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狐と言えば・・・巫女!  作者: フィノ


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閑話 16 成長する稀人

 夜・・・、確かに厳しいのは分かる。ゲームの習わしを考えるなら夜は確かにモンスターが強い。実際街のNPCが警告するくらいには強い。しかし、それで諦めるほど・・・。


「逃っげろーーー!!!」


「待てー!!!盗人!!!制!裁!するよ!」


「な、なんだ!?」


「稀人さんは離れとれ!盗人じゃ!下手をすれば器物破損に恐喝もやっとるかもしれん!」


 街の中を他のプレーヤーが走り抜けようと出口へ迫る。どうする?盗人ってなにを盗んだんだ?いや、なにかのイベント中か?下手に手を出せばクエストを邪魔したと言われるかもしれない。


 ここは指示に従って離れて様子を見よう。流石にプレーヤーネームしか見えない中で、誰とも分からない相手に手を出すのは早計だろう。散々今日はせっかちと言われて俺も学習はするぞ?


「へっへぇ!捕まるかよ!飛び蹴り!フットスタンプ!飛び蹴り!」


「ぶへっ!こ、こら待て!」


「アッバよ〜!」


 少なくとも俺よりはレベルが高いのか?或いはなにかクエストをこなした?


 確かにプレーヤーのジャンプ力は高い。それこそ現実的に考えるなら人の身長を超えるくらいジャンプできる。まぁ、それはアクション性を高めるためだろうし、ある程度高さも自由にできるからいい。しかし、フットスタンプと言うアーツでNPCを踏んで足場にし更にアーツを繋げて逃げていってしまった。


「大丈夫か?ヒールはいるか?」


「踏まれたくらいなら大丈夫だ。でも、あの稀人は10歳くらいか?」


「そこの稀人、その方はこちらで治療する。窃盗は罪だ、詳しく話も聞きたい。」


「確かに窃盗は罪なんだが・・・。」


「なんだ?その歯切れの悪さは。お前も仲間か?」


「違う!そもそも罪とはどんな事が?」


「窃盗、器物破損、殺人等々。稀人同士でなにかをするのは我々の管轄ではないが、住民や我々になにかをした場合は罪に問う。気をつけろよ?指名手配されれば他の街でも捕まるからな?」


________________________


       システムアナウンス


 犯罪について。

 罪は罪です、悪い事はしないようにしましょう

 指名手配されると同じ街なら5日間、騎士に追われます

 他の街なら高確立で騎士に見つかった場合、追われる

 事になります


※名も無き村には指名手配書が届きづらいかも?

※詳しくはシステムUIを確認して下さい


 

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄


 まぁ、当然と言えば当然か?NPCの反応もかなり人に近いし。しかし、プレーヤーとNPCのルールをここまでの分けるゲームも珍しい。と、言うかプレーヤー同士の争いにはかかわらないのか。まぁ、PKを嫌ったMMOは攻撃判定そのものがプレーヤーにもNPCにもないと言うものもあった。


 その結果相手をすり抜けると言う、逆の不気味さで不評だったとは聞いたことがある。なにせ握手している感覚はあるのに、手だけはすり抜けるやら抱き締めてる感覚はあってもアバターはすり抜けてるとか・・・。


「なら、やっぱりバウンティーハンターとかも?」


「バウンティーハンター?我々の所に犯罪者を連れてきても意味はないぞ?基本は現認で詰問しても証拠がない時もある。今回盗まれたのは箱の中にあったポーションだが、使われてしまっては・・・。最悪ゴールドを払えと言うこともできるが、もう近くにはいないだろう。」


「そうなのか?中々不便だな。取り得とも言えるが・・・。」


「変な癖をつけるな、それはいずれ自分の罪として帰ってくる。大犯罪者のドン・スミスと言う者は隠れていて捕まらないし、犯罪者集団を取りまとめているとも聞く。そちら側に行けば街人からの態度も悪くなるぞ?それに重ねれば重ねるほど、我々も手加減はできなくなる。」


「そうか、分かった。」


 大犯罪者のドン・スミス?まぁ名のあるNPCだから、どこかで会うのかもしれない。しかしツキと言うプレーヤーを追うにしても、そちらの方のプレーヤーではないよな?仮に犯罪者側のプレーヤーだとすれば、俺もなにかしないといけないのか?


「どうした稀人さん、呆けて。アイツは大丈夫だべ。騎士様が連れて行ったしよ。」


「いや・・・、重ねた罪を払う方法はあるのかと・・・。」


「う〜ん・・・、しないのが1番だべ。やった後悔は自分しかわっかんねぇ。それでも逃げ切れば『裏で笑う者』や『話術の桜』、他には『王ドロボウ』なんかの称号がつくべ。気もつけろよ、稀人さん。変な称号はその稀人の歴史だべ。今じゃなくて過去はそれだけヤバかったって話だべさ。」


「なるほど。今言ったもので1番ヤバい称号はなんだ?王ドロボウか?」


「違うべ。王ドロボウも話術の桜もその姿は確認されて誰かは分かる。でも、裏で笑う者はそもそもその姿が見えないから怖い。名はあるのに儂らも騎士様たちも追い詰め切らない潜入のプロだべ。」


「それはまた習得条件も厳しそうだ。」


 UIを開くと称号システムの項目を見つけた。ざっくり読むと、プレーヤーの行動に付随して与えられる称号で、基本的にはステータスのプラスはない。その代わり、フレーバーテキストは充実している。


 攻略サイトを読むと、このフレーバーテキスト部分がNPCにある程度の影響を与えるらしい。人物形成なのだろうか?まぁ、フレーバーテキストをフレーバーテキストのままで遊ばせるのももったいないと言う試みだろうか?


「さてと、俺は外に出ようと思う。」


「夜だけどええか?」


「それも試しだ。」


「なら、もう止めねぇべ。」


 そう言って徒然を出ると、空には月が昇り辺りは薄暗い。まぁ、自分の周りの視界は確保されているから、余程の不意打ちでもなければ・・・。


「そうだよ、ナイトメアキャッチャーはOFFにしておこう。高いらしいし。」


 月のでた草原を走るが、中々目にする光景でもないのが新鮮で、強いて言うなら街道の整備された道を外れるとすぐに腰くらいまでの草が伸びている。適当な虫の音と舞う妖精か蛍も見えるな・・・。


(カサカサ・・・。)


「モンスター・・・、緊急回避!」


「ギギギ・・・!お前獲物!」


「お前倒す!」


「稀人敵!」


 放たれた矢を緊急回避で避けつつモンスターを見る。出てきたのはゴブリンだけか?草むらの方からカサカサと他の音もするが、隠れているのか見えない。そして、ゴブリンたちも草むらから出てこない!


 くっ、どうする?出てくるなら街道は見渡しもいいし戦いやすい。しかし、草むらに飛び込めば袋叩きにされないか?更に言えば、一1匹のゴブリンは弓をもっている。他の奴はなにを持っている?


 格闘技の鉄則と言うか、数で勝る相手に不用意に挑めば隙をつかれるし・・・。ただ話すだけでも挑発になるか?なるなら誘き出しも?正面切っての読み合いならまだいいが、そもそもレベルで負けていると仮定するなら・・・。


「こっちだ!」


「ギギギ!!!射れ!射れ!追え!」


「お前倒す!」


 魔法は使わない?代わりに矢の迫る風切り音が聞こえ、振り返ると頬を矢が掠めたからヒールを使う。矢の速度は銃よりは遅い。その代わり近くに来るまで風切り音がしない!なにより、棍棒を振り回すゴブリンは振り回しているだけか?魔法の予兆じゃないか?更に言えば槍を持った奴までいる。


 夜は危ない、確かに危ないだろうさ。確かにモンスターは増えているし、まだ出てくると言う演出なのかボヤけて見えるモンスターもいる。ただ街道にでたゴブリンは3体、先ずはこの3体から!


「パンプアップ!」


「刺され!」


「ちっ!緊急回避!」


 頭の中でどう動くかはイメージできた。突き出されるナイフを交わし、伸び切った腕を掴み肘へ一撃。そこでナイフを落とさせて、無手になったゴブリンを拘束し槍の前に出して同士討ち。確かにそうイメージはできたしバフもかけた。ただ、失敗したのはそうイメージできたとしても、これはゲームでステータスがあることか。


 ナイフは避けた。腕は掴んだ。肘を殴り付けた!しかし、ゴブリンはそれで怯まず、ナイフも落とさない。なにより、一瞬手を放すのが遅ければ、そのまま引きずり倒されていた。ダメージ表記は12とある。それはそうだろう、ゴブリンのレベルは下級ながら12。つまりレベル差10と言う、ステータス面で完全に遅れを取っている。


 それに何より矢が飛んできて俺の行動は阻害され、槍で牽制されてまともに飛び込めもしない。ヒールはある。バフもある。緊急回避と言う無敵時間で回避もできる。だが、圧倒的に俺のアバターの数値が足りない!


「ボヨン。」


「っ!スライム!?この豆粒が!」


 背後から腰へダメージ!押されたような感じがして振り返れば足元に月光で輝くスライムが!確かに夜はヤバい!街道と言う見通しのいい場所で誘き出してもこれか!


「流石に1人では・・・、逃げるか?いや、その前に逃げられるか?」


 MPの回復は早い。緊急回避に全部を割り当ててその後、脇目も振らずに走って逃げるか?しかし、矢で狙われて・・・。1つ1つの行動は組み立てられる。バフもまだ切れるまでの時間はある。しかし、逃げ切れるようなアイテムはなにもない。


「お、俺は死ぬ体験をするんだ!来いよゴブリンども!かかっ・・・、ぶへっ!」


 スリングから飛んできた石が顔に当たり痛い!鼻にデコピンされたくらいだけど、確かに痛みがある!慌ててヒールをかけるが・・・、これは確かに色々考えさせられる。

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