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狐と言えば・・・巫女!  作者: フィノ


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273話 アンカー

「座敷童子もそのような事を言っていましたが・・・。否定できない部分が多いので、頭ごなしに無理とは言いません。しかし、不明確な部分が多すぎます。」


「不明確っつてもなぁ・・・。事実としてそこにブライトもいるし姫子もいる。荒唐無稽な話を荒唐有稽な話にしてるだけだぞ?なにより、三枝先生自身がその階段の1段を作ったほうじゃねぇか。」


 そう言われて三枝先生も黙るしかない。まぁ、確かにバイオナノマシンを作ったと言うか、こう言う形でと依頼したのは三枝先生で、形にしたのは川端さんのチームで、それを仲介したのは俺。まさかこんな事になるとは誰も思ってなかっただろうけどさ。


「座敷童子殿もそう言われたか。三枝と言ったか・・・、そちらには八百もいれば荒五郎もいる。それからなにかは聞いているのだろう?」


「鞍馬さんそれは・・・。」


「そもそもその狐は既に止まらんぞ。事故でお焚き上げされ、それでもなお舞い戻り、しかし自身を置いたのは此処ではなく別の場所。イザナミでさえ戻れぬ道を戻り、醜き姿を晒してもその手を放さぬ者がいた・・・。それを経たなら後は進むしかなかろう。」


「いや、鞍馬さん?私そんな大層な者じゃ・・・。」


 めっちゃ持ち上げられてる!?と、言いつつも事実だから否定できないんだよなぁ〜。確かに俺は事故で火だるまになって死にかけたし、そこから復活と言うか生き返った。なにをもって死んで、なにをもって生きてるのかと言われると、こうして話しているから生きてるとも言えるし、ゲームの方ではログアウトして存在してないから死んでるとも言える・・・。


「狐。本人の自覚と言うものは、時として他者によって塗り替えられる。それは狐自身が感じていることだろう?」


「それはまぁ・・・。こんな姿になって配信者してますし、魔法っぽいものも使えますからねぇ・・・。」


 そうなると、俺のアンカーってなに?何処にあるべきなのかを定めると言うなら、どこなのだろうか?まぁ、決まってると言えば決まってるのだが、それはそれを言うのが恥ずかしいと言えば恥ずかしい。けど、隠すべきことでもない。


「でも。私は助けられてここで生きていて、私自身を変わらず好きと言ってくれる人がいる。仮に鞍馬さんがイザナミイザナギ神話を語るなら、華澄は私を見ても手を離さずにここへ連れ帰った。違いますか?」


(相変わらず柊の勘は鋭い、か。確かに彼奴がマリちゃんをゲームで見つけて俺たちに引き合わせた。仮にあのままマリちゃんを見つけることなく、仮想世界に根を下ろせば考え方も変わってたかもしれねぇな・・・。いや、座敷童子を預けてたから、そこで多少運気が上がったか?)


「違わねぇぶん気をつけろって話だ。鬼一、お前にしては饒舌なのはいいとして・・・。ブライトがずっと医療ポットの中からこっち見てるのはいいのか?」


 木本さんがそう言って医療ポットを指差す。酸素マスク着けてるのはいいとして、ガラス面に顔をビタ付けしているブライトが!そりゃぁ、検査で入れられてそのまま俺達は話し込んでたからなぁ〜。


 でも、そうしないと普通に声が聞こえるし、今の会話をブライトに聞かせていいものかも迷う。ブライト的には医療提携型AIは自分たちの神様的ななにかで、AIアマテラスは外から来たなにか。


 まぁ、医療提携型AIとアマテラスは普通にやり取りしてるし、性能的に言えばアマテラスの方が数段上だろう。と、言いつつも医療提携型AIは医療提携型AIでそっち方面に特化してるから、一概にはどうとは言えないか。


「・・・。よろしくはありませんが、ふやけて溶けることはないでしょう。」


「主任、排水します?一応、他のデータもそろってるはずですけど。」


「ええ、お願いします敷田さん。医療ポットと同期したスマートレンズの方にも指示した項目のデータが全て出揃いました。」


「不思議なもんですね、私は存在Xにされたのにブライトは分かるんだ。」


「基礎データそのものを一新し、再度入力しなおしていますよ。」


「基礎データっつうとバイオナノマシンのか?三枝先生。」


「いえ。それはスタートであっても基礎ではありません。現状、大元となったバイオナノマシンのデータを使用しての解析には限界があるとして、新たにマリちゃんの毛から解析したデータを使用しています。・・・、データは多い方がいいので尻尾を一本もらえませんか?」


「いやですよ!毛ならいいですけど、尻尾切断とか!生えるかも分からないのに。」


「冗談ですよ。流石に医者として人体実験をする気はありません。」


 そうは言いつつも三枝先生が俺の尻尾見てるんだよなぁ〜。こう・・・、10尾あるなら1尾くらいくれ的な?でも、鞍馬さんとこに行って雪玉を尻尾でガードしたけど、千切れ飛ばなかったってことはそう言うもんなんだろう。


 むしろ、ジャストガードの反射ダメージを表現するために、千切れた尻尾がもぞもぞ動いて、相手に飛びかかかったりしたら怖い。いや、ペットとしてはありなのか?目も鼻も口もないからそのうち朽ちるんだろうけど・・・。


 そんな事を考えている間に排水は終わり、ポットが開いて短パン水着のブライトが出てきた。羽が動かせたと言う話は本当らしく、水滴の落ちる羽を広げて見せたけど・・・。


「そのまま羽を振るの禁止!」


「む・・・、ジメジメって気持ち悪いのだが?こう・・・、放っておくとキノコが生えそうな感じが・・・。」


「周りに飛び散りはしないけど、ドライヤーとか使ってよ。」


「鬼一は適当に振って乾かせと言っていたが?なによりここにはドライヤーもタオルもない。」


「タオルはそこの籠にあるものを好きに使って下さい。しかし、本当に羽が動くのですね。敷田さん?」


「バッチリ撮影できましたよ!三枝主任。ブライトさん的には、羽を動かすってどんな感覚なんですか?」


「腕を・・・、肩から腕を動かしている感じだ。普段は折り曲げているとも言えるが。」


「なるほど、新しい腕ですか。なら、阿修羅型のアバターとかを元にした感じですかね?マリちゃん。」


「そう聞かれると困りますけど、確かに背中に腕があると言えばトラブルオンラインだと阿修羅型の多腕アバターですね。でも、折り曲げてるならペンギンの足とか?」


 いつもガニ股でいるペンギンだけど、実はスラっとした長い脚を持つ。阿修羅型アバター作って腕を持て余した人が、その腕を腕組みさせたり、背中に折りたたんだりするけど、そんな感じかな?まぁ、今は動くから邪魔ではないんだろうけどさ。


「マリ、足よりは腕だ。」


「なんかこだわりが?足4本でも腕4本でも変わらないような・・・。」


「可動域的な問題だとよ。自分を包むように曲げるのもいい、背中で平行に伸ばすのもいい。だけど・・・。」


「角度としてハの字はよくても、それ以上曲げようとすると痛む。」


「あ〜・・・、そのあたりは先生達案件だから私はパス!」


「単純に考えるなら腱と筋と関節の問題でしょう。腕は回せますが、ハンマーロックなどの関節技を使えば固定出来てしまいます。それの応用状態として、可動域の限界がそこにあるのかもしれません。しかし、ハの字にできると言うなら羽ばたく形を取ることも可能でしょう。」


 やっぱり医者すげ~。本当にそうなのか、或いは別の正解があるのかは横に置くとして、ブライトが腕にこだわる理由からそこまで推測するのだから恐れ入る。でも、羽ばたけても飛べないんだろうなぁ〜。まぁ、飛んでも困るんだけどさ。


「なら、どこまで折りたためるかが問題ですね。小さくコンパクトに折りたためたら目立ちませんし。」


「我の羽はこれ以上小さくはならんぞ?自分の腕で力こぶを作ってみろ。」


「力こぶ?ムキッ!と。どう?このぷにぷにの腕。」


「姉の腕はどうでもいいとして、その腕をそれ以上折り曲げられるか?折り曲げられるなら、我の羽も折り曲げられると思うが・・・。」


「・・・、関節外す?」


「マリちゃん、それだと更に分が悪くなりますよ!」


「わかってますよ敷田さん。物理的にあるものはそれ以上コンパクトには出来ませんからねぇ。後は羽をむしって手羽先みたいにして細くするとか?と、これだと話が堂々巡りだからやっぱりコスプレ路線かぁ〜。鞍馬さんとロックバンドとか組む?」


「・・・、狐。なぜ俺がロックバンドを組むことになる?」


「いや、格好的にロッカーっぽいなぁ〜と。木本さんも入れて、往年の有名バンドとか・・・。マリアン!とか歌います?」


「それはマリアンじゃなくてメリーアンだ。」


「知ってるじゃないですか、もぉ〜!」


「熊よけには賑やかな曲がいいだけだ。」


「お前・・・、熊ごときなら素手で倒すだろ・・・。」


「・・・、言うな木本。狐が変なことを言い出す。なんにしても、その羽はブライトの羽としてある。晒すも隠すも本人次第だ。」


「確かにそうなんですけどねぇ。そうなると、色々問題もあるんですよ?鞍馬さんの羽はなんか知らんけど隠せてるから、普通に日常生活は送れる。でも、私は狐耳に10尾でブライトは羽付き。人の多いところだと目立つしらおちおち外出とかも・・・。そもそも、私は病院にいるからこのままブライトを預けっぱなしってわけにもいかないでしょう?」


 最大の敵は買い物!通販やら宅配ボックスやらを使えば、人に会わない生活というものはできる。それこそもう会社員でもなくなるから、引きこもろうと思えばいくらでも引きこもれるし、お金の心配も今のところはない。


 でも、ちょっとあれ足りないが出た時に『なら買いに行くか』がかなり難しいし、なにより外で暮らすとなると俺1人ならどうにかできるけど、ブライトまでとなるとなぁ〜。


「そのことで1つ、宮内庁側から提案がある。」


「提案、ですか?どっかの神社に住めとか?」


「ちげぇよ。お前、鍋食いに外出して柊のところに行ったよな?」


「ええ。闇鍋を座敷童子大先生と堪能しました。」


「闇鍋て・・・。まぁ、今からその闇鍋を作るようなもんだが、あそこは宮内庁の持ち物でな。ある程度電気精神体なんかの話にも理解がある。そして、柊に準備させてるんだが・・・、あいつの横の部屋に移り住まねぇか?」


「ですから、その話は天野医院長と話しているから・・・。」


「卜部さんと天野医院長が話して承諾はされてんだよ。後はマリちゃんの気持ち次第だ。」


「気持ち次第・・・。いや、気持ち次第じゃないですよ。そもそも、私のこの体をどうするか?三枝先生や敷田さんはどうするのか?そして、通いで診察なんかでもいいのか?問題自体が私個人のものじゃなくなる。毎回私が来るからと2人とも夜勤ではつらいでしょう?今日もブライトが来るからと夜勤ですし。」


 他人にお願いするのは意思表示。他人を使うのは損得感情。木本さんの話を考えると、ブライトの首を落としてトラブルオンラインに返せば、1番角が立たないようにも思う。でもそれはそれで先に進まないための思考停止とも言える。生活するだけで考え事は増えるなぁ・・・。


「その点でしたら私達は心配ありませんよ。」


「心配ない?どうしてまた。」


「天野医院長から私と三枝主任、そしてゆくゆくは白波も含めたチームを作るって話が来たんですよ。」


「えっ!?チームはいいとして、三枝先生は白波先生のことを・・・。」


 研究の方向性の違いか、はたまた本当に性格があわないのかは別として、三枝先生は白波先生のことをあんまりよく思ってないんだよなぁ〜。俺の感覚としては医者らしい医者で、話し方にさえ目をつぶればいい顧客だとは思うけど。


「外部からのナノマシン操作、この分野では私よりも白波先生の方が知見が広い。論文を読み、マリちゃんが言うように本人と話し、そのことを踏まえて医院長と協議した結果、ゆくゆくはマリちゃんのことを開示してもいいと言う方向性です。」


「正式にチームが立ち上がるまでは普通に医者してますけどね。なので、私達医者を足枷のように思わないでくださいよ、マリちゃん。ね、三枝先生。」


「ええ。私達は医者で送り出す立場の人間です。そもそもマリちゃんは病人ではなく、健康な一般人なので病床を空けてください。その代わり、被検体でもあるので定期受診をお願いします。」


「そう言われると、行かない理由がないじゃないですか・・・。」


「横に柊、少し離れたところには俺と姫子もいる。くれぐれも変なことはするなよ?」


「しませんよ、そんなこと。精々引っ越し蕎麦を投げ込みに行くくらいです。」


 ある意味ファーストミッション!近くの家に引っ越し蕎麦を持っていくの巻。通販で買うんじゃなくて、どこかの店に行ってちゃんと買おう。それが一般人としての第一歩になるんだろうし。


「いい話し風に話しているところですまないのだが・・・。」


「なに?私と同居予定だけど姉弟だと嫌?」


「いや。マリといるのは構わないのだが、我はどうやって元いた場所へ戻る?」


「・・・、あっ!確かに!私も領地が使えないから結構不便だったんだよねぇ。でも、大先生なら分かるかも・・・。いや、木本さんも分かる?」


「言っとくが俺は人間やめてねぇからな?あと、ブライトの個人データはちょっとまて。姫子と言うデータを差し込んだばかりで、次がでれば流石にアマテラスもおかしいと勘づく。そうなったら流石に岩戸でも・・・。」


「いや、個人データはいいんですよ。スマートレンズなんかがなくても、買い物なら最悪現金でどうにかできますから。そこじゃなくて、大先生が電子の海をうろうろしてた方法です。」


 大魔法の百鬼夜行をトラブルオンラインで使ったら、座敷童子大先生がひょっこり現れた。要はそれと同じ事ができれば、ブライトはめでたくトラブルオンラインに戻ってこれる。なにせ、大先生曰くNPCを借りてるだけとか言ってたし、元々NPCであるブライトなら親和性も高いだろう。でも、電気ケーブル持たせるだけでOKな訳はないんだよなぁ〜。大先生はそれでうろうろしてたし、なくても来ちゃったんだけどさ。


「それは俺じゃなくて鬼一や座敷の領分だな。鬼一、なんかねぇか?」


「俺は座敷童子殿ほど自由に歩き回らん。だが、空の器があるのなら、それを満たせばよかろう。」


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― 新着の感想 ―
>「いや、格好的にロッカーっぽいなぁ〜と。木本さんも入れて、往年の有名バンドとか・・・。マリアン!とか歌います?」 そのバンドは、翼は背中じゃなくて、ギターについてない?
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