操作するための霊装と同時に使用することで
真価を発揮する”
なるほど、要するに今までの二つを持って見れば分かると言う事か。
「天明さん、二つ持って見れば何か起こるらしい。」
改めて、彼女に声を掛けると、
「ちょっと待ってくださいね。
何か大きなエネルギーが集まっています。」
「よし、ちょっと外に出ましょう!」と私を連れ出す天明さん。
アパート用の駐車場で、辺りを見回し、
「人の目はないようですね。
それじゃ、やってみてください。」
と、合図をしてくる彼女。
確かに、ここは独り者が暮らすアパートだ。
今の時間、ここにいるのはニートくらいだ。
そして、このアパートのある区域は近年再開発の対象になっており、
要するに、この辺は市営住宅が多いのだが、
古くなったため住んでいる者は少ない。
古い建物が、真新しい姿へと変貌するときに起こる準備期間、
そんな表現が、今のこの地域にはお似合いなのだ。
最近、加わった新人は、私のお隣さんであるクランベリーさんくらいだ。
ただでさえ田舎、この地域から出ていく人の方が多い。
まあ、今回はそれが功を奏している。
例え、例の妖大行進がやってきても、犠牲は私くらいしかでないだろう。
さて、本題に戻って二つの道具を手に持ち集中してみる。
”霊的エネルギーを確認”
”制御キーとスクロールを確認”
”霊装の起動を試みますか?”
よし、何か上手くいった!
「天明さん、ちょっと離れて!
いくぞ!」
錫杖を前に掲げ、念を送る。
”起動”
空間が、少し歪み、春にしては強い日差しが
何かに遮られ、空間が歪む。
そして、振りかざした錫杖の数メートル先に
5メートルほどの巨人が、現れる。
京都の一戦で、目覚ましい活躍をしていた
金剛という金属みたいな肌を持つ巨人だった。




