第二話 クローンオークション
フォーチュンは宇宙船を引き続き探していた。どうやらこのドームコロニー内には自由に使えそうな宇宙船はないようで、ドームの外へ出て盗んだ車を自動運転で走らせていた。
水星は太陽系の中でも最も太陽に近い惑星だからか、かなりの灼熱だ。それに昼の時間は約一七六地球日ほどもある。車内でも度々、エアコンがヒーヒー言っている。
「この水星という世界は雨や風や雲がないんだ。いつかそれを見てみたいな」
「なに当たり前のようにあたしと世間話しようとしているんだよ。死ね!」
相変わらずレイはフォーチュンに向かってナイフを振り回して襲いかかる。だが案の定フォーチュンは避けまくる。
すると、ヒュー!と音がする。何だろうか?フォーチュンは車内から空を見た。
「まずいな……。隕石が落ちてきそうだ。水星には大気がないから減速されず、凄まじい勢いで落ちてくるぞ。レイ!君は運転得意か?」
「……運転は一応できるわよ」
「じゃあ何とかあれから逃げ切ってくれ」
「……あたしは隕石であんたが死ぬのを見たくはないわ。だってあたしが直接あんたにトドメを刺したいから。だから勘違いしないでよね。あたしは自分の為にあの隕石から逃げ切るから」
「ああ……それでいい」
レイはボコボコとした安定しない土地や、水星内部が冷えて縮んだ事によってできた極端な断崖を軽々と運転して見せた。フォーチュンはリアルレースゲームを見ているみたいで、少しだけ楽しくなっていた。
ドン!と音が後方から鳴った。上手く隕石から逃げ切れたようだ。
「やったなあ!ハイタッチ」
「するか!馬鹿野郎!」
フォーチュンの手のひらに容赦なくパンチが打たれた。
「痛え……。やっぱあのオリジンの娘だけあって強さそのものは中々だな……」
車は進み続けて、とある別のドームコロニーの裏路地へと辿り着いた。そこでは何やら賑やかな様子だった。
「それでは本日のオークションを開始致します!」
オークション?いったい何のだろうか。すると目の前には見覚えのあるクローン人間達が並んでいた。まさか。
「こいつには人件費も教育費も一切必要がありません。警備員に監視員に戦争に!どのように使っても自由なのです!」
目の前で行われていたのはクローン人間のオークションだった。何か一つ違えば自分もあんな風に商品として扱われていたのかもしれないと思うと、フォーチュンはゾッとした。
「あそこにいるのは僕の兄弟。クローン人間だ」
「え?」
「君のお父さんは自分自身を元にしてクローン兵器を大量生産したんだ。勿論クローン人間には人権なんてものはない」
「そ……そんな事が?まさか」
レイは疑っていた。それが真実かどうか。だが司会は。
「このクローン達は全部オリジンという戦争の神を元に作られし素晴らしい商品なのです」
「お父さんがそんな事をしていただなんて……」
「知らなかったのかい?」
「うん……。あたしは箱入り娘のように育てられたから、世間の情報なんてまるで知らなかった」
オークションがいざ始まった。司会は堂々と前に立つ。
「こいつの名前は596号!クローン兵器ランキング第十位の強さを持っております。持久力が非常に高いし、どんな汚れ仕事をさせてもご苦労の一言だけであっさり従う忠誠心もあります」
「ねえ。フォーチュンはクローン兵器ランキング何位なの?」
「僕は三位だ」
「マジか……あんたを倒すのは骨が折れそうだわ……」
「それではまずは百万信用ドルからスタート!」
「百二十万!」
「百五十万!」
「二百万!」
「さあ二百万だこれ以上はないか?……二百万で決定!お客さんおめでとうございます!」
フォーチュンは目の前で行われている行動にただただ寒気がしていた。
「人の命を何だと思っているんだ……人の命が二百万?そんなわけないだろ」
「あたしも今回だけはあんたに同意だわ……。お父さんは何でこんな事をしていたんだ……」
すると、目の前に眼鏡をかけた謎の男が乱入した。
「やあやあ皆さんご機嫌よう!」
「だ……誰なんですかあなたは。すぐ出ていきなさい!」
「まあまあそう言わず……。うちの名前は753号!ナゴミンと呼んでくれると嬉しいわい」
「な……何だクローン兵器か……。ちなみにクローン兵器ランキングは何位なんだ。上位ならばそのまま商品にできそうだ」
「ランキング?んなもん最下位の七七七位やで!でも愛嬌の良さなら誰にも負けへんで!」
「カスじゃねえか!やっぱり出ていけ!」
「ちょちょちょい待ちー!ひょっとしたらうちを買いたい言う人が出るかもしれないやん!」
だがあまりにも正直に最下位である事を打ち明けたせいか誰も買い取ろうとしない。
「そ……そんなあ!一応うちはクローン兵器としての最低限の能力はあるんやでー!」
「帰れ!」
「ブー!」
フォーチュンはナゴミンという男の奇想天外さに少し驚いていた。旅の仲間として連れて行くと賑やかになりそうだ。
「グスン……。どうせうちなんて役立たずのカスだ」
「面白い男だ。僕が買い取る!ナゴミン。よろしく!」「えっ、あなたは777号!」
「僕と一緒に宇宙を冒険しよう!それと僕の名前はフォーチュンだ!」
「宇宙を冒険!何やら楽しそうやなあ!ええ、よろしく!」
すると、目立ったフォーチュンの元に警察と思わしき人が集まった。
「指名手配犯の777号だな!貴様をオリジン帝王殺害とレイ王女誘拐の疑いで逮捕する!」
「マジか……。逃げるぞ!ナゴミン!それと596号」
「ええ!」
フォーチュンはナゴミンだけでなく596号も連れて行こうとした。だが。
「俺は買い手の元へ行く」
「何でだよ!」
「社会保障番号も戸籍も人権もない俺達クローン兵器がどうやって知らない他所の世界で生きて行くんだ……。俺達は所詮買い手の元でしか生きられないんだ!」
「フォーチュンさん……。残念だけどこれが現実だわ。クローン兵器が自由を求めるのはとても難しい事なんや」
警察がすぐそこまで来ている。フォーチュンは596号の事を諦めて逃げた。本当は救ってあげたかったが、現実は難しかったのだ。




