182話 ラスボスの価格はプライスレス
「それでブライト?」
「ツキちゃんちゃんとネーミングセンスあんじゃん。よかったな、プルプルゼンゼンマン。俺なんてサラダバーよ?」
「知っている。我も出会ってはいないが、あの戦場にいた。空爆したり一騎打ちで負けたりしたが、経験は得た。」
「変に達観してるのな。もっとこう・・・、普段から桃って叫んでるのかと思ってた。と、言うかツキさん。メインコア使ったら桃欲しがるの?」
「さぁ?好みなんじゃない?元は妖精だし。」
しれっと桃の話題は逸らす。ここで桃寄越せとか言われたら・・・。いや、ゲーム内だから大丈夫?領地には桃が実ってるし、サブスク解禁して自動生産されてるからぼちぼち溜まってる。それを勝手に食ってないとも言えないしなぁ・・・。
「それよりも、2人で買い出し?珍しいと言うか、別府さんクランに所属してたじゃん。そっちはよかったの?」
「あ〜、それな。カンスト目指して武者修行中なんだわ。前のラジコ風配信?あん時話して交流増やす方にシフトチェンジしたんよ。だから、暇そうにしてたコイツ捕まえて色々回ってんの。」
「俺は暇じゃないんだけどね。まぁ、それでも買い出しはしたかったから回ってるよ。」
「なるほど。で、僅差で杭を逃したと。」
「買わずに取りに行けばよかろう。」
「年末年始でポッと用事入ることあんじゃん。例えば初詣とか年越し温泉とか。風呂ん中でスマートレンズは使えねぇべ。」
「やったら犯罪案件ですねぇ。」
コンタクトレンズみたいに目に付けるから、よくよく目を見ないと付けてるかは分からない。まぁ、それを検出する装置もあれば、風呂の中で使った瞬間に通報が行くから、盗撮とかできない。
「で、手っ取り早く杭買おうとしたら、もーほとんどねぇの。陸ちゃんの方に聞いたけど、そっちもねぇんだって。」
「う〜ん、杭自体はNPCは買い取らないからプレーヤー間取引だけど、その杭自体の価値が低いからなぁ〜。で、今回のアナウンスだから、相対的に見ればかなり減ってるんじゃないかな。人の杭買った私が言えることでもないけどね〜。」
今のアクティブプレーヤー数は分からないし、そのプレーヤーがどれだけラスボスに挑んだかも分からない。まぁ、メインストーリーだから大半は挑んだとしても、貰えるのは1人1本。それを覚醒させるなら更に4本集めて覚醒させる。
つまり、杭自体は今かなり少ないんじゃない?それをみんなが売り払えば、更に希少性が!やっぱり倉庫番で溜め込みでいいな。どうせ配信と絡めてボスは倒しに行くんだし。
「そっか。レベルカンストしてるけど、ツキちゃんメイン未攻略勢か。下手したら追っかけられんべ。」
「追っかけ?なんでまた・・・?はっ!ついに私の存在証明の成果が!」
「微妙に否定できないボケはいいとして、イベントの難易度やらドロップ率にもよるけど、確実に杭を手に入れるなら初心者をゴリゴリに接待してラスボス倒すのが確実なんだよ。」
「あ〜・・・、だからリアルで誘って、ゲーム内でも初心者誘って杭集めと。確かに効率的にはいいのかなぁ〜。でも、1人1本でパーティーでもノードロップ者だけ貰えるんでしょ?」
「運営から追加アナウンスがあんだんだよ。メインストーリー未攻略者と共に旅をして、実績解放すれば解放した人は杭が1本貰えるってね。イベント終了までに攻略できるかは別として、渋いドロップ率を予想して初心者指南クランなんかもポコポコ立ち上がってる。」
「はぁ〜・・・。ある意味運営の術中にハマってるような・・・。まぁ、活性化は悪いことじゃないしなぁ。」
トラブルオンラインを始めた初心者。それも1人で始めた初心者。どんなゲームにも言えるけど、右も左も分からないチュートリアルが終わっただけのゲームを、どれだけのモチベーションで続けられるか?
答えは詰まった瞬間に辞めるよねぇ。それにタスクが多いから消化しようと思うか、多いから面倒と感じるかも本人次第だし。そこに利害で指南してくれるプレーヤーがいたら?しかも、自分からじゃなくて相手の方から話しかけて来てくれるなら?
気が合えば続けるモチベーションになるし、そのまま居心地がよければ続ける理由にもなる。割と強いけどカフェで駄弁ってるだけの老人プレーヤーとかもいるのよね。話し相手が欲しくて、でもAIは嫌だから人がいいなんて人も。
「と、話し込んじまったけど、そろそろ杭探しの旅にまた行ってくるべ〜。陸ちゃん行こうぜ!」
「あいあい。って、なんでコイツとつるんでんだかなぁ〜。」
「なら、幸運を祈って大麻を振っておきましょう。」
そんな話をして別府さんと陸亀さんと別れ、オーランドからポータルを使って色々な街を見て回る。確かにどの街からも空の割れ目は見えるし、かぐやなんて言う宇宙的なマップから星を見ても割れ目が見える。
「ねぇ、ブライト。」
「なんだ?」
「大地の割れ目って古代戦争で出来たんだよね?」
「そうだ。邪神を討伐すると大戦争が起こり、それで大地を割るしかなかった。」
「割るしかなかった?割れたじゃなくて?」
「そうだ。まぁ、我はそれに立ち会ってはいない。」
ちっ!情報引き出そうと思ったけど中々くれん。まぁ、なんにしても明日になれば分かるか。そんな買い出し観光を終え、一旦ログアウトして風呂やらを終えた後に敷田さんと話す。流石に雪女と言うか知らない雪だるまが喋りだせばビビるしなぁ・・・。
「・・・、その雪だるまと言うか、雪女って大丈夫な存在なんですかね?」
「木本さんには普段通りしろとは言われてますよ。だから、AIマスコットアプリインストールして、マスコットとして扱おうかと。多分、下手に来るな出ていけって言う方が危ないんですよね・・・。」
「確かに雪山に雪女が溢れかえっても危ないですからね・・・。それに、山の定義もかなり曖昧ですし。」
「山の定義?普通に木が生えて高いところじゃないんですか?」
「日本で一番低い山は3m、自然の山でも約6mですよ?そこに雪が積もれば雪女・・・。」
「出る条件に合致するかもしれないと・・・。よし、徳を積ませよう。」
「徳って、本当に神社っぽくなってますね。本当に巫女になります?」
「いや、それはもう成り行きなんじゃないですか?なにせ今も昔も未婚女性ならなれるし、試験も資格もない。結果として、確かに今の私は巫女なんですよねぇ。」
ん?もしかして華澄の言う結婚って、巫女にさせないための楔とか?・・・、いやいやないな。流石にそこまで・・・、行きそうなところもあるけど、付き合い出したのは今の姿になる前で、こうなる前に別れてまた戻った。信じる時間と言うなら、別れる前だろう?その時も子供欲しいとかも言われたし。
「私たちはそれを止められないので、そうありたいならそういう風に振る舞うしかないですね。と、配信どうします?明日からイベントと言うのは知ってますけど。」
「一応やりますよ、LIVE形式で。ただ、爆死する可能性も高いですけどね。年末だしそもそもイベントの形式も分からないから、何を配信できるやら。まぁ、駄弁りつつぼちぼち存在証明してきますよ。」




