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名前のない関係  作者:
2/27

安いのに、残る

会ったあとも、


何も変わらなかった。


連絡は続く。


短いまま。


軽いまま。


でも、


切れない。


「今日暇?」


夜。


突然くる。


「まぁ」


「出てきて」


雑。


でも、


断らない。


駅前。


人は多い。


でも、


迷わない。


探す前に、


分かる。


そこだけ、


流れが少し違う。


「おう」


「おう」


それだけ。


並んで歩く。


目的はない。


そのまま、


店に入る。


服屋。


安いところ。


明るい照明。


同じ形の服が並んでる。


どこにでもある。


「ここでいいの?」


思わず言う。


ハルはラックを見ながら、


「どこでもいい」


興味なさそう。


でも、


手は止まらない。


ちゃんと見てる。


紗月はTシャツを手に取る。


白。


小さいロゴ。


値段も、軽い。


「これどう」


ハルは見る。


一瞬。


「普通」


「それしか言えないの?」


「普通にいいって意味」


雑。


でも、


否定しない。


「じゃあこれにする」


レジに向かおうとすると、


「待て」


止められる。


「なに」


「それ、俺が買う」


少し止まる。


「なんで」


「なんとなく」


(またそれ)


少しだけ迷って、


「……じゃあいいや」


渡す。


レジ。


すぐ終わる。


金額なんて、


ほとんど残らない。


でも、


それ以外が残る。


店を出る。


袋を持って歩く。


少しだけ、


軽い。


「着る?」


ハルが言う。


「今?」


「今」


変わらない。


雑。


でも、


嫌じゃない。


「……いいけど」


更衣室。


鏡。


白いTシャツ。


普通。


どこにでもある。


なのに——


(なんか違う)


外に出る。


ハルが見る。


少しだけ間。


「いいじゃん」


短い。


でも、


ちゃんと見てる。


「今の普通じゃないじゃん」


「たまにはな」


少しだけ笑う。


そのあと、


カフェに入る。


適当に座る。


適当に話す。


中身はない。


でも、


途切れない。


時間がそのまま流れる。


気づくと、


結構経ってる。


(早)


でも、


それがちょうどいい。


帰り道。


夜。


少しだけ静か。


「じゃ」


「おう」


それだけ。


振り返らない。


でも、


そのまま終わらない気がする。


家。


袋を置く。


Tシャツを出す。


安い。


どこにでもある。


タグを見る。


現実感がある。


でも——


(これ、捨てないな)


理由は分からない。


スマホが鳴る。


「着た?」


ハル。


「着た」


少し間。


「似合ってた」


それだけ。


でも、


残る。


紗月はスマホを置く。


ベッドに倒れる。


天井を見る。


(なんだこれ)


考えても、


答えは出ない。


でも、


一つだけ分かる。


あの時間も、


このTシャツも、


全部——


ちゃんと残ってる。


白い布一枚なのに、


軽くない。


むしろ、


少しだけ重い。


嫌じゃない重さ。


目を閉じる。


少しだけ、


思う。


(また会ってもいいかも)


そのくらいが、


ちょうどいい。


安いのに、ちゃんと残っている。


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