プロローグ
ここは神界。
オリュンポス十二神率いる、十二柱の神々が統治する世界。
それは空の上にあると語られることもあるが、実際にはそこに存在しているわけではない。
神界は人間界と重なり合うように存在する“もうひとつの層”であり、触れることも、見ることも叶わない場所に広がっている。
人はそれを、時にこう呼ぶ。
――天国、と。
雲海のように広がる大地。
神殿が連なる荘厳な景色。
永遠にも思える静寂と、調和に満ちた空気。
だが、その内側では。
神々は今日もまた、それぞれの役割を果たし、時に言い争い、時に笑い、思いのほか“騒がしい日常”を送っている。
完璧で、絶対で、揺るがぬ存在。
――それが神であると、人は信じている。
けれど。
「……あれ? この書類、どこに置いたっけ……?」
そんな声が、神殿の一角から聞こえてくることもある。
知恵と戦略を司る神。
その名は――アテナ。
冷静沈着、才知に優れ、数多の神々の中でもひときわ高い知性を誇る存在。
……のはずなのだが。
「うーん……絶対ここに置いたはずなんだけどなぁ……」
机の上に広げられた巻物の山を前に、首をかしげるその姿は、どこか“完璧”という言葉からは少し遠い。
これは、そんな彼女の物語。
神界という壮大な世界で繰り広げられる――
もしかすると壮大で、もしかすると少しだけゆるい、日常の記録。
さあ、覗いてみよう。
知恵の神が過ごす、“日常かもしれない日々”を。
ここまで読んでくれてありがとうございます。
次回もお楽しみに




