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名前のない関係  作者:
8/27

同じ場所、違う距離

会えるようになった。


前みたいに、


じゃない。


でも——


止まってもない。


少しずつ、


戻ってる。


いや、


違う。


前とは違う形で、


進んでる。


昼。


珍しく、


明るい時間。


「今から」


ハル。


短い。


それだけ。


少し迷う。


夜じゃない。


人も多い。


視線も増える。


意味も強くなる。


でも——


「いいよ」


送る。


既読。


「場所送る」


すぐ来る。


画面を見る。


少しだけ、


息を吐く。


(まぁいいか)


外。


昼。


人。


多い。


夜より、


はっきり見える。


自分も、


相手も。


歩く。


少しだけ、


緊張してる。


理由は分かる。


隠しきれないから。


昼は。


場所。


カフェ。


ガラス張り。


中が見える。


(ここ?)


一瞬思う。


でも、


入る。


いる。


すぐ分かる。


帽子。


マスク。


でも、


意味が薄い。


視線が集まってる。


完全には隠れてない。


(やっぱり)


近づく。


目が合う。


「……どうも」


「おう」


座る。


向かい。


距離は近い。


でも——


周りが違う。


視線。


小さな声。


スマホ。


向けられてる気配。


空気が、


少しだけ張ってる。


「昼、珍しいね」


紗月。


ハルは少し肩をすくめる。


「たまにはな」


軽い。


でも、


周りは軽くない。


少し沈黙。


その間にも、


視線が動く。


分かる。


見られてる。


(これか)


夜と違う。


逃げ場が少ない。


隠れきれない。


現実感が強い。


「なぁ」


ハル。


小さく。


「なに」


「やっぱやめるか」


一瞬止まる。


周りを見る。


視線。


スマホ。


全部。


理解する。


でも——


首を振る。


「いいよ」


短く言う。


「もう来たし」


少しだけ笑う。


ハルが見る。


一瞬。


そのあと、


小さく息を吐く。


「そっか」


それだけ。


そのまま、


時間が流れる。


話す。


内容は、


いつもと同じ。


どうでもいいこと。


でも——


状況は違う。


隣の席。


さっきから、


何度も見てくる。


スマホ。


動いてる。


多分、


撮られてる。


分かる。


でも、


やめない。


ハルも、


何も言わない。


気づいてるのに。


そのまま。


「これさ」


紗月。


白いTシャツの袖を少し引く。


「まだ着てるんだな」


ハル。


少しだけ笑う。


「まぁ」


「似合ってる」


短い。


それだけ。


でも、


周りの視線が、


少しだけ変わる。


分かる。


意味が乗る。


ただの言葉じゃなくなる。


(めんどくさ)


でも、


嫌じゃない。


むしろ——


少しだけ、


守られてる気もする。


不思議な感覚。


店を出る。


外。


空気が軽い。


さっきより、


楽。


並んで歩く。


少し沈黙。


「さっきの」


ハル。


「うん」


「大丈夫か」


短い。


でも、


ちゃんと聞いてる。


少しだけ考える。


でも、


答えはすぐ出る。


「まぁ」


それだけ。


嘘じゃない。


全部が嫌なわけじゃない。


でも、


楽でもない。


その中間。


「そっか」


ハル。


それ以上は聞かない。


ちょうどいい。


踏み込まない距離。


でも、


離れない距離。


分かってる。


お互いに。


駅。


人が増える。


流れが強くなる。


ここで、


終わる。


「じゃ」


紗月。


「おう」


ハル。


それだけ。


でも、


少しだけ違う。


言葉の重さが、


前よりある。


離れる。


歩く。


背中に、


視線を感じる。


振り返らない。


振り返らなくても、


分かる。


さっきまでの時間が、


ちゃんと残ってる。


家。


ドアを閉める。


静か。


深く息を吐く。


(疲れた)


正直に思う。


でも——


嫌じゃない。


スマホが鳴る。


「さっきの」


ハル。


続く。


「悪かった」


短い。


それだけ。


少しだけ、


考える。


でも、


すぐ打つ。


「別に」


一拍。


続ける。


「たまにはいい」


送る。


既読。


少しして、


「だな」


それだけ。


画面を閉じる。


ベッドに座る。


白いTシャツを見る。


同じ。


何も変わってない。


でも——


着てる場所で、


意味が変わる。


隣にいる人で、


価値が変わる。


同じ場所にいても、


同じ距離じゃない。


それでも——


一緒にいることは、


できる。


完全には、


重ならなくても。


少しだけズレたままでも。


そのままで、


成立してる。


目を閉じる。


少しだけ、


疲れが抜ける。


(まぁいいか)


そう思う。


全部が楽じゃなくても、


全部が嫌じゃないなら。


それでいい。


同じ場所にいても、距離は同じじゃなかった。


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