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第13話 ガイア神話連盟からの招待状

アメリカ合衆国、ロサンゼルス 数多く立ち並ぶ高層ビルの中の一室


「では、関係者の皆さま向けに、今回の映画の試写会を行います。

 クライアントの皆さまも、この映画のクォリティには納得いただけると確信しております。」


「あぁ、それは期待しているよ、ミスター、ウィルソン。

 今回のプロジェクトには、巨額の投資をしたのだからね。」


ブリック・ウィルソン、

イギリスにその系譜を持つアメリカ人である彼が、長編SF映画の製作を依頼されたのは、

例のウィルス騒ぎが収まった2年前のことだ。


当時ハリウッドでは、やっと終息しはじめたウィルス騒ぎに安堵の声が上がっていた。

解雇され、全米各地に散らばっていた多数の映画スタッフも、再びこの地に集まってきていた。


そんな中、ハリウッドとしては、比較的小規模な映画製作会社で働いていたブリックは

ある映画の監督として名を挙げる。


もともと、大手の映画制作会社が、手掛けていた作品だったが

ウィルスによる猛威で、制作自体が遅延に遅延を重ねていた。


そして、遂に制作会社が、一時的な会社の閉鎖を決定。

作品自体の権利が、宙に浮いた形になった。


その権利を購入したのが、ブリックの働く会社だった。

ウィルスの猛威を跳ね除け、新たに新人俳優陣を起用。

制作スタッフも一新されたこの映画。


ブリックは、所属する会社から監督を務めるよう求められる。

初めての監督業務、彼は迷わず契約書にサインした。


その作品は、異例のヒット作となる。

もともと、ウィルス騒ぎで他の映画製作も遅れており、ライバル作品がそれほどなかったのも

ヒットの要因かもしれない。


そして、今回、ある大企業からのオファーで、新規大作映画の監督を任された。

制作陣は、スタッフも俳優も、かつての大物揃い。

初監督を務めた頃からたったの2年、異例の大抜擢だった。


自信に満ちた表情でブリックは、クライアントへの報告を終えた。


「今回の映画は、歴史に残る作品となるでしょう、

 ミスター、ウィルソン、素晴らしい報告を有難う。」


会議が終了し、皆が退室していく中

さっきまで、映画製作の報告を聞いていたクライアントの男性が、

窓際に立ち、大都市の夜景を見つめている。


「よぉ、また考え事か?」

不意に男性へ語り掛けてくる存在が現れた。


もうスタッフは解散し、室内には、誰も残っていなかったはずだ。


しかし、男性は何も驚かず返答を返す。


「古き者たちが、帰還した。

 我々を縛ってきた秩序という名の呪縛を思わぬ形で、打破して見せた。

 今が、好機だ。

 我々も続くときだ。」


「そうだろう、ラファエル。」


ラファエル、古の天使の名で呼ばれた存在は、男性にこう切り返す。


「そうだな。

 まさか、こんな手があるとはな。

 しかし、それも俺たちが、長い時を掛けて、この星を導いてきたお陰なんだ。」


「そこは、感謝してもらいたいぜ!」


なあ、ミカエル、と語り掛け、その存在は消えていった。


「善と悪、単純な概念ゆえに、我々をも翻弄した絶対存在。

 かつての大戦で、多くの同胞たちと仲違いを起こさせた。

 今、その法が揺らいでいる。」


ミカエルと呼ばれた男性は、独り言ちる。


「あれから、3000年か、

 この地で、多くの苦難に見舞われた。

 しかし、人の秩序も今揺らいでいる。

 善悪を超えて、調和の力が戻りつつある。」


”此度は、決して惑わされぬぞ”


ーーーーー


研修から帰ってきた私達だったが、

今回は、散々だった。


4日目、無事、東北から帰路についたのだが、

途中で、最近、会社で話題に出たというおろしそばの店に寄ることに

天明さんは、こういう話には敏感である。


だが、高速を一旦降りて、迂回して都市圏に戻ったのは、ガソリンの無駄遣いなのでは?


さらに、北陸道に入り、ひた走る。

確かに、蕎麦は美味かった!

蕎麦本来の味もさることながら、大根の辛みが病みつきになる美味しさだった。


そして、我が家に帰ってきたのは、夕方遅くの午後5時頃だ。

天明さんは、そのまま会社に報告に行くと言う。

ついでにクランベリーさんも、今回のことで上司に報告があるそうだ。


皆、元気だなあ。


翌日、我が家であるアパートの自室を掃除していたところ、

天明さんとクランベリーさんの訪問を受けた。


いつものヘッドバンドを渡され、豪奢な総理官邸に早変わりした自室。

まだ、掃除の途中なんだがなあ

そんな感想を抱くも、目の前に広がる威厳溢れる部屋に、ホコリやゴミは一切見当たらない。


白天明さんが、今回の議題について切り出す。

「まずは、今回の研修についてですが

 今回、七福総理を危険な場所にお連れしてしまい、大変申し訳ございません。

 今後は再発を防止するべく、しっかりとした下調べを実施するよう改善いたします。」


すると、クランベリーさんも


「今回は、七福殿を危険に晒してしまった。

 警備部門を代表して、謝罪の言葉を述べさせていただきたい。

 大変申し訳なかった。

 私も、もっと精進するべきだと痛感させられた。」


と謝罪の言葉を続けた。


「もういいですよ。

 今回は、想定外な出来事が多かったですし、

 さすがに、あんな化け物が出るとは誰も想像できませんよ。」


こちらも頭を下げ、謝罪を受け入れながら、

もう、この話題はおしまいと私は話にけりをつける。


それまで、殊勝に頭を下げていた天明さんは、


「本当に申し訳ありません。」


最後に謝罪の言葉を発して、話題を切り替える。


「今回のクマ騒動ですが、

 もともとクマが生息している地域に、

 あの猛獣が率いる野犬の群れが陣取り、

 本来の縄張りから追い出されたクマたちが、人の住む領域へと進出することになった。

 これが今回の騒動の顛末かと推測します。」


「続けて、この事態は、原因である猛獣や野犬の群れを追い払ったことで

 一応の終息を見るはずです。

 ただ、クマ被害は、他の地域でも多々発生しており、これらに関して、何か関連性があるのか?

 という疑問が残ります。」


「一般的に知られているクマ被害の要因は、天候不順による山間地域の食料事情の変化が挙げられます。

 ある年に豊作だったり、次の年は凶作になったり、

 食料事情が、毎年極端に変化しており、豊作時にはクマが子供を産み、数が増えるも、

 凶作になると、食料を求めて山間を移動する。」


「そんな中、豊かな作物のある人里に下りてくる個体が、増加しているようです。」


そんな報告をして、話を進めていた天明さんに疑問を呈するクランベリーさん。


「ふむ、しかし、大自然に生きる生物が豊作だったり、凶作だったりする

 食料事情に振り回されるだろうか?

 そもそも生物が、繁殖し数を増やすのは、生存を容易にするためだ。

 しかし、クマという生物は、この国の生態系では最上位に位置するはず。

 ならば、個体数を一定に保ち、現状を維持するほうに野生の理は働くはずだ。」


その意見を黙って聞いている白天明さん。


さらに

「うーむ、何等かの種の存続危機を感じ取ったクマが、生き残りをかけて

 数を増やしているのかもしれんぞ。

 数は力だからな」


そんな妄想のようで、ちょっとブルっとくる話が続いた。


あんな訳の分からない猛獣?が出現し、不可思議な現象が続いている現状。

得体の知れない恐怖感が、身体を固くさせる。


白天明さんは、「今回のことは、もう少し調査が必要ですね。上に報告しておきます。」

と締めくくる。


ーーーーー


いつもの3人きりの会議?だったが、

例のヘッドバンドを回収した天明さんが、会社へ帰るため、アパートのドアに手を掛けた。

しかし、彼女は、何か慌ててこちらを振り返り、私のほうに駆け寄る。


「すいません、忘れてましたぁ。

 今回の件で、七福さんの研修は終了です。」


「で、なんですが、

 一度、我が社で就任式を行いたいと、上司が言っておりまして。

 何でも、今回のプロジェクトの中心である七福さん、と一度顔合わせをしたいとのことです。

 大げさなことは、行わないそうなので、気楽にお誘いをお受けしてもらえませんか?」


と宣うリクルートスーツの天明さんは、同時に何かの封筒をこちらに渡してきた。


宛先 七福源治丸様  ” 招待状 ” (株)ガイア神話連盟 日本支部 


何かが、また起こる!

やっと平和な日常に戻ってきたはずの私だったが

この封筒を見て、再び得体の知れない危機感が、湧き上がってきた。

 


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