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俺は人生を捧げない、私は全てを取り戻す!  作者: ふりがな
第8章 八百万が集う、歴史から秘されし島
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第109話 自らを救済する者

一通りの掃除を終えた天明さんと私は、

オリンさんがいる社殿の中へ戻って来た。


うん?

オリンさん、何を見ているんだ?


オリンさんがじっと観察する方向を見てみると、

この社殿のご本尊である仏像に辿り着く。


はあ、オリンさんはこういうものを見たことが無いのだろうか?


そう思った私だったが、仏像を見ながら何かおかしいことに気づいた。


仏像というと普通は柔和で穏やかな感じを受けるものが多い。


天国というか仏教で言う浄土に争いなどは不要である。


あらゆる意味で人の幸せを考えるなら、争いほど不要なモノはない。


時に競争力を煽ることも発展には必要という考えもあるが、

その発展を何故欲しがるか?といえば幸せの為なのだ。


幸せのため、争い、その結果が不幸を呼び寄せる。

これでは、正に本末転倒である。


今の世の中、昔を懐かしみ、昔の方が良い環境だったと

文句が出る。


” 昔の方が良かった ”


その感想は何処か空虚だと私は思う。


上手くは言えないが、未来はもっと明るいはずだ。


昔より今の方が便利であり、

昔を懐かしめるのは、今の便利さを知っているからなのだ。


まあ、それはさておき、

仏像に関してだが、今言った仏像にあるまじき闘争心を

むき出しにした荒々しい何かが、像として掘られているのだ。


その姿はまさに今にも闘いの場に出て行こうとしているかのようだ。


およそ、悟りを開くとかいうものとはかけ離れている。


そして、その像自体が何を象徴するのか分からない。


いつか、私達を襲った御使いの刺客に似て、

複数の顔と5対もの腕を持つ人型の像なのだ。


この社殿の中央にあるのだから、

このお寺のご本尊そのもののはずだ。


しかし、その像の3つの面の表情はそれぞれ怒り、悲しみ、憎しみを

露わにしているようだ。


そして、その両脇を例の金剛に似た大柄の力士像が固めている。


それぞれ、通常のお寺にあるようなものではなく、

僧侶が修行する場にあるような像である。


そんな感想を抱いていると、


”ふん、貴様らは古えにこの地を去りし神々の末裔か!”


どこからかそんな声が聞こえてくる。

その声は頭の中に語り掛けてくる。


いや、それは語るというよりは怒りに満ちた怒声だった。


”今になって戻るとはな”


”愚かなり!”


”この地に置いて行かれた者がどんな苦行を味わったか!”


”貴様らは、この地を捨てた!”


”貴様らには、この地を守る義務があったのに!”


”我らは忘れぬ!”


”飢える者の嘆きを!”


”病に苦しむ者の呻きを!”


”母を乞う子の泣き声を!”


”我らは決して!”


” 忘れぬ!! ”


そんな怨嗟と怒声を聞いた私達は次の瞬間、

強烈な存在感を身近に感じた。


仏像のほうを改めてみると、

中央とその両脇の像が動き出していた。


その姿は、今までのような像ではなく、

その身に肉を纏っていた。


「神を名乗る俗物共よ!

 この地を守り継いだのは我ら仏門の徒である。

 貴様らが見捨てた衆生を救うは我らの務めである。」


「我らは救済を願う人々の心から生まれた!

 我らは不条理から人を救う為、人が人の為に生んだ新たな摂理である。

 この御代は、我らが守り抜く。」


「我らは人の想いを受け継ぎし者。

 千を越える刻を越え衆生の想いが形作りし願い。

 我らこそは、人の護り手。」


「今更、貴様らの出番はない!

 異を唱えるなら、我ら仏門の徒が相手になろう!」


それは、完全に肉の身体をもって現れた。


今までのような霊の姿ではないようだ。


「ふむ、これは珍しいことじゃ。

 人の無意識が集まり、管理者そのものを作り出すとはな。

 なるほどのう。」


オリンさんの興味深げな声が響く。


なんで、こんなことに!


そんな疑問には天明さんが答えてくれた。


「恐らく、

 さっきの異常現象の影響と右藤住職らがいないからでしょうねぇ。

 目の前の像だったものは、七果さんの金剛と同じく、

 一種の精霊ですけど、恐らくこういう場所ですから、

 人の必死な想いを受け続けたんでしょう。」


「このお寺は平安時代より前からあるそうです。

 現代まで飢饉も戦も疫病も数多く経験したでしょう。

 その想いが怒りや悲しみ、憎悪に変わってしまった。」


「しかし、仏門の徒とは何か秘密がありそうですねぇ。

 他の仏教とは違うもののようです。」


大きな身体を持つ3体の像?(今はそう表現するしかない)は、

その歩みを慎重に進めながらこちらへと向かってくる。


像の周りの装飾を壊さないよう、気を使っているようだ。


元が像にしては、その動きは妙に人間臭い。


私達の前に立ちはだかる彼ら。


両脇の2体は筋骨隆々の大男。


慎重は2メートルほどと金剛より小さいが

何かの武術を習得していそうな感じだ。


金剛は力任せのところがあったが、

目の前の大男はその鍛えられた身体で何かの構えを取っている。


中央の3メートルはあるご本尊は武器こそ持っていないが、

その姿が召使いの刺客を思わせる。


正直あの時は、ロキのガルムがいなかったら危なかった。


今もオリンさんがいるが、

それだとおそらく、このお寺の社殿を更地に変えることになる。


刺客の時も大きな被害があったのだ。

目の前のご本尊があれと同じだと非常にまずい。


被害を抑えるには、天明さんのあの大きな術が良い。

あれって、単体にだけダメージがあるようだし。


しかし、あっちもこっちも3対3の状態である。


とりあえず、境内の方へ出て戦いたい。


そんな私の想いを知ってか知らずか、

中央のご本尊が予備動作なしに距離を詰め、私を外に投げ飛ばした。


な、、


コンマ数秒、天明さんやオリンさんにも大男が攻撃していたが、

彼女らは自分で外へと逃れたようだ。


空中で体勢を立て直し、境内に着地した私。


く、3人で連携したかったが分断されてしまった。


そして、私の相手がこのご本尊か!


私はまだ怪我治りきってないのだが、、


いつもお読みいただき、本当に有難うございます。唐突な戦闘回になりますが、一応伏線です。仏門の力は仏教という宗教とは違います。もっと武力にその意味を置いています。

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