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狐と言えば・・・巫女!  作者: フィノ


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244話 服がない

 敷田さんとそんな話をしつつ、駄弁り配信の日程を大まかに決めたり飯を食ったりして、清めと言うわけではないけどシャワーを浴びてドライヤーで尻尾を乾かしてから香水つけてと身支度をする。


 独り善がり・・・、ブライトとしてはこちらに来たいのだと思う。でも、果たしてそれはブライトとしての意志なのだろうか?AIという漠然と巨大な思考装置があって、その中の1つと言うか1人を現実世界に呼ぶ。


 なら、他のAIはどうするのだろう?当然用途も目的も違うAIだけど1つ言えるのは、どんな形であれ人とは繋がっている。う〜ん・・・。AIと電気精神体を考えると、結構似てるところも多いんだよなぁ〜。


 それを同族嫌悪と取るか、ズカズカ踏み込んでくる無礼者と取るか・・・。電気精神体が古くからのいるなら、AIはオカンじゃなくて無礼な他人か。まぁ、その電気精神体が人にちょっかいかけてくるんだけどさ。


「マリちゃん、準備はよろしいですか?」


「大丈夫です、三枝先生。」


「真利・・・、本当にやるの?」


「あら?華澄も来たの?」


 白衣の三枝先生の後ろから、ぬぅっと手提げ袋持った華澄も入ってきた。まぁ、木本さんには話したし病院側だけで終わる話ではないと思ってたけどさ。


「現場監視員としてね。木本さんは岩戸さんと、トラブルオンラインの方を外部からモニタリングするそうよ。」


「それってやっぱりブライトを?」


「ええ。ここで1つ、真利に伝えておかなければならない事があるわ。」


「伝えておかなければならないこと?なに?あんまりとんでもないことだと困るけど・・・。」


「先生達には先に話したのだけど、トラブルオンラインにおけるメイン・コアと言うアイテムには、医療提携型AIの触覚と言う役割があるの。」


「触覚・・・。近くで観察したい的な?」


「大まかにはそう。必ず観察対象に渡るわけでもないのだけれど、仕事としてはプレーヤーに付き添って普通のNPC以上にプレーヤーの近くで観察する。初期で200個、増えた今でも3000個程度だそうよ。だから・・・。」


「ブライトがこちらに来たがる理由はそれかもしれないと。う〜ん・・・、分からん。AIってラベルも分かるし、それが何々型って分岐したり分離してるのは分かるけど、その中に個とするモノがあるのかは分からないよ。でも、1つだけ言えるのは、私が知ってるブライトはブライトだけと言うことかな?」


 悩んでもしかたはないし、結果が出るわけでもない。なによりなにをもって失敗とするかも定かではない。それが産まれたから罪なのか?例えば爆弾は?罪はない。なら、銃は?やっぱり罪はない。


 なら人は?物と同列にするなと言う人もあるかもしれないけど、その罪を定めたのが人なら同じ立ち位置で考えないと転ぶんじゃない?だって生まれながらの咎人を作ったら、それは基準であって罪じゃないし。


「それを言い切った上で正式に呼ぶの?」


「呼ぶ。多分、このタイミングで呼ばないとマズイ気もするし。」


「柊さん、私達としても万全な体制は作っていますよ。」


「それを信じろと?過去より医者は未知に触れ神秘に近いところにいた。そして、妖怪と呼ばれる者や電気精神体が現れた。そして今です。個人的な話をするなら、大好きな真利を気絶させて、なにも起こさないまま家に連れ帰りたいのですが?」


「それは・・・。」


「ダメだよ華澄。これは誰かに強制されたとか、力があるからそうするとかじゃなくて、私自身が考えてやってる闘いだもん。今更やめられないよ。」


「真利・・・。」


「先生、行きましょう。」


 なにを着ればいいかは分からないけど、とりあえず華澄から貰った巫女服を着込み大麻を持って消灯後の病院を歩く。流石に時折すれ違う看護師からは奇異な目で見られるけど、今はそんな事を気にしている場合じゃない。


「おっ!来ましたね。」


「おまたせしました敷田さん。この医療ポットを使うんですか?」


「ええ。ナノマシンのタンクも増やしてますし、そのナノマシンへの指示もだしてません。機器への指示としても、これからのアクセスに対しては医療ポット内で処理することと指定しています。」


「分かりました。・・・、予備バッテリー機能は?」


「停止してますよ。最悪電力を使い果たせば、それで自動停止ですね。無線送電システムも停止させてますし。」


「了解です。では・・・、AR展開!」


 スマホを浮かせて展開するのはいつもの廃神社。そこに見えるのは、AR表示された中にいる雪女とブライト。ここは確かに存在しない神社でブライトも雪女もAIと電気精神体であって、俺達のように実体はない。でも、確かにそこにいる。


「華澄や先生達にもAR接続認証キーを渡します。」


「受け取りました、配信で見る光景ですね。」


「今回スタジオ化はしなかったんですか?その機能もつけてましたけど。」


「敷田さん・・・。あれって、無線送電でもかなりスマホに負荷かかるんですよ・・・。」


「メガネで見るからかもしれないけど、なんだか不思議な感じね。目の前にはその光景があるのに、少しでもメガネの外を見ると普通の部屋・・・、先に言うわ。この光景は木本さん達もリモートしてるから。」


「それはもうしかたないよ。さて、ブライトちょっと待っててね。」


「それは構わぬが、早くして欲しい。」


「分かった。」


 なんもない廃神社だけど、収益と言う名のお賽銭が集まったら小物を増やす予定だったからそこそこ備品はある。スマートレンズからスマホに脳波でコマンドを送り、八足台をだして医療ポットに重ねる。他にもなにか用意した方がいいのだろうか?・・・、なんちゃって巫女に細かいことを求めるな!桃があればいいんだよ、桃があれば!


「これでいいかな?ブライト私があげた桃は持った?」


「あるぞ。」


「よし、今から出すのは私がブライトにあげた桃。その種はブライトが食べた種!同一物は同一物故に一体化して現れる・・・、桃供給!」


 大麻をフリフリしつつ自分に言い聞かせるように話し、大麻の先に実った桃をもぎ取り医療ポットの中へ。敷田さんに視線を送ると、ポットを操作したのかナノマシン溶液が注入されていく。ブライトはソワソワしながら見てるけど、なんかあるんだろうか?早くして欲しいと言っていたし。


「やっぱりこの桃は浮かないのね。」


「浮きませんよ柊さん。普通の果物の桃なら概ね水に浮くでしょう。しかし、この桃は先ず密度から違います。なにより、種が重い。」


「それは姫子さんのデータとして貰っています。卜部さん曰く、これは依り代であり核であると。」


「ちょっと、そこ。今大事なところ!」


「まだか?」


「はいはい、ブライトはそこの八足台に寝転ぶ。残りの桃もだしてっと。いい、ブライト。私はこれからお食べなさいをするよ。」


「それはいいのだが・・・。ツキが持つそこの桃は?」


「先ず、今ある桃をお食べなさい。」


 なにか釈然としてないようだけど、いきなり全部食わせてもなにが起こるか分からない。俺も袖からだしたプロテインバーをボリボリと何本か食べつつ、ブライトが桃に齧りつくのを視る。


「本当に減った・・・。」


「敷田さん、観測は出来ていますね?」


「バッチリ保管中です三枝主任。でも、これはナノマシンの強制的な配列変換?確かに同一存在が減ったなら、減ったものは別の形に・・・。」


「医食同源、そして人体ネットワークの確立。言うなれば、食すと言う行為で肉体の再構成をナノマシン側に強要しているとも・・・。」


「ですが主任、それにはスタートとなる設計図が・・・。」


「マリちゃんの中にあるではないですか。大量にダウンロードされた医学データも何もかもが。」


「そんなことより真利!大丈夫!?お腹空いてない!?牛丼あるわよ!」


「今のところ大丈夫。と、言うか多分桃出した分しか多分減ってない。えっ!牛丼?食べていい?」


「3つでも4つでも好きなだけ食べて。」


 桃を齧るブライトを見つつ華澄から牛丼を・・・。牛丼と言うか牛皿?ほぼ米はないけど、代わりにたっぷりの紅しょうがと七味唐辛子の小袋が嬉しい。とりあえず、既に0時もまわったし、桃も出したから食わねば!


「・・・、主任。夜食なにかあります?」


「カップ麺なら、引き出しに常備していますが?」


「主任の食べるカップ麺って、全部普段見かけないヤツですよね?」


「逃すと手に入らない物ばかりですね。少量売って生産中止するのが悪い。」


 そんな先生達の会話はいいとして、ブライトは桃を食べ尽くし種まで飲んだ。普段ならこの後はエネルギーの足りないブライトとして、現実世界に来るわけだが・・・。と、言うか服がないから全裸なんだけどさ・・・。


 あれ?いつもは服を着てたんだけど?雪山の時も着てたし。なんで服がない?誰かに聞いてもその問いには答えてくれないだろうし、産まれるなら裸なのしかたないんだろうけど・・・。


「こやつ・・・。」


「雪女、なにか知ってるの?」


「奪衣婆にでも襲われたんじゃろう。」


「いや、奪衣婆て。なに?三途の川でも渡らされたの?」


「彼岸と此岸は単純にして冥界。それすなわち、持ち運べるものがあるか否か。六文銭とて紙でしょう?」


「さぁ?私はその風習知らないし・・・。」


 なんか駄賃くれって話は聞いたけど、六文銭って紙なのか。まぁ、燃やすなら紙の方がいいのか、持っていきやすそうだし。とりあえず医療ポットの中にいるブライトには羽がある。体つきも細マッチョっぽいし、ゲームの中のブライトを脱がせたらこんな感じ・・・。


「おっ!急に暗闇が!」


「真利、そんなにジロジロ見ないの。見るなら私にして。それとも男色に・・・、止めてもブライトを呼んで・・・。」


「戻っておいで華澄。男色とかないから。」

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