番外編 東野という男
体育祭後の話となっております。
東野家の居間にて
「あらー仲良さそうに撮れているじゃない。杏ちゃんも猫みたいで可愛いわね、状況はよく掴めないけれど」
「母さん当たり前だろ、望月さんが俺を、この俺だけのために撮ってくれたんだから」
「私も写っているのだけれど・・・」
楓の母、祥子はぽやぽやした少女のようで、とても高校生の息子を持っているようには見えない。大人っぽい楓と杏と一緒に歩いていればむしろ年下に見られる程である。
そんな祥子は楓の態度に困ったよう笑い、杏にごめんなさいねと代わりに謝罪をする。
それにはいいえ、慣れていますからと杏は微笑む。
友達が欲しくてたまらなかった杏と違い、何者にも執着しなかった男が中学生の頃より1人の少女に執着していることに、杏が心底驚いてから早3年がたった。
中学を卒業し、待っていましたと少女と同じ学校に通い始めた楓を監視しなければとお嬢様学校を蹴り同行した杏。
ただただ可哀想で守らなければいけないと思っていた少女は存外図太く、今では一番の友人になっているとは当時の自分は思いもしなかっただろう。
「それにしても、楓は望月さんにあれだけ好意を伝えておきながら告白しないの?」
「する必要がないだろ?卒業したら結婚するんだし」
「望月さんは覚えてないわよ」
「問題ない、俺は覚えている」
「「・・・・」」
祥子と杏は視線を合わせる。視線に含ませた意味はこいつをどうにかしてくれだ。
祥子は勇気を振り絞り冷や汗を抑えながらにっこり笑い東野に話しかけた
「早紀ちゃんがうちの娘になるのは構わないの。けれど無理矢理はだめよ」
「そもそも何故望月さんのことそんなに好きなの?」
「そうね、確かにそれはお母さんも不思議わ」
ねーと祥子と杏は同調している
そんな話題が今更出てくる辺りがこの2人の鈍さだよなと楓はため息をつきたくなる。
無理矢理している自覚はないので返さなくてはいけない問いは1つしかない
「別になにもないよ、望月さんを見た瞬間ああ、こいつは俺の子供を生むんだなって思っただけ」
「お父様と同じことを言っているわ」
「どうして楓くんの性格は大輔さんより雄大君に似ているのかしら」
不思議だわーとのほほんとした祥子の声が部屋にこだまし、ほんと不思議と杏も首を傾げ、話題は茨木家と東野家の共通性に移っている。
毎回こんな話しの終わり方をするため楓はうんざりしてくる。
もういいだろうと勝手に切り上げ自分の部屋に戻る。
大輔は祥子の夫、雄大は杏の父に当たる。
表面上の、優しく人当たりがいいところは大輔に似ているが、内面的などろどろしていて欲しいものを手に入れる手段を問わない所は雄大に似ているとよく言われる。
楓から言わせれば勘違いも甚だしい。
フランス人とのハーフである祥子に一目ぼれし、あの手この手でご機嫌をとり結婚を漕ぎ着けたのは運がいいだけで、もし断られでもしたら雄大さんと同じように手段は問わなかっただろう。
むしろ雄大さんの方が不器用で真っ直ぐであったと思う。
不器用であったがゆえに話しで聞いた誘拐未遂事件にまで発展してしまったのであって、これが己の父なら誘拐どころか何の罪悪感も抱かず監禁していたに違いない。
自分のこの性格は間違いなく父親譲りだ。
部屋中に貼り付けてある写真を見つめる
逃がしてあげることは出来ないからせめて、望月さんが自分の意思で俺を選んでくれたらと思う。
そうしたら乱暴にしなくてすむ、どろどろに甘やかしてあげられる。
いずれにせよ
卒業までがタイムリミット―――――
石田なんて可愛いものでした。




