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名前のない関係  作者:
26/27

逃げない側

朝。


うるさい。


目が覚める前から分かる。



スマホ。


鳴りっぱなし。



でも今日は、開く前に分かる。



昨日の“続き”。



開く。



通知。


桁がおかしい。



トレンド。



“ハル 発言”


“関係 否定せず”


“相手 誰”



(そりゃそうなるよね)



スクロール。



動画。


切り抜き。



ハルのコメント。



「プライベートなんで」


「関係は、関係です」



(雑すぎ)



でも——


それが一番効いてる。



コメント。



「誰だよ」

「なんでこいつ」

「もっといるだろ」

「一般人だろ?」



“なんでこいつ”。



その言葉だけ、


少しだけ残る。



(まぁ、そうだよね)



スマホを置く。



天井を見る。



静かじゃないのに、


頭の中は妙に冷えてる。



(どうする)



昨日、


ハルは動いた。



“守る”って言って。



じゃあ自分は?



このまま、


隠れる?



黙る?



(それ、違う気がする)



ゆっくり起きる。



クローゼット。



服。



迷う。



でもすぐ決まる。



白いTシャツ。



あの日のやつ。



手に取る。



(これでいいか)



理由はない。



でも、


これ以外は違う。



外。



昼。



人。



多い。



そして——



視線。



昨日より明確。



止まる。



「……あの人じゃない?」

「マジで?」



(バレてる)



でも足は止まらない。



歩く。



スマホを取り出す。



開く。



カメラ。



自分を映す。



少しだけ歪む。



でも、そのまま。



録画。



数秒、何も言わない。



ただ見る。



それだけで、


“意味”が乗る。



コメントが流れ始める。



「本人?」

「え?」

「やば」



紗月は小さく息を吐く。



そして言う。



「なんでこいつ、って言われてる人です」



コメントが一気に増える。



「きた」

「本人じゃん」

「うわ」



紗月は少しだけ笑う。



「まぁ、分かる」



一拍。



「自分でも思うし」



正直。



そのまま続ける。



「普通だし」



白いTシャツを少し引く。



「これも、ただの安いやつだし」



コメント。



「それな」

「なんでハルなん?」

「理解不能」



紗月は画面を見る。



ちゃんと全部読む。



逃げない。



そして言う。



「でもさ」



少しだけ間。



「選ばれてないと思ってたのは、自分も同じ」



一瞬、コメントが止まる。



空気が変わる。



「でも」



「切られなかった」



その一言で、


流れが変わる。



コメント。



「は?」

「どういう意味」

「強」



紗月は少しだけ笑う。



「だから、別にいいかなって思ってる」



静かに言う。



「叩かれても」



一拍。



「この距離、嫌じゃないし」



コメントが爆発する。



「なにそれ」

「強すぎ」

「メンタルえぐ」



でも紗月は止まらない。



「あと」



少しだけ考える。



でも言う。



「ハル、思ってるより普通だよ」



一瞬、ざわつく。



「は???」

「いやいや」

「それはない」



紗月は少しだけ笑う。



「腹減ったしか言わないし」



コメント。



「草」

「それは草」

「解像度高い」



空気が少しだけ変わる。



“叩き”から、“興味”へ。



紗月はそのまま言う。



「だからまぁ」



一拍。



「勝手に想像されるよりはマシかなって」



画面を見る。



コメント。



もう“敵”だけじゃない。



混ざってる。



「なんか好き」

「普通にいい」

「逆にリアル」



紗月は少しだけ息を吐く。



(これでいい)



最後に一言。



「以上、なんでこいつでした」



配信を切る。



静か。



でも、


世界は動いてる。



スマホが震える。



ハル。



「見た」



短い。



紗月は少しだけ笑う。



「どうだった」



既読。



一瞬。



「バカ」



(出た)



でも続く。



「最高」



その一言で、


全部報われる。



紗月はベッドに倒れる。



天井を見る。



うるさい世界。



でも、


少しだけ楽。



(逃げなかった)



それだけで十分。



スマホがもう一度鳴る。



ハル。



「次から気をつけろ」



一拍。



「俺が止まらなくなる」



紗月は少しだけ目を細める。



(またそれ)



でも、


嫌じゃない。



むしろ——



少しだけ、


期待してる。



逃げなかったことで、関係は“見られるもの”に変わった。

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