231話 卜部さん
「稀人にリージョンと言って分かるか?分かるなら・・・。」
ブライトの語りは分かってるけど、話さないといけない前提条件部分かな?そもそもトラブルオンラインのサーバーは1つである。そのなかでブロック分け、接続地域差が出る。まぁ、その地域差もほぼないから余程の僻地でもなければ普通にプレーできる。
秋ドンさんが大きな船に乗ってる=遠洋航海船とするなら、それだけでカクカクした動きを嫌った上に、ラグを嫌ったとも取れる。う〜ん・・・、秋ドンさんの仕事を騙りと思って色眼鏡をかけて見たことを内省しよう。
ネットの中ではそれが正解か、不正解かは相手を知らないと分からない。なにせ相手の仕事やら経歴は不公開と言うか、個人情報は非公開。非匿名性をなくせば政府がぶち殺される。その代わり、AIアマテラスが見るなら割りと人は受け入れる。
俺には分からないけど、人間よりもAIが公平な審査ラインらしい・・・。う〜ん、気持ちは分かるよ?裁判員よりも裁判官、それが気に入らないなら民主心理。でも、日本は民主主義。俺は悪い言い方をするなら少数派は納得するしかないと思ってる。だから意見の反発が起こるのも分かってる!どの老人の戯言かは知らないけど、個人も国も止まらないんだよ!
そんな事を思いつつブライトに邪神の事を話し、交換しなかった杭を倉庫に入れる。流石に長丁場のイベントやったし、運営もそんなにイベント連発しないだろう。
「と、言うわけで邪神は塔ごとぶっ壊されましたとさ。」
「1つは残ったのだな?」
「多分そうかな?質量弾の関係で〜とか言ってたし。まぁ、そっちはそっちで海外のプレーヤーが、攻略と言うか封印したみたいだし大丈夫だと思うよ。」
「・・・、そうか。」
「なにか知ってんの?」
「いや、過去より続く因縁は残るものだと思ってな。なんにせよ束の間の平和は訪れたわけだ。」
「因縁ねぇ。本当にそろそろメインストーリーをやろうかな。断片的な情報は持ってても、全容把握は出来てないわけだし。さて、私もそろそろログアウトするよ。また明日〜。」
ログアウトしてシャワーなんかを浴び、ぼちぼちネットニュースなんかを見ながら就寝。起きたら3日で正月三が日ラスト。まぁ、下手すると既に仕事を始めてる人もいるし、物流なんかは止められないしなぁ・・・。
「おはようございます、マリちゃん。」
「おはようございます、正月もイベントお疲れ様でした。ライブ配信だったから私は楽できましたけどね。あと、これお土産です。」
「おはよございます、敷田さんに三枝先生。お土産どうも〜、おまんじゅうですか?」
「紐を引いたら温まるやつですね。」
「おぉ〜、駅弁とかであるあの・・・って、これってこの前行った温泉旅館のやつじゃないですか!なんです?あそこのお宿気に入ったんですか?」
「静かでいいところですからね、温泉もいいしジビエも食べ慣れると美味しかったですし。」
「満喫してますねぇ。それで、今日は検査か何かします?」
「いえ。今日までは病院としても最低限の人間を残して営業しているので、お休みという形で構いません。ただ来客があります。」
「来客?それってもしかして卜部さん?」
「ええ。今は医院長と話されていますが終わればコチラに来ると・・・」
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「あけましておめでとうございます、天野医院長。」
「あけましておめでとうございます、卜部さん。では、そのままお帰りくださいね。」
「そうもいかないから、長い間邪魔する予定ですよ。それで?雁木さんの件、木本くんが専属をするにしても私も一目見ておきたい。」
新年早々に好ましくない。今は私も人側、それでも目の前の糸目の男はどうも苦手だ。多分、それが妖怪としての感覚で人としての感覚でもあるのだろう。
誰だってあるだろう?第一印象から『コイツとは仲良くなれない』と思うことが。それでも、マリちゃんの件では連携を取るしかない。確かに病院という場所は役所とは違う形で人を作り終わらせられる。
出産然り、戸籍然り、死亡判定然り・・・。急にこの世に人が現れるなら、それはデータとして登録された時だろう。過去なら家族が見て隣の家の人が見れば良かった。しかし、今では産まれただけなら半分生きている状態で、名をもらい明確な個人とされて人となる。
「先にいいますけど、いきなり襲うなんてことは?」
「ないない。流石に今の世の中、いきなり殺しにかかれば捕まる。それこそ、なんの後ろ盾もない電気精神体なら祓ってもいいですけど、雁木さんは人として既にある側です。」
「そう言う貴方が、よく姫子さんを認めた。」
「雪女ですか?アレはよくも悪くもいい拾い物ですよ。過去から今に至るまで、人は鬼を討つことはできても幽霊を斬ることはできなかった。でも、それを同じ土俵に少数でも切り取って乗せることができるなら、私たちはかなり有利に電気精神体に物申す事ができる。」
「やめたがいいよ?卜部くん。下手に事を荒立てると雪玉が雪崩れになるよ?」
「八百さん・・・、七五三みたいな格好で言っても響きませんよ?」
「失礼な。これでも晴れ着で着飾って、五郎ちゃんと初詣行って姫始めする予定なんです〜。と、言うかね?まだ宮内庁は電気精神体を追い回してるの?」
「それが仕事で、人の世を守るためですからね。古い時代なら被害も限定的。それこそ、村が1つ潰れようと人数は100程度。しかし、今は違う。システムが複雑になればなるほど、連鎖的に事態は繋がる。」
卜部が首を竦めながらヤレヤレといった感じで話すけど・・・、確かに分からない話ではない。分からない話ではないが、追い詰めすぎれば相手が立ち上がるのもまた、電気精神体という者の定め。
要は距離感さえ間違わなければいいのだが、それがどこまで行っても違うから干渉しあう。特に今は電気精神体側からすれば脳波や電気、AIが自分達の場所まで来ていると思っているのだし・・・。
「まっ!私は好きにするから勝手にするといいよ。100年でも200年でも経てば、その時に答えは出るかもしれないし、更に混沌としてるかもしれない。それこそもう、天沼矛でかき混ぜるみたいにね。」
「それはそれで、私としてもいいですよ?人にAIに妖怪、垣根がなくなれば逆に捕まえやすくなる。さて、案内していただけます?」
「分かった。案内するが・・・、変なことはしないように。少なくともこの病院は私の城で国も認めている。」
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「これって、生石灰の化学反応利用してるんですよね?」
お土産のおまんじゅう。1人で食べても残りそうだから、さっさと紐を引っ張って温める。多少硫黄の香りがする気がするのは、あの温泉街を思い出してるからかな?
「そうですよ。多少塩気も付いて塩まんじゅうになるとか・・・。」
「お茶が入りました。」
「こっちも温まったみたいなんで食べましょう・・・。」
食べようとしたらノック音が!医院長から入っていいかの問があり、特になにがあるわけでもないから、どうぞと返す。多分卜部という人と話が終わってこっちに来たんだろう。
先に入ってきたの医院長。それに連れられて来たのは、糸目の男性。これと言った特長はないかな?どこにでもいそうで、堅苦しいような印象もなく、顔には笑みを貼り付けたような人。元営業マンとしては、できれば相手にしたくない人だなぁ〜。
表情から読み取れる情報が少ないってことは、その時点で1枚札落ち状態。第二印象を決めるなら話してからだけど、商談でもないからどう話そうか?まぁ、手頃な小道具もあるし、そこからいこう。
「マリちゃん、コチラは・・・。」
「卜部さんですね。はじめまして、雁木といいます。ご丁寧にお餅をいただきましたが、今お返しできるのはこのおまんじゅうくらいです。よろしければどうぞ。」
「それはまたご丁寧に。改めて、卜部 時臣といいます。話は木本や柊から聞いてますが・・・、実際に見ると狐ですね。」
「ええ。聞いているなら聞いている通りかと。」
まんじゅうを勧めるけど手をつけない。少しもそちらに視線を向けないと言うなら、関心の方向は俺に向き性格を考えるなら割とせっかちタイプかな?まぁ、俺の容姿の方が重要と言う話もあるけど、報告を受けた上で気を割かないなら明確な目的があるともとれる。
「ふむ・・・、単刀直入に聞きましょう。宮内庁に来る気はありますか?木本の方からも様々な提案があったでしょう?職員待遇の件や、地域職員として協力者になると言う件。当然、私達側に来るというなら、柊とコンビになってもらうことも考慮しますし、外を出歩くにしても宮内庁としてバックアップしましょう。」
「ほう。具体的には?」
「イメージキャラクターとしての広報活動。今時どこの省庁や県、自治体もキャラクタービジネスにアニメ聖地の誘致なんかをしてます。配信者のツキさん。それを宮内庁がプロデュースしていたとすれば、話はスムーズですよ。更に言えば、文化庁がゲーム内の舞を監修もしてますしね。」
「なるほど、そう言った表向きの理由を私にくれると?」
「ええ。柊もともに行動をするなら、危険から離れることも・・・。」
「またまたぁ。卜部さん、それは表で裏がある。ぬらりひょんや雪女・・・。今は姫子さんですけど、そちらからも話は聞いてます。その上で、危険から離れるのは無理でしょう?」
ゲームでは無茶をしてもいいけど、現実でなにかをやれと言われても困る。そもそも喧嘩もしたことなければ、特に体を鍛えてるわけでもない。これがアクション映画なら、一般人がなぜか警察や軍相手に大立ち回りもできるんだろうけど、現実はそんなに甘くはないのよねぇ。
「確かに無理でしょうね、雁木さん。既に貴方はゲームの中のルールで動いて自身を運用している。だから、桃やカボチャも出せる。その点から考えていけば、貴方自身がどう考えるかよりも、ゲーム内の行動として実績が積み上がってますよ。」
「それは・・・。」
確かに体力検査やら鞍馬さんと相対した時に、過去の俺では考えられないくらい体は動いた。でも、それイコール戦えると言うのは違う。誰かを傷つける覚悟、なにかを守るための戦い、そして、行動して帰ってくる結果。それを全て受け止められるのだろうか?
・・・、うん。
「力があるから使えと言うなら、私はやはりなにもしません。それをするくらいなら、綺麗事と言われようと話すところから始めますよ。」




