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俺は人生を捧げない、私は全てを取り戻す!  作者: ふりがな
第7章 行き交う者、理想郷を繋げる道標
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第97話 神都に集まる者たち

ゴブリン達の襲撃に対応しながら進む私達。


私は初めてゴブリンの一団と戦った時より、

自身が明らかに強くなった気がしていた。


最初はアテナさんや天明さんの手を借りていた私だったが、

今は私一人でも対処可能になっている。


ゴブリン達は連携が良く、個々の力を合わせて襲ってくる。


だが、戦い続けてみるとやはり武装の威力に違いがある。


彼らの武器は、一定以上の威力があるし、

地球科学では生み出せない代物なのだろう。


初めは、彼らの手に持つ短剣や放ってくる矢などに、

過度に反応していた私。


しかし、アテナさんや天明さんを見て、

考え直すことにした。


うむ、前衛ですらない天明さんですら、

その短剣や矢を躱したり、いなしたりしているのだ。


これは?

と思った私は精神統一して場の流れを感じてみることにした。


そんな私を見て、二人の同僚はゴブリンが、

こちらに攻撃してこないように注意を引いてくれた。


精神を集中し、その身の感覚を研ぎ澄ます。


アテナさんや天明さんは、ゴブリン達を倒すのではなく、

牽制程度の攻撃で相手を翻弄している。


__何かの流れを感じる。


人の五感では感じられない風の動き。


この場は異郷の道、空気の流れなどは基本的にないのに、

風の流れを感じる。


今までの戦いでも剣筋の先読みが出来た。


それは力ある者が、行動する際に先触れのように、

意思の力が振りまかれるから。


力ある者はその身体自体が魂である。

そのため、全ての動きに強い意思が必要になる。


魂の身体は脳からの電気信号では動かない。


時に荒ぶり、時に研ぎ澄まされ、

慣れない者は感情の止めどない発露により突き動かされる。


人の科学でも脳の信号を正確に読み取れれば、

どう動くのかは先読みできる。


達人が相手の動きを見て、次の行動を予測できるとか言うが、

それも予備動作を精密に観察しているから。


前にも語ったが、この予備動作にあたるのが、

意思の発露なのだ。


うん、地球の現実では攻撃時の予備動作くらいしか読めなかったが、

この場所には力が満ちている。


相応の力ある者の意思が場に満ちる力に反応し、

ある種の流れとなって私にも感じられるのだ。


そうしてみると、

ゴブリン達の動きも俯瞰して感じられるようになった。


目に映していなくとも、例え背後や少し離れていたとしても、

何が行われようとしているのかが感じられる。


また、この場の力は術師として半端な私の意思にも反応した。


手を振ると、その流れが変化するのだ。


今も牽制し続けてくれている同僚二人に声を掛け、

前に出てみる私。


進む私に10本以上の矢が降り注ぐ。


今の私は、それを簡単に察知できた。

そして、力を風に見立て腕を振るう、矢を暴風で弾くイメージで。


すると、場の力は私の意図したように、

風の流れを巻き起こし、全ての矢を吹き飛ばした。


直後に突っ込んでくるゴブリンの戦士たち。

その動きも事前に察知できた。


それに対し、私は風を鎧のように纏うよう意思の力を働かせた。


すると、襲ってくるゴブリン戦士の短剣が私に届く直前で弾かれた。


それからは一方的な戦いになった。


ううむ、多分ゴブリンの武器には、

破格のテクノロジーが使われているのだろう。


だが、それはやはり材質とかの部分なのではないだろうか?


多分だが、この場に満ちる力を利用する感じのモノではないのだろう。


私が場の力に意思を反映させているのに対し、

彼らはあくまでその武装による攻防を優先している。


彼らの鎧も特殊なものらしいが、

実質、この場所でも効果が安定しているといったもののようだ。


要するに現実世界のただの刃物であり、

超常の力を持つ魔剣や神剣の類ではないのだ。


この場に進出するだけの進化を経たが、

ゴブリン達の常識では、まだまだ魔法の類は理解されていないらしい。


まあ当たり前か。

地球でも魔法なんて信じる者はいない。


私も以前なら信じなかっただろう。

アニメ、ラノベや御伽と現実は違うのだ!


そんな考えが覆ったのはこんな状況になったから。


しかし、ゴブリン達にとって、ここは未知なる領域ではあるけど、

それは異世界を渡る手段なのだろう。


地球より技術が遥かに進んでいる代わりに、

魔法などの知識は地球より遥かに衰退している。


それはそうだろう、だって今まで技術こそが真理だったのだ。

昔々に置いて行ったファンタジーが今更必要とは思っていないだろう。


魔法や術は想像力と創造力が必要だ。

技術が進んだ彼らにとって、忘れられて久しいに違いない。


彼らが色々なところで敗れている理由が分かった気がした。


「さて、そろそろ目的地だろう。

 七果も慣れてきたみたいだし、頃合いかもしれないな。」


アテナさんがそんなことを言い出した。


この異郷の道は基本的に辺りを霧が包み込み、先を見通せない。


ゴブリンとの戦闘がある場所は、

そんな中でも少し開けた場所で発生する。


どうも違う世界を移動しているときは霧が濃く、

世界間の移動が完了した場所に開けた広場がある感じらしい。


また異郷へと渡った経験のあるアテナさんが言うには、

故郷との法則があまりに違い、身体である魂が変化についていけない場合は、

道を進めなくなるらしい。


その場合は濃い霧が道を覆い、堂々巡りを繰り返すようになるそうだ。


反対に高度に成長して適応できる者は、この霧が薄く感じられるらしい。

まあ、出身世界の近くなら初めて道に入ってもある程度の視界はあるそうだ。


今、私の前には木々のようなものが生い茂った森を進む道がある。


アテナさんに言を信じれば、ここは目的地近くらしい。

つまり、以前研究員の人が迷い込んだ場所の近くだ。


はあ、前より見やすくなった感じがする?


そして、何か一羽のカラスがこちらに向かって飛んできた。


こちらがその姿を見つけると カアァァァ と鳴いて、

やって来た方向へと飛んでいく。


そして、少し進んだ先で上空を旋回するカラスは、

再び鳴き声を上げる。


ある種の既視感を覚え、その方向へと私達は進んだ。


しばらく進むと、


開けた場所に古びた庵が建っていた。


そして、その前には天狗のような長い鼻をした赤ら顔の人物がいた。

以前出会った猿田彦さんだろう。


「おう、いつかの嬢ちゃんか。

 そっちのお嬢さんにも覚えがあるのう。」


「こんにちはです。

 この前はお世話になりました。」


とお互い挨拶を交わす。


「いつかは案内していただき感謝している。

 あの時は世話になったな。」


アテナさんも知り合いなのだろうか?

そんな疑問が顔に出ていたのか、彼女は私の疑問に答えてくれる。


「ううむ、私達一族が地球に帰ってくるのは、

 本当に久しぶりだったんだ。

 この道は覚えのある場所に短時間で辿り着ける性質があるのだが、

 私達も色々あってな、皆、複雑な道へと迷い込んでしまった。

 色々な勘違いのせいで、迷いに迷っていた私達が世話になったのが、

 この御仁なのだ。」


その言葉を聞きながら、猿田彦さんが話しかけてくる。


「ふむ、本当に久方ぶりじゃな。」


その言葉と共に、彼の向こうに人影があるのを感知する。


その姿は奇妙なもので、大きな頭はフクロウに似ており、

その身体はオランウータンのような姿の存在だ。


多分、獣な存在のようだが、猿田彦さんが一緒にいるのだから、

危険はないのだろう。


私達が挨拶をすると、その存在も挨拶を返してきた。


「おお、丁寧な挨拶有難う。

 儂は人種族と違って、名を持たぬからな。

 好きに呼んでくれ。」


そんな言葉に、


「私達お邪魔でしたか?」


と私は質問する。


すると、その存在は、


「ううむ、そうでもないのじゃ。

 儂らは今、起こっている神都について話していたのじゃ。」


そう答えてくる。


そして、猿田彦さんも、


「ううむ、ようやく腰を上げたらしい例の神の王が、

 戦士を集めていてのう。

 どうなるかを見物しようと話していたのじゃ。

 あれはどうみてもあの王の失態だからなあ。」


さらに、獣な人も、


「今、塔には異郷で名立たる化生が巣くっている。

 余程居心地がいいらしい。

 まあ、とんでもない労力がかかったらしいからのう。

 しかし、此度の征伐、難しかろうな。

 なにせ、威幻のハウナもいるそうじゃからなあ。」


と続ける。


「ええと、そのハウナさんってどういう人なんですか?」


と私が聞くと、


「知らんのかい?

 威幻のハウナというのは、

 この辺りのモノでは知らない者はいない大妖じゃ。

 元はもっと遠い異郷にいたらしいが、この地まで荒しに来てのう。

 そこら中で暴れておったのじゃが、

 例の塔に居着いてからはもっぱら他の塔の主と

 小競り合いを起こしておるそうじゃ。

 まあそのお蔭で辺りの被害はなくなったんじゃがな。」


と獣な人が答えてくれる。


というか、この獣な人をどう呼ぶべきか?

今後はこういう事もあるから考え直さないと。


猿田彦さんが、少し悩ましい顔をして、


「ううむ、やっと静かになったのだがのう。

 あの王とやらは、大丈夫なのかあ?」


はあっと二人溜め言をついている。


ロキのところは大変なイベントの中のようだ。

確かに死なないらしいが、そんな人外魔境なところに挑戦なのか。


ううむ、こっちはこっちで大変なんだなあ。

他人事のように呆ける私だった。


まだこの時点では、他人事なだけだったなのだが。

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