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第17話 古代人類史社会理科学研究所

天明さんの職場、古代人類史社会理科学研究所に、

辿り着いた私達は、

今エントランスで案内してくれるという広報担当者を待っている。


天明さんが案内すればって?

私もそう思ったが、天明さん曰く、


「いえいえ、わたしもここに来たのは、

 このプロジェクトが始まってからなんですよぉ。

 わたしは、ここにプロジェクト推進のため、

 一時出向している身なんです。」


「あと、わたしも初めてここに来たときは、、、、、、」


と、何か思い出した様子の彼女は、再び話を続けた。

 

「初めて来たときは忘れて、2度目の時ですね。

 ちょっと印象が悪かったんですが、

 広報の人が改めて施設をレクチャーしてくれました。

 正直、退屈しそうだなぁ、と思っていたんですが、

 そういうのを感じさせないお話ぶりで、結構面白かったんですよぉ」


”さすがプロですねぇ” と呑気に話す彼女。


うん、あんたもここの立派な関係者なんだが、

そして、お世話になる職場の説明を退屈しそうとか、

私の若い頃なら、ありえん話だ。


そんな天明さんの頭痛がしてくる逸話を聞いていると、

エントランス奥のエレベータから、

白衣を着た男性がこちらにやってきた。


年は50代くらいだろう、私より年上のようだが

少し寄れた白衣を着ているし、どうみても研究者のようだが、

この人が、案内役なのか?


「やあ、元気かね、天明女史。

 横の方が、例のプロジェクトの人かい?」


と声を掛けてくる。


「そうですよぉ。

 でも、所長が、なぜこんなところに来たんですかぁ」


「わたしが呼んだのは、広報の明木さんですよぉ」


と返す天明さんに、


「いやいや、例のプロジェクトは、

 私の研究に関連した内容ではないか!

 そして、その中心人物が、今日訪問すると聞いてね。

 広報には、私が手を回しておいた。

 なに、心配いらん、私にとってこの施設は、庭のようなものだ。

 

 そして、

 私以上に、ここで行われている研究に熟知したものはいない。」


「それで、天明女史、紹介してくれないかな?

 遠いところ、ようこそ、我が研究所へ。

 私の名は、小野寺 修司という。

 よろしく、ほら女史、呆けてないで頼むよ?」


苦虫を嚙んだような天明さん。

彼女が、ここまで嫌がるのはなぜなのか?


「仕方ないかぁ」と改めて天明さんが、

小野寺という男性を紹介し始めた。


「ええ、七福さん、こちらは、この研究所の所長で

 人類史関連の博士号を持つ小野寺さんです。


 研究者としては、大変優秀で

 天才と呼んでも過言ではないのですが、

 難しい話を延々と続けて、

 見学に来た人に、退屈だからもう来ない!

 と、クレームを言わせる研究所の天災児でもあります。」


「興味が湧かないことには、本当に無頓着なんですが、

 興味を惹かれることには、執拗に執着するという、

 問題ある性格の持ち主ですので、七福さんも気を付けてください。」


「わたしも、ここに初めて来た時は、粘着されました。

 非常に退屈したところに、広報さんがフォローしてくれまして、

 そのお話は大変面白いものだったので、

 今回は、広報さんに初めからお話を通しておいたのですが。」


はあっと溜息を付く天明さん。

そして、小野寺所長?に向かって、私を紹介する。


「こちらが、七福源治丸さんです。

 今わたしたちが、進めているプロジェクトの正式メンバーとなります。

 本社付きという待遇なので、どうか失礼のないようお願いしますよ!

 小野寺所長!」


「ふむ、分かっているよ、天明女史」


「さて、早速だが、我が研究所を案内しよう。」


研究所1階は、エントランスと社員食堂に、

ちょっとしたクリニックのような医務室、

更に、男女に分かれた大浴場やスポーツジムのような施設もある。


その他、外からの来客を迎えるための応接室が数か所。


食堂や応接室以外のリラクゼーション施設は、本来いらなそうだが、

研究の為、何週間もこの研究所に泊まる職員もいるため、

健康維持には欠かせないそうだ。


そして2階は、いくつかの研究ラボに、各種文献などを収めた図書室。

各種の研究データを収集し、

検証するために作られた特殊な区画もあるそうだ。


この特殊な区画は、2階中央に位置し、

各種研究ラボが、その周りを囲むように配置されている。


小野寺所長によれば、その区画は耐震、耐爆、対放射線の

極めて隔離性の高い設計が施されている。


なんでそんなものを、2階に敷設したのか、と聞けば、

研究成果をラボから最短で持ち込めるからだそうだ。


ラボには、危険物もあるので、運搬のリスクが最も低くなるよう、

全てのラボから最も近い位置に区画を設置しようとした結果、

特殊区画の周りをラボが固める配置になったそうだ。


ついでに、もし万が一、区画が破壊されてしまった場合でも

1階と3階、そして周りを囲むラボそのものが、

外に対する防壁の役割を果たし、

研究所以外への被害を最小限度に食い止められる。

研究員の健康を案じていて、

とてもホワイトな職場かと思いきや、事が起こったら、

全滅覚悟の危険極まりない研究所の設計に、

世の表と裏を同時に知った気持ちだ。


最上階に当たる3階は、

経理などの事務室とAI用のデータセンターが並んでいた。


そして、案内された所長室。


広いと思われる所長室だが、所狭しと文献が散乱している。

ちょっと見た限りでは全容は分からないが、

漢文で書かれた歴史的文献も入り混じる。


まあ、全部、本物ではないだろう、

印刷だし、書かれた紙も比較的新しい。

写しだろうなと当たりをつける私。


うん?なんで、そんな事が分かるんだって?

この間、東北のほうへ行ったとき、

少しだけ活躍したご本尊があったろう?


アレの素性をネットで調べていたのだが、結構古いものだった。

いや、アレによって霊感など微塵もない私でも、

不可思議な力が使えたし、他にも、同様の品があるかもだからな。


興味が湧くのも、当然だろう?

とにかく、色々検索してみたら、その足跡は古く、

元々は、九州の遺跡で発見されたものだったらしい。


発見されたのは、鎌倉時代だそうだ。

更に古いものなのか、漢文で書かれた文も見つかったとあった。


発見から世に出て数百年。

ただの錫杖と思っていたアレには、数々の逸話があるそうで、

色々な人の手に渡って、最終的に今の社殿に奉納された。


その逸話の中には、鬼を祓ったなどの御伽噺も含まれており、

時の大地主が、災厄を鎮めるため手に入れたそうだ。


散らばる文献を見て、物思いに耽っていた私だが、


その間、天明さんは、散らばった文献を纏めていた。


「ほら、所長も片づけてくださいよ!」


何時になく、キツイ口調の彼女。


なんでも、ここの様相は、いつもこの調子なようで、

職員が、片づけても片づけても、翌日には散らばっているそうだ。

どうして、違う文献を持ってくる前に、読んだ文献を片づけないのか?

終わらない文献整理で、大分不評が出ているらしい。


とりあえず、来客用のテーブル周りを除けた天明さんたち。

私も手伝った。


「ご苦労だったね。

 ふむ、文献を移動させたが、

 必要な文献がどこにあるのか、また探さないとな。」


私達に声を掛けてきた小野寺所長は、


「さて、七福君。

 この研究所はどうだったかね?」


と聞いてきた。


しかし、彼は、こちらの返答を待たずに話を進める。


「この施設では、危険物も扱っているが、それが何か分かるかな?」


「いや、もう少し、話をしなければな。

 七福君、君は日本の歴史について、どの程度知っているかね?」


そう矢継ぎ早に聞かれた私は、学生時代に習った内容を思い出す。


「本格的な国の始りは、

 中国の魏に書簡を送った邪馬台国とその連合だろう。

 その後、ヤマト王朝が栄え、今の天皇制に繋がったはずだ。」


ふむ、良い答えだ、と小野寺はつぶやき、


「では、この歴史観に、

 もう一つの背景があると言ったら、どう思うね?」


と再び聞き返してきた彼。


うん?

何のことだ?


困惑する私に、語りだす小野寺。

その内容は、およそ現実味のないものだった。

 

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