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俺は人生を捧げない、私は全てを取り戻す!  作者: ふりがな
第7章 行き交う者、理想郷を繋げる道標
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第102話 報告と日常

東京から異郷の道を辿って研究所に帰って来た私達。


負傷していた私だが、見た目的にはそんな様子はもうない。


あの暴れる魔獣を倒したため、この地への貢献度が増し、

この身体の持つ力への制限が薄くなった。


そのお蔭か、随分と早く回復してきていた。


今、私は痛みよりも身体の軽さに驚いている状態だ。


これなら同様の事件があっても、

今までより効率良く対処できるかもしれない。


ただ、急激な成長や制限緩和から、かなりの疲労も感じている。


天明さんが言うには、それはおかしなことではないそうだ。


生活に適応するための最適化を無意識に私の魂が望んでいるらしい。


なので、一旦眠る事で力の使い方など、

成長に伴う違いを埋められるそうだ。


今まで使ってきた技なども、魂に刻まれた記憶があるから、

使えているらしい。


そういうことで、帰還したその日は社員食堂で晩御飯を食べ、

寮でそのまま眠りについた。


天明さんとアテナさんは、京都の街に焼き鳥を食べに出かけて行った。


うむ、あんな事があっても変わらぬ食欲に脱帽だ。


翌日、割り当てられた自室で身支度を整えた私は、

朝食をとるため、社員食堂に向かった。


朝6時30分、社員食堂には人がいない。


うん、料理する職員さんはいるが、

肝心の食事する研究員の人達がいないのだ。


まだ早い?

そんなこともないだろう。


調理担当の職員さんと少し会話すると、

研究員さんが来るのは午前10時ごろだそうだ。


遅くまで研究に没頭して寝過ごしたとかじゃなく、

現時点もまだ徹夜で研究に没頭しているらしい。


そういうのがひと段落するのが朝10時ごろなのだそうだ。


なぜ10時なのか?

簡単な話だが、その時刻に主要な会議があるのだ。


その為、主任などの責任者が呼ばれ、

その他のスタッフは一時休憩となるらしい。


まあ会議には、外部の会社や研究施設の人も入ってくるので、

時間は世間一般的な時間に開かれる。


研究施設が皆こんな過酷な仕事場なのか?

それは分からない。


ただ、ここの研究スタッフは皆並々ならぬ熱意をもって、

仕事に当たっている、


いや、実はそれは簡単なお話なのだ。


ここの研究って、歴史関連の文献調査が主なのだが、

その歴史には異郷からの介入なども含まれる。

一般の歴史では由来の分からない物品も持ち込まれたりする。


その中には金剛の召喚に使っていた錫杖や巻物みたいなものもある。

あれは特殊だったので、その方面の人しか持っていないものだったが。


まあ、一見魔法としか思えないファンタジックな物品が、

この研究所では扱われている。


一般の社会では触れることはまずないだろう不思議な物品たち。


そして、使い方とか作り手とかの由来が書かれた文献等。


通常の歴史にすらファンが魅了されているのだ。


ここに持ち込まれる数々のファンタジーに、

浪漫を感じないものはいないだろう。


異世界転生などという一発勝負の特賞に人生を賭けなくても、

この研究所にいれば、人生チート級の体験ができるのだ。


まあ実用レベルに達しているモノは少ないらしいが。


さて、天明さんとアテナさんが食堂に来たので、

朝の挨拶を交わし、

今日の第一の予定である所長への報告について相談する。


それほど困ったことはない。


例の霊的災害対応室からは何の苦情も言われなかった。

ただ、協力要請が今後あるかもしれないことは伝えなければ。


それから、所長のスケジュールに合わせ、

一時的に天明さんの研究ラボに待機する私達。


書棚には古い文献とそれに偽装された漫画が混在して置かれている。


相変わらず分かりにくい。


結局漫画を読み始めた私はある疑問を抱き、手をわきわきさせた。


ふむ、私は一応太刀を持つ剣士と呼べる。

だが、術も使える。

まあ風に関連するものだが。


天明さんとアテナさんに漫画の技とか使えるようになるのか?

ちょっと期待して聞いて見た


「ううむ、何か期待しているようだが、

 使いたい技とかの原理を説明できるかが問題だぞ。

 例えば、太刀を振って斬撃を飛ばすくらいはできるかもしれない。

 正直、何処までその効果が及ぶのか分からないから、

 実験は控えないといけないが。

 どうしても使いたければ、異郷の道へ行って練習することだな。」


そうアテナさんは言って、天明さんの方を見る。


「ふぅふふふ、漫画の術とか使いたい!

 その熱意は分かりますよぉ!」


と何か今にも吹き出しそうににやにやしながら、


「でも、それは子供の夢に過ぎません!!」


と断言してきた。


「実は高等な術になるほど、応用が効きません。

 単純に炎や風などを操る術はそれなりにあるんですが、

 高度な術と呼ばれるものは、

 もはや想像できないような現象を引き起こすものがあるんです。

 術を完全に理解してないと改造とか不可能です。

 そして、高位の術に原理や取扱の説明書は存在しません。」


「一応、わたしは術を専門に使いますが、

 そんなに沢山のレパートリーがあるわけではないんですよ。

 正直、多種多様な術を操るより、

 何かに特化して使いやすい術を素早く使えるようにする。

 そのほうがよほど効果的です。」


「そして、アテナが言う通り、現象を細かく理解できないものを、

 術として再現することは不可能です。

 よって、今の漫画にあるような複雑怪奇なものを

 術として応用することは無理ですね。

 無理やり発動しても、

 全く異なる摩訶不思議な現象が起こる可能性が高いです。」


原理さえ解明できれば、術として使えるの?


私がまだ諦められずにいると、


「七果さんも、わたしも、アテナも、

 使っている技や術に偏りがあるでしょう。

 風だったり、稲妻だったり。

 私は鏡を利用した光関係の術ですが、

 皆に、特性があるんですよぉ。」


「七果さんが火を使えるようになるため練習しても、

 本来の特性と違うので身にならない可能性が高いです。」


そう真面目な顔で天明さんが答えてきた。


ううむ、難しいらしいのは良く分かった。


その後、小野寺所長から呼び出しがあり、

報告のため所長室に向かった。


所長室は相変わらず文献に埋もれていたのだが、

その中心に留守番役をしてたオリンさんがいた。


あの擬態した子犬もいる。


所長とオリンさんは随分意気投合したらしい。


その周りに多くの文献が広げられ、所長とオリンさんの会話を聞いて、

一生懸命レポートを作成する研究員さんがいた。


その姿に見覚えがあった。


加賀崎さんだ。


「いやあ、天明女史。

 おかえり。」


「そちらの事情はどうだったかね。」


と小野寺所長が質問してくる。


「はあ、何もお咎めはなかったですよぉ。

 ただちょっと目を付けられたみたいですねぇ。」


答える天明さん。


それを他所に私は加賀崎さんに、


「加賀崎さん戻ってたんですか?」


と聞いて見る。


加賀崎さんがここにいるということは、

あそこで猿田彦さんに京都の出口を教えてもらって正解だった。


もうチームが帰ったのなら、あそこに車などの移動手段は残っていない。


すると、


「ええ、七果さんに届けてもらったノートPCの返却と、

 あそこにあった文献を画像データとして収集して

 一時的に戻って来たんですよ。

 チーム自体はまだ残って研究データの取り纏め中ですが。」


と答えてきた。


そんな中、小野寺所長が、


「ううむ、オリン女史は大変優秀だよ!

 何しろ、彼女は文献の文字を読めるのだ。

 複数に渡る今だ解読されていない文字で書かれているのだがね。」


と興奮気味に話してくる。


あれ、オリンさん達はこういう文明に触れてきたのだろうか?


黒髪の美女に問いかけると、


「ふふ、我らは異郷を渡るモノじゃ。

 逗留する場の言葉や文字を覚えずとも、その世が便宜を図ってくれる。

 それに今我らは会話しておるじゃろう?」


はあ、その大きな存在に世界そのものが接待してくれる。

つまり、人社会の現実とあまり違いはないということらしい。




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