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俺は人生を捧げない、私は全てを取り戻す!  作者: ふりがな
第7章 行き交う者、理想郷を繋げる道標
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第98話 暴れる熊?

しばらく話し込んでいた猿田彦さん達だったが、

ふと私の方を向いて、更にアテナさんと天明さんにも目を向ける。


「ふうむ、どうじゃろうか?」


隣に並ぶ獣な人に聞く猿田彦さん。


「ううん?

 アレかぁ?」


そう答えながら考え込む獣な人。


そんな内容の分からない会話に、少し戸惑う私。


そして、猿田彦さんがある提案をしてくる。


「今、この辺りは物騒でな。

 話しておった神都のこともあるが、

 オーガがうろついておるのじゃ。」


「そのせいで付近がピリピリしておってのう。

 そんな中、ちょうどこの辺りに入ってきた若造が暴れておるのよ。」


そう語る猿田彦さんの後に続いて、獣の人が、


「ふう、そのモノの対処をしてもらえんか?

 あの若造がオーガを刺激して、

 こちらに向かって来られても面倒じゃからな。」


「早めにこの地から退散させたいのじゃ。」


と詳細を語ってくる


更に猿田彦さんが、


「嬢ちゃんは前に会った頃より腕が上がったようじゃしな。

 腕試しに丁度良いと思うのじゃが。」


「それに、いざとなったらそっちのお嬢さん方の助けもあるじゃろう。」


「ただし、オーガに出くわしたら、さっさと逃げることじゃ。」


どうやら、私にファンタジーのような討伐依頼が来たらしい。


私は、その対処する相手と、

オーガという存在の事を詳しく聞くことにした。


これには獣の人が答えてくれた。


「まずは何と言ってもオーガじゃな。

 そんな名で呼ばれるが、特定の種族を指しているわけではない。

 この異郷の道で闘争本能を刺激されて暴走し、

 ひたすらに暴れまわるモノの事をそう呼ぶんじゃ。」


「まあ分かるじゃろうが、

 この地で暴れても大概のものが格上に狩られる運命じゃ。

 じゃが、稀に著しい成長を遂げて手に負えないモノもいるんじゃ。

 普通は理性を失くすと弱くなるものなんじゃがな。

 オーガと呼ばれるモノはその本能と力によって、脅威の力を発揮する。

 大概は獣の進化体じゃ。

 人種族は暴走しても力の枯渇で倒れるからのう。」


話の続きを猿田彦さんが受け継ぎ、


「嬢ちゃんらでは、オーガの相手は厳しいじゃろう。

 出会ったら逃げるのじゃな。」


「それで今回の相手じゃが、

 これはまあお前さん達の世界の熊のようなものじゃ。

 まあちょっぴり違いはあるがな。」


「儂らが行ってもいいのじゃが、

 オーガを刺激したくはないのでな。

 どうじゃ、頼まれてくれるか?」


そう言ってくる彼らに、

天明さんとアテナさんは判断を私に任せると言ってくる。


ゴブリン戦で少しは力が付いてきたと思っている私。


いつもより気が大きくはなっているが、

人生の大先輩な猿田彦さん達が勧めてくるのだ。


ここはいつかのお礼を込めて引き受けよう!


「そのお話、お引き受けします。

 それでその熊がいる場所は分かりますか?」


その言葉にニコリと笑って、


「このカラスに案内させよう。

 着いて行くといいぞ。」


と猿田彦さんがいつの間にか上空を旋回しているカラスを指し示す。


「それじゃ、行ってきます!」


と私は先頭を切ってカラスの方へ着いて行く。


天明さんとアテナさんも後ろに並んで歩き出す。


すると、獣の人が、


「気ぃつけてのう。」


と声援?を送ってくれた。


カラスに着いて行くこと、20分ほど。


対象らしい獣を発見した。


うむ、シルエットと攻撃手段を見れば、熊に見えるかもしれない。


その相手は、今ゴブリンの大部隊を単独で蹴散らしていた。


数十を超える矢の嵐と臆せず突進する50体近いゴブリン戦士たち。

百に届くであろうゴブリン兵団は、1体の魔獣に蹂躙されていた。


今まで私達が相手にしていたのはせいぜい10体前後のゴブリン達だ。


そして、今目の前にいるゴブリン達は何かの大型兵器も持っていた。


魔獣に当たって、跳ね返っているところを観察すると、

例の矢尻とは違う鋭利な何かを高速で発射する武器のようだ。


発射する度に眩い閃光を放っている。


要するに地球で言う大砲のようなものなのだろうが、

魔獣に効いた風はない。


ついでに、大型なその兵器は俊敏な魔獣の動きを捉えきれず、

発射回数自体が少ない感じだ。


更に今度は件の魔獣を観察してみる私。


体長は2メートル強くらいだ。

まあ熊として考えれば大型だろう。


しかし、根本的に熊とは異なる部分が多く見られる。


例えば、その魔獣は熊と違って

骨格部分が張り出し、鎧のようにその身体を覆っている。


うむ、骨の鎧を纏った熊という感じだ。

まあ、あばらや頭蓋などの骨が身を護るために外に出ている感じだ。


更に、その身体を血管なのか何なのか、赤く光る何かが筋状に光っている。

血液が紅く輝き、血管が浮き彫りになっているようだ。


そして、そのゴツイ頭には凶悪な3つの目が鋭く見開かれている。


攻撃手段は今もゴブリン達を吹き飛ばしている、

両腕による引っ掻きや大きな口での噛みつきが主だった。


引っ掻きには鋭い爪と共に紅く光る火炎が付き纏い、

口を開いて噛みつきかと思いきや、

火炎弾のようなモノが放たれたりもしている。


一通り観察を完了した私は天明さんとアテナさんの方を向き、


「あれは熊じゃない!!」と小声で強く同意を求めた。

今までだって色々出会ってきたが、ここは異郷の道である。


ゴブリン達だって、前の私は圧倒されたのだ。

ここで活動できるだけでも実力は破格と言える。


あの熊みたいな魔獣はガルムクラスの強敵かもしれない。

ガルムも地球の現実世界ではある程度の制限を受けていたらしい。


そんな制限もこの道ではない。


ゴブリン軍団が勝ってくれるよう祈ったが、

大型砲が破壊され、戦士たちを俊敏に刈り取るその魔獣には、

この地で暴れるだけの実力があった。


引き受けた以上は戦わなければならない。

そう例え死んでも地球の日本に戻されるだけなのだ。


だが、そうは言ってもそんな覚悟を持てるわけがない。

頭の理解と現状突き付けられているものが違いすぎるのだ。


ゴブリン達が負けたら、自分の番だ。


少しでも勝つ手段を見つけなくては。


いつもの精神統一をしてみる。

というか、あの熊?時々目で追いきれない速さで動くときがある。


もはや、剣豪の語る心眼とやらを開くしかない!


感覚を研ぎ澄まし、周囲の状況を俯瞰する。


目に頼らず、まずは肌で感じ取るのだ。


すると、どういうわけか?

あの熊を中心に、風の渦が荒れ狂っている。


私がゴブリン相手に使い出した場の力を、

あの魔獣は本能的に、そして最大限利用しているらしい。


この場に感じる風は様々な世界の力が入り混じっている。

風というより力そのものだ。


そんなものが荒れ狂っていては、

さすがのゴブリンの武装も変質を余儀なくされるだろう。


結果的に攻撃自体が無効化されているらしい。


熊の魔獣はとどめとばかりに、大きく口を開き、

その3つの目から攻撃の予兆たる力が放たれる。


視線だけでも攻撃になりそうだが、

その口から放たれた火炎の球は、

後ろに控えていたゴブリンの弓隊を爆散させた。


これは厄介だ!


そして、私達の番がやって来た。

出来れば戦いたくはない。

が、そんなことは言っていられない。


依頼は依頼、魂の身体を持つ私たちのした約束はその実、重いものだ。


どうせ戦うのなら、ゴブリン達が頑張って疲弊させてくれた今しかない。


疲弊しているのかが分からないのだが。


今だ荒ぶる熊っぽい魔獣は遂にこちらを見つけたようだ。


私とアテナさんが前に出て、天明さんはいつもの瞑想に入る。


この場は術師にとって有利であり、力の行使も瞬時のはずだが、

現状、前に立ちはだかる魔獣がこの場の主導権を握っている。


場の力を掌握している魔獣相手では、

いつも以上に集中しなければ術の発動は見込めないらしい。


襲ってくる熊というか、もう魔獣でいいなコレは!


接敵まで50メートルほど。

異郷の道としては大きな広場だ。


魔獣討伐の為、ゴブリン達が何かしたのかもしれない。


天明さんを巻き込まないため、疾走する私とアテナさん。


すでに武装は解き放ってある。


どうか無謀な戦いになりませんように!!


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