196話 無害な狐娘です
三枝先生からルール把握をお勧めされた。つまり・・・、食べてゲームして健やかなる日々を送るのは、認められた治療?まぁ、その健やかなる日々もどこまで健やかでいられるか微妙なんだけどさ。
「そう言えばマリちゃん。抜け毛等はありませんか?」
「抜け毛ですか?そこの尻尾用ブラシとか、髪用の櫛とかに絡まってればあると思いますよ?それ以外だと備え付けのお掃除ロボットの中とかですかね?」
個室ということは、それだけ面会が厳しい患者がいると言うこと。だから掃除なんかもお掃除ロボットが勝手にしてくれるし、備え付けの冷蔵庫なんかもある。ぶっちゃけて言うと、大病院の個室だからビジネスホテルよりも設備はいい。
まぁ、その分お高いんでしょう?と、聞かれて黙って請求書見せたら、長期で使ってるから相手が引くくらいの額にはなる。まぁ、被検体契約だから無料なんだけどさ。
「いえ、最新のものが欲しかったんです。今のバイオナノマシンの状態を知るために。」
「なら。」
プチリと髪の毛を1本引っこ抜いて先生に差し出す。ブラッシングとかするけど、そこまで抜け毛は多くない。コレで朝起きてベッドの上が毛だらけだ自分でも引いてだろうな・・・。
「・・・、もう2、3本。」
「どうぞ。」
更に抜いて三枝先生に渡すと、ポケットから袋を取り出して、それに収めてから食器を持って部屋を出ていった。何はともあれイベントの状況だけ見つつ、明日まで色々と整理をするかな。
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「木本くん。今の状況、分かるよね?」
「はっ。それは・・・。」
「わかってないよ。だって僕は君を責めてない。むしろ、褒めるべきだし、称賛するべきだし、なんだったら昇進させて更に責任を渡してもいいと思ってる。」
「それは・・・。」
この人は怒らない。そう、怒らないが代わりに責任を渡す。今の宮内庁は少し特殊で皇室警備をする組みと俺のように妖怪やら電気精神体を相手にする組みに分かれる。まぁ、警察と連携するときは俺も柊も皇室警部補やら皇室巡査部長なんて肩書がある。
だからこの人。卜部 時臣さんは皇室警視長なんて肩書があるが、その実態は酒呑童子を討った卜部 季武の直系でバッリバリの武闘派。なにせ卜部と聞いただけで鬼・・・、要は妖怪が恐れると言われたほどだ。
柊性とは根本的に妖怪が嫌がる強度が違う。なにせこの人1人で弓も刀も散々に使う。有名なら渡辺綱の髭切や源頼光の膝丸なんて刀があるが、逆を言えばそんな名刀がなくとも圧倒できると言う話になる。
「いやかい?皇室警部。いい給料がでるよ?」
「いや、給金は・・・、もらいます。」
「それでよろしい。」
目がスッと細められて、心臓を握られるではなく優しく撫でられた気がする。握るならすぐに潰せる。なら、撫でるとは?単純だ、いつでも潰せるになる。
「はい。」
「それで、君が貰った嫁。雪女の姫子だったかな?」
「今は木本 姫子です。」
「わかってるよ。それがこの世にある姿の形だからね。僕としては禁忌を犯したとしても、それが制御できるなら。日が昇る理と一緒でそう言う可能性も受け入れられたと考えられている。だからこそ、君は彼女の夫であれ。」
「分かっています。天野医院長とも連携し、AIアマテラス側にも『姫子と言う人物は存在していた』そう偽装してもらいました。」
「昔も今も役所仕事は面倒だけど、それを押し通せれば人も生まれる、か。それよりも、マリちゃん。本名は雁木 真利。コレはかなりヤバい怪物が生まれたと僕は考えている。」
「やはりですか。ただ、本人と接した限り人となりは悪くないと思います。それに、柊と言う鎖も・・・。」
「雁木だよ?雁木姓自体はそれほど多くない。その代わり、意味が相当にまずい。雁木刃という刀の刃文で鋸のようにギザギザ。他には階段という意味もある。それに真利、真に利を得る。いい名だよ、全く。姓に即し真の利を得、その先にあるはツキ。・・・、この人と言うか親ってヤバい名だと思わなかったのかな?ガンギマリとか。」
「それは、自分からはなんとも・・・。」
「まぁ、名前決めてくれで姫子になるくらいだしね。まぁ、姫のように可愛い子、それが転じて大切な守るべき妻子。全く、時代と言うのは面白い。なんで今!って考える人は多いかもしれないけど、それは結果的に今なだけですでに積み上がった階段が、最上階に達したようなものなんだし。」
「それはまぁ・・・。」
幾度もなんで今?やら、なんで俺の時に?とは考えた。それの答えは卜部さんと変わらねぇ。昔から懸念事項としてはあった。脳波技術が確立されAIが進化し、目に見えないモノを当然のように誰もがそこにあるとすれば、道は作られいつかは交わる。
それが今で、積み上がった歴史がいずれそうなるだろうと向かった未来で今。貧乏くじと取るか時代の転機に携わったと言うか・・・。
「君には引き続き、マリちゃんやら君の妻のことを任せるよ。いきなり僕が出て行って、肩書を盾に話したところで不審がられるからね。だから責任を増やして、できることの幅を広げる。」
「・・・、わかりました。引き続き今の状況を維持しつつ・・・。」
「上手くコチラ側に引き込んで欲しい。別に妖怪や電気精神体側に対する駒にする気はない。でも、文字通り僕たちには戦力と言えるものが圧倒的に少ないし、なにより大半の人は無防備だ。」
「はい、では。」
部屋を出て、そのまま喫煙所に入り久々のタバコで一服・・・。まずい。マズイが年の瀬には宮内庁職員・・・、電気精神体相手にするやつなら吸う。一富士二鷹三茄子、四扇に五煙草。今の俺達にゃあ持ち運べるものが運をくれるしタバコは1番違和感がない。六座頭?
目が潰れた職員はありがたいぞ?それだけ経験もある。まぁ、その経験は失敗した経験で生き残った経験でもあるがな。しかし、これで昇進して責任は増えるのは確定か・・・。 少なくとも来年はいい年でありますよう・・・。
「あん?なんだ柊。」
「座敷童子が暇だと真利のところに行ってました。」
「・・・、それはお前が連れて・・・。」
「トラブルオンラインに侵入し、配信にも映り込みした。」
「クソが!下手したら運のむきが・・・、宿に泊まった
特定の誰かじゃなくて、見た全員の成功者率が上がるじゃねぇか!対処は!?」
「既に回収と言うか、取り押さえてます。それと、いいことがあります。」
「あん?いいことだぁ?」
「トラブルオンラインには運と言うステータスそのものがありません。今回座敷童子がNPCとして入った以上、座敷童子自身もそれを勝手に操作するには・・・。」
「分かった、まずその動画の削除は?」
「LIVE配信なのでアーカイブ化しなければ、残ることはないと思います。その代わり、最前線での戦闘配信だったので、そこに子供のNPCがいることが不自然と言う話は一部で出回っています。一応、情報操作も岩戸さんにお願いはしましたが、別アプローチは提案されました。」
「別アプローチ?俺はゲームのことはわからねぇが、それの効果は?」
「かなり高いかと。ただ、岩戸さんが死にそうなくらい疲れるだけだそうです。それと、報酬がほしいとも。」
「死にそうなくらいなら、死んでないからいい。本人もそれがわかってるからそういう。で、報酬?金ならある程度は・・・。」
「真利に会いたいと・・・。」
「・・・、はぁ?なんでまたマリちゃんに?」
「本人が確かめたいことがあるそうです。」
おいおい・・・。岩戸だぞ?あの激コミュ障の岩戸だぞ?一体なんなんだよ全く・・・。




