一歩
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会わない時間が、
少しだけ増えた。
連絡はある。
でも、
前より少しだけ、
間がある。
夜。
スマホ。
「今日」
ハル。
短い。
「なに」
返す。
少し間。
「近くいる」
また、それ。
心臓が、
少しだけ速くなる。
(最近、多いな)
前は、
避けてた。
でも今は——
完全には避けてない。
「どこ」
送る。
既読。
すぐ来る。
場所。
知ってる。
前に炎上したあたり。
少しだけ、
息を止める。
(また?)
頭に浮かぶのは、
あの時のコメント。
「なんでこいつが」
「隣にいんなよ」
「釣り合ってない」
少しだけ、
指が止まる。
でも——
それでも。
「行く」
送る。
既読。
「おう」
それだけ。
外。
夜。
少し冷たい空気。
歩く。
前より、
少しゆっくり。
でも、
止まらない。
場所。
やっぱり、
すぐ分かる。
視線が寄ってる。
小さなざわつき。
帽子。
マスク。
でも、
隠しきれてない。
近づく。
目が合う。
一瞬。
「……どうも」
「おう」
同じ。
でも、
少し違う。
前より、
ちゃんと見てくる。
隣に立つ。
距離は同じ。
でも——
意識してる。
お互いに。
歩き出す。
人。
視線。
ある。
でも、
前ほど刺さらない。
慣れたのか、
鈍くなったのか。
分からない。
「また来たな」
ハル。
ぽつり。
「そっちでしょ」
少しだけ笑う。
ハルも、
ほんの少し笑う。
そのまま、
カフェに入る。
前より静かな場所。
少し奥。
座る。
向かい。
距離が、
ちゃんと近い。
「最近さ」
ハル。
「なに」
「見てる」
短い。
でも、
分かる。
SNS。
炎上。
全部。
「まぁね」
軽く返す。
嘘じゃない。
全部見てる。
でも、
全部気にしてるわけじゃない。
「平気か」
一瞬、
止まる。
その言い方。
少しだけ、
違う。
軽くない。
ちゃんと、
聞いてる。
少しだけ、
考える。
でも、
答えはシンプル。
「まぁ」
それだけ。
ハルが、
少しだけ息を吐く。
「そっか」
それ以上は聞かない。
ちょうどいい。
でも——
前より、
少しだけ近い。
沈黙。
でも、
嫌じゃない。
むしろ——
落ち着く。
そのまま、
時間が流れる。
帰り道。
夜。
並ぶ。
人は少ない。
少しだけ、
静か。
「なぁ」
ハル。
「なに」
「なんで来る」
一瞬、
止まる。
前も、
似たこと言われた。
でも、
今は違う。
ちゃんと、
答えがある。
でも——
言うと、
変わる気がする。
少しだけ、
迷う。
でも、
逃げない。
「会いたいから」
短い。
それだけ。
空気が、
一瞬止まる。
ハルの足も、
ほんの少し止まる。
(あ)
言った。
戻れないやつ。
でも、
もう遅い。
ハルが、
ゆっくりこっちを見る。
「……そうか」
それだけ。
でも、
軽くない。
ちゃんと受け取ってる。
少しだけ、
距離が近づく。
ほんの数センチ。
でも、
分かる。
「そっちは」
紗月。
聞く。
逃げない。
ハルは、
少しだけ視線を外す。
珍しい。
「……分かんね」
短い。
でも、
本音。
そのあと、
少しだけ続く。
「でも」
一拍。
「来ると、楽」
それだけ。
心臓が、
少しだけ強く鳴る。
(それでいい)
思う。
十分すぎる。
完璧じゃなくていい。
名前がなくてもいい。
そのまま、
歩く。
駅が近づく。
別れの場所。
でも、
今日は少し違う。
「じゃ」
紗月。
「おう」
ハル。
それだけ。
でも、
動かない。
一瞬。
視線が合う。
近い。
前より。
ほんの少し。
手が、
触れそうな距離。
止まる。
でも、
触れない。
触れたら、
また変わる。
分かってるから。
でも——
離れない。
ハルが、
少しだけ笑う。
「危ねぇな」
小さく。
「なにが」
「色々」
曖昧。
でも、
分かる。
全部。
少しだけ、
笑う。
「まぁね」
それだけ。
そのまま、
少しだけ距離を戻す。
完全には離れないまま。
「またな」
ハル。
「うん」
頷く。
離れる。
歩く。
でも、
さっきの距離が、
残ってる。
消えない。
家。
ドアを閉める。
静か。
でも、
前より軽い。
ベッドに座る。
スマホ。
通知。
ハル。
「帰った?」
「帰った」
既読。
すぐ。
「よかった」
短い。
でも、
前より少しだけ、
温度がある。
スマホを見る。
少しだけ、
息を吐く。
(やば)
分かる。
これ。
前より、
踏み込んでる。
でも、
壊れてない。
むしろ——
ちゃんと続いてる。
目を閉じる。
思い出す。
「会いたいから」
言った自分。
「来ると楽」
言ったあいつ。
少しだけ、
笑う。
(十分だな)
完璧じゃなくていい。
全部分からなくていい。
それでも、
ちゃんと進んでる。
ゆっくりでも。
確実に。
名前がなくても、ちゃんと特別になってきている。




