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狐と言えば・・・巫女!  作者: フィノ


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256話 とりあえず、寝よう

 鳩のようにフルフラットな後部座席に寝転ぶブライト・・・。まぁ、羽が邪魔だからこの姿勢は仕方ない。仮にここを配信して『急募!羽を傷めずに寝る方法!』とかしたら、文殊の知恵を超える方法が提示されるのだろうか?


 割と馬鹿にできないんだぞ?人の知恵は。無茶に無謀に不可能、それは過去の人が限界を勝手に決めて出した結論であって、最新技術を知る人が論じる話じゃあない。だって、それは単純に諦めて思考停止の袋小路に入ったと言うだけだから・・・。


「では、また来る。」


「キリッと言ってるけど見た目だけなら鳩とか寝てる人だからね?ブライト。」


「なら、我にどうしろという!」


「まぁまぁ、ブライトさん。なにか気づいたことがあればすぐに言って下さい。私や岩戸さん、木本さんがサポートします。」


「分かった、すぐに言うとしよう。岩戸と言う者がなにをしているかは分からんが・・・。」


「なに。考える人は多い方がいいし、様々な角度から検証できるならその方が発見もあるよ。少なくとも、ここにいる人はブライトをどうするか全員考えてるし。」


「もう閉めるぞ。岩戸、お前も助手席に乗れ。」


>> はい、お願いします


 扉が締められドナドナされて行くブライトだけど、こうして引き離すのも1つの検証でもあるんだよなぁ。例えば俺と離れたブライトはどこまで自立できるのかとか。俺がブライトを見ている以上、ゲームの方のブライトは寝てる。なら、逆は?


 現実世界の俺が見ていなくともブライトを誰かは見ている、でもそのブライトが寝た時はどうなんだろうか?肉体は物理的に確かに存在してるけど、自己観測がどうなるかは分からないらしい。


 まぁ、寝てる時の自分なんてスマホで録画するか、さもなくば誰かと一緒に寝ることでくらいしか、ちゃんと寝てたなんて証明はできないよなぁ〜。実際、ピンピンしていたブライトも受肉してから寝てないらしいし。


「さてと、私は部屋に戻るとして華澄は?」


「今日はこのまま出勤して、少し仕事をしたら半休よ。一応、木本さんからもすぐに動けるように待機しておいてくれってメッセージが来てるし。」


「あんまり無茶しないでよ?若くても後からガタが来るって言うし。姫子さんは・・・、いつまで黄色いハンカチ振ってるの?」


「こーちゃんの車が見えなくなるまで・・・。帰りを待ってると証明する為に、このハンカチをどこか見えるところに吊り下げて・・・。」


「なんと言うか、古風な・・・。多分、新車じゃないしここは北海道でもないですけど?」


「気分は雪国だからいーの。」


 そんな話をしつつ、華澄を見送って病院の中へ。先生たちは仮眠を取ってからブライトのデータを再検証するらしいけど、血液とかあるんだろうか?骨の話は聞いたけど、その他の話はなんも聞いてないような・・・。


「マリちゃんはこれからどうします?」


「普通にシャワー浴びてから寝ようと思ってますよ。なんだかんだで徹夜でしたしね。昼過ぎくらいには起きると思いますけど・・・。」


「分かりました、今は休んで下さい。」


「なにかありました?三枝先生。」


「難しい質問ですが・・・、仮に魂と言うものがあるならどのようなモノだと考えますか?」


「魂ですか?ホラー演出の人魂っぽいと言うか、なんか丸っこそうとかですかね?」


「いえ、形ではなく存在としてのイメージです。」


「存在としてのイメージ・・・、ハードディスクとか?」


「珍しいイメージですね、どうしてそのようなモノだと?」


「結局記憶媒体なんじゃないかなぁ〜と。確かに私は今生きてますけど、死んで魂だけになっても自分なら、体に依存するものはないし残るのは記憶でしょう。なら、輪廻転生とかってハードディスクの中身を消去して再利用しててもいいし、消し残りがあれば前世の記憶とかの説明になるんじゃないですかね?」


「人は機械的であると?」


「逆ですよ。人に似せて拡張して機械を作ったんじゃありません?人が想像できることは大体いつかの時点で実現する。でも、想像するにしても種は必要でしょう?鳥が空飛んでるから空は飛べるものだと考えますし、魚が泳いでるから人は泳げると思う。まぁ、なんで人が死ぬかなんて聞かれたら、事故ってハードディスクが抜けて接続されてないか、或いは記憶が限界まで溜まって消去しようとでもしてるんじゃありません?」


「なるほど、1つの仮説として頭に残しておきましょう。」


「そんな大層なものじゃないですけどねぇ。」


 そう、大層なものじゃない。でもまぁ、電気精神体とかいるし、接続不良のデータと考えれば割と?なんにしても三枝先生も出ていったし疲れたから一旦寝るとしよう・・・。



________________________

 

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「ふぁ~・・・。あっ、三枝主任おかえりなさい。マリちゃんは?」


「寝るそうです。敷田さんも仮眠を取るなら構いませんが?」


「いえいえ、神経が高ぶって中々・・・。ブライトさんのデータ、どう見ます?」


「個人的な感想を言うなら、これは医者と言うよりは技師の領分だと考えています。ガルボーン骨格に人よりも高密度でありながら軽い筋繊維、なにより血液採取は出来ましたが、その血液自体が採取した時点ではほぼ透明で薄ピンク程度でした。解析結果は?」


「酸素との結合が極端に低いと言うか、必要なだけの酸素しか取り入れてない状態ですね。ためしに酸素中に放置してみましたけど、酸化は見られず蒸発している感じです。でも、主任としてはある程度予測してたんじゃありません?」


「ええ、していました。」


 眠気を覚ますならコーヒー・・・。それは過去から今に至るまで使われた慣用句。ですが、本当に眠気を覚ましたいならカフェイン錠剤を摂取しつつ、ナノマシン入の高いドリンク剤を飲むことおすすめします。ただ、これも使用期限が過ぎればナノマシンが自壊して普通の栄養ドリンクとなりますが・・・。


 敷田さんはコーヒーとチョコレートを食べ、本気で私と話し込むつもりなのでしょう。上司としては仮眠を取ってもらい、部下の健康管理にも努めたいのですが、状況が状況なだけに仕方ないか。


「やっぱりですか・・・、バイオナノマシンとデバイスと医療ポット。このデータを再確認してたら、そうなんじゃないかとは思ってました。でも、これって・・・。」


「私たちが作ってロールアウトしようとしていたものがプロトタイプとするなら、アーキタイプはマリちゃんでしょう。そして、姫子さんやブライトさんは派生型。八百理事や座敷さんがゲームをやめさせるなというのが分かりますよ。」


「アーキタイプがアーキタイプしてないですからね・・・。でも、原型が進化すれば総じて底はあがる?でも、その底がどこなんだか・・・。」


「生命のアーキタイプは女性である。医学的に言えば胎児の発達初期は全て女性ベースで、ミトコンドリアの継承も母親から。逆を言えば私はマリちゃんが男性であるブライトを受肉させた方に驚きました。仮にマリちゃんが無性生殖で増えられるなら、男性型と言う識別は不要でしょう。」


「染色体問題ですか?確かにY染色体はタフで特化型ですけど・・・。」


「必要なのは圧倒的な遺伝子数です。X染色体が約1,000個の遺伝子があるのに対し、Y染色体には数十個〜100個程度しか残らない。そして、マリちゃんと言う新しい種の増え方を見るなら、下手をすれば食べるだけで増えていける。敷田さん、デバイス自体の稼働時間はどれくらいだと考えますか?」


「・・・、本来なら。そう、本来ならデバイスは健康状態なら稼働しません。それこそ日々の老化は健康の範囲内で、その細胞の生まれ変わりを止める方法はありませんよ。でも、マリちゃんと言うデータを見れば、ずっと稼働し続けていますね。そして・・・。」


「エア・プロテイン精製用ナノマシンの取り込みですか・・・。あの雪山でなにが?ビーストモードになった、エア・プロテイン精製装置を最大稼働させたとは聞きましたが・・・。」


「ブライトさん曰く、魂を抜いた状態がビーストモードです。食べること、自分を維持することに特化したような・・・。ある意味これが男性的な側面?」


「側面は別として、マリちゃんの空腹と言うのはナノマシンが足りない状態です。だからMPを満腹ポイントとしたのですから・・・。やはり、マリちゃんはナノマシンを外部操作できると確定していいでしょう。」


「いいんですか?確定してしまって。まだ検証の余地も・・・。」


「不要です。そもそもナノマシンと言っても千差万別で、私達は医療用のナノマシンを使っています。しかし、エア・プロテイン用のナノマシンは工業用モデル。用途が全く違うナノマシンを取り込み、それさえも精製するか操作できる。その結果があの緊急換装で出したシルバーリングでしょう。」


「そうなると・・・、白波先生ですか?」


「以前マリちゃんからも勧められましたよ。白波先生は医者らしい医者だと。私と彼は研究思想が全く違う。しかし、皮肉なことに私が作り上げ、実際に使われたマリちゃんはナノマシンを外部操作する方に進んでいます。」


 確かに彼の論文を読み、内容に理解を示せる部分もある。ただ、どうしてもナノマシンの外部操作を、緊急時に医者が行うと言う部分に私は引っかかりをもってしまう。


 医者は神ではない。


 トリアージとは命の選別で、見落とせばそこには死神の鎌が潜む。その鎌の刃を鈍らせるために別の悪魔と契約させるような真似をしてもいいのだろうか?確かに命があるからそう悩めるのかもしれない。でも・・・。


「どうしました主任?急に立って。」


「天野医院長と話してきます。」


 既に命があって丸儲けしたと言うマリちゃんがいる。なら、すでにそこは悩むべきところではなく、どうセーフティを掛けるかを考えるべきだろう。

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