159話 ちょっと引っかかる 挿絵あり
イサキさんの指示は的確で、先に殴り倒しているハヤトさんの後を追う感じ。全部は倒してないにしても、数が減る分楽は出来る。楽は出来るんだけど・・・。
「ぬおおぉぉ・・・!」
「美丈夫の泥んこレスリング・・・、撮れ高判定でいいのかなぁ〜?好きそうな人は好きそうだし。」
「そんな事よりハヤトさんが!」
「えっと・・・、助けた方がいいですよね?一応私5回死んでますけど。ツキさんとハヤトさんは?あと、妖精王さんってフレンドリーファイアありますか?」
「我にもある。暗殺者に殺されていないから、普通にダメージももらう。」
「あ〜・・・、そう言えば私も今日死んでないや。忙しくて闘技場の安楽室使ってないし。まぁ、フレンドリーファイアしたらしたで仕方ないよ。」
「いや、だからハヤトさんが!キングアナコンダに食われそうになってるんですってば!」
多分猿あたりを倒していたら出てきたんだろうなぁ〜。この辺りにいる1番デカいヘビ。単純に固い、そこそこ早い、そして体力が多くて、薙ぎ払いやら巻き付き、丸呑みが主体のモンスター。その反面、毒やら魔法やらは使わない。
そんなキングアナコンダが閉じようとする口を、ハヤトさんは両手両足を突っ張って閉じないようにしている。いや、アナコンダも無理やり閉じようと暴れ回ったり、ハヤトさんごと地面に顔突っ込んだり、ハヤトさんの体を舌でチロチロ舐めたりしてるんだけどさ。
「ハヤトさーん。死にました?」
「4回死んだ!」
「前もそうでしたねー。」
「このギリギリ感が程よい緊張感を産む!」
『お前、食う。はよ、食われろ。』
「や、やめろ!舌で俺をまさぐるな!」
「メバルさんが女の子なら、コレはコレで目覚めに・・・?」
「いや・・・、ちょっとコレは・・・。」
「やめろメバル!それよりも助けた方が!と、言うかなんでツキさんはそんなに冷静に!」
「いらん、コレが早いんだよイサキさん!モンスターは死んだらポリゴン!だが、死ぬまでは残り続ける!パンプアップ!アストラルアーム!ジャイアントハンド!更にゴッドハンド!ついてこい!」
「いや、下手に手を出すと全滅するし。さぁ、行きましょうかイサキさんにメバルさん。妖精王は後ろお願い!」
バフかけつつ一気にアナコンダの口を無理やり開き、そのまま上顎を支点に頭の上に乗り、ゴッドハンドで巨大化させた腕でアナコンダの頭?首?を裸絞しながら、暴れるムチのようにして突き出して森を走り出す。流石というか俺にはあれは真似できないなぁ。
ただ、木は非破壊オブジェクトなので葉が散ることはあっても幹は残る。そんな幹に纏わりついて逃れようとするヘビを力技で引き剥がしながらドンドン進む。
「見てる!僕めっちゃキングアナコンダに見られてる!今目が合った!」
「そりゃあ、ハヤトさんがアナコンダ構えて走ってるし。イサキさん近寄っちゃダメよ?普通に食われるから。メバルさんは大丈夫?」
「クソ度胸で頑張ります!フフ・・・、ヘビの舌がハヤトさんのお尻を・・・。」
「我なら舌を切れるぞ?それで部位破壊もできるだろう。どうする契約者よ。」
「いや、ダメージ与えたら死へのカウントダウンが短くなるからそのままで。」
「いや、切れるなら切ってくれー!尻がかゆい!」
「ほら!イサキさん!救援依頼ですよ!ゴーゴー!」
「えっ!この状況で僕!?」
「リーダーファイト!」
「よ、妖精王さんは?」
「我は契約者の指示に従うだけだ。」
「う、うわぁぁーーー!!ぼ、僕だってこのゲーム結構やってるんだーー!!!マッスルアップ!斬撃強化!渾身!」
「あいた!今尻がチクッとしたぞー!!」
「すいません!ヒールヒール!」
ハヤトさんをどうにかしようとウネウネする舌。その舌を狙って振るわれる剣。確かに舌は切れた。そしてハヤトさんの尻にも少し当たった。うん、多分爪で引っ掻かれたくらいの痛さはあったかなぁ〜。ダメージ表現設定次第だけどさ。
そんなジャングルを走り抜け・・・、途中で後ろから集まったモンスターがトレイン状態になったけど、それはなんか途中で他のプレーヤーが殴り込んで持っていったから多分レベリング組だろう。そしてようやく目的地も見えてきた。
「おい、あれなんだ?」
「なんか太い・・・、キングアナコンダか?えっ?あのモンスターバック走法とかやったっけ?」
「逃げるならするんじゃな・・・、こっちに来てるよね?」
「リーダーなんか知らんが変なの来てる!入ろう!早く入ろう!」
「変なの・・・?あぁ、ありゃパワーファイターがたまにやるムチコンダだ。気にするな、俺達は装備整えたの確認したら入るぞ〜。」
そんなこんなでやってきたのは『流水鍾乳洞』である。まぁ、侵入ルートが多くて中もそこそこ広い。今は大量受注時期で中が混雑しないように外に溜まる人はいるけど、中はパーティー単位固定で広々探索ができる。まぁ、そうしないとキノコの取り合いが発生するし、なによりPK対策してたらプレーヤー同士の不毛な話し合いしか残らない。
「ハヤトさん到着したよー。」
「そうか・・・、お前いいムチだったぞ。ふんっ!」
『キュッ!』
「イサキさんは、あのキングアナコンダを絞め殺せます?今ポリゴンになってますけど。」
「メバル・・・、僕は普通のプレーヤーなんだ。だから、普通のプレーしかできないよ・・・。まぁ、あれはトラブルの部類だから気にしない方がいい。」
「イサキさん、それは間違いだよ。本当のトラブルは悪い文明が必ず仕掛けてくる。私達プレーヤーはルール内で悪い文明の運営にやり返す。ほら、何もおかしくない。」
「イサキさんも鍛えるか?鍛えれば普通にできるぞ?」
「う〜ん・・・、要相談で。と、この先ですよね?確かテキストとか調べたらここの名前が書いてありましたし。」
「そうだよ。ただ、虫除けは必須かな?街で買い込んだからいいけど、ないと虫にくわれる。」
「あ〜、ジャングルとか洞窟にいる吸血系の虫ですか・・・。地味に10ダメージずつ刻んでHP上限減らしてくるんですよね。」
「そうそう。小さいから地味に見落とすし、最高で5匹は付くから馬鹿にもできないし・・・。」
「なにより洞窟内なら洞窟を出ないと上限は戻らないし、ジャングル内なら街に戻らないと戻らないのもつらいなぁ〜。誰か噛まれてないか?妖精王はその羽とか。」
「我は香水を付けている。契約者も月桃だったか?それの香水を虫除けに使っている。問題はハヤトやメバル、イサキの方だ。」
「えっと、それってリアルでの話ですよね?」
「そうだが?どうせ契約者からはその匂いがする。」
「匂い?」
「あ〜・・・、AR表示で香水使ってるの見たから多分そのせいだよ。ほら、私って配信者で今回も撮影してるし、妖精王とも漫才したりしてるから。気になったらツキでチャンネル探してね。」
妖精王をチラリと見ると『なんだ?』と言う感じで見下ろしてくる。う〜ん・・・、虚構と現実が混ざってる?妖精王としての現実はこのトラブルオンラインである。逆に俺としての現実はログアウトした世界である。そして、パラレルワールドと言うか、俺達側の世界に来たから・・・。
ん?でも、AIって現実としての・・・、人間の世界の認識はあるんだよな?なら、なんでこっちにその話を持ってきた?何かしらのバグ?それならそれで今度はバグ報告が飛んできそうなんだが・・・。最適化するって話ならそんな挙動もある・・・?
「どうした契約者?」
「いや・・・、ちょっと気になることがあっただけ。気にしなくていいよ。それよりも洞窟入ろうか。」
「僕達は大丈夫です。ハヤトさんは?」
「俺も虫除けリング付けたから大丈夫た。て、キノコは?」
「ボス部屋まで行けばわかりますよ。ただ、たまにそこら辺にも生えてるからぼちぼち見ながら行きましょうか。」
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「流石に冷えますね・・・。」
「言うな・・・。ちっ、あの野郎・・・。」
ほぼ電気自動車。それが今で、こうしてガソリン車を使うところは少ねぇ。それでもこんな燃えやすい燃料を使うのは、内燃式なら最悪、電気が遮断されても動かせるからだ。そして100%の燃料車ともなれば、こうした山やら僻地での使用になる。
排ガスか・・・。柊が言うように排気口が雪で塞がれれば俺達は眠るように死ぬ。塞がれなくとも寒さで体力も落ちる。それをさせねぇために資料を漁る。どれだ・・・、該当する電気精神は必ずいる。
ぬらりひょんの野郎がなにとつるむか?あのジジイは顔だけは広ぇ。だが・・・、経験則から言えばかなり絞れる。2人、山、雪・・・、伝承基盤っつう事は、それだけ語られることが多い。なら、なにかあるはずだ。
「ほれほれ、こっちにこんのか?」
「・・・、このままではジリ貧です。近くの山小屋へ行きましょう。あそこなら火を絶やさず居座ることもできます。」
「山小屋・・・。はっ!ダメだ!それだけは絶対にダメだ!」
「なぜです!」
「雪女だ・・・。」




