252話 どこ泊まる?
結局話は1周して最初の地点から3つくらい横のレーンに着地したかなぁ。岩戸さんの言うスキルを生やすなら、経験値を振り込んだり武器やらを渡す。ただ、渡すにはゲームの世界でブライトに会う必要がある。
「とりあえず・・・、今はこのままですかねぇ?ゲームの方でブライトに会うにしても、こっちのブライトがどうなるか分からないし。」
「そうなりますね。私達は医者であって科学者ではない、木本さんも電気精神体に詳しくてもAIには不慣れ。そうなると、私たちだけではどうこうするのは厳しいでしょう。」
「木本さん、鞍馬さん直接聞いてみるのはどうなんです?」
「ありゃ、そういう物を持ってるって伝承があんだよ敷田さん。天狗の隠れ蓑、天狗に限らず鬼にも姿を隠す道具ってもんはある。拾遺和歌集にも名は出て、その後は異界の宝とされた。まぁ、勝手に出たり消えたりする電気精神体は文字通り、姿を隠した何かだったんだろうがよ。」
「へ〜・・・。日本昔話で聞いた記憶はあったけど、そんな古くからあるんだ。現物があれば借りれたかもしれないのに!」
くっ!伝承基盤侮りがたし!と、言うか昔の人が考えた僕の私の最強の何かだから割と節操ない?座敷童子大先生とか下手したら世界大恐慌の引き金とか引けそうだし・・・。
そうだよなぁ〜・・・、昔ならお金は現物で手の元にあるなしで判断したけど、数字なんて言うものだけで判断するなら、現物が消えるよりはるかに影響されやすいよなぁ〜。
「結局我はどうすればいい?」
「まぁ、今のところは、飯食って普通にしてればいいんじゃない?その羽なに?って聞かれたら・・・、神秘医学の医師助手とか?流石に病院でコスプレはマズイし。」
「お前が言うのかよ、マリちゃんよぉ?」
「私は医院長から客人として迎えられ、神秘医学の医師助手と言う身分がこの病院ではあります。その名もマリー・ガンディー!oh!木本さんオッ久しぶりねェ〜。ワタシコスプレじゃないよ、コレ研究のためのセンサーアルよろし?」
「なに人の言い回しなんだよ、それは。ともかく、ブライトの管理はマリちゃんと先生達に任せるが・・・、本気で神楽の場に呼ぶつもりなら、それなりの準備はしてくれ。」
「とりあえず、その件は保留ですねぇ。最悪、もう少しどうにかなってから、ブライトはお披露目と言う方向がいいでしょうし。」
「我が太鼓を叩く件か?」
「そう。一応、衣装って話ならとも思ったけど、1人だけ羽つけてとなるとやっぱり目立つからね。舞う側なら羽のある衣装で舞う神楽もあるみたいだけど。」
「夕食を買って来ましたよ、木本さん。」
「おう、ありがとさん。しっかし、一休さんは屏風から虎を出せと言って相手を言い負かしたが、本当に出てきたらどうしようもねぇな・・・。」
「それはもう、これから先ゲームでのファンタジーアバターを禁止するようなものですよ。医師としても頭が痛いので、その方向なら外見的な問題はかなり改善はできそうですが・・・。」
一休さんねぇ・・・。とんちでどうにかなるのは不可能や、言葉遊びができるだけの認識が前提にあるから。逆にそれをすっ飛ばせば事実を隠すウソになる。まぁ、俺もコスプレと言い張ってるから、耳の痛い話ではあるな。
木本さんは華澄から袋を受け取りガザガサとパンの袋を開けて食べてるし、先生達もティーブレイクなのか、コーヒーとかを飲んでいる。俺もサンドイッチを受け取り、ブライトはササミの燻製を食ってるわけだが・・・。
「絵に描いた餅が本当の餅なら、それは餅か・・・。」
「マリ、それは絵から出た餅だろう?」
「なら、ブライトは絵から出たブライトになる。つまり、食えない餅ってね。・・・、食えない餅。なら、食えるなにかを出せば?」
「マリちゃん、先に言いますがカボチャを出すのは医者として推奨しません。ぬらりひょんと言う実例がありますから。」
「ぬらりひょんが何かしたのか?いや、食わせたんだったな。」
「羽だけ食わせるって話でいいかとも思ったんですけどね・・・。う〜ん・・・、全身食わせてトラブルオンラインに戻すと安全?」
「なぜ毎回我が被害を被る!」
「それは弟だから?姉が暴虐なら弟は被害者。でも、なにも試さないなら分かることもない。いいかい?先駆者とは未知を歩む。その未知とは安全もない定義の外にある死と同義の旅路だよ。でも、人はその死という厄災に命を払って生きてきた。」
「それが我のロストだと?」
「ロスト・・・、ブライト。この世界を夢と見るか、自身がいる場所と定めるかで変わるんじゃない?」
「我はツキと共にあり、マリと共にある。」
「・・・、その共にあるってどこまで?」
「どこまでも、だ。」
いや、どこだよ。かなり重い事を言ってるけど、自覚はあるのだろうか?まぁ、連れ回してるから付いてくるんだろうけどさ。でも、羽が動かないって話からだいぶ外れた話にもなってきたしなぁ〜。
「共にあるのは文句言わないとして、今羽が動かないのはなぁ〜、少しでも動かせないと隠しようもないし。こう・・・、動け〜って、思ったらどう?私も尻尾動かせるし。ブライトの場合、私よりも動かしやすいとは思ってるんだけど?」
「分からん。マリがそう願うなら善処はしよう。」
「善処ねぇ・・・。そう言えば羽は直接誰か触ったんですよね?私はまだ触ってないですけど。」
はたと気づけば話すばかりで、直接ブライトに触ってもいない。触れば変わると言うものでもないと思うけど、どうなんだろ?そもそもゲーム内でのブライトの羽は勝手に動かない。多分プレーヤーではなくNPCとして、わざわざ動かす必要がなかったからだと思う。走ったりしたら揺れはするんだけどさ。
「私や敷田さんは触りましたよ?羽のサンプルも必要で、本人から1枚もらってもいます。」
「ふ〜ん・・・。」
「なんだ、マリ。」
「いや、こう・・・。私と同じと考えれば、トラブルオンライン内で動かす感覚が掴めれば動くんじゃないかと。少なくとも今は演算処理は上がってて、物理演算処理はもらってない。つまり、立ったり歩いたりの感覚は普通にゲームでもしてるから馴染むけど、飛ぶ方と言うか羽を動かすのは私が飛んでとか、地形が悪い時に早く移動する為に飛ぶわけだし・・・。」
「なるほど、飛べると言う設定はあっても実際に飛ぶや羽を動かすのは少なかったと?」
「ええ。輸送クエストで砂漠を行くときに飛んだり、年末年始のイベントで飛んでとはお願いしても、常に飛んでるわけではなかったですしね。さてと、羽の件は一旦置いておくとして・・・、ブライトをこの後どうします?この部屋に置いておきます?」
もっちゃもっちゃ夕食を食べてるけど、この後のこともあるんだよなぁ〜。昨日の今日でどうにか出来るって訳でもないけど、現時点だと他の部屋に行かせるにしても人目は引く。
なら、この部屋にいてもらっていいかといえば、三枝先生の仕事にも支障が出る。まぁ、ブライトを調べる方が優先といえば優先なんだろうが、家に帰ったりもするだろうしなぁ・・・。俺の部屋にいさせる?
「他に部屋を取るわけにもいきませんから、そうなるでしょう。或いはマリちゃんと同室・・・。」
「それをされるくらいなら、私が家に連れ帰りますが?」
「華澄が?」
「いや、それなら俺が連れて帰る。」
「木本さんも?参戦したー!」
「いや、我はマリといたいのだが?」
「なんでしょうね、三枝主任。一昔前の恋愛ドラマでこんな三角関係四角関係ってありませんでした?」
「恋愛に例えるのはいいですが、全員が全員で別の方向を向いているので愛と表現していいのかは微妙ですね。それに、愛なく連れ帰っていいのなら、私も連れ帰っていじくり・・・、基、観察していたいですし。」
「三枝先生、本音が漏れてますよ。てか、木本さんが連れて帰るって家へですか?」
「ちげぇよ。鬼一んとこまで今から車走らせて預けんだよ。送り迎えの手間はあるが、身バレという面ではかなり融通がきく。」
「いや、だから我はマリといたいのだが?」
「一緒にいたいって言われてもねぇ、ベッドも1つなら寝るところもないんだよ。なに?立って寝る気?怖いからやめてよ?ずっと寝顔見られてるとかホラーだし。とりあえず、この羽がなぁ〜・・・、羽毛か?結構温かいな・・・。」
ブライトの後ろに回り込み、大麻を持つ方と反対の手ををズボっと羽に入れてみる。1枚1枚1枚は長いし、感覚としては鳩とか?更に言えばちゃんと骨っぽいものもあるし・・・。
「むむむ・・・。」
「どうかしましたか?マリちゃん。」
「なんか武医同源?って言葉が思い浮かんだんですけど・・・。なに発勁とかぶち込む?多分、それくらいじゃ骨にダメージはないんだろうけどさ。」
「武医同源・・・、それは神秘医学方面の研究ですが・・・。詳しく言えば優れた武術家は優れた医者となり得るという話です。特に壊すなら壊し方を知る、壊し方を知るなら戻し方も分かると言う話ですね。気功や呼吸法と言うものはあまり・・・。」
「呼吸法・・・、ブライト。」




