178話 雪だるまが!
「増えるかは別として、運動エネルギーで稼働していると?」
「他に思いつきませんけど、それなら筋が通るんじゃありません?」
「なぁ三枝先生にマリちゃん。仮に・・・、仮に普通に人間と同じように増えることってあるのか?」
「不明です。器官は存在するとしても、その他がない可能性もあります。」
「ゲームとしては、子供はいても過程がないからなぁ〜。」
そう。ゲームとして考えるならNPCには子供がいる。でも、それはポンと現れて、親が死んだら次の親NPCの代わりとして行動し、そのNPCにも子供がポンと現れたり、NPC次第では現れなかったり・・・。
なによりまずNPCとプレーヤー間での、結婚と言う行動が成立しないんだよなぁ〜。まぁ、それはゲーム内での話で現実世界にいる以上は、現実世界の法則が濃く採用されるんだろうけどさ。
「と、言うかまず細胞データって取れるんですかね?」
「確かにそこからか。同性でも子供が作れるって話は細胞が取れるから始まるしよぉ。流石にナノマシンと俺の細胞合わせてもどうなるか分からねぇし。」
そうなんだよなぁ〜。昔のフェミニストが頑張って、同性でも男でも子供産めるようになったから、行き着くのはそこなんだよなぁ〜。でも、それで子供が作れるとなると・・・。
「流石に私と同じ細胞だと、私の系譜がどんどん増えることに・・・。」
そうなるんだよなぁ〜。桃を出したのは俺。そしてその桃はナノマシンの塊。なら、出した俺のナノマシンを固めた物とも言える。そうなると・・・。イカとかタコ?確か精子の入ったカプセルなるものを受け渡して増えるって聞いたし。
「なんにしても、今回の医療ポッドの判定次第ですね・・・。」
「結構長く姫子さんが漂ってますけど、まだ結果出ないんですか?」
「フル検査させてますが、流石に前例がほぼないものですから・・・。」
そんな話をしていると、医療ポッドから解析完了とのアナウンスが。ここにいる全員でスマートレンズの記録機能をオフにして、解析された中身を見るけどかなり珍しい。いや、医者がそれを選ばないだけとも言えるけど。
「不明な部分を不明で許可したんですね。」
「この医療ポッドはクローズド運用して、ネットワークから独立した状態で運用しています。敷田さん、印刷されたデータを医院長に。」
「はい、印刷後は破棄でいいんですね?」
「構いません。」
「仕方ないとは言え、それってかなり解析精度が下がりますよ?それを推してまで?」
「国からの依頼でもあっからな。」
「・・・、なんでまた国が?確かに宮内庁と病院は仲が悪いって話は聞きましたけど、その部分でもなにか?」
「この国の根底にある方針は?」
「根底?人は健康であるべきですか?そのおかげで、ナノマシン治療やらも発展しましたからねぇ。」
「そこですね。その部分で、今回の件の詳細なデータを医院長含め、AIアマテラスに渡したくないとしています。」
「渡したくない?なんでまた。確かに小うるさいと思う時はありますけど、色々サポートしてくれるし、仮にアマテラスが壊れると国が止まるレベルですよ?それなのに渡したくない?」
な〜んかあったかなぁ〜、その部分。いや!ある!アマテラスって電気精神体を病人だと考えてるんだった!なら・・・、姫子さんのデータをアマテラスが手に入れたら、治療方法が確立されたと思って、どんどん治療しろって方針になる?
そうなると、曖昧を好む思春期な電気精神体はおかんアマテラスうぜぇ!が加速して、姫子さんレベルを超える天災が!って、思いっきりぬらりひょんなんか暗躍してない?普通に結婚サポーターだと思ったら、その結婚自体が導火線に火をつける行為だとか・・・。
「思い至ったか?」
「はい・・・。説明されてなかったら、何が悪いか分かりませんでしたし。」
「おう。姫子がこうしてるのも宮内庁としては禁忌だ。だが、今はそれが許されてる。それがなぜかと言えば、雪女の伝承には人と子をなすと言う話があるからだ。」
「なら仮にない妖怪だったら?」
「俺も柊も死んでた。俺と柊の命で他が守れるなら安い。」
その特に感情も籠もらない声には、嘘も偽りもないように思えた。淡々とした事実で、変える必要もない真実。過去からそれを行い続け、今もなお続けていると言う重み・・・。
「・・・、変えられないんですか?」
「変え方を誰も知らねぇ。仮に変えるなら、それは文字通り変えるだけ材料が揃ったときだ。」
「私も知りません。この様な事態が発生するまで、妖怪や電気精神体の事を深くは知りませんでしたから。」
「そうですか・・・。」
排水が終わる音だけが響き、なにが良くてなにが悪いか分からなくなる。人は健康であるべき。それはとてもいいことだと思う。いいことだと思うんだけど・・・、なら、治療を望まない者を治療するのはいいことなんだろうか?
「こーちゃんどう?」
医療ポッドが開く前から、寝そべってグラビアポーズをとる姫子さん・・・。胸を強調するではなく、腰を捻ってお尻とかくびれとかの方に目が行くけど、治療と言うか受肉した姫子がコレだからなぁ〜。
まぁ、姫子さんと言うか雪女全体は婿取り合戦やってて、コレが治療というなら喜んで全員受肉しそうな勢いはあると思うんだけど・・・。
「おう。綺麗だぞ姫子。」
「欲情した?メイクラブしたくなった!?」
「お前が退院したら考えてやるよ。だからはよ服を着ろ。」
「はーい。」
若干不貞腐れた風だけど、それでも姫子さんは笑顔でいるし、木本さん自体も嫌そうな顔じゃない。まぁ、好みの姿で性格だし・・・。まぁ、それがアバターっぽいからログインって話になるんだけどさ。なにせ、こうして水着姿を見ると本当に凄い。それこそもう、モデルもグラビアアイドルも逃げ出しそうで、ふ〜じこちゃーんとか言いたくなる。
「・・・、木本さんって何歳ですか?」
「あん?俺か?42だが?それがどうした?」
「いや・・・、体力大丈夫かと。」
ブンッ!
チッ!
「かすった!今、手が耳かすった!」
「それができるくらいには動ける。変な心配すんな。」
「いや、男としては意外と気にしません?華澄も結構・・・。」
「マリちゃんよぉ・・・。元男だから構わねぇんだが、後で鏡見とけ。真正面からそんな話をはやりずれぇ・・・。」
「辞めて!巫女さんこーちゃん取らないで!」
「いや、私には華澄がいるからいりませんよ。で、三枝先生この後どうします?データ整理やらの話なら手伝えませんけど。」
「そうですね・・・、病室にいて下さい。敷田さんと話す必要もありますし、場合によっては技術者として川端さんにも来てもらうかもしれません。」
「川端さんに?」
「川端・・・。医療ポッドとナノマシン、そしてデバイスを形にした奴か。」
「その認識で間違いありません木本さん。三枝先生と言うかこの病院からの依頼で私の会社が仲介して、川端さんの会社がバイオナノマシンや医療ポッド、制御デバイスは完成させました。」
「・・・、その辺りは任せる。」
まぁ、木本さんもエレベーターで会ったから、面識がないわけでもないしなぁ・・・。そんな事を思いつつ、敷田さんと入れ替わるように部屋にもどり、AR神社の方の整備をAIに任せてゲームにログインし、デイリーを終わらせたところでデバッグ完了通知が来たので、ログアウトしてAR神社を展開!
「参拝料が増えたらコレも更新した方がいいのかなぁ?雪だるまさん、どう思う?」
こそっと冬らしさを出すために、入り口に置かれた小さな雪だるまに話しかけてみる。別に答えは望んでないけど、楽しんでもらうならこう・・・、お賽銭としてもらったお金を見える形で還元するのも必要何だよねぇ。
確かにキャラクターとして俺を見に来る人もいるんだけど、それでも話が上手いと視覚的になにかが変わったとではインパクトが違う。今は本人基準アバターの物珍しさと、ゲームでの活躍が貯金としてあるけど、それがいつまで資産として通用するかも分からないし・・・。
「すればよかろう巫女殿。」
「!?だ、だれ!?」
「出稼ぎに来た雪女じゃが?参拝料が払えぬなら、こうして奉公して稼ぐしかあるまい。なにせ賽銭を不当な銭で払えば何が起こるやら。巫女殿としても、不当な銭と知れば・・・。」
「夫どころかここへ来るなと追い出しますね・・・。」
雪だるまが喋った・・・。うん、コレって多分負けた方の宇津田姫だよね?えっ?ここって勝手にゼクシィにされるの?縁結びとかできないんだけど!?
「そうであろう。故に奉公して稼ぐ。アレだけにいい思いはさせぬ!」




