第三柱 「オリュンポス会議・開始」
ゴゴゴ……と、重たい石の扉がひとりでに開いていく。
神界の中心、オリュンポス神殿。
その最奥に位置する大広間へと続く扉だ。
開かれた先へ、三人の処女神――アテナ、アルテミス、ヘスティアが足を踏み入れる。
長く、静かな廊下。
足音だけが、規則正しく響いていく。
やがて視界の先に現れたのは――
巨大な円卓が据えられた、荘厳なる大広間だった。
「お? やっと来たか」
先に声を上げたのは、椅子にだらしなく腰掛け、円卓に足を乗せている男神。
海と海の生き物を操る神――ポセイドン。
オリュンポス十二神、第4席。
「あら、円卓に足を乗せるなど、品がありませんよ」
ぴしゃり、と冷たい声が飛ぶ。
「何だよ、殺るか?」
「お黙り!」
場の空気を一瞬で引き締めたのは、鋭く響く女性の声だった。
「ここは神聖な場ですよ」
結婚・出産・貞節の神――ヘラ。
オリュンポス十二神、第3席。
その威厳ある視線に、ポセイドンも一瞬だけ口をつぐむ。
「ヘラ様! 申し訳ございません!」
すぐさま頭を下げたアルテミス。
その様子を見て、くすくすと笑う声が一つ。
「アルテミスのやつ、怒られてる~」
愛と美の神――アフロディーテ。
オリュンポス十二神、第9席。
どこか楽しげに頬杖をつきながら、様子を眺めている。
「……私より下の位なのによく吠えますね」
アルテミスの目が細くなる。
「なんですって!?」
空気が一気に張り詰める。
「ま、まぁまぁ!」
慌てて割って入ったのはアテナだった。
「会議前から喧嘩しないでよ~!」
「はっはっはっ!!! いつもいつも面白い奴らよ!」
豪快に笑うのは、火山と鍛冶の神――ヘパイストス。
オリュンポス十二神、第5席。
その視線はどこか優しく、アテナを見守っている。
「まぁ、いつものことだ」
穏やかに肩をすくめるのは、芸術・音楽・医療の神――アポロン。
オリュンポス十二神、第6席。
「気にするだけ無駄よ」
静かに言葉を落とすのは、豊穣と大地の神――デメテル。
オリュンポス十二神、第7席。
「そうだな」
短く同意するのは、戦争の災厄の神――アレス。
オリュンポス十二神、第10席。
その瞳には、わずかに楽しげな色が宿っている。
「まぁ、それがいいんじゃないかな」
軽やかに言うのは、伝書神――ヘルメス。
オリュンポス十二神、第11席。
情報を操る神は、場の空気すら楽しんでいるようだった。
そして――
「うむ、そろったな」
低く、重みのある声が大広間に響く。
全員の視線が、一斉に向けられる。
そこに立つのは――
全知全能の神。
オリュンポス十二神の頂点に立つ絶対的存在。
ゼウス。
オリュンポス十二神、第1席。
「主神!」
神々が一斉に頭を垂れる。
「あ! お父さん!」
その中でひとり、アテナだけがぱっと表情を明るくした。
「うむ」
ゼウスはわずかに口元を緩める。
「では、皆――座ってくれ」
ゆっくりと円卓へと歩み寄り、主座に腰を下ろす。
「会議を始める」
その一言で、場の空気が変わった。
ざわめきは消え、
神々はそれぞれの席へと着く。
世界の均衡を担う者たちの視線が、円卓へと集まる。
――オリュンポス会議。
それは、神界の運命を左右する場。
そして今、その幕が静かに上がった。
ここまで読んでくれてありがとうございます。
次回もお楽しみに




