表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
狐と言えば・・・巫女!  作者: フィノ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
177/252

171話 笑えばいいよ、笑うから

 呼吸を止めて・・・、止まって1秒。真剣な目じゃなくて頭をフル稼働したから。俺が出せる答えは多分これしかない。うん、多分これが運命と言うならそれを受け入れて、その上でどうするかしかないのだろう。


「マリーさ・・・。」


「真利です、三枝先生。川端部長・・・、雁木 真利です。長らくメッセージのみの連絡に留めた件、誠にすみません。これはひとえに私側の準備ができておらず、なおかつどう話したものかの見当もつかず・・・、不徳の致すところです。」


「・・・、えっ?いや・・・、え?ツキさん?雁木くん?・・・、え?は?」


「・・・。川端さん、混乱するのは分かります。一度彼女の病室で話しましょう。」


「はぁ・・・、彼女?いや、ツキさんは女性で雁木くんは・・・。」


「姫子ついて行こうとするな、俺達は席を外すぞ。」


「こーちゃんがそれでいいなら例え日の中水の中!あっ!スカートと言うか、着物の中入る?いや、入って?」


「空気を読めよ・・・。後でいくらでも入って・・・、今のなしな。」


 閉まろうとするエレベーターの扉を押さえていた木本さんが、顎で先にいけと指示を出して来るので姫子さんと共に荷物を持って降り、そのまま俺は三枝先生と川端部長を連れて病室へ・・・。歩きながら三枝先生からのメッセージを読むけど、内容的には『よかったのか?』やら『大丈夫なのか?』と言うものが大半。


 まぁ、どこかでけじめを付けなければならなかった。そのどこかが、たまたま今だったと言うだけの話だ。と、言うか俺を見て『ツキ』と川端部長が呼んだ方が気になる。まぁ、配信者やってるから、たまたまそれを見たとも考えられるけど・・・。


 今の登録者が約4000人。登録せずに見ている人は未知数だとしても、そんなピンポイントで俺を見るのか?いや、ないだろう。なにせ配信自体が手軽になったから、配信者自体は戦国時代並みに立ち上がっては消えていくんだし・・・。


 それこそ昨日まで同じくらいの登録者抱えていた人が、次の日には過去アーカイブ含め、跡形もなくなっているのが配信者界隈。ある意味ゲーム以上の魔境である。でも、それならなぜ川端部長は俺をツキと・・・?


 相変わらずネームプレートもAR表示もされていない病室に入り、荷物を適当に置く。さて、なにから話したものか・・・。川端部長が先に口を開いてくれればいいけど、本人は混乱中みたいで考えがまとまっていないようだ。立ったままというのもアレなので、適当なところにそれぞれが座り、先に俺から口を開こう。


「先ずは・・・、ご確認を。」


「本人・・・、なのか?」


「今、雁木さんから個人証明が送られて来たなら、その証明は本物です。」


「いや・・・、確かにこれを疑う訳にもいかない。これを疑いだせば会社にある契約書や個人データも疑うことになる・・・。いや、君は一体?なにがどうしてそうなった?」


 三枝先生がそう補足してくれて、川端部長の方も証明が本物だと受け取ってくれたようだ。まぁ、これを疑われると今度はどうやって本人証明していいか分からなくなるしなぁ・・・。


「話せば長くなるのですが・・・。先に前置きとして、私は助けてくださった方々に感謝しています。あの場で川端部長が、どういった行動を取ったかは分かりません。ですが、なにか行動を起こしてくださったのなら、本当にありがとうございました。」


「それは・・・、君は私を恨んでいないのか?」


「恨む?なんでですか?」


「あの日・・・、新型医療ポッドを輸送する際にトラックに乗ってくれと言ったのは私だ・・・。そして君は事故に遭った。その末に今の姿と言うか、女性なのだろう?」


「ええまぁ、女性ですね。ただ、これは私のズボラが招いた結果ですよ。それにトラックに乗ってほしいと言われ、承諾したのもまた、私です。そこの部分で川端部長が責任を感じることはありませんよ。なにせ、今は元気ですからね!」


「いや・・・、しかし、私は・・・。キャリアだけではなく、男性としての人生も奪った人間だ。恨んでくれたほうがまだ、償いをすることができる。なにかして欲しい・・・、支援アームを君は私指名で頼んでいた。かなり変わった仕様だったが、せめてそれの整備をさせて欲しい。その尻尾がそうなのだろう?用途は分からないが、後遺症が残ったならそれも!」


 耳型デバイスに10本の細い支援アーム・・・、確かに頼んで作ってもらってカモフラージュ用の購入証明もあるけど、作った本人なら今の姿を見ればそれを使ってると思いますよね〜・・・。


 三枝先生を見ると、目を逸らすではなく瞑った。つまり、これから俺が話すことに対して責任は負えないが、口止めもしないと言うことだろう。


「・・・、触ってみてください。耳でも尻尾でも・・・。いや、両方触ってください。」


「・・・?触ればいいのか?」


 訝しみながらも、そっと頭の上の耳へ手を伸ばす。触れて微妙な顔をした後に、今度は俺が前に持ってきた尻尾の中に手を差し込み一気に顔が強張る。流石にここまですれば分かる・・・。


「放熱が悪い。こんな被せ物をして使うなら、そう言う指定をしてくれれば・・・。」


「・・・、いやいやいや!体温!これは体温です!依頼時の仕様書はちゃんと書きましたよ。」


「そんなわけはないだろう!被せ物をするなら、それだけの冷却機構を・・・。」


「体温です!って、握り込まないで!力強い!痛い!手を離してください・・・。ちょっと恥ずかしいですけど。」


「あっ、いや、すまん。」


 あんまりしたくはないけど、後ろを向いて上着を腹までめくりあげ尻の付け根と言うか割れ目の上辺りを見せる。流石にコレなら本物と分かるだろう。と、言うか分かれ。分かってください。


「腰にマウントしてない・・・?は?いや!えっ!?どういう事・・・、だ?」


「ナマモノと言うか、生えてるんですよ耳も尻尾も。」


「マリちゃん・・・、普通に支援アーム見せた方が早かったのでは?」


「・・・。ほ、ほら。複製とか言われたら・・・。」


「・・・、やはり私は君に謝罪や償いを。流石にこの事態は想定外だが、金銭にしろ保証にしろなにか!」


 逆の立場なら。まぁ、そうなるよなぁ・・・。言葉は軽くも重くもなる。それは自分の言葉でも他人の言葉でも。そして、贖罪を求めているなら、相手から投げられた言葉はどこまでも重く、断られたらやり場もない。


 それは分かるけど、俺自身が川端部長を恨んでないなら、なにを償いとさせてなにを得る?はっきり言ってしまえば、事故の件は俺の中で裁判が終わったと同時に終わったものだ。まぁ、確かに色々変わっちゃったけどさ・・・。


「・・・、川端部長。私は今を生きてます。確かに川端部長が・・・。いえ、仕事も辞めるんでもう川端さんとしましょうか。あの時あの場にいた川端さんが立ち止まってたら私も前へは進めません。だから、仮に償いをしたいと言うなら一緒に前へ進んで乗り越えてもらえませんか?」


 服を戻しながら、川端さんと顔を合わせてからそう話す。戻れない、戻らない、起こった事実は変わらない。だからこそ前を向いて歩く。そんな道すがらで知り合いが止まっていたら、やはり俺も立ち止まってしまう。


「・・・。」


 渋い顔も考え込む顔も、どこか気の抜けた顔も・・・。色々と感情が駆け巡っているのだろ。言われた言葉に対してどう受け止めてどう処理するのか?大人だからと簡単にできるわけじゃないし、大人だからこそ簡単にできない部分もある。だから俺から口は開かない。先に俺から話し出せば、それは急かしているとも取れるから・・・。


「ツキさん・・・。」


「はい。・・・、はい?」


「乗り越える・・・、それなら先にコレだけは言わせてくれ。」


「・・・、なんでしょう?」


「ワシはツキさんを見て、今笑えばええか?」


「・・・えっ!もしかして・・・?」


 『ツキさんや、ワシは笑った方がいいか?』それはトラブルオンラインでフレのフロムさんが、初めて俺の姿見せ配信をしている時に、何気なく言ったセリフ。


 姿は違う、なにせチビマッチョのドワーフと、目の前の川端さんは似ても似つかない。でも、今の言葉はどこまでもフロムさんを連想させる・・・。だから、返すならあの時あの場で返した軽口を返そう。


「・・・。笑うって面白くもないのに笑いたいんですか?鏡みます?」


「・・・、私はただ、逃げるためには遊んでいなかった。」


「ええ。川端さんは逃げずに私と遊んでいた。」


 三枝先生には何の話かわからない。知らない人が聞けば川端さんを非難する人もあるだろう。なにせ、今の姿を見て笑うと言ったのだから。でも、そうじゃぁない。俺は悲しんでほしくもなければ、一緒に乗り越えろと言った。


 それに対する答えが笑うなら、それはもう前へ進むと言う宣言だろう。なにせ、自分が誰で共にあったかを知らせ、フレになってからの軽口や事故に遭ってからの部分も全部自分が話していたと教えてきたのだから。


「そうか・・・、あぁ。そうだったのか・・・。」


「ええ。ええ・・・。そうでしたよ。」


 川端さんが涙を流し、それに釣られて俺も涙を流す。それは、心にあったシコリが取れて溢れたものなのか、それとも安堵感からなのかは分からない・・・。ただ言えるのは、この涙は決して冷たいものじゃないだろう・・・。


「恥ずかしいところを見せた。」


「いえいえ、たまには思いっきり泣いた方がいいみたいですよ?涙活とかもありますからね。」


「そうか・・・。これから大変な時は頼ってほしい。今はまだ整理できない部分も多いが、なにかあれば力になろう。」


「ありがとうございます。」


 その後、川端さんは帰ると言い、俺はそれを止めない。今は感情で整理している部分や考えている部分もあるだろうし、一旦離れてから考えたい部分もあるのだろう。その整理の時間を俺が潰すわけにもいかないしね。


「三枝先生、ありがとうございます。」


「社会復帰、それを目指すなら最大の難関は知人友人です。その部分をどう処理するのか?私にはマリちゃんと川端さんの関係がどれほどだったかは推し量れません。それを、自分で処理すると言うなら、文字通り目を瞑るところもあるでしょう。」


「・・・、関係か。飛騨製作所の部長さんで対面を好んで職人気質、ウチの会社からも結構オファーするし、個人から指名での改造オファーもある。それが社会人としての関係ですよ。でも、それが終わってトラブルオンラインのフレって関係に変わりました。」


「そうですか。それがマリちゃんにとって、いいものなのか悪いものなのかは、やはり私には分かりません。本来は山でのことを聞くつもりでしたが、帰ったばかりです。今日一日はゆっくりしておいてください。」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ