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狐と言えば・・・巫女!  作者: フィノ


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277話 実感がわかない

「ただいま〜、木本おじさんきてたの?これ買ってきたから食べて。」


「挨拶は間違ってねぇしおじさん呼びもいいが、明らかにニュアンスが違うじゃねぇか。で、内見って話だけど今朝シャワー借りた。後でクリーニングは入れるが、浴室は湿ってるぞ。」


「木本さん、真利より先に部屋に生活臭や加齢臭を付けるくらいなら銭湯へ行かれてはどうですか?女性として苦言を呈しておきます。」


「大丈夫だ柊。俺はお前を女性だとは知っていても、女性としては扱ってねぇ。それはマリちゃんも同じだ。よって、野郎の臭いで批判される言われも・・・、加齢臭って言ったかお前?」


「はっきりといいましたが?」


「そこはオブラートに包め!それと俺からは加齢臭はしない!これでも身だしなみは気をつけてんだよ。抗酸化作用の高いアメとかも舐めてる。」


「気にしてるんでしたらビタミンCやE。後はポリフェノール多めがいいですよ。或いは、そう言う薬も出せますね。」


「そこまでじゃねぇよ敷田さん。まぁ、俺が言うのもおかしいが入れ。」


 そう言われて中に入る。まぁ、玄関はそこそこ狭いにしても、リビング自体は結構広いしそこへ行くまでにトイレやら、風呂場がある。個人的な高ポイント点としてはユニットバスじゃないところとか?


 ドアしてもトイレと風呂が一緒だと、トイレに行くたびにジメジメした感じが好きにはなれないんだよなぁ〜。更にそこに洗面台が付くと、完全に1人暮らし部屋と言えるだろう。なにせ誰かがトイレに入ってたら、その空間は使えないのだし。


「よく来たな、マリ。」


「来たけどどう?一晩いてみて。」


「どうと言われても困る。備え付けの物はあっても、それ以外はないのだぞ?ただ、隣の部屋から音も聞こえないから、それはそれでいいとは思うが・・・。」


「今は防音性とか高いからねぇ。生活スタイルもそれぞれだし、深夜に活動する人とかもいるし。」


「リビングは明るくていいですね〜。備え付けの洗濯機も乾燥機能付きで、コンロもIHで火事の心配も少ないですし。ないのは冷蔵庫とかですか?柊さん。」


「レンタルでリースしたのはそれだけですよ。冷蔵庫は容量の問題で保留ですし、真利だけならミニ冷蔵庫とかでも十分でしたし。でも、今だと食べることも必要ですから、敷田さんからも意見をいただこうかと。」


「う〜ん・・・、マリちゃんとブライトさんに必要なタンパク質・・・。ちょっと三枝主任とも話してみます。食事と言う話だけを考えるなら、栄養の偏りがないものがいいですけど、それにプラスアルファでタンパク質の補給が必要と言う話もありますからね。」


 そんな話をしている横で、俺は部屋を見て回る。アイランドキッチン風なキッチンから見通すリビングは明るいし、殆ど使わないとはいえプラグの差込口も何箇所かある。バルコニーは非常階段兼・・・、隣の部屋華澄の部屋へ続く扉がある。


 そんなバルコニーでは鞍馬さんが、渡したカボチャを横に置いて座禅を組んでるけど、やっぱり外がいいのだろうか?1月だから寒いとは思うけど、あんまり気にしない人と言うか天狗だしなぁ〜。まぁ、それはいいとして、もう一度室内に戻り各部屋を見ていく。


 概ね華澄の部屋と間取りは同じ。但し、入ったこともない部屋があるから余計に広く感じるな。でも衣装部屋完備は嬉しい。そこそこのマンションなら、今どき大体物置兼衣装部屋は付いてるけど最初から突っ張り棒とかがあれば、そこを衣装部屋としやすいしね。


 その他は華澄が置いたのかソファーもあれば、トランクルームに預けた荷物もおいてある。段ボールを開けて中を見ると、華澄と撮った昔の写真やらが出てくるけど、それよりも昔の姿の方に目が行っちゃうなぁ〜。でも・・・。


「どうしたの?・・・、写真・・・。」


「先に言うけど、悲しくなったとかじゃないからね?華澄。」


「そう?でも・・・。」


「俺自身も見たら衝撃を受けると思ってた。でも、衝撃よりも先にこんな感じだったっけ?って方が先に来た。」


「それは今まで写真とかを見てなかったからじゃ・・・。」


「そうかもしれないし、違うのかもしれない。でも1つ言えるとするならこれは過去で・・・、そして。うん・・・。今じゃないよ。多分、アバターを見過ぎてたか現代人だから、逆に生身の顔を見たら違和感を感じるのかもね。」


 事故から目覚めた当初に言われた『現代人は鏡よりもアバターを見る』と言う三枝先生の言葉。あの時はあまり実感がなくて、先に事実だけがあった。でも、今こうして過去が現れて目に見える形で手の中にある。うん。だからこれは思い出であっても今じゃない。


「私は今の真利も過去の真利も好きよ。」


「ありがとう・・・、嬉しいよ。」


 そう言って華澄が抱きしめてくるけど、相変わらずの身長差のせいで顔が胸に埋まって誠に苦しい。いや、雰囲気読んで暴れたりはしないよ?でもそれが一瞬じゃなくて数分なら?


パンッ!パンッ!パンッ・・・!


「なんだ!?」


「マリ!どうした!?」


「・・・。」


「・・・、木本。夫婦とは嫁が夫を絞め落とすものなのか?」


「そんなわけねぇよ。柊・・・、マリちゃんが白目向きそうだぞ〜。抱き締めるなとは言わんが、絞め殺すなとは言わせてもらう。」


「はっ!久々の真利成分補給で時間を忘れていました。真利、大丈夫?」


「な、なんとか・・・。」


「マリも苦しいならバフを盛ればよかろう。」


「あのねぇブライト。バフ盛ったらどうなるかわかる?シラフで盛ったことは少ないけど、下手したら石畳砕くくらい力が増すの!そしたら華澄がひき肉になるでしょ!」


「むっ・・・、確かこの世界の者はレベルは上がってもアーツや魔法、バフは覚えないし宣言してもダメだったな。基礎ステータスの上昇・・・、いや。劣化か?だけでよくやる。」


「逆だよ逆。出来ることは増えても制限がかかるから、人はどうにかしようと足掻いて楽を目指す。なにせ今が楽でこれから先もそれでいいなら、何1つ努力することも考えることもしなくていいしね。」


「そんなもんか。それで、内見と言うものはいいのか?」


「私はいいかなぁ。部屋の広さもいいし、思い出とも出会えたけど・・・。これは華澄に預けるよ。なんか、手元にあると面倒を呼びそうだし。」


「いいの?」


「いいよ。華澄なら悪用もしないだろうし、なにかあったらそれで私が私だと言えるでしょ?」


「真利・・・!コラ!ブライト!なんで私より先に抱きつこうとする!離れろ!」


「柊の言うマリ成分と言うものを補給しようと思ったのだが・・・。」


「ブライト、流石に空気読まなさ過ぎ・・・。まぁ、空気を読めと言っても難しいのは分かるけどね。」


 釈然としないブライトはまぁ、仕方ない。空気読めって要は経験による同調を強化して最適な行動を取れって話だし。ブライトはまだ現実世界に来て日が浅い上に、元々NPCだから空気を読む読まない以前に経験が姿を借りて歩いているようなもの。だって今は頭も多分脳みそもあるけど、それ以前はAIから直接データ貰ってたんだろうし。


「空気嫁・・・、膨らませるやつか?」


「いる?いるなら買って渡すよ?」


「真利疑問じゃなくて確定で渡して。真利を襲わないように、寂しいからと布団に潜り込んで来ないように。」


「我はそんなことを・・・。そもそも目を閉じて横で寝ているだけで何だと言うのだ?マリは我の姉ぞ!」


「「「おぉ〜・・・。」」」


「3人揃ってなんだと言うのだ?」


「いや、ブライト自身の認識が進んだなぁ〜と。」


 姉弟設定をブライトが完全に理解したかは別として、普通に今のセリフが出るならまぁ大丈夫かなぁ〜。外見だけなら外国から来た人だし、言葉は流暢だとしても今どきだからどうしたという部分もあるし。


「とりあえず居間に戻ろうか。買ってきた差し入れもあるし。」


 そして居間に戻ると、座禅を組んでいた鞍馬さんがカボチャを膝に置いてソファーに座っていた。ただ、差し入れで買ったコンビニグルメやらスイーツを食べてたのか空がテーブルの上に転がってる。


「狐か、このカボチャ。俺には渡した意図は理解しているか?」


「渡した意図?逆に聞きたいんですけどなにか分かりました?」


「・・・。依り代だと病院で伝えた。そして、座敷童子殿とも話してみた。」


「まぁ、座敷童子は隣の部屋にいますし?いるよね華澄。」


「いるわよ?木本さんのところに返そうかと思った矢先に姫子さんが来たから、返しそびれて私の部屋にいる。でも、師匠は私の部屋を訪ねてない。」


「当たり前だ。面と向かわずとも話せる。そして、座敷童子殿が狐のところに向かった方法も聞いた。概ね俺と同じだが、それでも肉体のある俺と人形を依り代にする座敷童子殿とは違う。」


「まぁ・・・、それは確かに。でも、なにが分かったんです?」


「ある意味外法なことだ。前にぬらりひょんをこれに食わせたと言ったな?」


「ええ。桃とカボチャどっちがいいか聞いたら、カボチャがいいと言ったので。そして動けないとか騒いでましたね。」


「そうだろう。これはあくまで狐が相手を縛るための物だ。」


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