第三話 オリジン
「596号……救ってあげたかった……」
「せめて買い手がマシな人である事をうちらは祈るしかありませんわな」
「……ごめんなさい。今更遅いけど、あたしがあのとき買い取っていれば」
レイは解決策を後から思い始めてしまい、後悔してしまっていた。フォーチュンはレイを慰めるように言った。
「過ぎた事はもう仕方がない……。どの道あいつは僕達がやろうとしている自由に賛同はしなかった。レイが買い取ろうとしてもきっと拒んでいたはず」
「……うん。励ましてくれてありがとう。って何であたしがあんたに感謝を……ふんっ」
フォーチュン一行は車に乗り進む。すると、レイはとある提案をする。
「あたしちょっと行きたい所があるんだけど」
「なんや?」
「……お父さんの家……。お父さんがどんな人だったのかあたしはほとんど分かっていなかったんだ。まさかあんなクローン兵器を作っていただなんて。あたしは真実を知りたいの」
車はオリジンの家へと向かった。だがそこはやはりオリジンの死があったからか、警備は厳重であるようだ。簡単には入れなさそうだ。
「ここはうちの活躍のしどころやな!」
ナゴミンは警備員の前に立つ。そして腹痛を訴えた。
「いっ、いたた……。はっ、腹がー」
「おい大丈夫かよお前」
「ってかお前脱走兵の753号じゃねえか!捕まえるぞ!」
「ひえええ!」
警備員はナゴミンを追いかけていった。今のうちだ。フォーチュンとレイはオリジンの家へと入る。
「お父さんの家に入るのは初めてだな……」
「そうなのか?」
「うん、いつもあたしは別荘に住まされていたから」
家の中身は金色と黒色が混じるゴージャスな内装だった。そして様々な純金の人形が置いてある。
「まあ、素敵な内装だわ」
「そうか?ちょっと豪華すぎないか?いかにも成金っぽいというか」
二人は奥へ進む。すると、机の上にとある日記のような手帳があった。オリジンの物だ。
「読んでみよう。我が大帝国は世界征服を目標として、日々色んな国へ戦争をして勤しんでいる。世界征服をする目的はただ一つ。世界平和の為だ。国が一つだけになれば国同士の争いは起きない。俺が世界の帝王になって宗教などを廃止して争いの火種を無くしてやる。完璧で平和な国作りの為に犠牲は出るだろうが多少は仕方ないのだ」
「なに……これ……お父さんは方々に戦争を仕掛けた人って事?」
「そうだ。そして挙句の果てにはクローン兵器という、人権を無視した兵器を使おうとした。さて続きを読むぞ。俺の息子であるゼロが何者かに暗殺された!俺の理想が気に食わない奴がこんな事をしたんだ!許さん!許さんぞ!……だが俺の息子は……弱いから亡くなったんだ。だったら俺と同じぐらい強いクローン人間なら……こんな悲しい暗殺事件は起きないんだ。作ってやるぞ……クローン人間!」
「ゼロお兄さん……」
「ゼロって君のお兄さんかい?」
「……ええ……優しい人だったわ」
「……まさかクローン人間を作った最初の目的は息子の死が原因なのか?暗殺されない強い息子を作る為に……。続きを読もう。クローン人間を作ったはいいが……。それでもやはり亡くなったゼロの代わりにはなれない……。こんな事をしても意味がないとどうして早く気付けなかったんだ……。クローン人間を俺は愛する事はできなかった。だがせっかく作ったクローン人間をこのまま放置するのはもったいない。これから総合777体ほどのクローン兵器を動員し、戦争の役に立ってもらおう」
「お父さん……。何て事を……」
レイは全てを理解した。オリジンの世界征服という傲慢な思想。息子を失った悲しい出来事から起きたクローン兵器製造の事まで。
「ねえフォーチュン。初めて会ったときに、お父さんは罪なき女の子を殺したって言ってたわよね。殺されても仕方ないって言ってた……。その女の子はフォーチュンにとって大切な人だったの?」
「……そうだな」
フォーチュンは改めてレイと初めて会ったときの事を思い出していた。確かにオリジンは悪党だった。だがレイにとってはどういう人間だったのか。
「……なあレイ……君はお父さんの事が好きだったか?」
「ええ……お父さんはあたしに愛情をくれたわ……好きだった……でもまさかこんな事をしていただなんて……」
どの道レイにとってはオリジンは大切な人だったのだろう。フォーチュンは申し訳ない気持ちでいっぱいになった。
「……色々考えたけど。僕はもう言い訳はしない。僕は君にとって大切な人の命を奪ってしまった……。ごめんなさい……。こんな事になるなら僕はもう二度と人の命を奪わない」
「……あたしは……どうすればいいか分からないわ……尊敬していた人は悪党で、復讐相手には事情があって……あたしはこれからどう生きればいいの?」
「……なあレイ……改めて言う。僕と一緒に宇宙を冒険しないか?宇宙冒険は僕の好きな人の夢だった。その旅できっと君が何の為に生きるのかが分かるかもしれない」
「……ええ……そうね……分かったわ……改めてよろしく……それと……何度も殺そうとしてあたしの方こそごめんなさい」
「あれは仕方がなかった事だ……。恨んでないよ」
家の外へと出ると、ナゴミンがまだ警備員と追いかけっこをしていた。
「フォーチュンさんにレイさん。探し物はもう見つかったかい?」
「ええ、あたしはもう迷わない。この広い宇宙を冒険して自分の生きる意味を探すんだ!」
「その意気だ。レイ」
フォーチュン一行は一斉に車に乗りその場を凌いだ。
「フォーチュン。あたし良い宇宙船を知っているわ。あたしのプライベート宇宙船である、ノアの方舟号!このまま真っ直ぐ行けば辿り着くわ!」
「そんなものがあったのか。よしっ、目標はノアの方舟号だ!」
車が真っ直ぐ進もうとしたその時。目の前に謎の男が現れた。車から出たフォーチュンとナゴミンは驚く。
「えっ……1号ことエストさん?クローン兵器ランキング第一位のあの?」
「君達をこれ以上進ませるわけにはいかない」




