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第12話 第2回研修3日目 考え事

私は、今、ビジネスホテルの自分に割り当てられた一室でくつろいでいる。


今日は、研修3日目だが、昨日の現地調査での疲れを癒すため休養日となった。


昨日は、昼食後、天明さんが、壊れてしまった社殿の現状をスマホで撮影、

その間、クランベリーさんは、不審物がないか?改めて辺りを捜索して回った。


私か?

あまりに、起きることが現実離れしていて、疲労困憊だったので、山頂の観光客用であろう

ベンチで休ませてもらった。


バイトなんだから、働けってか?

仕方ないだろう、私もさすがに今回は年のせいじゃない気がする。

なぜ、あの二人はまだ元気に動けるのか?

不思議だ。


しばらくして、私達は下山するため、山道を朝とは逆に下って行った。

下山の途中、気のせいか、あのお婆さんのところに続く階段が見つけられなかった。

まあ疲れていたからな、見逃してしまったのだろう。


宿泊しているビジネスホテルのある街に帰ってきたのは、それから2時間後だった。

午後2時40分という微妙な時間だったが、最寄りの市役所に事情を説明に行った。

事情が事情だったが、器物損壊とかに当たるかもだし、

あの社や奉納されていた錫杖が重要文化財だったりしたら、かなり重い罪になるかもしれない。


クマが出たり、ファンタジー寄りな猛獣に襲われたりと波乱万丈な登山だったが、

最後のこれが、非常に悩ましい。


市役所で、担当の人に事情を説明するとき、クマに襲われ、山頂でゴツい野犬の群れに遭遇、

やむなく、社殿に逃れたものの野犬の群れが、執拗に私達を狙ってきたため

しばらく助けを求めて籠っていたと話すのは、リクルートスーツな天明さん。


社殿の今の状態がどうなっているか、スマホで撮影した画像を見せながら説明。

最後には「とても恐ろしくて混乱しましたぁ」と迫真の演技をかましている。


担当の人は、その様子を見て「大変だったですね」と宥めながら、

画像を確認、損壊自体は社の正面にある扉を支える留め具部分だけと判断したようだ。


実際、扉は金属製で、飾り模様が入っているものの頑丈に出来ていた。

そもそも、ただの野犬程度では、扉自体に大した傷はつけられない。


あと、クマ被害が起きる前は、観光客から野犬の目撃情報が複数件あったそうだ。

対処しようとはしていたが、費用面や昨年から増加したクマ被害が重なり、

なかなか現状打開のための行動には、至っていなかったらしい。


そして、肝心の山頂にある社殿だが、例のウィルス騒ぎから今年まで

人手不足のため、ちゃんとした管理がされていなかったとの事。


一応、警察に事故として申請する必要はあるが、それらは市のほうで何とかするそうだ。


ふむ、何とかするってどうするんだ?

器物損壊罪とかが、遠のいた途端に気が大きくなる私は、非常に小さい男だった。


あまりにも色々ありすぎて、

疲れ果てた私は、ビジネスホテルに帰り、ベッドに倒れた。

まあ、怪我はないが、おっさんな私には、過重労働だったのだ。


夜は、コンビニのカップラーメンを食べて、室内の狭い風呂に入り、歯を磨いて寝た。


なにか天明さんが、美味しい店があるとか騒いでいたが、

クランベリーさんが、疲れているだろう私に気を使ってか、彼女の相手をしてくれた。


ありがたい護衛殿だ。


そして、翌日の今日、私の身体は、昨日の重労働の反動で悲鳴を上げていた。


全身、激しい筋肉痛に襲われている!


「もう、山などいかん!」


くっ、年を取ると運動した2、3日後に反動がくるというが、

それなら、私はまだまだおっさんではないようだな!


今日の朝も、自室に、今日の予定を相談に来た天明さんとクランベリーさん。

休養日にする旨が決まったのと同時に、気晴らしに一緒に出掛けようと誘われた。


何でも近くに、秘湯があるらしく、

身体のケアに行ってみないか?と言うことだった。


お前ら、あんなことがあって、なんでそんなに元気なんだ!

これって本当に年齢の問題か?

本気で疑問なんだが。


二人のお誘いを丁重に断って、自宅待機を決め込む私。


なに、このホテルの近くにはコンビニもある。


今回、研修とはいえ、久しぶりの旅行だったが、

特別美味しいものは、食べていない。


しかし、身体の節々が痛い今の私には、そんなものは不要だ。


さて、ベッドに今だ寝転ぶ私だが、正直どんな体制でいても身体が痛い。

前職はデスクワークが主体だったし、本格的な運動など学生の頃以来だ。

昨日のあれが、運動と言えるのか?

疑問だがな!


何か気分転換をしよう!

痛む身体を宥めながら、昨日のことを思い出す。

考えることは、山積みだ。


不思議な力を持つ2人の女性。

そして、ヘルハウンドなるファンタジー小説か、ゲームなんかに登場しそうな謎の猛獣。


クマも異常だったが、この二つの案件は、かなり現実を逸脱していると感じる。


同行者であり、同僚ということになる2人は、なかなかに個性的だ。

変な意味での個性ではないのが、救いではある。


そういえば、と例のヘッドバンドのことを思い出す。

アレは、この市で現地調査を開始した時、渡されてからずっと手元にある。


以前のスーツケースより小型だが、持ち歩きに便利なサイズの鞄に、丁寧に保管してある。

その辺の既存のものではなく、オーダーメイドっぽい鞄だから、アレは結構、重要品なのかもしれない。


まあ分かってはいたが、昨日は大活躍?だった。


ふむ、

身を起こして、例のヘッドバンドを取り出してみた。

何の変哲もないヘッドバンドだ。


ちょっとデザインが未来的か?

どういうセンスで、こんなものを作ったのだろうか?


昨日を思い出し、頭に着けてみる。

何も起こらない。


はあっ、溜息をつきながら昨日のことを思い出す。


まずクマに襲われ、光を放つクランベリーさん。

一体どういう手品なのか?


”対象者の装着を確認。”

”思考解析モードに移行”

”該当する画像を解析”

”対象者の疑問について、レポートを作成”

”思考する該当女性についてのレポート”

”保有する霊的エネルギーを使った基礎能力向上を実行していると思われる”

”一般的な霊的補助技能における付随現象と89%一致する事項が見られる”


突然、頭に流れ始めたアナウンス。

霊的なエネルギー?

基礎能力を向上?

それって、魔法か何かか?


”ノー”

”一般的生命体に備わる基礎エネルギーの総称”

”使用者によって、異なる事象を顕在化可能”


それなら、天明さんはどうなんだ?

白天明さんのは、近くで見たが、かなりの規模だった。


”該当する画像を解析”

”対象者の疑問についてレポートを作成”

”思考する該当女性についてのレポート”

”女性の周りの発光現象は、霊的エネルギーの発現”

”女性の言動及び観測された現象から該当する事象を検索”

”一致”

”女性は敵対知性に対し、当該地域での登録個有名の開示を請求”

”敵対知性は請求に対し黙秘したため、女性は世界意思による審判を請求”

”敵対知性は、この地域での管理権限を保有していなかったと推測”

”結果、敵対知性とその意思が起こした現象を世界意思が、排除した模様”


世界意思?


まず、管理権限ってなんだ?


”対象者の疑問について回答”

”知的生命体の意思により発生する霊的エネルギーを集約し管理する権限”

”発展途上の生命体は、生命活動の維持以外にも余剰に霊的エネルギーを発生させる”

”余剰な霊的エネルギーは、時に生命体の意思により特定の存在に集約することがある”

"一定量の霊的エネルギーを集めた存在に対して、世界意思が特定地域の霊的管理権限を認定する”

”この時、認定された存在は、一つ高い霊的状態へと移行する。”

”また、より多くの集約された霊的エネルギーを扱うことで存在の状態と権限は上位へ移行していく”


うん、わからんが

続けてと、世界意思とな?


”対象者の疑問について回答”

”世界の摂理であり、法則”

”または、その地域内の管理権限上位者により、決められた法と秩序”


神か何かか?


”回答不能”

”対象者の管理権限では、この事項に関する情報には触れられません”


はあ、ややこしい!

じゃ、ヘルハウンドとやらは、どうして出てきたんだ!


”対象者の疑問に対し、完全なる回答は不可能”

”該当個体は、この地域に不法に侵入したものと思われる”

”世界意思による排除が、即時に発動したのもそのためと推測”


うん?普通はあんな化け物、即刻退治だろうに違うのか?


”対象者の疑問に対し、回答”

”敵対知性だとしても、地域内での管理権限保持者であれば、訴求に留められる”

”審判は厳正に行われるが、管理権限保持者の間での相互理解が推奨されている”

”管理権限保持者間の騒乱に対し、世界意思は不介入”


うーむ、わからんな。

身体が筋肉痛なのに、頭痛までしてきた。


深く考えるのは、辞めよう。

何か嫌な予感がする。


私はヘッドバンドを鞄に収め、再びベッドに寝転ぶ。


ーーーーーーー


夜、車でちょっと遠い秘湯に出かけた二人が、帰ってきた。

私の部屋へ来て、楽しそうに感想を語る女性二人。


ついでに、歩きではちょっと遠いが、車で30分くらいのところに

名物の鍋を出す店があると言う。


「今日は鍋だぁ。

 高級肉を食べるぞぉ」


領収書を書くときに品目を書かないよう、店員さんに言わなければ!

相変わらず、小賢しく食い意地が張っている天明さん


「はあっこの地域なら山の幸だろうに

 タケノコと言ったか?

 春の旬、刺身にして食べるらしいぞ。」


いや、それはまだ、この地域じゃ早いぞとクランベリーさんに伝える私。


月の出る、まだ肌寒い夜。


二人の性格の異なる美人に、強引に連れ出されながら、私は思う。


つい、ひと月ほど前、無職になった私の元に現れた謎の企業からの刺客、天明さん。

3億の借金が発生したり、前職の知り合い皆が失踪したり。


強盗事件に現れた謎の大男と、そいつが起こした不可思議な現象。

危険に対処するため、身辺警護担当のクランベリーさんが、お隣に越してきた。


色々な研修という名の無茶ぶりはあったが、

今私は、意外にも生き生きとした日々を送れている。


謎は多いし、悩み事はこれからも尽きないのだろう。


だが、心なしか、少し距離が縮まった感じのこの二人の同僚と一緒なら、

結構楽しい人生が、この先も続いていくのかもしれない。


そう私は、それまで普通だと思っていた会社生活にない充実感を感じていた。


第1章終了です。次回は閑話を挟むか、クマ編の総括か?

あとは第2章のはじめ辺りかちょっと決めかねています。

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