268話 水着姿は有料!
「ちょっと!足!足に巻き付いてる!」
『餌!キラキラした餌が!』
「・・・、焼いて食いてぇなぁ・・・。」
「刺身もいいじゃろ?ワサビ醤油と熱燗で。」
「俺はマリネだな、初めて食った時はお代わりしたし。」
「そんな事より助けろ下さい!あっ!私は疑似餌じゃないから!食べても骨と皮だけだから!・・・、てめえ!切り刻むぞ!」
海底神殿を目前にしてデビルフィッシュに捕まってるよ!主に俺が!水中は地上と違って若干体の動きが鈍く、水着とかラッシュガードやらを装備しないと動きの制限が解除されない。その代わり、沈むのは早い。
一応、抵抗感覚は着衣水泳を落とし込んでるらしいけど、それでも水泳でもやってないと、水中系のモンスターには若干速度は負けるし、なにより水中で雷系の魔法を使えば放電して仕様者の周りにスタンヲばら撒く。炎系だとチャチな魔法だと射程がゴリッと削られるぞ!ファイアバレット?腕一本分の距離で消えていく・・・。
「疑似餌じゃない・・・、そのフサフサの十尾は十分疑似餌だろ?巫女服来てるから目立つ目立つ。」
「ワシ、今ハンマー装備じゃからあんまりダメージでらん。」
「同じく、そのタコ。打撃半減持ってるじゃん。うぉ!10の目玉が俺の方向いた!」
「まさしくデビルフィッシュだな。確か海外で初実装された時は本気で悪い文明の運営がデビルフィッシュを具現化したって騒がれてたような・・・。エアエンチャント、貫通付与、ピンポイントシューター、音響砲、シュート!」
「うおぉぉ・・・、洗濯機!私は今洗濯機で洗われてる!」
「心かの?」
「洗濯なら命じゃね?海の温度って温水くらいだし。」
イヴァさんが弓を放つ。俺がタコに振り回されてり、回転するのに付き合わされる中、太い足をブスブス刺す。残り2人が失礼なことを言う。この足さえ部位破壊できればさっさと沈んで海底神殿に逃げ込めるのに!
「ほら、ツキさん!さっさとその足切って。海底神殿は眼の前だそ?」
「この盾バカ!盾の弱点ガンガン言いふらしてやろうか?」
「は?盾の弱点?・・・、おいバカやめろ!洒落になんねぇよ!仕方ない。装備変更:双剣、海パン、バトルフィン!速攻で刻む!足だけでいいよな!?」
「えっ!?なに?音響砲で耳がボワボワして聞こえな〜い。ジャストガード対策として1番いいのはですねぇ〜。」
「こんのド畜生が!駿馬脚!ミラージュボディ!クロックアップ!双剣術:六連七星!」
装備を変えて更に高速泳法の修練もやってたのか、陸亀さんが双剣持ってめっちゃ早く泳いでくる。あの修練って面倒なんだよなぁ〜。クロール、平泳ぎ、背泳ぎはいいとして、バタフライが面倒だし、最終試験はバタ足のフォームを崩さないこと。いや〜、やってみると膝が曲がる曲がる。
『餌!食う!これ餌!』
「そろそろ放していいよ、すぐでいいからね!マッスルアップ、刹那の怪力、斬撃強化にエアエンチャントからの!刀術:穿天小短!・・・、部位破壊完了、採取!」
「そんな足どうでもいいから神殿に行くぞ!って!フロムさんとイヴァさんは先に潜ってる!?」
「そりゃぁそうでしょう。わざわざ疑似餌である私いるのに待ってても仕方ないし、先に貝でも潰して真珠取ってるんじゃありません?」
「真珠かよ・・・、後で貝殻貰うか。あっちの方が俺にはいるし。って、なんか沈み方早くない?」
「私の下駄は鉄下駄ですよ?水中なら重し代わりにどんどん沈む沈む・・・。」
『あぁ・・・、餌・・・。』
そんなこんなで他のプレーヤーに向かうデビルフィッシュを見送りつつ海底神殿内へ。多分、足一本分のダメージは出したから倒せるだろうし、足が回復してたら新品のモンスターだから俺に責任はない。うん、リポップだと思ってね!
「おっ!来たか海亀。」
「海パンマンがおるな。」
「俺は陸亀!大体やるネタだろ?それ。イヴァさんの黄金胸毛マンには負けるよ。装備変更:通常っと。と、言うか3人とも水中装備あるよな?な?」
「え?ありますよ?ただ、美人の水着姿は有料でして。」
「むさい男の水着姿は視聴率低下に繋がるしのぉ~。」
「俺の海パン姿みたいか?ブーメランタイプだそ?豹柄で金があしらわれた。」
「アバターにむさ苦しいも・・・、あるのがいけない!有料なら有料らしく水着着てくれよツキさん・・・。」
「いや、だって沈む方が早いし、囮1人で安全に海底神殿にたどり着けるなら安いでしょう?オデュッセウスも仲間6人食わせて安全取ったし。」
「・・・、えっ?俺は?俺の頑張りと水着姿は?」
「女性参拝者向けのサービスシーンとか?それよりもフロムさんとイヴァさん、真珠は?」
「貝を割りまくって集めといたぞ。これがあるのとないのとじゃぁ、攻略速度も変わるからの。海底神殿の外でしか取れんのが面倒じゃがの。」
「いや、真珠って売却アイテムだろ?ソフトボールくらいデカいけどさ。それより貝殻くれ。戦闘した駄賃として。」
「ええぞ。しかし、陸亀さんは海底神殿はほぼビギナーか?カンストしとるのに珍しい。」
「攻略はしたけど、2回目はいいかなってところだよフロムさん。確かにアイテムやら資源は美味しいが、組み換え式ダンジョンで面倒なのと広いから時間を食う。それに来るのも面倒だし、なにより磯臭い気がする。」
「陸亀さんは牡蠣とかダメな人?」
「当たった・・・、医療ポットで治したがそれでも結構苦しんだ。で、カンストされてる方々におかれましてはその真珠をどう扱うおつもりで?」
食あたり・・・。俺は今で食あたりになったことのない丈夫な胃を持っているわけだが、やっぱり辛いんだろうなぁ〜。上
はマーライオン、下は噴水と言うからでだし。そんな陸亀さんの言葉を聞くけど、残念な事にここではまだ使い道がない。
「もちっと先に行ってからじゃな。そもそもこの真珠、なんで海底神殿の周りに沢山あると思う?」
「乱獲するためだろ?行きの駄賃に帰りの駄賃、ここまで来て手ぶらで帰るほどプレーヤーはお行儀よくないしな。」
そんな話をしつつ入口から次のフロアへ。海底神殿と言うだけあって、そこかしこに海藻は生えてるし水溜りはあるし、なによりアクティブにならないと、これモンスター?と疑いたくなるオブジェやらもある。
ありがたい事を言えばフロア制だから、そのフロアのモンスターを全滅させられたら安全とか?まぁ、だだっ広いからそうでもしないと安置が見つからない問題も出てくるし・・・。
「これは・・・、モンスターだよな?」
「海藻生えたスケルトンはオブジェ。イソギンチャク付けたスケルトンはモンスター。面倒なら殴ればいいよ、どの道近寄ったら動き出して殴るしかなくなるし。」
「そこ!ライトニングボウ!マーダーゼリーフィッシュが結構いるぞ!」
「ライトニングエンチャント!パンプアップ!マッスルアップ!パイルハンマー!!パイルハンマー!!パイルハンマー!!」
「あぁ・・・、フロムさんが杭打機に・・・。ちょっとサンマー・サンマー、攻撃して私の尻尾削らないでよ。刀術:紫電一閃!そして唐竹割り!も1つおまけに唐竹割り!」
「ちっ!シールドバッシュ!チャージタックル!震脚!見えてんだよ!って、やっぱりイソギンチャクがくっつきやがる。5カンウトはジャストガード出来ないからなー。」
カコンッ!景気のいい音を響かせた陸亀さんはイソギンチャクにやられたか。海底神殿のなにが面倒って、場所柄へばり付く、長い触手で絡め取る、漂って来たカワイイクラゲが爆発して痺れさせる等々、モンスターの強さも然ることながら、攻撃手法がいやらしいのよね・・・。
マーダー何かはレベルが上がる毎に触手が長くなっていって、最終的にフロアの端から端まで届くし。サンマー・サンマーは水溜りの中を移動してヒョコヒョコ顔だしながら、アクアバレットやら投槍を投げてくる。
「あっ!離れて瀑布来る!」
『引きずり込む!流し込む!瀑布!』
『瀑布!』
『瀑布!』
「三方向からとかうざいな!緊急回避!シールドブーメラン!」
「こっちは終わったが・・・、チャージショット!ガトリングショット!ダブルチョッパー!」
「雷獣招来!轢き殺せ!ライトニングカノン!あっ、お前にはメテオね?」
「装備変更:コロッサスの神拳!ローリングサーキット!」
『我々はサンマー・・・。』
「おっ!魚肉と魚ロッケ拾いっと。さっきので全部かな?フロムさん、こっちこっち。」
「流石ツキさん、抜け目ないの。」
「抜け目ないって、上から水滴が落ちてる大きな水溜りだろ?」
「違うよ陸亀さん。確かに大きな水溜りだけどねぇ、フロムさん。」
「そうじゃな、イヴァさん。」
「これは、海流ルートなんだよ陸亀さん。不思議だろ?水滴が落ちてるのに溢れない。海底神殿なのに空気はある。そして、海飛び込んでも水中装備に変えなかったのに全員わざわざ持ってくる。誰も水着着なかったのに、だ。」
「確かにツキさんから水着はいるって言われたが・・・、もしかして?」
「そう。そのクソデカ真珠を目印にしてこの水溜りに水着で飛び込むと、歩かなくてもフロア移動ができる!まぁ、真珠のないところへは行けないんだけどね。」
そんな話をしている横でフロムさんが水溜りに真珠を投げ込み、『1』の表示が浮かぶ。ここがスタート地点だとして、さっさとフロアを進まないとなぁ。攻略じゃなくで物探しだから、全探索していると時間経過でモンスターに真珠が壊されるのよね。
「モンスターのリポップはそこそこ緩やかじゃが、はやくせんとの。一節には他のプレーヤーがこの部屋に入ったら壊れるなんて話もあったしのぉ・・・。」
「組み換え式の理由はこれって言われてたなぁ。プレーヤーが押し寄せても中で極力出会わない様に巨大にして、その上で暇させないためにモンスターのリポップ間隔は新しいプレーヤーが入ったらってとこだったか?」
「確かそんな感じ。今はそこまで人気がないからゆっくりできるけど、陸亀さんが邪神の先触れの情報売ったら、多分ここも賑わうかな?遺跡とかに邪神の影は出るらしいし。」
「待って・・・、俺ってかなりヤバい情報を軽く売ろうとしてた?」
「さぁ?ここにいるメンバーは全員2章解放できるし、欲しがるのは効率優先で杭を全部売ったプレーヤーとか、記念で1本だけ未覚醒で残したプレーヤーとか?私は配信に流すし、情報の値段としては今がピークかも。なにせ、ずっとこの辺りにいるって保証もないし。」
陸亀さんが手のひらを突き出して顔を背けてる。投資にしろ契約にしろ情報は鮮度が命!俺達にはそこまで重要じゃないけど、悪い文明の運営の罠にかかったプレーヤーからすれば、杭は欲しいし希少ボスそのものに魅力を感じる人もいる。
それになにより、ここを穴場と見なして日夜お宝を漁るプレーヤーもいるのよねぇ。なにせあだ名が墓場神殿だし。まぁ、プレースタイルはそれぞれだし、俺達にはいい悪いの判断なんかつかない。
「それよりも先に行くぞい。ここに来るまでに結構時間を食ったからの。明日全員集まれるとも限らんし、トイレ行くなら早めに行っといてくれ。」
「なら、ちょっと行ってくる。」
「なら、俺は小腹が空いたからなにか食い物も飲み物取ってくるか。」
そんな休憩を取ったけど・・・、ここってまだ入口なんだぜ!まぁ、トラブルオンラインはトラブルと友達だから仕方がないか。




