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名前のない関係  作者:
27/27

一歩


会わない時間が、


少しだけ増えた。


連絡はある。


でも、


前より少しだけ、


間がある。


夜。


スマホ。


「今日」


ハル。


短い。


「なに」


返す。


少し間。


「近くいる」


また、それ。


心臓が、


少しだけ速くなる。


(最近、多いな)


前は、


避けてた。


でも今は——


完全には避けてない。


「どこ」


送る。


既読。


すぐ来る。


場所。


知ってる。


前に炎上したあたり。


少しだけ、


息を止める。


(また?)


頭に浮かぶのは、


あの時のコメント。


「なんでこいつが」

「隣にいんなよ」

「釣り合ってない」


少しだけ、


指が止まる。


でも——


それでも。


「行く」


送る。


既読。


「おう」


それだけ。


外。


夜。


少し冷たい空気。


歩く。


前より、


少しゆっくり。


でも、


止まらない。


場所。


やっぱり、


すぐ分かる。


視線が寄ってる。


小さなざわつき。


帽子。


マスク。


でも、


隠しきれてない。


近づく。


目が合う。


一瞬。


「……どうも」


「おう」


同じ。


でも、


少し違う。


前より、


ちゃんと見てくる。


隣に立つ。


距離は同じ。


でも——


意識してる。


お互いに。


歩き出す。


人。


視線。


ある。


でも、


前ほど刺さらない。


慣れたのか、


鈍くなったのか。


分からない。


「また来たな」


ハル。


ぽつり。


「そっちでしょ」


少しだけ笑う。


ハルも、


ほんの少し笑う。


そのまま、


カフェに入る。


前より静かな場所。


少し奥。


座る。


向かい。


距離が、


ちゃんと近い。


「最近さ」


ハル。


「なに」


「見てる」


短い。


でも、


分かる。


SNS。


炎上。


全部。


「まぁね」


軽く返す。


嘘じゃない。


全部見てる。


でも、


全部気にしてるわけじゃない。


「平気か」


一瞬、


止まる。


その言い方。


少しだけ、


違う。


軽くない。


ちゃんと、


聞いてる。


少しだけ、


考える。


でも、


答えはシンプル。


「まぁ」


それだけ。


ハルが、


少しだけ息を吐く。


「そっか」


それ以上は聞かない。


ちょうどいい。


でも——


前より、


少しだけ近い。


沈黙。


でも、


嫌じゃない。


むしろ——


落ち着く。


そのまま、


時間が流れる。


帰り道。


夜。


並ぶ。


人は少ない。


少しだけ、


静か。


「なぁ」


ハル。


「なに」


「なんで来る」


一瞬、


止まる。


前も、


似たこと言われた。


でも、


今は違う。


ちゃんと、


答えがある。


でも——


言うと、


変わる気がする。


少しだけ、


迷う。


でも、


逃げない。


「会いたいから」


短い。


それだけ。


空気が、


一瞬止まる。


ハルの足も、


ほんの少し止まる。


(あ)


言った。


戻れないやつ。


でも、


もう遅い。


ハルが、


ゆっくりこっちを見る。


「……そうか」


それだけ。


でも、


軽くない。


ちゃんと受け取ってる。


少しだけ、


距離が近づく。


ほんの数センチ。


でも、


分かる。


「そっちは」


紗月。


聞く。


逃げない。


ハルは、


少しだけ視線を外す。


珍しい。


「……分かんね」


短い。


でも、


本音。


そのあと、


少しだけ続く。


「でも」


一拍。


「来ると、楽」


それだけ。


心臓が、


少しだけ強く鳴る。


(それでいい)


思う。


十分すぎる。


完璧じゃなくていい。


名前がなくてもいい。


そのまま、


歩く。


駅が近づく。


別れの場所。


でも、


今日は少し違う。


「じゃ」


紗月。


「おう」


ハル。


それだけ。


でも、


動かない。


一瞬。


視線が合う。


近い。


前より。


ほんの少し。


手が、


触れそうな距離。


止まる。


でも、


触れない。


触れたら、


また変わる。


分かってるから。


でも——


離れない。


ハルが、


少しだけ笑う。


「危ねぇな」


小さく。


「なにが」


「色々」


曖昧。


でも、


分かる。


全部。


少しだけ、


笑う。


「まぁね」


それだけ。


そのまま、


少しだけ距離を戻す。


完全には離れないまま。


「またな」


ハル。


「うん」


頷く。


離れる。


歩く。


でも、


さっきの距離が、


残ってる。


消えない。


家。


ドアを閉める。


静か。


でも、


前より軽い。


ベッドに座る。


スマホ。


通知。


ハル。


「帰った?」


「帰った」


既読。


すぐ。


「よかった」


短い。


でも、


前より少しだけ、


温度がある。


スマホを見る。


少しだけ、


息を吐く。


(やば)


分かる。


これ。


前より、


踏み込んでる。


でも、


壊れてない。


むしろ——


ちゃんと続いてる。


目を閉じる。


思い出す。


「会いたいから」


言った自分。


「来ると楽」


言ったあいつ。


少しだけ、


笑う。


(十分だな)


完璧じゃなくていい。


全部分からなくていい。


それでも、


ちゃんと進んでる。


ゆっくりでも。


確実に。


名前がなくても、ちゃんと特別になってきている。

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