193話 来ちゃったの!?
そう。目には目を、歯には歯を。なら、数には数を!突き進んてきたとは言え、背後から援軍受ける道はあるし、なによりブライトがここにはいる。流石にモンスターからの攻撃は軽減されないにしろ、戦力としては十分。なによりここはそこそこ広い!
「どうするつもりだ?我としては、一旦引いて後ろと合流してもいいと思うが?」
「流石にクインズさん一人残しは悪いよ。だから・・・、舞う。自衛もするけど、そこそこ頼んだ。」
「なにを舞う気だ?」
「当然、百鬼夜行だよ。狐の嫁入り抜きのね。」
フルMPから底までバフを盛り、更にMPポーションをガブ飲みしてバフ盛りして更にMPポーション・・・。理論値の限界はスタックとバフの切れる時間。なにより百鬼夜行はそこそこ発動まで長い。でも、大麻を覚醒させた今なら繋げられる。
「時は丑三つ刻・・・、ここは人の世ならざる物の怪の住まう世界・・・。」
>> 最前線で舞う?
>> 神楽舞の実力見れる〜?
トン・・・、トトン・・・。
静かに靴を鳴らしリズムを取る。既に目の前に迫る残滓はあるが、それに気を割く気はない。ブライトは俺の前に立ち盾と剣を構え、最初の熱線を受け止める。
「仇をなすはなにか?徒党組むはなにか?呼び声を上げるは誰か・・・。」
ブライトから抜けた熱線で尻尾が1つ飛ぶ。再生含めても残り3つ。相手は多い。迫るものも多い。座敷童子大先生は現実世界での百鬼夜行は危ないと言っていた。確かに、コレだけバフを盛ってやれば危ないだろう。
「厄災呼ぶ者・・・、狭間に住まう者・・・、境界を歩む者・・・。」
ドンッ!
両足で地面を大きく踏み、くるりと前宙しながら目玉を一線。着地しつつそのまましゃがみこんで、体を駒のように回しながら大麻を大きく振り、更に目玉を切る。惜しむなら見えている敵を更に切れないことか。その先に行くのは別の舞になる。だから、それはブライトを信じて任せる。
「弾かれた者に寄る辺は無きか?・・・、否!」
ここからが激しい!今ままでが準備運動と言わんばかりに、めちゃくちゃ激しい!そりゃ、性能考えればコレでも優しいんだろうけど、それでもかなり激しい!
「前!前に進む者たちよ!在!在りし日々の無念を思い出せ!」
>> 激しい!
>> 残滓もヘイト上がった?
ブライトそっちのけでツキちゃん狙いまくってるけど!?
>> それをギリギリ舞でかわす・・・、あっ!尻尾飛んだ!
「烈!烈火なる猛りは今解き放たれる!陣!陣を組み徒党を組み!階!階位なく皆等しき者たちよ・・・!」
残り1本!既に残滓は俺を集中的に狙っている!ブライトは善戦し、ダメージも貰っているが、それでもまだヒールを使い魔法を使い、アーツを使って耐えている!それに・・・。
「ブライト、加勢する!」
「稀人クインズ!ツキを守れ!アレを完成させろ!」
「分かってるさ!ボスと言われたが、今はあの綺麗で激しい神楽を見届けたい!そこの残滓!ノックバックフィスト!」
「同感だ!アースジャベリン!回転斬り!大斬撃!」
「者!者から物の怪へ変じ、それでもなおそこにある者達よ!闘!闘いの時は来たれり!姿現す時は来たれり!揺蕩わず!うつろわず!己が誰かを見定め産声を上げよ!」
最後の尻尾も弾け飛び、舞を崩そうと足元やら手に熱線が飛んでくる。それは一瞬紙で手を切ったような痛み・・・。それは一瞬、ライターで炙られたような熱さ。ここで怯むな!確かに熱さは怖い。火達磨になってあの熱さを思い出しそうになる。でも、それでも集中しろ!
あの事故がトラウマだというなら、それはもう過ぎ去った過去であり、今はない幻の痛み。永遠に恐怖は薄れないのかもしれない。でも、それでも前に進む足は確かに俺に付いている!
「舞の最後だ!ある程度このあたりを広くしろブライト!」
「心得た!ノックバックキック!シールドバッシュ!っ!後から後からと!我は王ぞ!その振る舞い、万死に値する!妖精騎士召喚!」
「それは・・・、大丈夫なのか?」
「この者たちがいる間は、魔力の回復が急激に低下するだけだ。」
「王陛下、ご命令を!」
「ツキを死守しろ。勅命である!ツキ!ヒールだ!」
「兵!・・・、兵どもが夢の跡・・・。現に囚われぬ兵どもは姿をなくしてそこに在り。わするるなかれ・・・、誰も自身も和するるなかれ・・・。」
>> 急に悠長な舞になった?
>> コメントするな!邪魔だ!後からしろ!
「臨・・・、臨む者。望まざる者・・・。今は丑三つ刻・・・、彼岸も此岸もなく、おのが眼で真実を見届けよ!」
ギリギリ・・・、HPはレッドゾーン。バフもいくつか尽きて乗らないものもある。でも、舞った。最後まで・・・、最後の最後を発するところまで舞った。ブライトが出した妖精騎士は既に倒された。ブライト自身も満身創痍、なんならクインズさんも攻撃にMPを回して回復はポーション。
額を撃ち抜くかのような熱線は既に迫っている。攻撃が抜けたと思い振り返る2人の顔もスローモーションで見える。だが、それよりも何一つ迷いなく舞った俺の方が早い!下げた大麻を掲げ祈るような捧げるように一気に天に向かって振る。
スッ・・・
「百鬼夜行。」
迫る熱線。それが着弾する前に、俺の前に巨大な出刃包丁が現れた。あぁ、酒呑童子だ。あんな武器使う妖怪は酒呑童子しかいない。更にゾロゾロと俺の周りから妖怪達が現れる。確かにアレは世界を切ったような仕草だな。九字だと切り下げらしいけど。
「夢覚めるまでの時間、夜明けの晩まで・・・、進め!」
>> あの詠唱・・・、逆九字?
>> 内容は別として、宣言部分はそうなる。
「無事か?」
「維持するためにMPポーション更にガブ飲みですよ。あと、HPポーションも。」
「そうか、なら俺は行く。美味しいところを妖怪達に持っていかれたくはない。」
ガンガンランダム召喚されるから、MPは常にからっけつ。数で押す分、発動させた俺はほぼそれの維持装置なのよね・・・。それでもカウントが終わるか空亡出れば終わるんだけどさ・・・。
「ブライト、そっちは・・・。駄目だったか。」
ブライトは死亡してしまった。確かにあの状況でMPが尽きれば仕方ない。これから領地で5時間の眠りに入るのか。起きたらありがとうを伝えるとして、残滓とぶつかる妖怪達も有効打を入れるには・・・。
「スピリット術式、ファイル!」
「スピリット術式・・・、このまま突っ込む!」
「今だ!押せーーー!!!あの輸送機みたいな奴を伐採するぞーーーーー!!!!」
「報酬!交換用の報酬よこせ!」
「あの妖怪達は・・・、俺達にはアクティブにはならないよな?」
「知らん。普通なら私達も抹殺対象だぞ?攻撃されない限りは手出しするな。5回死んでるとはいえ、下手なことをしないほうがいい。」
>> 見てるか知らんけど気をつけろ
あのデカブツにも攻撃手段はあるぞ
>> 天辺のヒゲ、アレ鞭みたいにして攻撃してくるからな
>> 妖怪大行進スゲー
>> 後で神楽の切り抜き頂戴
ツキちゃんだと、主観画面だけど
カメラワークで俯瞰のもあるから!
クインズ>> ビケは何本か引っこ抜いた
ロッククライミングして引っこ抜いたが
再生はないようだ、押せ
「ツキさん。」
「フロムさん!守備は?」
「かぐやとの中間に現れた残滓はほとんど潰した。ただ、何匹は小癪にも逃げたわい。」
「逃げた?モンスターが?」
「そう。じゃからワシが来るのも遅れた。延々と掃討組としてチャリオットで移動しての。で、ワシも押せばええか?」
「お願いします。私は百鬼夜行使ってMPカラカラなんで。ドカンと伐採?してきて下さい。」
最前線から少し離れるとちょうどフロムさんと出会った。残してきて死んでないとは思ってたけど、まさか掃討組に入れられてるとは・・・。なによりモンスターと言うか残滓がゲリラ戦やるのかよ・・・。
そんな駆けつけて来たフロムさんを見送る。移動多めで憂さ晴らし組かなぁ・・・。元気なことだ。このままカウント一杯妖怪の連続召喚はするとして、死なないようにだけ気をつけ・・・。
「おい。」
「はい?どこ?」
「下見ろ、下。」
視線を降ろす。メッシュの入ったオカッパ頭が目に入る。着物も目に入る。なにより、その声には聞き覚えがある。えっ!?なんでいるの?なにしに来たの?確かにご無沙汰ではあったけど・・・。
「座敷童子大先生!?」
>> なんかチビッコいる?
>> 座敷童子・・・、男の娘か!
>> 男の娘勢がここにも・・・
>> その前に、召喚獣って喋らんよな?
>> いや、プレーヤーなら小さすぎる
流石にあの小ささは攻撃判定回避に有利過ぎ
>> もしかして・・・、メインコア2号?
>> いや、ロボは1人1体だろ?
ヤバいヤバいヤバいヤバい!なんで座敷童子大先生がここにいるの!?えっ!暇だから遊びに来たってノリじゃないよな?なら、百鬼夜行の注意?でも、コレはあくまでゲームでの発動。言うなれば仕様なのよね。なら、なに?
「・・・。あ、あ〜・・・。疲れたなぁ〜。カウントも終わるし、一旦ブライトを見に領地に帰ろうかなぁ〜。それじゃ!本日のLIVE配信はコレまで!配信そのものは残しとくから、ハブにどうぞ!」
>> いや、そのチビッコは!?
>> めっちゃ棒読み
>> よっ!大根役者!
大根役者と言ったやつは忘れんぞ?そんなことよりも大先生だよ!後方に離れたと言うか、最前線は押せ押せムードでここには人が少なくてよかった。あちこち見回してる大先生を小脇に挟んでバイクでかぐやに向けて爆走!クソ!ドロップが惜しい!惜しいけど今の状態が更にマズイ!
「お、お、お、おい!ゆ、揺れる!」
「そんなことよりも、なんでここに!?」
「あん?お前が呼んだんだろ?妖怪を。暇だから来てやったぞ。」
「そんな茶目っ気いらね!って、ここはゲームの中だよ?」
「電子空間だろ?俺達は電気精神体だぞ?スルッと入るくらいわけねぇよ。なにより、こっちならシャカシャカ動けるし。」
「・・・、ほ、ほら。電気精神体ってAI嫌いなんでしょ?わざわざ大先生がお越しにならなくても・・・。」
「だから、暇なんだよ。桃もねぇから、体もそんなに動かねぇ。飯もそんなに食えねぇ。で、雪女とか受肉したろ?」
「えっと・・・、ぼっちの大先生がなんでそれを?」
「そのぼっちの俺でも、耳に入るくらいには広まってんの。」
侮りがたし電気精神体ネットワーク!誠に嫌なことをいうなら、あの場に現れた妖怪って、もしかして受肉したい派とか?さ、流石に身を削りすぎるぞ!いや、食えば戻るんだけどさ・・・。
かぐやに戻ってそのまま領地へ。庵の中でで布団に寝ているブライトはいいとして、大先生どうしよう?とりあえず小脇に抱えたままだと落ち着かないだろうし降ろすか。
「ここ、お前んち?」
「一応、私の領地だから私んちかな?」
「へ〜・・・。おっ!蜂に蝶々!まてーー!!!桃の木とかもあるじゃん!食っていいーーー?」
「その前に話をーー!!!」
既に走り回ってらっしゃる・・・。まぁ、ここって俺がいないと出入りできない場所だから勝手にいなくなくなることはないと思う。それよりも怖いのは、座敷童子大先生をAIが検知することとか?
タグなしのアバターがうろうろしてれば、それだけでチートだし俺のところにもその警告と言うか、ゲームシステム改ざんとかでBANされない?されるとかなりマズイ気がするんだけど・・・。でも、その前に。
「ありがとう、ブライト。ちゃんと最後まで舞ったよ。おかしな事態にはなってるけど・・・。」
「・・・。」
布団の上のカウントダウンタイマーが減っている。コレがゼロになればブライトも起きるから、配信中断理由はそこを押し出せばいい。最悪大先生だれ?なに?質問は厚顔無恥にスルーしよう、そうしよう。
そんなことを心に決めつつ畑の方を見ると、大先生が木に登って口やら手やらを汚しながら桃をパクパク食べてらっしゃる。現実逃避するなら『まぁ〜・・・、元気な童子ですこと』とでもいえばいい?はい、言っても現実は代わりませんね・・・。
「大先生ー!そろそろお話を!」
「うっめ!この桃うっめぇ!!何個か貰っていいかー?」
「どうぞどうぞ!お話を聞かせてくれるなら!」
桃を抱えて庵に入ってきて、テーブルにドサドサ置いて・・・。対面に座ろうにも大先生は小さいから、座布団だしてっ、と。一応、コレで話ことはできるだろう。
「それで、大先生はいかがされた?」
「あん?さっきも言ったろ?暇だから来たって。ぼけ〜っと華澄んところで暇してたら、お前の方から『妖怪おいで~』って話しかけてきたんじゃんか。」
「・・・、いやいやいや!邪神の残滓ぶっ殺すのに百鬼夜行は使ったけど、妖怪おいで~とは・・・。」
「いや、なんか祝詞あげて呼んだじゃん。お前と関わり合ったり、電気精神体よりの妖怪は多分聞こえてんぞ?」
「関わりって、知り合いとか?」
「それもだし、1番は血肉分けたやつだな。桃とかカボチャとかの。木本から聞かなかったか?念の話。」
「念?いや、そんな話は・・・。念、念って念仏?」
「違うけど遠くもない。なんだったかなぁ・・・。そう!今のお前を動かしてる仕様?それ!」
「それと言うと、脳波操作?」
「そう!それ!来ても面倒だしAIいるなら来たくもねぇ。なにせ報酬はなんもねぇからな。でも、お前は違う。電気精神体としてある妖怪を見れるし話せるし、さっきも言った受肉もできる。だから、来る価値は0.1%くらいはある。」
「なら、大先生はその0.1%?」
「いや、暇だからぶらぶらしにきた。どうせ今の俺はNPCとか言う人形使ってるだけだし。現実世界よりこっちのほうが楽なんだよ。あっちは人形の体を動かすにも力がいる。でも、こっちなら考えりゃ動く。」
理屈は分かる。確かに最初に出会った座敷童子大先生は球体関節人形と言うかドールと言うか、洋風こけしとかそんな感じだった。そこから桃を食べたらよちよち歩くくらいにはなった。で、ナノマシン洗浄されて元に戻ったけど・・・。そんなことよりも、脳波で呼びかけってどれくらい広がるの?無作為に妖怪おいでとか怖い・・・。
「その〜、呼びかけってどれくらい広まるものなんでしょうか?」
「どれくらい広まるか?う〜ん・・・、海に石投げて波紋が広がるくらい?」
「それって、ほぼ打ち消されて広がらないんじゃ・・・。」
「そんなもんだろ?誰かしらん奴からおいでと言われてノコノコ出ていく奴なんて。ただ、縁があればそこそこ届きやすい。」
「あっ!それって雪女が言ってたやつ!」
そうだよ。姫子さん呼ぶのにどうやったって聞いたら、瓶に『来い』って話を詰めて姫子さんへのラベル貼って流したとか言ってたよ!・・・、なるほど、アドレス知ってる相手にメール送るのと、無作為にスパムメール送る感じが。それで、内容に惹かれたらやってくると。
「・・・、大先生。あの中に本物の妖怪っていた?」
「桃うめぇ・・・、他ない?」
「あ〜・・・、フルーツ?それともおかし?」
「両方。」
コレで情報くれるならいくらでもあげちゃう!なんなら倉庫あさって色々だしちゃう!爆竹アメとか電流はちみつとか!危ないだろうって?大丈夫だ!問題ない!そんなはちみつをパンに塗って大先生が食べると、頭に雷が落ちたエフェクトが出る。まぁ、ノーダメなんだけどさ。
「・・・、ビビるくらい甘いな、これ!えっ!?なにこれ?ガムシロップとか言うもの煮詰めたの?」
「さぁ?頭が目覚めるくらい甘いはちみつとしか・・・。で、本物は?」
「いねぇぞ?だって俺がいるし。」
「胸張ってますけど、嫌われ者でぼっちってどうなの?」
「いいんだよ。大体負けた奴の言い訳は『座敷童子がいなかったから!』なんだし。だから俺以外はゲームとか言うものの人形。そもそも、誰かに入るってのは誰かに固定されるってことで、そのまま固定され続けたらソレになる。いやだろ?プライド高い酒呑童子とかが包丁振り回す蛮族とかにされたら。」
「確かに、曖昧を好むからあまり来ない?」
「そう。その代わり、理想の自分探しはするぞ?」
あっ・・・、思春期の子供。木本さんも電気精神体は思春期の子供とか言ってたけど、そんな理想の自分探しもあるのか・・・。と、言うか大先生はいいんだろうか?
「大先生はいいの?理想の自分探し。」
「無邪気な子供だぞ?童子だそ?昔も過去も曖昧で適当に屋敷走り回るだけだぞ?理想っていうなら元気に走り回ってたらふく飯食うくらいだ。」




