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アテナちゃんの神界物語  作者: れんP


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2/13

第一柱 「戦女神アテナちゃんの日常」


 


ここは神界。

その中心にそびえ立つ、白亜の神殿――パルテノン神殿。


知恵と戦略を司る神、アテナの居城であり、オリュンポスの象徴とも言える場所だ。


荘厳な柱が並び、神聖な空気に満ちたその神殿は、本来ならば静寂と威厳に包まれている――はずなのだが。


 


コンコンッ。


 


扉を叩く軽やかな音が、廊下に響く。


「アテナ様~? いらっしゃいますか?」


声の主は、神霊メイド。

神の御霊から生まれた存在であり、不思議な力を持つ“神界の従者”の一種だ。


しかし返事はない。


 


「……コンコンコンッ」


 


少し強めに叩く。


それでも反応はない。


 


「アテナ様~~~!!」


 


――しばしの沈黙。


 


「……はぁ~、入りますよ」


 


次の瞬間――


 


バンッ!!


 


勢いよく扉が開かれた。


 


「わわっ!?」


 


中から聞こえたのは、慌てた少女の声。


部屋の中では、金色の髪を揺らした少女――アテナが、慌てて何かを隠そうとしていた。


机の上には、巻物――ではなく。


 


明らかにこの神殿には似つかわしくない、“漫画”が広げられていた。


 


「アテナ~~~……また漫画ですか」


 


神霊メイドは、呆れたようにため息をつく。


その視線の先で、アテナはえへへ、と照れ笑いを浮かべた。


 


「えへへ~。だって面白いんだもん」


 


知恵と戦略の神、アテナ。

オリュンポス十二神の第2席に位置する存在。


本来であれば、神々の中でも指折りの叡智を持ち、常に冷静沈着であるべき神――なのだが。


 


「……それで、今日は何の漫画を読んでいたんですか?」


 


「えっとね、これ! 人間界の戦略バトルもの! 心理戦がすごくてね、参考になるんだよ~!」


 


「……それを“参考”にする必要がある状況が来ないことを祈ります」


 


神霊メイドは軽くこめかみを押さえる。


どうやら今日も、この主は通常運転らしい。


 


「アテナ、今日は会議でしょう?」


 


ぴたり、と。


その一言で、アテナの動きが止まった。


 


「……へ?」


 


ゆっくりと顔を上げる。


 


「……会議?」


 


「はい。オリュンポス十二神全員参加の定例会議です。――もうすぐ始まりますよ?」


 


沈黙。


 


「………………」


 


「………………」


 


「――あ」


 


嫌な予感しかしない声が、部屋に響いた。


 


「忘れてましたね?」


 


「ごめんなさい!!」


 


次の瞬間、アテナは漫画を机に放り投げ、慌てて立ち上がる。


 


「な、なんで教えてくれなかったの!?」


 


「三回呼びました」


 


「うっ……」


 


「その間、ずっと読んでました」


 


「うぅぅ……だっていいところだったんだもん……!」


 


「言い訳は後で聞きます。とにかく急いでください」


 


神霊メイドはそう言いながら、すでに準備済みの外套を手渡す。


さすがは優秀な従者、主の行動は完全に読んでいる。


 


「うぅ……威厳ある神でいたいのに……」


 


「その前に遅刻しない神になってください」


 


「ぐさっ!」


 


的確すぎる一言に、アテナは胸を押さえた。


 


だが、落ち込んでいる暇はない。


 


「よ、よしっ! 行くよ!」


 


外套を羽織り、勢いよく扉へと向かう。


 


その背中には、確かに“戦女神”としての風格が――


 


……ほんの少しだけ、あった。


 


「……漫画は片付けておきますね」


 


「お願いしまーす!」


 


そんなやり取りを背に、アテナは神殿の廊下を駆けていく。


 


知恵と戦略の神。


その名に恥じぬ叡智を持ちながら――


 


日常ではちょっとだけポンコツな少女。


 


これは、そんな戦女神アテナちゃんの、

騒がしくもどこか平和な日常の一幕である。


ここまで読んでくれてありがとうございます。

次回もお楽しみに

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