第二柱 「オリュンポス会議・開始前」
「遅刻遅刻~~~!!!」
神界の空に、焦った声が響き渡る。
白銀の翼を大きく広げ、アテナは勢いよく飛び立った。
風を切り裂きながら一直線に向かう先は、神界の中心都市――ユグドラシル。
その中央にそびえ立つ、荘厳なる建造物。
オリュンポス神殿。
「はぁ、はぁ、はぁ……や、やっと着いた……」
神殿の大階段に降り立ったアテナは、肩で息をしながら膝に手をつく。
いつもの威厳はどこへやら、完全に息切れ状態である。
「あ、今日は速いね」
不意にかけられた、落ち着いた声。
「ですね」
続いて、どこかクールな声が重なる。
「……あ!」
顔を上げたアテナの視界に入ったのは、二人の神の姿だった。
「あ! アルテミス! ヘスティア! おはよー!」
ぱっと表情を明るくし、手を振る。
「あぁ、おはよう。今日もいい天気だ」
柔らかな笑みを浮かべるのは、炉と家庭の神――ヘスティア。
神聖な炎の守り人であり、争いを好まない穏やかな神。
しかしその実態は、重度の引きこもりである。
オリュンポス十二神、第十二席。
「えぇ、おはようございます」
静かに会釈をするのは、狩猟の神――アルテミス。
弓の腕は神界でも随一。天使たちから最も尊敬されている存在でもある。
オリュンポス十二神、第八席。
「もう来てたんだね!」
「ええ。時間通りに来ただけです」
アルテミスは淡々と答える。
その横で、ヘスティアは小さくあくびを噛み殺していた。
「会議が始まってしまいます。行きましょうか」
「うん!」
アテナは元気よく頷き、二人の隣に並ぶ。
巨大な扉の向こう。
そこには、神々が集う会議室が待っている。
「はぁ……さっさと帰って暖炉を眺めたい……」
ぽつり、とヘスティアが本音を漏らした。
「始まる前からそれ言う?」
アテナが苦笑する。
「だって、会議って長いし……争いの話ばっかりだし……」
「それも大事な役目です」
アルテミスが静かに言う。
その声音には、わずかな厳しさが含まれていた。
「神界とヴァルハラの関係、そして人間界への影響……すべて、私たちが関わることですから」
「うぅ……わかってるけど……」
ヘスティアは肩を落とす。
そんな二人のやり取りを見ながら、アテナはふっと表情を引き締めた。
(……そうだよね。これはただの“会議”じゃない)
知恵と戦略の神として、
この場で求められるのは“答え”だ。
(ちゃんとしないと……!)
――数分前まで漫画を読んでいた神とは思えないほど、真剣な眼差し。
「よしっ、行こう!」
アテナは気合いを入れ、重厚な扉に手をかける。
ギィィ……と音を立てて開かれる扉の先。
そこには、すでに集まり始めている神々の姿があった。
オリュンポス十二神。
その全員が揃う、神界最高位の会議。
――その幕が、今まさに上がろうとしていた。
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