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狐と言えば・・・巫女!  作者: フィノ


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174話 もうすぐクリスマス

「マリちゃん、夕食を持ってきました。」


「ありがとうございます三枝先生。と、ちょっと聞きたいんですけどいいですか?」


「なにかありましたか?尻尾が千切れて動き出したとか、実は分身して増えてるとか。」


「いや、流石にそれは・・・。あれ?実はできる?」


「さぁ?勝手に増えないでくださいね?」


「増えたくもないのでやりません!そうじゃなくて、会社に辞表出すのと、それに付随する私の今後についてですよ。今のところ病院には、出向社員という形で来てるんですけど、会社辞めたらそれもなくなりますよね?」


「契約や雇用と言う話ですか。マリー・ガンディーとして医師の協力者と言う話もできますし、治験モニターとして処理することも可能でしょう。事実としてバイオナノマシンを使っているわけですし。話を詰めるなら私だけではなく、天野医院長とも話さなければなりませんが、木本さんと姫子さんのことを考えれば・・・。」


「何かしらの措置はあると。」


「・・・、木本さんから何か言われましたか?」


「神楽舞えるから、そっちの方の協力者にならないかと。」


「なるほど。まぁ、そのあたりは私から医院長へ話しておきましょう。」


「すいません、お手数ですかけます。」


 そう言って三枝先生は出ていき、夕食をモキュモキュ食べる。ふむ。この筑前煮、結構味が染みててうまい。旅館で食べた料理やらもおいしかったけど、病院食にも慣れるもんだな。


 そんな夕食食べて華澄から来る連絡に返信したりしていると、消灯時間も近くなったので歯磨きやらをして就寝。色々あったけど、丸く収まったのかなぁ・・・。


 それから数日はこれと言って大きなことはなかった。辞表の件は先に会社にメッセージで連絡して、有給使い切ってから退職という話で2月1日付けで退職という運びになったし、送別会という話もあったけど、それは謹んで辞退させてもらった。


 部長とのやりとりでひしひしと、考えなおせぇ〜。やめるなぁ〜。と言う感情が文章の節々に感じられると同時に、次に行っても大丈夫と太鼓判を押すようなところもある。音声通話と言う話もあったけど、流石にそれはできないとうまくかわした・・・、いや。部長も音声通話を嫌ったのが分かったから突っ込んで来なかったんだろう。


 一方、華澄の方は全快して敷田さんと共に帰ってきた。体としても特に異常もないということだったが、凍傷を負っていたので回復しても感覚が薄かったり、痒かったりの幻肢痛があったりと数日は自宅で休むそうだ。だから、こうして音声通話もできる。


『真利、本当に退職するの?』


「するよ。だって、この姿じゃ戻れないしね。それに・・・。」


『それに?』


「雪山で動かない華澄を見た時に、会社とかどうでもよくて助けたいと思った。それを聞いたら感情論に聞こえるかもしれないけど、お金の心配も今のところないし歳も30・・・、来年には31歳になる。なにかを始めるのに遅いってことはないけど、逆を言えば今始めないと多分ズルズルと、どっちつかずで過ごすと思うんだ。」


 出向社員で会社からも病院からもお金もらって、慰謝料を投資で転がして・・・。更に言えば病室で飯食いながら生活する。でも、体は健康で動けないなんてことはない。


 宙ぶらりんでありつつ、なんの憂いもなく不自由もない。だからそこからこそ、ちゃんと今までのことに向き合って決断を出さないと動けなくなる。


『別に私のことはそんなに考えなくていいのよ?そう言う仕事って分かっててやってるんだから。』


「知ってるよ。でも、自分の目で見てそう俺が決めたんだよ。」


『・・・、エプロン買っとくわね♪』


「いやいや!確かに転がりこむ最有力候補は華澄のところなんだけど、情緒!今結構いいこと言ってたよ?私!」


『情緒だけじゃ欲しいものは手にはいらないのよ?』


「それは知ってるけどさぁ・・・。なんにしてももうすぐクリスマスだし、何か欲しいものある?プレゼントは贈るけど。」


『真利の身柄?』


「ド直球に『私がプレゼント♪』を要求しない。まぁ、要求できるときにしとく思考は分かるけどさ。何か甘いものでも贈るよ。アクセサリー系は好みが分かれるし。」


『分かったか、私からも何か贈っておくわ。』


 そう言って通話を切ったのはいい。いいんだけどさ・・・。黙って人の部屋で俺を見ながらニマニマしたり、頬を押さえて小声で『キャーッ!おっとなぁ〜!』とか言う姫子さんはなに?暇なんだろうけどさ・・・。


「・・・。盗み聞きすると、命の保証がなくなると習いませんでした?」


「ひぃぃぃ・・・!ごめんなさい!ごめんなさい!」


「よろしい。謝るなら許します。と、言うか暇なんですか?」


「暇!だからこーちゃんから贈られた服を自慢しに来たんだよ巫女さん!」


 大元は雪女、或いは宇津田姫。ただ、今は姫子さん。なんにしても童顔ボンキュッボン美人という事で目立つ。それはいい。と、言うか普通の人間に見えるので、ある意味俺よりもフリーダムに病院内限定ではあるが歩き回っている。


 そんな姫子さんの今日の衣装は、冬場だからか灰色のニットセーターにスキニージーンズと言うラフなスタイル。ただシンプルだからこそ、服を押し上げる双丘と締まってくびれた腰元に、安産型のお尻が目立つ。


「・・・。木本さんにはセンスはあった、だが嫁が襲われていいのか?と、伝えておいてください。」


「えっ?私襲われるの?なにから?鬼あたり?それともマタギ?」


「ズレてるようで、山賊的ななにかならそう言う見解もあるのかなぁ・・・。と、言うか今時山賊て。いるなら痴漢とか変質者でしょう?まぁ、露出狂は一発で捕まるし、痴漢もほぼバレますけどね。」


「そうそう。山賊にあーれーされても今なら無念!ってやるよりも、見つけ出して社会的に死ね!の方が強いし。」


「いや、それはその人の性格と言うものがありましてね?」


 と、言いつつも時間稼げは稼ぐだけ、襲われた方が有利ではある。なにせ体格やらも記録できるし、そのまま通報もどこにいるかも分かってしまう。


 昔の小学校では合言葉がイカのおすしだったらしいけど、今はあきすずみ。中身は相手を見る、距離をとる、すぐ通報、ずっと会話、見回して情報を送るである。


「と、言うか巫女さん巫女さん。」


「なんですか?と言うか、私の名前をミコかなんかだと思ってません?」


「いや。畏れ多くも畏み畏み奉るから、本名とか呼ぶのはちょっと・・・。」


「なんか知らない距離感ですけど・・・。で、なんてす?」


 そう言えば妖怪ってあんまり俺の名前呼ばないんだよなぁ〜。鞍馬さんも狐とか呼ぶし、ぬらりひょんも確かそう呼んでた。医院長はマリちゃんだけど、なにか線引き的なものでもあるのだろう。


「お金貸してほしいなぁ〜・・・、なんて。いや。ないならいいよ?どうにかして稼ぐし!今なら女の人の肌着とか買う人いるんでしょ?」


「・・・、はぁ?なんに使うんですか?と、言うかその売買はかなりグレーゾーンです。」


「いやね、色々こーちゃんから買ってもらったりしてるから恩返しをと・・・。でも、体で払うって言ったらここは病院だって言って怒るし、なにか手作りしようにも元手がないしで・・・。」


 確かにその話は分かる。着の身着のまま受肉させて雪山から運んできたんだから、手持ちなんてあるわけない。そうなると物々交換となりそうだけど、現代知識があるからこそ下着売って大金ゲットとでも考えてる?なんにしても危ない。と、言うかスマートレンズも持ってないみたいだから、現金精算しかできない。


「・・・、ここに千円あります。」


「おぉ!」


「これを姫子さんに貸します。」


「はい。」


「で、利子はトイチでいい?」


「・・・、お返しします。」


「はい。なら、ある時に返して。利子はいらないから。」


「えっ!?いいの!」


「いいよ。ただ、そのお金はお賽銭。だから、必ず返す。と言うか、それでなにが買えるとかは知ってるの?」


 電気精神体・・・、ぶっちゃけて言うと幽霊やら妖怪なんだろうけど、それに常識はあるんか?鞍馬さんは普通に生活してるっぽいけど雪の中で行水してたし、大先生は人形だからそもそも出ることがない。なら、他の候補といえば天野医院長と、八百理事。結局、誰がなにを知ってるとかが全くわからない。


「う〜ん、ネクタイピンは高い。100均で買えなくもないけど、私ってば病院から出るなって言われてるし、そうなると下の売店で何か見繕うしかないんだよね〜。大雑把に見た感じだとネクタイとか?うん!ネクタイ!旦那様の首にネクタイ締めてあげて、そのまま接吻を・・・。」


 グヘグヘ言いながらトリップしているのは見なかったことにして、スマートレンズで売店のラインナップを見ると、確かにネクタイも売ってるし値段的にも800円くらい。


 つまり、金銭的な価値はわかる。なによりトイチ発言で返すといったから利子計算もできる。ちょっと、アマテラスうるさいぞ?なにが違法金利だ、確かに違法金利だけどさ。成立ししてないからノーカンだ、ノーカン。


 ともかく、日常的な計算はできるし、蛮族風味にぶっ殺してしまえば全部自分の物思考もない。う〜ん・・・、流石に木本さんや先生たちが常識は教えてるか。最終難関はちゃんと借りたものを返すかだけどさ。


「ちなみに、お金の出どころは木本さんに話します?」


「うん!借りたお金が綺麗かは別だけど、誰から恩を受けたかはちゃんと話すよ!じゃ!買いに行ってくる!」


 慌ただしくも千円札握りしめて走り去る姫子さん。コレが子供なら微笑ましいかもしれないけど、顔は十代、体はガッツリ成人女性、多分天真爛漫とはああ言うことを言うんだろう。


「姫子さんが笑顔で走っていきましたけど、なにかありました?」


「あぁ、好きな人にプレゼントを買うそうですよ敷田さん。それで、どうかしました?」


「どうと言うわけじゃないですけど、クリスマス配信するかどうかの確認です。チャンネル自体はリスナーもいますからね。」


「やります!今年もプレゼントレースかなぁ〜。ソリでバンバンフレンドを投げつつ、視聴者との交流を!」

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