07-07
ナナは考え込む。
どうやらミルはナナを何かに利用したいらしい。でも、それは本当に良い方向に向かうのだろうか?学園にとってはいいのかもしれないけれど、それは果たして、ミユの言う通り自分のためになるのだろうか。そして、学園を、ミユたちを守ることにつながるのだろうか。
(そういえば、ミルの話だけでミユの立場を聞いていないわ。)
ここまで考えて、ミユ自身の意見を聞いていないことに気付いたナナは、その疑問を直接ミユにぶつけた。
。
「ミユはどうなの?」
「ん?」
「ミユはさ、この提案、受けた方がいいと思ってる?」
「そうね、ナナにとっても悪い話じゃないと思うわ。それは…」
「違うよ、ミユ。私じゃない。ミユ、あなたの気持ちが聞きたいんだよ?」
自分にとってのメリットは十分に分かった。しかし、これはナナだけの問題じゃない。シアに近いミユも例外ではないはずだ。そんな熱心な問いかけに、ミユはきょとんとしてナナを見つめていたが、その言葉を理解すると激しく拒絶した。
「やめて頂戴!そんなつまらない事を考えてるのならやめたほうがいいわ!」
意外な反応であった。あんなに悲しんでいたミユが、寄りにもよって『つまらない事』と言い放つとは。決してそのように思っていた表情ではなかったはずだ。
「つまらない事?……本気で言ってるの?シアの事、あんなに落ち込んでたじゃない!私だったら許せないわ!」
「ええ。つまらない事よ。そんなことしてもシアは戻ってこないもの。」
最な理由であった。何をしようが戻ることはない。改めて取り返しのつかない事実だということに、興奮していたナナは現実に引き戻される。
「……そっか。そうだね。」
最悪の状況でも最善を見出さなければいけない、まさにミユしかできない発想だとナナは思った。無責任に感情的になっても事態が悪化でもしたら、と。その先を考えている。ミユたちが慎重なのは、きっとそのせいだろう、と勝手に納得する。では、直訴するという行動は本当に正しいのだろうか?
「ミユ、一つ聞いていい?」
「うん。何?」
「この世界って、本当に平等だと思う?」
ここ最近、ナナが引っかかってきた疑問をミユにぶつけてみた。
「おかしなことを事を聞くのね。少なくとも、この学園は平等よ?それとも、ナナは私を貴族様だと思ってくれてるのかしら?」
と、ミユは意地悪そうな顔をして返す。
「そうじゃないの。あの色男が言ってたわ。どの国もセントラルの植民地だ、って。」
「色男?」
「あー、王子たちと一緒にいた、髪をカラフルに染めてた男よ。妙に奇抜な色だったでしょ?だから、色男。」
ナナが身振り手振りで説明すると、ミユはくすくすと笑いだした。
「カミュさんの事ね。でも、色男って。」
笑いが止まらないのか、ミユはしばらくお腹を抱えた後。
「植民地、か……そうね。そういってもいいのかもしれない。今の私たちはセントラルに依存しすぎているわ。」
と、ミユは遠くを見つめ呟いた。
「もし、私のために行こうとしてるのなら、それはやめてくれる?これはあなたが決めること。私は関係ないわ。」
「どうして?親友じゃない。」
「親友だから、よ。これは、私とシアの話。あなたには無関係。もし、万が一のことがあったら、きっと、私ではあなたを救えないわ。私はマイヤーのように力があるわけじゃない。だから、そんな状況なんて、作りたくない。…やっぱり、植民地、ね。」
ミユは悲しそうに笑った。しかし、その顔はナナを後押しするのに十分だった。
「ありがとう!今ので私の答えは決まったわ!」
そう宣言し覚悟を決めたナナに、ミユは微笑んだ。
「それは良かったわ。……ところでナナ、方向はあってるの?教室はあっちじゃない?」
「……いっけない!またね!」
そう指摘されたナナは手を振り、ミユに背を向けた。しかしそれは、彼女たちの行き先がこの小さな学園の中でも異なることを示すかのようでもあった。




