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俺は人生を捧げない、私は全てを取り戻す!  作者: ふりがな
第8章 八百万が集う、歴史から秘されし島
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第110話 人を護る力の真価 前編

留守番だけだったはずの私達を襲ってきた3体の像。


こちらは連携を断ち切られ、1対1の個人戦に持ち込まれた。


オリンさんは、相当な実力だろうから心配はないだろう。


しかし、天明さんは術師である。

現れた像3体は、どう見ても近接戦に特化しているみたいだ。


いつもは前衛であるアテナさんと私が前に出て、

術の行使までの時間を稼いでいる。


そう考えれば、この中で一番苦戦しそうではある。


とはいえ、私の前にいるこのご本尊。


3顔5対の腕を持つコイツ、

肉を纏ったその身体は鍛えられ筋骨隆々な印象だ。


ただ、武器を持たず、その身体は2本足である。


確かに脅威だが、その身体の構造は幾分バランスに欠いている。


現れた3体の中では一番強いみたいだが、

どうやって戦うのだろうか?


実際、前に戦った召使いの刺客も多くの腕と顔を持った存在だった。


6本の腕により乱撃を放ち、

遠距離でも何かの技を使って対応してきた。


しかし、今目の前にいるご本尊は5対10本の腕があり、

手数は多いのだろうが、身体の挙動には隙が出来そうである。


そんな分析をしていると、


「ふむ、娘よ。

 武器を抜かぬのか?」


そう問いかけてくるご本尊。


太刀か、、

困ったな、今はまだ明るい昼だ。


一般の参拝者が来た時、太刀など持っていたらまずい。


あと肉を纏ったこの存在を斬るのは、精神的にいい感じがしない。


ここは異郷の道ではないのだから。


それに、このご本尊は寺の中核でもある。


右藤住職たちが大切にしてきた存在を壊すのもなあ。


「なるほど、まだまだ覚悟が足らぬようだ。

 良かろう、今は我も合わせてやろう。」


そんな言葉を発し、

身体のアンバランスさを感じさせない足運びで、

私の懐近くへ瞬時に距離を詰めてきた。


はあぁぁ?

何でそんな動きが?


意表を突かれた私は再び投げを喰らい、地面へ叩きつけられた。


この寺の境内は正面などの一部を除き、石畳など舗装はされていない。


むき出しの地面で少しはダメージが軽くなる。


また、異郷の道での修行は無駄ではなかったようで、

この身はかなりの強靭さを身に着けていた。


素早く起き上がり、身を立て直すが、

これは一体?


私の頭を困惑が襲っていた。


さっきも今も私は感覚を研ぎ澄まし、

いつものように攻撃の予兆を察知しようとしていた。


しかし、このご本尊の攻撃には予兆が感じられない。


「ふむ、戸惑っているようだな、娘。

 我らとて、貴様たちとの闘いに無策なはずないだろう。

 貴様たちは力を高め、その身をあらゆる意味で強化した。」


「だが、力の本質を見失ったようだな。」


そんな言葉を告げ、すっと静かに踏み込んでくる。


その動きを目で追いながら、後ろに下がろうとする。


両脇へと逃れることも出来るが、

攻撃を読めない今、何をしてくるのか分からない。


ただ、いつも予兆を見ながら戦ってきたせいか、

私の迷いが動きに出てしまっていた。


後ろに下がる前に、腕を取られ再び投げられた。


立ち上がり、反撃しようとする私だったが、

その度に絶妙な間合いを取られ、5対10本の腕で捌かれた。


私の腕は2本のみだし、そもそも相手との体格差も大きい。


蹴りなども放って見たが、全て巧みな足裁きで躱された。


幾度目かの攻防で、

顔を狙い跳躍した私の拳を躱し、反対にその手を掴み取った像は、

その勢いそのままに私を地面へと投げ落とす。


はぁあ、


叩きつけられた背中から衝撃が走り、肺から息が漏れる。


くぞ、隙が無い!


それにこの像、投げを打ってくるが、その後に拳による追撃などがない。


今もこちらが立ち上がるのを、何かの構えを取りながら待っている。


”考えろ!

何故、予兆がないんだ。”


身を立て直し、像の攻撃に備える私。


何故、さっきから投げのみを仕掛けてくるのか?


そもそも、予兆とは何だったのか?


考えてみれば、今までの相手はその攻撃する破壊力が強力だった。


その理由は色々あるが、

共通するのは何らかの力を身体能力に上乗せしていたからだ。


その上乗せされた力は進化した魂に宿る霊力などの超常の力である。


そのため、力を動かそうとする魂の意志の先触れが、

予兆として見えるのだった。


そして、今、予兆は見えない。


これは、ひょっとすると像が肉体を持って顕現した理由になるのかも。


力あるモノは、攻撃などの動きに予兆が発生する。


強大であるほどに、それは顕著だ。


力で攻める相手を技で制する。


この像は肉体を持っている。


そして、今までの攻撃を全て躱している。

相手も私の攻撃を予兆で読み切っているのかも。


しかし、なぜここまで一方的なのに追撃しない。


うん?

待てよ、力あるモノの攻撃が強力なのは、

その攻撃に魂の力を乗せているからだ。


そして、それゆえに攻撃の予兆が見える。


この像の攻撃が徹底して投げに徹しているのは、

こちらの勢いを利用して、技の威力に乗せているからか?


もしかすると、全ての攻撃を躱しているのも、

その肉体が私達より脆いからかもしれない。


つい最近まで、戦闘などしたことが無かった私では、

技などの武術で勝負できない。


私の戦闘はあくまで魂のレベルアップによる力技なのだ。


今は相手の土俵で戦ってはいけない。

ここでも相手は格上なのだ。


前に立ちはだかるご本尊に警戒しながら、

次の行動を決めた私。


太刀は出せないが、これなら!


「 風の撃、打ち貫け! 」


” 風撃乱打 ”


技では敵わない。


だからこそ、力あるモノの戦い方に引きずり込む。


複数発生する風の塊が、

肉体を纏ったご本尊へと叩きつけられる。


その乱打を10本の腕を駆使して巧みに捌くご本尊。


しかし、私は更なる力を集中し次々に風の一撃を繰り出す。


異郷の道で修行した私は、術を継続できるだけの力を得た。


威力も数も前とは違う風の乱打、

例え、達人クラスでもそうそう捌き切れないはずだ。


このまま、押し切る!


風の一撃の幾つかがご本尊の防御をすり抜けた。


行ける!!



しかし、次の瞬間、異様な力がその場を覆った。


「 法力・異力導伝 」


金色の光が、ご本尊の周りを囲み、

叩きつける風の塊がその光に吸い込まれていく。


くぞ、何だこれは!


風の一撃は、光で防がれているわけじゃない。

威力が発揮されず、光にそのまま吸い込まれている。


まるでどこか違う場所に塊ごと飛ばされているようだ。


”我らを見くびるな、小娘。

その程度の腕で我らに手加減などと!”


「我らは人の護り手である!

 今一度、知らしめてやろう。」


”人、護りし者が願う!

仏門に依りて、この地を避ける約定を!”


” 法力・去人秘地 ”


その言葉が力を持っているのか?

寺の周りを深い霧が覆い尽くす。


「人払いは済んだ。

 本気を出すが良い、娘よ!」



くそ、こいつ、まだ全然本気じゃなかったのか!

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