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第19話 百鬼夜行

小野寺所長に、案内された先で披露された古代の刀。


その刃には、見事な波紋が見られ、

反りのある刀身は古代のものとは思えないほど美しい。


彼が言うには、

この刀が発見された遺跡の来歴は、紀元3世紀頃に遡るという。


続けて、この刀には、平安時代中期の古刀のような

反りが見られるが、それはあり得ないことだそうだ。


小野寺所長の説明では、

この刀が発見された遺跡は、古代邪馬台国の時代と重なる。


ヤマト王権が確立され、既に数百年は経た平安時代に

やっと現れたのが、刀の反りという技術なのだ。


そもそも、平安時代中期に出来た古刀の技術は

現在でも謎なのだそうだ。


曰く、現在の技術を持ってなお、複製は不可能。


おそらく、当時は今知られているような刀工技術とは

別の過程を経ている可能性があるそうだ。


そして、この刀の特徴は特殊な波長の電磁波に対して

特異な反応を見せるということだ。


特定の条件下での発光等の未解明な現象が、

観測されていると、話す小野寺所長。


「刀という形状から、武器として使われた可能性もある。

 また、刀から特異なDNAが、発見されているのだよ。

 人のものなのか、動物のものなのか?

 それは、まだ分析中なのだがね。

 どうにも、おかしな成分が見つかっているのだ。」


”鬼を切ったという伝承を信じるわけではないのだがね。”

と静かに語った彼は、


「さて、そろそろ、昼だ。食事に行こうではないか?

 聞いたところ、七福君は金欠だそうだね。

 今時、零細企業とはいえ、社員の金を持ち逃げするとは、

 まったく嘆かわしいね。

 私のところなら、そんな心配はいらないよ、

 もちろん、ここの昼食は、客人である君は無料だ。」


これも一種の接待だからね、と続けた。


「なお、天明女史は、自分の給料から天引きだからね。」


君は食べすぎだよ、少しは遠慮という言葉を学びたまえ。

そんな言葉を天明さんに投げかける。


「えええ、今回、七福さんを連れてきたのはわたしですよ。

 それに案内自体も、わたしの職場を紹介することです。

 わたしの食事も経費で落とせるはずです!」


勢いよく、小野寺所長に食い下がる天明さん。

しかし、その言葉はのらりくらりと躱され続けたのであった。



ーーーーー



その日の夜、私は小野寺所長の紹介で、京都市の繁華街に面した

高級宿に泊まることになった。


クランベリーさんには、

天明さんが帰宅は明日になることを連絡していた。


夕食も、全国でも有名なお店で、懐石料理をご馳走になった。


もう一生縁がないであろうお高い接待に、

少し緊張した私だったが、


「七福さんをお連れしたのは、わたしです。」

と、主張して譲らなかった天明さんは、

見事、私と同じ待遇をゲットしていた。


正直、お一人何万円じゃ効かないであろう宿代等を

小野寺所長は、ポケットマネーから出していた。


普通に、接待費で落ちるわけがなく、今回は所長の友人として

歓待を受けることになったわけだ。


夜も更け、ヒノキ風呂を堪能した私は、

ゆったりとした時間を過ごし、整えられた布団に身を横たえる。


天明さんも泊っているが、宿を思う存分、堪能しているらしく

今はいない。


確か、私の部屋より、3つほど奥へ行った部屋のはずだ。


独特の雰囲気が漂う客室。


ウトウトと心地の良い眠りが近づいているのを感じ、

私は部屋の明かりを消した。


ガヤガヤ、フォハッハッ____


なんだ、朝なのか?と目を開ける私は、

まだ眠り足りない頭を振る。


辺りはまだ暗いが、

部屋の外から、騒がしい笛の音や太鼓の音が響き渡っている。


時刻を確認すると、まだ深夜だ。


「こんな夜更けに何をやってるんだ。」

呻く私だったが、何か違和感を覚える。


騒がしい外からの音にうるさいと感じている一方で、

同時に、夜の静寂をも感じている。


耳からは、直接何も聞こえていないが

頭は、騒がしい何かを認識しているようだ。


「どうなっているんだ。」

呻く私。


その時、部屋の入口をノックする音を聞いた。

ふむ、ノックの音は小さなものだったが良く聞こえている。

外の大騒ぎによる騒音も認識しているのに。


部屋の明かりを点けようとするが、


「うん?

 電気が点かないぞ」


枕元に置いてあったスマホも、電源が入らない。


慣れない間取りの部屋を、慎重に入口まで進む。


とりあえず、部屋の外を確認するか?


扉に近寄ると、見知った女性の声が聞こえてきた。


「すみません、七福さん。

 起きていますか?」


部屋の外から、それも扉越しなのに良く通る声。


扉を開けると、やはり天明さんだった。


「どうしたんですか?

 それに、何か宿の外が騒がしいのですが。

 何かあったんですか?」


と彼女に小声で質問する私。


「そうですね、今の状態では、まだ認識できていませんよね。

 これを着けてください。」


彼女が手に持っているのは、例のヘッドバンドだ。


言われるがまま、ヘッドバンドを着けると

笛の音や太鼓、そして何者かの騒がしい大声が、

はっきりと聞こえるようになった。


そして、真っ暗闇だった部屋や廊下が、ぼんやりと光っているのが見える。


「なんだ、これは!」


思わず大きな声が出る。


「しー、静かにしてください。

 宿の人は今眠っていますが、

 外には、多数の動く気配があります。」


着いて来て下さい、と私を促す天明さん。


宿のフロントを通り抜ける私達。


深夜でも、フロントは、お客への対応の為、ライトが煌々と点いているはず。

しかし、今はライトが消えている。


さらに、受付であるフロントスタッフの姿もない。


宿を抜け出し、音のする方へと進む天明さんとそれを追う私。


周りは繁華街のはずなのに、通りに人影は見えず、

立ち並ぶ店の明かりは消えていた。


何か、鬼火のような火の玉が、そこかしらを飛んでいる。


そして、辺りを何かが照らしているのか?

月明かりではない光により、道を進むのに、さほど苦労は感じなかった。


ただ事ではない雰囲気に、呑まれそうになる自分を自覚する。


夕方、通った時と同じ街並みながら、

その雰囲気は全く異質なものになっている。


しばらく、進んだ私たちは、件の騒ぎの元であろう大通りに

辿り着いた。


物陰から通りを覗う私は目を疑った。


異形の姿をしたモノたちが、大行列を作って、

一方向に向かっている。


先頭の大きな鬼らしきモノや、天狗らしき姿。

明らかに人より大きな体躯の巨人に、僧侶らしき姿も。

多数の鬼火が飛び交い、骸骨姿の鎧武者が行列をなしている。

ところどころには、何か不気味な影だけのモノも並んでいる。


行列の中央部、古代の装束を着た役人のような人の列。

その中心にある牛車を守っているようだ。


ぼんやりと光る牛が牽きゆっくりと進む、とりわけ目立つ豪奢な車。


行列がどこまで続いているのか、推し計れない。


圧倒される私の耳に、天明さんの囁き声が入ってきた。


「  百鬼夜行  」



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