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本編4-7


「……貴女さえ居なければ、貴女さえ現れなければ、あの方の世界は、あの方の御代は、揺るぎないものだった……! あの方が、あの方こそが、セシリア様だけが、この世界でただお一人の尊いお方だったのに……!」


 セシリアが七騎士と主人公に向かってノヴァーリス討伐命令を出した後、彼女は世界にすべての魔力を注ぎ込み消滅した。そうしてノヴァーリスは血を吐くような慟哭で吠え、腰に佩いていた長剣をするりと抜き取る。

 その切っ先は、真っ直ぐ主人公に向かっていたのだろう。

 真相ルートはスチルと立ち絵差分の大盤振る舞いだったけれど、狂ったノヴァーリスの様子を描くのを中心としていたような気がする。

 本当に、ノヴァーリスに一体なんの恨みがあるんだろうか。ひしひしとそう感じるが、しかし、七騎士と主人公の混乱はひとしおだったはずだ。

 それもそうだろう。いつも優しく、一歩下がった場所からセシリアと共にずっと自分達を、この国を守護してきた、絶対防御の騎紫。自分達の団長で、セシリアへの忠義が最も篤い騎士。それがノヴァーリスだった。そんな彼が今、明確に自分達の敵として、いや、()()()()()()()剣を向けている。

 彼は物語の中で、終ぞ剣を抜くことはなかった。今、この瞬間までは。


「……アンタ、オレ達をずっと騙してたのかよ!?」


 一番最初に口を開いたのは、作中でノヴァーリスと最も折り合いが悪かったグラハムで。しかし彼の言葉を受けても、ノヴァーリスは心底理解が出来ない、と言った様子で首を傾げる。


「騙す? 私の忠誠は、今も、昔も、未来に至るまで。永劫セシリア様ただお一人に捧げておりますよ」


「それならどうして……!」


「セシリア様のためです」


 ずっと優しく自身を導いてくれた女王の消滅に、深い悲しみで声音を震わせながら、主人公が声を上げる。

 それに対してキッパリと告げられた言葉に、一同は凍り付いた。

 世界を滅ぼすほどの呪いを、憎悪を世に放っておいて、言うに事欠いて「セシリアのため」? そのせいで、彼女はその身を捧げ、消滅したというのに! そんな七騎士と主人公の感情が、まざまざと伝わってくる場面だった。みんな呆然としていて、画面の向こうに居た私も呆然としていた。

 ゲームの中では、ノヴァーリスとの戦闘に突入していた。作中、一度も剣を抜かなかったノヴァーリスだが、彼は防御しか出来ない騎紫ではない。攻撃に特化した七騎士が他に居たから、自身は防御やサポートに回っていただけで、つまり普通に強いのだ。

 ベルに魔力コントロールを教え、七騎士の陣頭指揮を執る彼が、弱いわけがない。

 HPこそ普通だが、その防御力が普通ではなかった。硬い。とにかく硬い。七騎士唯一の防御特化は伊達ではない。後半になるにつれワンパンで≪咎モノ≫を沈めていた主人公の攻撃でも、ノヴァーリスのHPをちょっぴり削れたかどうか、と言う程度。その癖、彼が放ってくる攻撃の一太刀一太刀が重たいせいで、カインと主人公で治癒をフル稼働しないとあっと言う間にパーティーが全滅する。

 主人公の水属性スキルを治癒ではなく攻撃に分岐させていると、ここで詰む。まさに初見殺しだった。

 そしてなんとかノヴァーリスに勝ったと思えば、このセリフである。


「……セシリア、様……申し訳、ございま……せん……。ぼく、は……貴女の、ための……世界を、つくれ、ません……でした」


 ユーザーのメンタルはボッコボコだ。

 彼は自身の討伐を命じたのがそのセシリアであったとしても、変わらずに血だまりの海の中でそう呟いた。白い騎士服と、白月光の髪を真っ赤に染めて、空虚で、抜け殻みたいな表情をして。それでも最後の最後まで、ノヴァーリスは「セシリアのため」を貫いて、彼女への忠義と執着を胸に死んでいった。


 その後、回想という形で、なぜノヴァーリスがここまでセシリアに執着するのか、なぜこのような暴挙に出たのか、とんでもない重さの情報が、ユーザーに襲い掛かってくる。

 ノヴァーリスは歪んでしまった。それは彼だけのせいではなく、彼を取り巻いていた環境のせいでもあった。そう、シナリオライターに突き付けられているような内容だった。



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