276話 割と人は他人を意識しない
車に揺られてどんぶらこっこ・・・。はい、助手席に座ってますが、相変わらず尻尾のせいで窮屈です。むしろ、シートベルトの意味は何なのでしょうか?自動運転だからつけなくていい?バカ言っちゃいけない。してないと事故ったらフロントガラス突き破って普通に飛び出るぞ?
まぁ、その方がいい時もあるよ?確か、俺はシートベルトが焼けるまでは火だるまコースだったし、自力でシートベルトはずしたかも定かじゃないしさ・・・。
「助手席をガッチリホールドしてる尻尾は、意識してそうしてるんですか?」
「本当ならシートベルト外したいんですけどね。外に飛び出すのと逃げられない様に縛られてるのなら、私は外に飛び出る方がいい。場合によりけりですけどねぇ。」
「ダメよ。外に飛び出したら真利は勝手に走っていくでしょう?」
「少なくとも事故なら、警察と病院と弁護士の所には走っていくかな?」
まぁ、動ければだけどね。軽いなら保険屋に連絡して処理してもらってもいいけど、そうじゃないならさっさと専門家へ投げる。じゃないと、話がこじれてややこしくなることもあるしね。まぁ、大体の人はスマートレンズ着けてるから双方の状況は分かるし、言い逃れしようとしてもよっぽどのことがないと無理。それこそ、いきなり停電するとかね。
「コンビニによってほしいって言ってたけど、あそこでいいかしら?どこのコンビニがいいとか言うなら、こそによるけど。」
「いや、こだわりはないからあそこでいいよ。」
マンションからはまだ離れてるけど、華澄からそんな提案があった。コンビニ毎に色々と特色を出そうとしてるけど、特にこだわりはないかなぁ〜。営業マンの時はどこのコンビニスイーツが美味しいとか、季節モノやら新作やらは現場への差し入れになるからある程度は見てたけど、今はあんまり関係ないし。
車が駐車場に止まり、いざ車外へ!平日と言うこともあり、駐車場にある車自体は少ない。ただ、ゼロじゃない以上こちらを見る人も少しいる。いや、見てるようで仕事かゲームでもしてるのかな?或いは見えないけどAR表示でなにかしてるとか?
前は他人の視線とか気にしなかったけど、今だと見られてるのか見られてないのかわからないなぁ〜。そんな事を思いつつ、一緒に降りてきた華澄と店内へ。なにを買うかって?お酒だよ!店内に入った時点で視界に本人証明接続依頼が来るので、そのまま接続を許可。
「らっしゃっせ〜。」
レンジに座ってる店員は適当な挨拶をしてくるけど、ほぼ座ってるだけなんだよなぁ〜。そんな事を思いつつ飲み物売り場に行ってお酒コーナーのロックを外し、9%のお酒を買い物かごにイン!未成年だとロックは外れないし、スマートレンズやらスマホを持たない人は店員を呼んで開けてもらうしかない。でも、これで成人していると言う証明は確固なものとなった!
「〜♪」
「ち、ちょっと真利!?いくらなんでも買いすぎじゃない?」
「あら?ついつい嬉しくて5本くらい投げ込んでた。いや〜、新作やら季節限定品が出てるとついね。え〜と・・・、備蓄でもいいけど今回は何本かキャンセルするか。華澄もなにかいるならカゴに入れてね。」
「なら、エナドリ買ってもらおうかしら。」
華澄がエナドリを選ぶ間に店内を見て回り、適当な軽食やらをカゴに入れる。スイーツの新作かぁ〜、木本さんたちへの差し入れに買っとくかな。後は・・・。
「むむむ・・・。」
「なにをそんなに見てるの?」
「サラダチキンを買うのはいいとして、結構種類があるなぁ〜と。タンドリーはいいとして、このスーパージャンキー味ってなに?食べたことある?」
「ないけど、レビューを見たらプライドチキン味らしいわよ?」
「なるほど、揚げ物の代名詞でジャンキーなものと言えばそうなるのか。華澄はそれでいい?」
「タウリンとカフェインとナノマシン入りなら効くはずよ。」
「タウリン千ミリグラムとかはいいとして、輸送ナノマシン配合はどうなんだろうね?」
仲介業者だから知ってる。小さく表記されてるけど実際にナノマシンは入ってない。プラシーボ効果を高めるために記載されていますが、実際にはナノマシンは配合されず代わりにビタミン剤が入ってると。まぁ、本当にナノマシンが入ってたらこんなに安くは買えないのよね。
それにどこに運ぶかも分からないナノマシンとか怖くて飲めないし。本当にナノマシン配合なら病院で処方されるさ、なにより保存期間の問題で消費期限が一気に短くなる。でも、効きそうと言って買う人は多い。
「あした〜。」
結局店員と話すこともなくコンビニを出る。見られてる気はするけど支払いは電子会計で完了してるし、袋詰めも自分たちでするから話すこともない。実に楽でいい反面、若干の肩透かし感を感じるものの、特に違反とかしてるわけでもないからこんなもんか。
「戻りましたよ敷田さん。」
「どうでした?」
「どうと言われると悩みますけど、強いて言うなら自信はついたとかですかね?私が思うよりも世界は私を見てないし、世界が思うよりも私は街に溶け込めてるのかも。まぁ、不用意なことはしませんけど。色々買ってきましたけど、敷田さんもなにか食べたり飲んだります?」
「お茶があったらもらっていいですか?」
「いいですよ、紅茶しかないですけどいいですか?ミルクティーとか、ストレート。変わり種だとロシアンティーとか。」
「ならロシアンティー下さい。」
いちごジャムフレーバーのロシアンティーを敷田さんに渡し車は走り出す。マンションはここからはそう遠くない。これで窮屈な車ともおさらばだけど、移動を考えると大きな車とかも必要かなぁ〜。なにせ俺もそうだけどブライトの場合羽がある。
流石にうつ伏せで運転できる車はないけど、中が広い車は今の背中に何かある者連盟としてはとても魅力的に見える。と、言うか鞍馬さんセコい!あの人も羽あるのに、出し入れ自由とか!そんな事を思っている間にマンションに到着し、駐車場からエレベーターでフロアを上がり、華澄の部屋のある階へ。
「鍵の受け渡しとかは?」
「後日になるわね。電子キーはよくても普通の鍵は管理人室以外には置いてないし、大体の人は物理キーをいらないって人もいるし。いらないなら後は登録だけだけど、真利の場合必要になるでしょ?」
「私と言うよりブライトだけどねぇ。と、敷田さんどうしました?」
「いや、割と豪華なマンションだったからびっくりしました。2DKですよね?」
「違うわよ敷田さん。私の所は座敷が散らかしたり、仕事の道具を置いたりしてるからそういう風に見えるけど、家族向けくらいの広さがあるわね。」
「仕事道具・・・、木本さんみたいに木簡とか?」
「違うわよ?刀とか発電機とか蓄電器とかね。」
サラッと華澄が言うけど、発電機とか蓄電器って何に使うんだろ?ゴーストバスターズよろしくビームが出て電気精神体を捕まえるとか?いや、でも追い払うだけって言ってたし謎は深まる。
「それって有効・・・。」
「おう、部屋の前で声がするから出てみれば、お前たちか。わざわざそんなところで喋らず中入れ。平日の日中だから人は少ないだろうが、あんまり目立つこともねぇだろ。」




