259話 日華にて
ミッションと言いつつ、撮影して回れと言うのはトラブルオンラインの運営にしては優しすぎる。優しすぎるけど、どのみち撮影とか観光はやるし相性がいいのは助かる。まっ!どうせ特定種ってのがボスとかそんな感じなんだろ?∞マークってことは、ある意味最終コンテンツ行きのどこまでも世界を歩けなんだろうし。
続く資源確保部での説明では、ある意味定番のお使い系。ただ、今欲しいものがやはり流動的で、部門長のタマから渡された自給率指数メーターに欲しいものが何種類か提示される。まぁ、他の人が納品したら消えるらしいが量が膨大なので当分は探索だな。これもリンクはできるが気長にやる方がいいやつだろう。
「そう言えばニーニャもこのリストとか見れるの?」
「見れますよ?当然私たちもここにいるばかりではないですから。なんならツキさんのバティとして、ミッションをこなしてもいいかもしれませんね!」
「バティ?なにそれ?なんかの依頼?」
「依頼と言うよりは優先的に同行する相手ですよ。私達は今のオオミカを知らない、稀人さん達は今の私達の状況を知らない。お互いWin-Winと言うやつです。」
「へ〜、そんな事が。」
________________________
システムアナウンス
バティシステム:
仲良くなったNPCを連れ歩くことができます
※連れ歩くNPCに指定はありません
※このNPCは通常のNPCと同様にロストします
※このNPCはプレーヤーとの同行回数が増えるほど
プレーヤーの行動に沿った行動を取ってくれます
※バティシステムは現時点では2章のみのシステムです
※NPCが拒否することもあります
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
バティシステムのアナウンス。ある意味メイン・コアの簡易版か?なんにしても依頼を受ける側と依頼をする側が明確だった1章に対して、こっちではよりアクティブにNPCがついてきてくれるのだろう。
と、言うかレベル100も行ってないプレーヤーからすれば、ここにいる兵士って十分に戦力になるよな?なにせ現役で邪神と戦ったり、オオミカに降りてきて拠点を維持したりしてるんだし。プレーヤー同士でパーティー組んで、そこにNPCを含めれば結構人数は盛れる。難点はNPCがロストするところだけど・・・。
「まぁ、バティはいいとして合流ミッションの話を聞こうかな。」
「では総司令代行のところですね、行きましょう。」
ニーニャが先導して来たのが総司令室前。よくよく見れば地面に色分けされたラインとそのラインごとに違う突起があるのは、障害者用の点字ブロックの代わりかな?なんだかんだで、手摺もあればスロープもあるし、医療用提携型の面目躍如といったところか。
「稀人ツキさんをお連れしました!」
「む・・・、レジスタンスとの合流作戦への参加希望者か?私は司令代行をしているパーシルと言う。参加してくれるなら詳細を話そう。しないと言うなら、残念ながら話せない。内部での諍いがあるとは思えないが作戦である以上、無闇矢鱈と言いふらすものでもない。」
「なるほど・・・。そう言えばレジスタンス以外って、今のオオミカにいるんですか?」
「・・・、それもまた機密とする。」
レジスタンスがいるなら、少なくとも少ないながらも生存圏はある。と、言うことは敵対的である可能性もある。なにせレジスタンスと銘打たれた潮彩の街があるのに、そこからわざわざ逸れて危険を犯してまで他に住む理由もないしねぇ。
「ツキさんは作戦に参加しないんですか?」
「しないことはないけど、どうして?」
「私はオオミカを取り戻すために降下してきました。まぁ、日華は堕ちたって感じですけどね。それで亡くなった仲間もいるし、バン・ホーとなった仲間もいる・・・。だから、未来を作るために作戦に参加しようと思ってるんです。」
「・・・、分かった。乗り掛かった船だし参加するよ。で、どこでなにをすればいいわけ?軍団戦?それともモンスター狩りまくってルート通し?」
「作戦参加に感謝する、詳しい内容を話そう。最初の前提として、オオミカ内では飛行すると言う行為が推奨されない。」
「なんでまた。宇宙から降りられるなら使い放題なんじゃ・・・。」
「1つ目に空は原生生物と邪神の勢力圏で、短時間での飛行は可能ながら長距離の飛行では撃墜される可能性が高い。2つ目、今の我々に物資の損失は手痛い。墜落による全損や回収不能、航空機そのものの運用コストを鑑みても基本は徒歩による輸送となる。そして、君たち稀人にお願いしたいのは複数ルートからの潮彩到達だ。」
「複数ルート?大人数での進軍は?戦力の逐次投入はジリ貧だとよく言われますけど?」
「それはロストする場合だろう?稀人と言う死んでも帰って来る者達には適応されない。ほぼ無制限に投入できる上に帰って来る戦力を運用する場合、特定ルートを選定するのは後回しとして、先に多方面からのルート検証を行う方が後々特定のルートが潰されても他ルートを次善策として運用できる。」
まぁ、確かに。ゲーム的なメタな部分はここに落とし込んでるのか。メインストーリー=一本道だと思っていたけど、どこを通るかはプレーヤーの自由と言う感じだし。と、言う事は1章側での潮彩へのルートってこの頃に決まった?
いや・・・。一応のメインルートはあっても、ほとんど好きな道を馬車やら車やらで走り回ってるから、絶対にこれって道はないんだよなぁ〜。
「なら、私は地上を走って潮彩まで行けばいいんですね?」
「私と言う個で行かれても困る。潮彩にいるのはレジスタンスであり、長らく稀人との接触もない。なので誰か兵士を連れて行ってほしい。それと・・・。」
「それと?」
「個人的な願いだが、志半ばで散った者達の遺品・・・。これを回収できればして欲しい。君たち稀人は帰って来るが、我々はそこで朽ちるのみだ。」
「分かったけど、回収するなら腹の中も?」
「・・・、その可能性は大いにある。」
「腹の中?」
「ニーニャ、ここにいるのは?」
「原生生物、邪神の寄生体・・・。はい、腹の中もですね・・・。」
そう言ってニーニャが落ち込んで見せるけど、前よりも表情系の仕草がリアルかも。まぁ、元からリアルだったから誤差といえば誤差だけど、営業マン的に言えばそんな小さな変化の方が気になるのよね。見落とすと話が変わることもあるし。
ただNPCと言うかバティシステム前提が2章の肝かもなぁ。今のところは仲がいいのはニーニャだけど、ストーリーが進めばどんどん増える?と、言うかバティって何人連れ歩けるんだろうか?わざわざバティと言うからには1人とか?
「できる限りやってみましょう。」
「よろしく頼む。各地に簡易拠点は点在するので、それを活用するといい。」
そう言われて部屋を出る。今の・・・、日華から潮彩と言うと結構遠い。簡易拠点があるのは嬉しいけど、名も無き村を考えると壊滅も考えんとなぁ〜。下手すると領地に戻されるかもしれないし。
なんにしても進めないと情報はくれないだろうし、くれたとしても不確定なものが多いのかも。ニーニャの言葉が痛いな、俺が知ってるのは未来のオオミカでニーニャたちが知るのは過去のオオミカ。確かに今だけが意図的に空白にされてる。
「ツキさんはすぐに出発します?」
「う〜ん・・・、先に聞くけどニーニャは私についてくる?」
「ツキさんにですか?潮彩を目指すなら吝かではないですけど、特に目的もなく辺りを見て回るだけならご遠慮しますよ。なにせ、ここでもやる事は多いですから。」
なるほど、普通に断るのね。できればどれくらい戦えるとか知りたかったけど、街周辺うろつくなら勝手にしろかぁ〜。まぁ、死ぬかもしれないのに延々と街の周りを回っても・・・。
「この街の周りの状況は?」
「幸い稀人さんたちと私達でどうにか安全にはしてます。でも、完全ではないので襲撃も・・・。」
「人員不足が最大のネックか。まぁ、人がいなくなれば襲撃・・・。どのみち元からランダム襲撃イベントあるし、今はなくてもそのうち運営がやり出すんだろうな・・・。」
「襲撃は多分ありますね・・・。」
「なんにしても、ちょっと街を回ってから出るとすれば出るよ。」
「どこか見たいんですか?」
「各施設かな?ここが当面の拠点になるんだろうし。」
「ある程度言ってもらえれば案内はしますよ?稀人さんが知らないところもあると思いますから。」
そう言われてニーニャと話しながら街を見る。施設的には1章と同じだけど、試練受けるところで相手してくれるのが師匠じゃなくて士官だったり相手が機械だったりと小さな変更点がある。ついでに言えば、新しい試練も増えてるなぁ〜。
基本的な試練も受けられるけど、変わったところで言えば極みと言う項目が増えてる。運営のテコ入れかな?或いはそれをマスターしないと進行的に厳しい部分があるとか?
「試練が気になるんですか?」
「呼吸法はマスト!だからやるよ!」
「なら、私もお供しようかな?宙から降りてきて順応してない人もいるんですよね。かく言う私も体が重いと感じますし。全ては呼吸、取り入れて世界を循環させてその場に馴染むのに必要ですから。」
「ん?ニーニャも試練受けられるの?」
「横で受けますよ?」
NPCが試練を受ける・・・。前にはなかったけどカスタム要素的な?でも、これをブライトに受けさせると結構効率的?今は腹式呼吸だけやらせてるけど、極みになるとどうなる?今でもマスターではあるけどさ。
「呼吸法試練をお受けに?」
「そうです!現時点でマスターまでしてるけど、その先は?極み受けられる?」
「マスターまでされてるなら極みですね。極み試練の内容は完全呼吸法。ただ、それを受けるには先に今の状況を見てからです。」
四本腕のヒョロッとしたNPCが呼吸法試練の教官か。指示された通り普通の呼吸と腹式呼吸をあぐらをしてから見せて、大丈夫だったので完全呼吸法へ。ニーニャも横でやってるけど、なんかダメだしされてるな・・・。
「完全呼吸法の要点は鎖骨まで使う事です。腹式呼吸、胸式呼吸、そして吸う空気を最後に増やして鎖骨まで。これを4カウントで行い4カウントで逆順で吐き出す。」
言われた通り鼻から吸って鼻から吐いていく。ゆっくりゆっくり目を閉じて4カウント。割と無意識な呼吸を意識的にやると、体がポカポカしてくる気もするんだよなぁ〜。大元はヨガから来たとか聞いたし。
「ふむ・・・、これを。」
・・・・・・ぷぅ~・・・・・・
「すぅ〜・・・、ふぅ〜・・・、すぅ〜・・・ヽ(╬〇益〇)ノ 」
「耳元で虫が!」
「ニーニャ!やり直し!」
「でも士官!虫が!」
「これは試練です。常時平常心、何事にも落ち着いて心を乱さずに事に当たる。これを行うための試練なのです。横の呼吸法マスタークラスの稀人さんを見なさい。」
「ブチ切れた顔してますけど・・・。」
「顔は問題ではないのです。ちゃんと完全呼吸法が出来ているかです。・・・、稀人さん。ズルはいけませんよ?そうされても意味はありませんが、罰として追加です。」
くっ!真夏の夜の蚊を思い出して耳をパタパタさせたり、尻尾10本をバタバタさせたらダメか!してもランダムに音は聞こえてくるし!でも、モスキート音が聞こえるなら俺はまだ若い?
「心を乱さず、平常心です。極みマスターまでに後10は増えます。」
「そんなぁ〜・・・。これになんの意味が!?」
「私たちに羽虫と言うモノへの理解はない。原生生物と戦う時に眼の前や耳元で虫が飛んで気が散っても困るでしょう?最悪、ロストしますよ?」
「はい・・・。」
やっべー情報?撮影してるから音声は入ってるんだろうけど、今の話を聞いた限りだと連れ歩くNPCもある程度鍛えないと、変な挙動するってことだよな?そして、そんなデータはプレーヤー側が嫌と言うほど提供してるし・・・。
だってね?VRでゲームしてる以上、ジャンプスケアもあるし音やらダンスやらに関わるクエストもある。そんな中で驚いたり気が散ったりした部分の脳波も読み取られてるんだよなぁ〜。
「次を追加です・・・。」
くっ!今度はかゆい!刺された感覚はないけど、耳と指先と足の指がかゆい気がする!地味に嫌なところにかゆさを演出してくる!耳の周りもモスキート音の大合唱だし!
「( ꐦ ゜皿゜)oO(蚊は死ね!)」
「ツキさん落ち着いて!」
「ニーニャ!」
「はいっ!」
「稀人さん・・・。呼吸法はいいですが、心穏やかに。極みまでマスターすれば領地で他の方への伝授が行なえます。」
ほう?伝授コマンドが増えると?つまり、師匠システムの追加コンテツ的なものか?確かにそれはありがたい。ありがたいけど、かゆさと蚊がね!?
「はい、これで終了となります。」
「あ〜・・・、終わった?採点は?」
「ニーニャは普通の呼吸法の中級から始めなさい。稀人さんはギリギリ極みです。日々精進することを忘れないようお願いしますね?極みマスターの証としてこれを渡します。」
________________________
お邪魔虫
呼吸法伝授時に使用する虫。
かなり邪魔、ものすごく邪魔、気を散らすのが大好き
必ずかゆさを出すし、指示しなくても出す
服を着込んだ?フルフェイスの装備をした?
奴はどこからともなく忍び込むぞ?
備考:領地で伝授を行う時のみ使用可能
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
「ありがとうございます・・・。」
説明書きを見ると不正は禁止されてるな。でも、割とこれはいいのか?呼吸法極み試練を突破した報酬と言うか、機能解放的にはHPの回復と言う項目が増えてる。ちゃんと完全呼吸法ができていれば、20カウント後に少しづつHPが回復していき、完全呼吸法を続けると回復速度が多少上がる。
要はリジェネみたいなもんだけど、上手く使えばポーションの節約にも繋がるし、戦闘中では中々難しいにしてもやるだけの価値はある。まぁ、それも検証してからの部分が多いけどさ。
「耳がかゆいですね・・・。」
「私は指がかゆい・・・。なんでこう・・・、耳や指って言ったところを狙うかなぁ〜。最終的な指の間も痒かったし。」
「よく耐えましたね?」
「250歳は伊達じゃない!と、ちょっと外回りしようかな?流石に街の中だけじゃ様子が分からん。」
「潮彩を目指さないなら私はここまでですね。なにかあったら声をかけてください。これが、私の位置が分かるビーコンです。」
「おっ!ありがとう。」
ニーニャからビーコンを渡されると、ミニマップに赤い点が増える。ズームすると名前が見えるし、UIをいじれば名前検索やらもできる。でも、下手するとロストするんだよなぁ〜。滅茶苦茶嫌なことに名前の横にロスト欄もあるし・・・。
つまり、街が襲撃されると下手すれば死ぬのか。ただ1章だと街人が襲撃されてると言う体だけど、2章だと兵士が襲撃されてると言うことで、蹂躙されるだけじゃないとか?だから鍛えろなのかも。そんな事を考えつつ日華の外へ。
「おぉ〜・・・、1章の砂漠とは違う。」
もう時期昼だから辺りは照りつける太陽で暑い。そんな中で破片と言うか、日華から脱落した破片が散らばり黒い岩みたいに配置されている。装備を変えて見回すと潮彩に向かうプレーヤーとNPCだろう影のパーティーもそこそこ見えるし、攻略は進んでいるようだ。
「砂漠の定番と言えば盗賊と魚だけど、どうなんだ?ちょっと走って離れてみるか。」
クエスト一覧を見た限りだと最低で100レベル。つまり、この辺りのモンスターは概ね100レベル帯が戦えるモンスター。でも、下級じゃなくて中級上級の集団だとちと辛くなる。なにより・・・。
「飛行系のモンスターも多そうだなぁ〜。結構それっぽい影も見えるし、確かに航空輸送は厳しいかも。」
なんか火を吐いてるドラゴンっぽいモノも見える。元々1章時点でわんさかいたし、原生生物と言われればそれまでだけど、その原生生物が敵対的すぎる。一応、友好的なモンスター型NPCがいたりもするんだけどさ・・・。そんな砂漠を走って日華から離れると、盗賊がいない代わりにゴーレムが!
表記的には狂った機械兵。うっへ・・・、下級の代わりにレベル120で何体かまとまってうろうろしている。見るからに硬そうだからハンマーとかナックルとかの打撃が素直に有効か?大麻は剣/杖の複合属性だけど、片方が有効でも片方に耐性あると結果としてトントンなのよねぇ。
「まっ!初手は魔法!瀑布!」




