181話 イベント前は賑やか
>> この方・・・、多分私の知り合いなんです。
このコミュ障の塊に知り合い?いや、生きている以上は誰かと何かしらの繋がりはある。それが例えば親であるとか、学校の教師であるとか、病院の先生であるとか・・・。
そんな中でこの女は真利を知っている?それも、狐娘になる前の真利を。確かに彼の仕事は人と接することが多い。病院とメーカーが直接やり取りできないからの、仲介業者。ユーザーとメーカーが直接やり取りするのを、極力防ぐための仲介業者。
ハブシステムとして作られ、それを噛ませることで犯罪を防ぐ。逆を言えば、仲介を挟まない医療機器は利用目的を疑われても仕方がない。
「どこで知り合ったんですか?先ずはそこから話しましょう。」
>> 数年前、この方の会社から
プログラム関係でオファーがあったんです。
その時の担当が雁木さんという方で
色々良くしていただいて・・・。
そして、このアバターの持ち主が、その雁木さんという
方で間違いないはずなんですが、雁木さんは・・・。
「男性です。」
>> そうなんです!
雁木さんは素敵な男性でしたし!
なのに、本人基準アバターとか言って、配信もしている。
形式的には妲己や玉藻。要は誰かと入れ替わり
そこでなにかを企んで、直接的に動くんじゃなくて
周りを操る妖怪かもしれません!
・・・。私、雁木さんが男性と言いましたか?
いや、そんなログはない。柊さん・・・。
岩戸の体が強張る。まぁ、話してもいないことを私が知っている時点で、既に未知の対象として私を見ているのだろう。刑事であると言うことを差し引いても、私がいる部署と普通の警官とは役割が違うから・・・。
「先にいいますが、私は柊 華澄です。簡単に成り代わられるほど、柊という姓は安くない。そして、雁木 真利。コレは私の夫です。」
>> ・・・、・・・、・・・、はい?
いや、いや、いや・・・。雁木さんって独身でしたよ?
・・・、あっ・・・。そうですよね・・・。
私なんていう見すぼらしくて、どこに出しても
恥ずかしい女なんて、結婚式なんかには呼ばないし
そもそも友人とか、知り合いって思うのも
おこがましい・・・。
重い・・・。飛んでくるメッセージが重い。本来なら、そんな重圧もない言葉の羅列が、眼の前の女と合わさって更に重い・・・。ただ彼女は協力者であり、敵ではない。そう、同僚だ。
「結婚式は挙げていません。その結婚も約2ヶ月前にそうするとしただけで、まだ夫婦ではありません。」
>> ???
それって・・・、夫婦なんですか?
「夫婦です。相思相愛です。私の可愛い妻であり夫です。見てください、この愛らしさ!抱き締めればすっぽり収まるくらいの大きさで、笑顔を振りまきちゃんと人の話も聞くその姿勢!」
>> ・・・、精神的に参ってますか?柊さん。
「そのような事はありません。この狐娘は真利です。」
>> な、中身が飛んでるんですが?
「分からないんですか?端的に言えば真利が狐娘になったんです。」
>> 雁木さんの方が、精神をやられた?
た、確かに医療機器メーカーって、対人作業で精神的に
きついことはありますもんね!
「真利は至って健康ですが?この前も旅行に行きましたし。」
>> えっと・・・、仕事は?
「辞職すると言っていました。その後は私たちの同僚になるルートもあります。」
>> 雁木さんは一般人ですよね?
私や柊さんみたいなのとは違う。
・・・、も、妄想?誇大妄想癖?
び、病院に行った方がいいですよ柊さん!
「私は健康です。岩戸さん、連続して人を追えない場合、出された結果だけでは過程を知ることはできない。」
>> 真面目に言ってますけど、その過程を話してないのは
柊さんですよ・・・。
「話していますが?更に詳細が欲しい、と?」
なぜ伝わらないのだろうか?真利ならなにが伝わっていないかを抽象的ではなく、要点として話してくれるからコチラとしても、この部分はこうであると言いやすい。話を切ってしまおうか?必要な情報はもらい、このアバターにも所有者にも異常はなく本人だと言ったのだし。
>> し、詳細を・・・。
「・・・、ここでは外部の目もある。どこか個室はありませんか?」
>> 個室・・・。検索して近くに個室が利用できる
カフェがあります。
「なら、そこで話しましょう。」
カフェに着いて詳細を話す。岩戸を連れて歩いたが、いつもより視線を多く感じ鬱陶しい。そんなにノッポな女が2人でいるのが珍しいか?なんにしても丁寧に多くの言葉を話せば、やっと岩戸も理解してくれた。
>> 雁木さんが事故に遭ったのも分かりました。
治療過程で性転換したことも分かりました。
そして、狐娘になってることも・・・。
かなりの重大事案ですよね?
「ええ。なので入院中で社会復帰できるようにリハビリ中です。」
>> そうですか・・・。
なら、逆に気を付けてください。
アマテラスが雁木さんを調べているフシがあります。
「アマテラス・・・、興味の対象はバイオナノマシンと、そのデバイスでしょう?アマテラスやほかの医療AIがオールSと判定した新型ナノマシン。それの情報がある時、プツリと途絶えた。」
>> そして、それを使用されたのが雁木さん・・・。
いや、逆でしたね。雁木さんが被検体として使って
その結果がオールS。
「ええ。私はアマテラスのことは分かりません。厳密に言えば、どのようなシステムかはブラックボックスで、携わった技術者や国の上層部しか知りません。」
>> それはまぁ、口止めされてますから・・・。
私の場合、まともに口でも話せませんけど・・・。
「その部分でなにかあれば、私の方に連絡をください。真利は健康で至って普通です。ですが、その周りは慌ただしい。」
>> 狐娘になった時点で普通では・・・。
いえ、普通ですね。なにが普通かなんて
その時で変わりますから
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AR神社はしまい込んでイベント準備のためにログイン。流石にここまで雪だるまも追いかけてこないだろう。と、言うか定期的に開いて話さないとダメな感じだよなぁ〜。
更に言うなら、叶える叶えないは別として、この人と結婚させろ!肉体よこせ!と、言われだしたらどうしよう?そりゃぁ、突っぱねることは簡単なんだろうけど、延々と祈願成就しないままだと暴れそうだし・・・。
「ツキはなにを悩んでいる?」
「結婚願望MAXの人がいるとして、相手がいない場合はどうしようかと・・・。」
「そんなものは、最初から縁がなかったとするしかあるまい。誰かと在ると言うことは、誰かと共にいないと言うことだ。共にありたい誰かが来るまでは、待つか探すかしかなかろう?」
「それはド正論なんだけどねぇ。・・・、メタいこと聞くけど、AI的には結婚願望とかあるの?ちょうどブライトは結婚してるし。」
「共にあることはあっても、稀人のいう結婚とは違う。契約という話ならば我はツキと契約して結婚しているぞ?」
このイケメンなんかアホな事いいだしたぞ?確かにスタートから契約者呼びで、今は名前呼びに変わってるけど、結婚なんてねぇ・・・。いや、そもそも名字なんてないし相手から『お前はコレ』『分かった、そう名乗る』と契約を結んでしまえば、親子ではなく共同体として認識される?
そして、共同体の最小単位は家族。つまり、外から人を呼んで一緒にいる=家族で夫婦・・・。おかしい!ゲームでまで野郎の尻を見たくないと女アバター選んで、本当に狐娘になったけど、まさか野郎からいきなりお前と結婚してると言われるとは思わなんだ。
「なんだ、その嫌そうな顔は。」
「いや。男と男でくっつこうが、女と女でくっつこうが私としてはど〜でもいいんだけど、まさか男から俺の嫁発言されるとは思わなくってね。」
「王の嫁は不服か?ただ同列になっただけだろうに。」
「いや、王って時点でトップじゃん。もしかしてデデデ大王みたいに自己申告?」
「違う!そういう役割なだけだ。役割がなければ背景だろう?」
「なるほど、配置理論か。」
これって電気精神体にも通ずるものだよなぁ〜。伝承を背景とした存在と、今も作り続けられる世界にあり続けるNPC,結局のところ、積み上がって記憶になって記録になって形になる。だから、雪女は結婚したい!と叫ぶし・・・。
「理解したか?」
「感覚的に?まぁ、私はAIじゃないから完全理解とか必要ないよ。と、それよりも明日からの準備だよ!街行こうぜー。」
そう。明日から邪神リローデッドが始まる!領地を出てオーランドに行けば、冬休みも相まって、かなりのプレーヤーがごった返してる。たまに『配信見ました!』なんて人がいるから、少し大麻をフリフリしつつ、店やら露店を見て回るけど、そこまでポーションやらは高騰してないな。
これが流通網死んでたり、トルネコ王家がお通夜モードに入ってると、商店の価格が跳ね上がって、それを見た商人プレーヤーが値段を釣り上げてと、お金が飛ぶ飛ぶ。実際、高騰してないだけで値段は普段の3割増くらいになってるし、オーランドの商店はポーションSOUL'd OUTの看板出してる。
ただ、そんなことよりも、だ。
「我々はあの墜落現場を目指す!先行し、明日のイベント開始時に即刻邪神を討ち滅ぼす!」
「「「「「おおーーっ!!!出陣せり!!!!」」」」」
「あの空っていつまで割れてんの?」
「知らん。ただ、かぐやからも見えるらしいぞ?」
「もしかして、ジャイロの球体が割れたり!」
「あの2個玉はそんまま。」
「杭買っちゃった♪これで交換品も早く交換できる♫」
「商人を探せ!杭を買わせろ!!」
「二束三文だったラスボスの杭がこの価格、ウハウハでんなぁ〜。」
お祭り前夜祭モードでかなり騒がしいよ!なによりも運営が杭買い取るとアナウンスしたから、昨日まで露店で買えた杭はほとんど見当たらず、売る側の商人プレーヤーも値段を釣り上げつつ、上位プレーヤーが出せる価格を提示している。まぁ、ラインナップは魅力的だったしなぁ〜。
「ツキも杭を買い漁るか?」
「いや、いらない。覚醒させたのは持ってるし、交換目的だけで杭を買うくらいならボス探して集める。だって、そうした方が楽しいじゃん。」
「そうか。」
ついでに言うと運営が多分なにか仕込んでる。こんな美味しい話今までなかったし。フレに連絡入れるとアールさんは杭を早々に覚醒させて保管してると言うし、ほかのフレもそんな感じの人が多い。
「その杭・・・、ちっ。先こされた。」
「まぁ、運のないことで。」
「あら、別府さんに陸亀さんヤッホー。」
色々と露店を見て回る中で聞いたことのある声がすると思えば、別府さんに陸亀さんが露店を覗いていた。別府さんも杭を先に集めて交換一気にする派かぁ〜。まぁ、年末年始で忙しいと、そういう選択をしても仕方ないか。
「ん?おっ!ツキちゃんヤッホー。」
「ツキさんも買い出しかい?」
「そうそう。ポーションにMPポーションに他たくさんね。いや〜、賑やかで大変よろしい。」
「財布の紐が緩みまくっているがな、ツキは。」
「いいのいいの。どうせお金なくなったら、また冒険して素材売るし。」
「ほぅ・・・、本当にプレーヤーっぽく話すんだな。メインコアを使うと。堕ちた妖精王、俺は陸亀だよー。」
「我はそのような名ではない、ブライトだ。」
「えっ?確か配信では妖精王とか堕ちた妖精王とか・・・。」
「なになに?ファンに情報開示してよツキちゃん。」
「太っ腹な私が配信前にリークして進ぜよう。名前つけたよ〜。」




