234話 御霊送り
朝飯食ってゲームにログイン!先生達と話したら、指輪を本格的に調べると言っていた。三枝先生の仮説としては、ケラチンと鉄分と言うかヘマチンが関係しているのではないかと言っていた。
或いはスケーリーフット、正式名称はウロコフネタマガイとか言う深海生物みたいに、取り込んで不要なものを排出する時に形を形成させているのかもと・・・。ナノマシン治療自体、人間だけじゃなくて絶滅危惧種の治療と言うか保護にも使われるし、なにが絡んでるか分からないのよね・・・。
「撮影スタート〜。三が日が明けたけど、割と人は多いですな・・・。」
多分学生とかの冬休み組だろうけど、福袋装備のルーキー達が街を走り回ったり、誰かに声をかけたりNPCから依頼を受けたりと結構賑わっている。
中には吹き出し機能を使って『師匠募集中!』としている人もいるな。そんな人は結構話しかけられて、今のレベルやらメインストーリーの進行度を聞かれているようだ。
なにせ悪い文明の運営が、2章解放条件を覚醒した杭1本としたからねぇ。入手手段は問わないにしても、2章の足切りレベルと言うか適正レベルは暗に150からとしているのだろう。
「それで?ツキはこれからどうするのだ?」
「う〜ん・・・。これと言ってイベントの話は聞かないし、朝から駄弁り配信しても人は集まらないからなぁ〜。とりあえず、2章解放とか?別に2章解放したら1章のストーリーが遊べないなんて話もないだろうし。」
と、言いつつも2章と書かれたアイコンは灰色である。領地に行ってブライトと合流する時に、杭もインベントリに入れたから、要件は満たしているはずなんだが・・・。
「とりあえず、NPCに聞いてみるか。ちょっとそこ行く魚屋さ〜ん!2章ってどうやって始めるの〜。」
「はぁ?魚屋がそんな事を知ってると思うか?そもそも2章ってのがなにかわからん。稀人の催しなら、図書館で調べるか宗教関係者に聞いてくれ。じゃあ、俺は急ぐぞ。」
「あいあい、なら足で・・・。」
「おい!覚醒した杭持ちか!?売ってくれ!」
「まて!おらが買う!秘伝書や素材、ゴールドを出す!」
「杭の欠片余ってませんか〜?そちらを買い取りますよ〜。」
「いや、待て・・・。ツキだ!メインストーリー1章を一緒に攻略しようとじゃないか!」
「フレ申請していい?」
「・・・、ブライト!逃げるよ!」
「あっ!待って!」
呼び止める声を後ろに置き走り出す!やっべー・・・、1章のメインストーリー未攻略なのは配信で知られてるし、イベントでも配信しまくってたから、さっさと杭を手に入れたい人にとっては、ある意味俺に1章を攻略させるのが最短ルート!
でも、会話スキップとかストーリー流し読みとかは、したくないんだよなぁ〜。雑にストーリー攻略したくなかったから、今まで放置してたんだし!
「なっ!何事だツキ!勝手に稀人郷を出歩いたのがバレたのか!?」
「違う!杭難民!2章遊びたいけど、解放条件を満たせずに彷徨ってる亡霊達!さっさとポータル使ってどこかへ逃げるよ!後!私は本人基準アバターなだけーー!!」
まさかポータルのこの機能を使う日が来るとは・・・。行ける街の欄の一番下、何故かそこにある『ランダムセレクト』の文字。まぁ、今みたいに人に追われたときに、逃げる手段として実装されてるんだけどね!?
ネットストーカー対策やら、PK対策は結構ガチガチにされているこのゲーム。それでも、その瞬間プレーヤーがどう思うかは分からない。だから、こんな項目も残されている。まぁ、半分くらいのプレーヤーが、この機能を使って鬼ごっこ感覚で遊んだりもしてるんだけどさ。
「・・・。いや〜、怖かったですね〜。師匠やってれば杭は集まるはずなんですが・・・。」
「ツキの場合、邪神を討伐するまでいけば、もう1本くらいは杭を覚醒できるぞ?」
「えっ!?なして?杭って邪神を討伐したら1本だけくれるんでしょ?」
「今回の邪神襲来により目覚めた遺跡もある。それに砲撃で破壊したなら飛び散った杭もあれば、邪神の系譜は散り散りになり全て倒しきれていない。故に、欠片や杭がとこかに眠っている。」
「なるほど・・・、端から運営は片方の塔は砲撃で壊す気だったか・・・。」
新規プレーヤーが1章が終わって2章がプレーできない問題。それをなくすために、塔を壊して世界に欠片や杭をばら撒く。そうすれば新規勢は1章攻略時点で、どうにか2章への切符を得られるし、ベテラン勢としても単純にストーリーをなぞるだけではなくなる。
なにより砲撃でぶっ壊したから、飛散したが通用するんだよなぁ〜。リローデッド時点で邪神の系譜と言うか、芋虫NPC達はバンバン海にばら撒かれてたし・・・って、海に出た時にキャプテン=ロイドが広がるとか言ってたじゃん!
「流石にその辺のそのそ歩いたりはしてないよね?」
「していないな。邪神ならともかく、それの系譜に連なる者は力を蓄えるために普段は隠れている。」
「なるほど・・・、だから希少ボスやらになるのか。で、相変わらずキンキラキンで眩しいここは日華か。」
流石にここで師匠募集している人は・・・、よくも悪くもいるな。一緒に何時間プレーするとかでも実績になるらしいし、なにも教えるばかりが師匠ではなく、時にはPvPしてガチンコ勝負することもあるらしい。
そんな日華、砂漠まで含めれば古代戦場都市日華。今の街だけ言えば祭事都市日華と、遺跡云々の話を考えると今なら地下にご招待されると邪神の系譜がいるとか?ゴーレム探しの難易度が上がりそうだ・・・。
「そこ行く御方!お布施を!今ならなんと200ゴールド限定です!」
「普段の200倍!?はぁっ?普段1ゴールドでいいのになんで?お布施しない訳でもないんだけどさ・・・。」
「祭事で御霊送りが行われるんです!各種族、各御神体による御霊送り・・・。この度の英霊を送る祭事・・・。」
「なるほど。なら、200ゴールド。イェーイ!」
「イェーイ!まいどー!あっ!そこ行く御方お布施をーー!!」
ハイタッチしたのはいいものの、御霊送りってなんだろうか?イベントと言うなら告知はあるだろうし、逆にNPCの催しと言うなら大きすぎるような・・・。まぁ、せっかく来たしグレッタに話を聞くついでに見て回るか。
「ブライト行くよ〜って、なにしてるの?」
「御霊送りをするのだろう?勇敢なる者たちに王として敬意を表していた。」
供え物なんだろうか?近くの縫いぐるみの前に羽を1枚置いていた。よくよく見れば、他の縫いぐるみやらカカシの前にも魚やらポーションやらが供えられているし、死んだNPC達への奉納と言うことだろうか?
なんにしても警備NPCの虚無僧がいつもより多めにウロウロしているので、ここで盗みをやるような剛毅なプレーヤーもいないだろう。1ゴールド、されど1ゴールド。デカい宝石を狙うなら・・・、やっぱり割に合わないな。
「・・・、盗むなよ?」
「盗んで撮れ高上げてなんになるのさ。それよりも御霊送りってお祭り?それともお盆的な?まぁ、歩きながら観光しよう。」
そう言って歩き出したものの、プレーヤーにとっては目の毒!ゴールドやら換金用の宝石はいい。でも、素材やらポーションやら、果ては武器に普段はNPC専用の備品まである!
『コラまて盗人!』
『あっばよ!虚無・・・。』
『成敗!』
「再度言うが、盗むなよ?」
「ぬ、盗まねぇし!私はいい狐巫女だし!」
欲に負けたプレーヤーが吹き矢でダウンさせられて、そのまま成敗された。でもそうかぁ・・・、NPC専用備品も盗めるのかぁ・・・。後からなにか手がないか考えた見ようかな。そんな混沌とした街中を歩き、やって来たのは魔族の寺院。
ここに来るまでに魔族プレーヤーの列が出来てたけど、御霊送りと関係があるのかな?なんにせよ俺の目的は知り合いのNPCに会うことだし、死んでいなければグレッタはいるだろう。
『ほらよ、納品だ。コレで終わりだよな?コムズ。』
『そうだぜ稀人さん。御霊送り用の宝石、コレを盗賊やらジュエルイーターから守るのが依頼だ。』
『ひぃ、ふぅ、みぃ・・・。うむ!依頼通りの数がある。報酬として3万ゴールドを渡そう。茶でも飲んでいくか稀人よ。』
『いや、この街は目の毒だ。さっさと帰るとするさ。』
聞き慣れた声・・・。最後に見たのは偽物だったけど、そこにはコムズがいてグレッタがいた。行き違うプレーヤーは気にせずに気がつけば声を上げていた。
「コムズ!生きてたか!」
「久しいな、コムズ。」
「おお!姐さんに高貴なる御方!なんだ?ナイスガイな俺に会いに来たか!?まぁ、邪神騒ぎの時は大変だったぜ!なにせあのモンスターの中を荷運びしてたからな!」
「突破者か・・・、奉納品は確かに持っているな。だが、生憎とお前が奉納する場所はここではない。」
「えっ!?コムズあの中運び屋やってたの!?」
「ポーションは必要だろ?戦力にゃなれねぇが、運び屋としての腕前は確かだぜ!」
「再会を喜ぶのもいいが、先にグレッタだろうツキ。」
「そりゃあ、あんまりだぜ高貴なる御方。でもまぁ、姐さんなら俺よりもグレッタか。」
再会できたのは嬉しい。なにせ、オーランドのNPCの顔ぶれも結構変わってたし、前に来た時はたぬきみたいなNPCがお布施を貰いに来たが、今回は神族の天使みたいなNPCだった。死んだとは限らないし、たまたまかもしれないけどねぇ。
と、言うかなんで俺はそんなにグレッタ勧められてるの?ぷらっと来て適当に話して観光するつもりだったんだけど・・・。えっ?なにか発生クエスト踏んだ?奉納品とか言ってたし。
「あの〜、奉納品ってなに?」
「・・・、高貴なる・・・。そうか、名をえたのか。」
「あぁ、我はブライトとなった。」
「そうか・・・、ブライト。お前の契約者はおバカなのか?」
「えっ!?なんで!」
「すまんグレッタ。ツキはなにも知らぬ突破者だ。ただ250歳ではある。」
「コムズ!ちょっと!なんで私グレッタからおバカって言われたの!?」
「姐さん・・・、杭を奉納しにきたんじゃねぇのかよ・・・。亜人の神様はバン・ホーだろ?ここは魔族の寺院でイスイミスだ・・・。」
「そりゃあ知ってる・・・。はい、私が悪かった・・・。」
ここに来るまでも、たくさんいた魔族プレーヤー・・・。それが寺院の中に入ると誰もいない伽藍の洞。そしてまだ灰色な2章アイコン。ここまで揃えば流石に分かる。つまり、覚醒した杭を自分の種族の神様に奉納しろってことだろ!くっ!普段街の寺院にも顔出さないし、行っても話をするくらいしかないから完全にスルーしてたぜ!
「でも!名探偵ツキは全ての謎を丸っとお見通しだ!杭をバン・ホーに供えればいいんでしょ!なんならカカオも供えるよ!徳を詰むために!徳を詰むために!じゃあ行く!ブライト行くよ!」
「いや、カカオは今はいらないが・・・。顔もない御神体に供えるのは合っている。そもそも私たちは誰が邪神と戦い、誰が邪神を封印し、或いは討伐したかは知らない。そして、その過程で誰がどのような選択をしたかも、だ。と、言う前に行ってしまったか・・・。」
「しゃあねぇよグレッタ。稀人は話を聞かずに突っ走るもんだ。」
背後から声が聞こえるけど、それはさておき2章解放!撮れ高!多分、撮れ高になる!なるけど、どうしよう?流石に2章プレーしてない人に内容を暴露するのはよろしくない。だって、ネタバレしたストーリーほど興冷めするものはないし、犯人やトリックの分かったミステリーほどつまらないものはない。
「走りながらだけど、動画のタイトルに『2章ネタバレあるかも』表記を記載!トラブルオンラインプレー時に2章をプレーするたびに、その記載を付けることを設定!」
「なにを言っているかわからぬが、それは今必要か?」
「2章解放条件とか知らない人には、多分ネタバレ!」
「・・・、多分お前と同じような少数の者だけだぞ・・・。」
「・・・、ガッデム!」
そんな話をしながらやって来たのは、ケモナーがヨダレを垂らす亜人族の寺院。あっちを見ても尻尾、こっちを見てもケモミミ。アバターを作るときに獣度もある程度イジれるから、全身毛むくじゃらやら、顔だけ獣とか言うアバターもいる。
そう言えば岩戸さんがキャラメイクテコ入れして、尻尾増やせるようにするとか言ってたけど・・・、お知らせを見るとやってるな。イベント後と言ったけど、新規が増えたタイミングでのアバターテコ入れかぁ。
だからかは知らないけど、猫又みたいに2本の尻尾を生やしたアバターやら、腕を増やしたアバター。果てはオオカミっぽい尻尾がワサワサしているアバターも・・・。キャンペーンと言うことで、1回だけアバターのキャラメイクをやり直せるらしい。
他のゲームは別として、トラブルオンラインの場合キャラメイクのやり直し=体型変化で基本的な部分の数値がブレる。だから、メイクは出来ても体型を大きく変えることはできない。
だからなのか、キャンペーン内容を見ると尻尾を増やすやら、顔つきを変える、瞳の色や目の角度なんてのはあるけど、太らせるや痩せさせる、身長を変えると言うのはない。まぁ、今更変える気もないし、変えたら本人基準アバター配信者と言う旨味もなくなる・・・。
「どうした?なかに入らないのか。」
「いや、ちょっと怖い事を考えててね。」
「なんだそれは?」
「いいよ、個人的なことだし・・・。」
仮にこのキャラメイクをしたとして、現実世界に反映されたら?例えば尻尾を1本なくしてみるとか、瞳の色を青から赤に変えてみるとか・・・。怖っ!種族が変えられない以上、耳や尻尾はつく。それのバランスを崩して福笑いにでもなったら事だ!
「UIへアクセス、アバター再メイキングに関する情報を非表示。これで良しと。さぁ、入ろうか。」
寺院の中へ入ると、てでんとぐるぐる巻のデカいミイラ見たいな御神体がある。他の亜人プレーヤーがいない所を見ると・・・、2章解放してどこかへ行った?そう言えば魔族プレーヤーたちも寺院には向かっていても、中にはだれもいなかったよな?
「お供えですか?」
「はい。杭を供えに来ました。」
「分かりました、杭を掲げて下さい。」
そうNPCから言われたので、杭をインベントリから取り出し掲げる。これで2章解放?それならそれで楽だからいいんだけど・・・。
「おっ!」
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メインストーリー2章が解放されました
メインストーリー2章プレー中は装備品
『邪神を封印せし者の杭』を運営側が
預かることとなります。
※今の時間軸を楽しむ際はプレーヤーに返還されます
※解放した2章をプレーする際は各地の寺院で杭を掲げて
メインストーリー2章を選択して下さい
プレーを開始しますか?
YES/NO
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時間軸?時間軸ってことは過去・・・、かな?未来だと杭を持っていっても問題ないだろうし、逆に過去だと持ってると不自然になる。と、言うか運営がプレーヤーの杭取引を根本からぶっ壊しに来た。
少なくとも2章を遊ぶなら杭がいる。でも、その杭は売ろうと思えば売れる。しかし、杭がなければ2章のメインストーリーはプレーできない。ある意味、捨てられない大切なもの枠だな。ロック機能で今のうちにロックして、売ったり捨てたりしないよう。そして、YESを選択!
「御霊送りを開始します。」
そのNPCの声とともに荘厳なBGMが流れる。ムービー差し込みかな?いや、でも差し込みなら撮影禁止の中訳とか出てきそうな・・・。
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過去があった・・・
未来もきっとある・・・
でも、今だけがなかった・・・
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「はっ!ここは!?」
「なにを寝ぼけているツキ。ここは戦争まっただ中の日華だ。」
古代戦場都市日華、古代をとったら戦場都市日華!と、言うかね?ムービーもなしに三行でストーリーなのか独白なのか、分からないもの送ってくるなよ運営!
「過去だよね?トラブルオンラインの中の。」
「過去だな。正確には杭を供え、その杭の記憶の中にいるとも言える。」
「杭の記憶?それよりも状態確認!領地行けないとかないよな?後は・・・、かぐや防衛隊徽章とか付けとくか。一応、軍人に尊敬されるらしいし。」
装備品じゃない純粋なアクセサリー。だから、防御力があがるとかの効果もない。その代わり、好きなところにシールみたいに付けられる。・・・、胸だと見られていい気しないし、耳にでも付けとくか。
そんな確認をしつつ辺りを見回すと、同じようにキョロキョロするプレーヤー多数。それよりも不穏なのはガッチガチに装備整えたNPCが俺達を見てること。ついでに言うとね・・・、ここ多分地上じゃないんだ・・・。
全員サイバースーツ見たいな近未来装備だし、ゴテゴテした機械みたいなのもつけてるし、どちらかと言えば、城塞都市かぐやにいると言われた方がまだしっくり来る・・・。
ファンタジーSF・・・、今度はファンタジーをどこへやった悪い文明の運営!俺を見ろ!姿を見ろ!なんなら周りも見ろ!一部はSFしてるけど、俺とかバッリバリの巫女だぞ!
「傾注!キャプテン=バン・ホーよりお言葉がある。」
「それって神・・・。」
「そこ!私語は慎むように。」




