235話 名前を聞く
「む・・・、礼を欠いたか。」
「あっ、いえ。先をどうぞ」
他のプレーヤーも俺を見る中、バン・ホーの横にいる『傾注』と言ったNPCが、俺をじろじろ見た後にそう切り出した。怒られそうなところを謝られるとか・・・、徽章か!軍人に尊敬されるってあるけど、どんだけこの徽章スゲーんだよ・・・。
「うむ。ではキャプテン=バン・ホーよりお言葉がある。」
「稀人諸君・・・、過去より戦い続けた寄生生命体。大衆向けには邪神と公表した外より来る者。これの防衛戦が芳しくない。既にこの日華にある機械兵製造プラントも限界近くまで稼働せている・・・。」
・・・、ヤバい。ここ落ちる。後どれくらい・・・。いや、先ずは本当に宇宙なのかそこからだ!でも、日華の砂漠の下には古代ゴーレムが眠っている。それを機械兵と言い換えれば、なんのおかしさもない。なにせ古代ゴーレムと言いつつも、プレーヤーが作るゴーレムよりも早い、硬い、遠距離の散弾銃装備だし・・・。
「そこで、同じく外より来る者である稀人諸君。君たちに協力を仰ぎたい。どうか我々と共にオオミカを救って欲しい。あそこは我々の土地なのだ。」
そう言ってバン・ホーが頭を下げる。オオミカを救うのはいい。それよりも、だ。同じく外から来る者である稀人って、俺達も邪神側なんじゃ・・・。はい、知ってますよ!悪い文明の運営!お前たちが邪神文明だろ!むしろ文明があるかも怪しいけど、少なくとも文明と言い張るくらいにな邪神文明なんだろ!
「各稀人にはこれよりオオミカ奪還作戦に・・・。」
『敵襲!!!敵襲!!!!邪神多数!繰り返す!邪神多数!!この軌道はマズイ!完全にオオミカに突入コースを取っている!!』
「くっ・・・!稀人諸君・・・、今は避難してくれ!『キャプテン=アルケー!そちらに稀人を移送する!』さぁ!行きたまへ!各員は必ず稀人諸君を機動戦艦アレイスターへ!」
「サー・イエッ・サー!!!こちら稀人の方々!」
「まて!俺は徽章持ちだ!ここで戦う!」
「防衛戦力は!ウォーカーマシンは!」
「今は逃げる事が・・・!」
一部のプレーヤーはガタガタ・・・。と言うか、そんな生易しくない振動の中を誘導されて走っていく。一部は戦わせろと声を上げるけど、さてはて俺はどうするべきか・・・。
一応NPC達を観察していると、徽章持ちにはお願いベース。逆にないプレーヤーは、引きずってでも連れて行こうとしている。これがが2章のチュートリアルなら、全員で逃げるのが正解なんだろうけど、逆にここに居続けるとどうなる?
「ツキ、いかないのか!?」
「ここが堕ちるとまずくない?戦えるなら戦おうかと・・・。」
「しかしだな・・・。」
ブライトは避難を推すけど、確かめるとすれば最短ならこのタイミングか?仮に・・・、そう仮に2章が過去に介入できる権利だとしたらどうだろう?もちろん、日華が全くの無事なんてことはない。でも、逆になにか行動を起こして変わるとするなら?
あのキャッチコピー曰く、過去はある、未来もある。ないのは今で、行動を起こしてないからとか?それならなにかしらの行動を起こせば今が出来るとは思うんだけどなぁ〜。まぁ、この後からも増える2章突入者の前に、1つの杭が抗っても押し流される・・・。はっ!これが歴史の修正力!
「・・・、もういい。」
「しかし、キャプテン!」
「残った稀人諸君、ここは危険地帯となる。それでもなお、残ることを選択するのか?我々は君たちを死なずの君として見ている・・・。いや、きれいな言葉はよそう。何度でも蘇る駒だと考えている。」
「キャプテン、それは!」
「黙れ!協力を仰ぐのに嘘を言ってどうする!君たちの年齢がいくつか?どのような時間を過ごしてきたのかは分からない。しかし、ここで立つと言うなら・・・、助けをこう。どうか少しでも仲間を逃がす時間を稼いで欲しい。」
バン・ホーが深々と頭を下げる。ごめんよ・・・、カカオ奉納クエストのせいでココアみたいだと思ってた。でも、中身はピリッとビタースウィート。
「それで、俺達はなにを?」
「かぐや防衛隊徽章、コレを持つ者は外で戦闘機によるアシスト。ない者は内部侵入した寄生体を排除。我々は・・・、地上に降りた邪神を薙ぎ払う。」
(これって大地の裂け目作るやつ?)
(やつもなにも今からそれをやる。我々妖精種も技術貸与には関わった。)
(えっ!?なら、ここにもブライトと言うか妖精王が?)
(そいつは知らん。我はブライトであって、滅びかけて堕ちた者ではない。そもそも妖精王そのものが形を持たぬ存在だ。)
・・・、確かに妖精族っていないもんなぁ〜。普通の種族に当てはめるにしても、神族と魔族どっちにする?妖精族作る?と言う話にもなるし、モンスターとして出てきたり召喚できるから、プレーヤー側に寄せるとマズイのか。と、言うか堕ちた妖精王って寄生体に寄生されてるのかよ・・・。芋虫どこにもついてないよな?
(なにをじろじろ見ている?)
(芋虫に寄生されてないかと・・・。)
(たわけ!触手が出ているのは、その時点でその個体の進化の限界を迎えているからだ!)
(あ〜・・・、クインズさんが邪神はフルパワーとか言ってたのはこれかぁ・・・。)
そうなると邪神が強かったのも分かるし、ツキンズが更にウザかったのも分かる。・・・、えっ?ここにあの邪神みたいなのが攻めてきてるんだよな?流石にレイドボスが集団で襲って来たらゲームどころの騒ぎじゃないぞ!?
「徽章持ちの方!こちらへ!貴女は複座式に乗ってもらいます。」
「えっ、複座式?そうか・・・、ブライトいるもんなぁ・・・。」
NPCに連れられてやって来たのは格納庫っぽいところ。壁も床も何やら幾何学模様でちょっと迷子になりそう。まぁ、区画とかが変わってから模様が違うから、必ず迷うことはないと思う。
「ちょっと兵隊さん?この模様意味あるの?」
「壁や床のですか?内部侵入された際、その区画を封印する為の防御方陣ですよ。」
「・・・、封印されても脱出できますよね?」
「・・・、脱出出来ないから封印なんです・・・。稀人は・・・、何度でも訪れる。だから稀人なのでしょう?私達は違います。」
「・・・、うっし。君、名前は?」
「えっ?」
「名前だよ、名前。名も知らぬ誰かを守るより、顔見て名前を知った誰かのために戦いたい。」
「私は・・・。」
ガッチガチのサイバースーツで、顔も見えないNPC。名前の表示されてなくて、一般兵としかされてない。でもね、トラブルオンラインのNPCって名前を聞いたり仲良くならないと、パン屋とか魚屋とかしかでないんだよ。
サイバースーツのヘルメットが、ウィーンと音を上げて後ろに下がる。中から出てきたのはウサギ耳で赤い瞳の女性。白い髪の毛がフワフワしてそうだ。
「ニーニャです。」
「了解、了解。じゃあ、ちょっと・・・。」
「ツキ!早くしろ!もう飛び立つぞ!」
「ブライト!今いいとこなの!じゃまあ、徽章貰った分は仕事してくるよ!」
「ご武運を!」
ニーニャ・・・、運営め!安直な名前付けやがって。女の子にスペイン語で女の子って付けてどうするんだよ。まぁ、ウサギだからバニーと名乗られるよりは、名前っぽいからいいけどさぁ!ブライトが後ろで俺が前。複座式なのはいいとして、なにが違う?
「ブライト、操縦方法分かる?」
「単純だ。体だと思って飛べばいい。」
「・・・、了解!で、ブライトは?」
「たまに牽制射撃だ。」
流石に火力2倍はなしか。と、言うかこれ機首よりも前に、突き出す様に下部アーム付いてるから殴れる?それともキャッチ?なんにしてもあるものは使わないと損する。そしてまたもや宇宙へ・・・、ガチで宇宙じゃん!でも、ご褒美としては上々?
多分、日華よりも後ろにあるのがかぐややら機動戦艦アレイスター。その他にも浮かんでるけど、多分そのうち落ちるんだろうなぁ・・・。なにより既に残骸みたいなのも飛び散ってるし、そんな残骸が時折蠢いてる・・・。
「他のプレーヤーは先に行ったか・・・。まぁ、かぐやのミニゲームと言う名の洗礼受けたプレーヤーなら大丈夫だろう。武装はっと・・・。」
割と充実はしてる?ビームバルカンに収束砲、ミサイルにマニュピレーターアーム。オーソドックスなシューティングゲームと言えばそうだけど、バルカンにはOHがあるし収束砲はフルチャージに約3カウント、冷却に2カウント。ミサイルは4発。と、言うかマニピュレーターアームってなに?普通にパンチナックルで良かったんじゃ・・・。
「おぉ〜・・・、これって支援アーム的な扱いか。」
「確かめるのはいいが来ているぞ!」
「っ!」
感覚としては、やったことないけどVRスポーツに近いとか!?かぐやでやったミニゲームが戦闘機基準のシューティング感多めだとするなら、これは少し違ってサバイバルゲーム感がある!なにせ、残骸を掴んで盾にできるんだし!
「フハハハ・・・!邪神の尖兵恐れるに足らず!そうだよ!かぐやの時もそうだけど、頼まれたのは時間稼ぎなんだよ!くっ!悪い文明の運営め!」
「なにを1人で百面相している!まだまだ来ている!」
なにかを倒せじゃない、なにかを守れでもない。単純に時間を稼いでくれ・・・。確かに稼いだ時間の先には未来があるんだろうなぁ!
「そこ!バルカン発射!ちっ!残骸が少ない!ブライトの方から見て残骸の多いところは!?」
「9時の方向方面に多い!」
「なら、そこへ潜り込む!」
「バカか!残骸に当たれば機体にもダメージが!」
「その為の収束砲!その為のマニピュレーターアーム!今日5回死んでないプレーヤーはいるかぁい〜・・・、私だよ!?やっば!普通にプレーヤーから殺される!?」
そうだよ!?杭騒動でオーランドから逃げて、そのまま2章突入したからフレンドリーファイアガンガン貰っちゃうよ!?幸いなことに他のプレーヤーよりも後から出たから、まだ余波は来てない。でも、結構先の方ではかなりドンパチやってるんだよなぁ・・・。まぁ、しゃあない。
収束砲をフルチャージして残骸が多い所へズドン!そのまま収束砲の通った後を進み、ある程度残骸の多い所へ辿り着いたら・・・。
「この残骸、デカいけどやれるよな?」
「その前に逃げろ!ここにも寄生体がいる!」
「マジかよ!?」
アームで掴んだ残骸から、寄生された兵士がこんにちは・・・。確かにかぐやのマップにはこんなモンスターが多かったけど、こんなタイムカプセルいらね!なんなら、なんでビームライフルとか手放さずに携行して、こっちに狙い定めてるんですかねぇ!?モンスターだからだよ!
「ぶん投げる!」
「どこに投げている!?お前は9時の方向に飛んできた、投げるなら3時の方向だ!真正面に投げるな!」
「被弾するよりはマシ!ただ、ここまで来てなにもなしは流石に申し訳ない。なので・・・。」
「なので?」
「散弾銃プッパ作戦をやる!」
「・・・、なんだそれは?」
「決まってるじゃない。一番でかい残骸を運んで、そこにミサイルを全弾ぶち込んで破裂させる!」
簡易クラスター爆弾、或いはアーム使うから手榴弾?なんにしても機体に残骸が当たればダメージが出るってことは、ただのオブジェクトでもなければ動かせないギミックでもない。




