第四話 エスト
「あ……あたしの聞き間違いじゃないよね……あいつがクローン兵器ランキング第一位……?それって最強じゃん……。あたし達に勝ち目あるの?」
「……それでも……僕達は戦うしかない」
フォーチュンとレイはオリジンの家から非殺傷の武器を持ち出していた。もう二度と誰かの命を奪わない不殺主義の為に。その武器は人を気絶させる程度の電気玉を発射するトンファーガンだ。フォーチュンとレイとナゴミンはその武器を持ってエストに挑む。
「今……777号にはSSS級の指名手配が掛けられている。オリジン帝王殺害にレイ王女の誘拐。当然の事だ」
「待ちなさいよ……。ちょっと前ならともかくあたしは自分の意思でフォーチュンと一緒にいるの!勝手に誘拐扱いにしないで!」
「それでもレイお嬢様。犯罪者と一緒にいる必要などありますか?その人と一緒にいたらこの先どんな目に遭うか分かりませんよ?」
「あたしは自分の生きる意味を探す為に冒険をしたいんだ!誰にも邪魔させないわよ!」
レイは危険は覚悟の上だった。だがエストは武器を取り出した。巨大な鎖鎌だ。
「こいつは俺の脳波に反応して自在に宙を動く。君達は逃げ切れるかな?」
フォーチュンは素早く動き、エストの懐に入る。だが電気玉をエストはあっさり避けた。そして鎖が絡みつき離さない。
「終わりだ。777号」
エストはフォーチュンの首をチョップし気絶させた。
「嘘やん……第三位と第一位でここまで差があるだなんて……」
「しっかりして!フォーチュン!」
「次は君だ。脱走兵の753号」
「えっ、マジで?クローン兵器ランキング最下位のうちが第一位と戦わなきゃなん?」
エストはナゴミンに向かって攻撃をしようとした。その瞬間ナゴミンは一瞬で土下座をして攻撃を避けた。
「ひえええ!すいません!」
「おおっ!ナゴミン、エストの攻撃を避けるなんてやるじゃん」
「あれっ?もしかして今日のうち冴えてる?」
その後もナゴミンは回避をし続けて、隙を見てフォーチュンを持ち運び逃げた。やはりクローン人間というだけあって最低限の能力はあるようだ。
「フォーチュンさんはうちと一緒に冒険したいと言ってくれた……。こんな最下位のうちをそれでも受け入れてくれたんや……。だからちゃんと借りは返さなきゃ!」
ナゴミンはフォーチュンを車に乗せて、レイは急いで運転をする。フォーチュンはようやく目が覚めて、窓を開けて追いかけて来る鎖鎌を電気玉で追い払った。
「しゃあっ、うち達の勝ちや!皆で力を合わせれば最強にだって勝てるんやな!」
「……でも……エストさんは僕に何かをボソって言ってた気がする……頼んだぞって言ってたのか?」
「聞き間違いじゃないかしら。指名手配犯に何を頼むのよ」
「……そうだな。考えても仕方がない事は考えないようにしよう」
フォーチュン一行はやがて宇宙船の前へと辿り着く。それはまさに巨大だった。
「これがノアの方舟号なんやなあ!かっこいい!」
「ええ、あたしの自慢の船よ」
「僕達はようやくこの水星から脱出できる……。自由を求める事ができるんだ!」
宇宙船は早速出発した。ブオーッ!と大きな音を鳴らして。
「次の目的地は金星だわね。ここから一番近いし」
「金星かあ。金がいっぱい取れる豪華な星なん?」
「そんなんじゃないわよ……。ドームコロニーの外は鉛すら溶ける地獄の環境だよ」
「なんや名前だけ豪華なんかい。伊達だけやなあ」
「さて金星に着くまで時間はかかりそうだし、僕達はその間にこのノアの方舟号を探検するか」
フォーチュンはワクワクしていた。宇宙船に乗るのは初めてだからだ。
「この宇宙船には何があるんだい?」
「そうね。特殊保存されたバイキングスペースに、テレビやゲームに、温泉まであるわ」
「うひゃー凄い伊達やない豪華やなあ!これに比べると金星はカスや!」
一行はまずはバイキングスペースに向かう。
「そいじゃあうちは酒を頼もうかなあ」
「ビビビッ。あなたは未成年の為アルコール類を提供する事はできません」
「ななっ、どうしてうちが未成年やと分かったんや?」
「AIセンサーがあるのよ」
「じゃあ僕はコーヒーを頼もうかな」
各自、食卓へと着いた。ナゴミンとフォーチュンは肉を多く取り、レイは和食セットを取る。
「いただきます」
「いただきます」
「いただきます」
「さあフォーチュンさん。うちと早食い競争やで!」
「負けないぞ」
ガツガツガツ!凄まじい勢いで口の中に肉が吸い込まれる。
「ゲホッゲホッ」
「そう焦って食べるからそうなるのよナゴミン。皆ちゃんと噛んで食べなさい」
「はいー……」
続いて、一行は温泉へと向かう。
「基地の風呂とは比べ物にならないほど広いやん!フォーチュンさん。ここからあっちまで泳いで競争しましょ」
「負けないぜ」
二人はお行儀悪く、温泉で水泳大会をした。
「二人とも!温泉で泳ぐな!」
壁の向こうからレイの大声が聞こえる。やっぱり悪い事はできないものなのだ。
そして一行は最後にテレビの元へと向かった。そこではかつてハートと一緒に遊んだレースゲームがあった。
「レイとナゴミン、僕と一緒にレースゲームしないか?」
「ええ、いいわ」
「負けないでー」
三人はゲームを楽しんでいた。かつて命を取る取られるの関係だったフォーチュンとレイは、もう完全に友達のような関係になっていたのだ。
「しゃあっ!あたしがナンバーワンだ!」




