07-06
「あー、ほら、あれ。よかったら、相談に乗ってくれる?実は……。」
滑った空気を換えようと、ちょっと無理やり話題をナナはひねり出した。ミルに皇帝に直訴しないかと言われた事を伝えると。ミユは目を見開いて驚いた。それはそうだろう、直訴という大それたことなんて。
「ええっ!?そんなこと誘われたの?」
一方レドは。
「あ、あたしはパス!先行ってるわ!」
何かを感じ取ったのか、そそくさと去っていった。別にレドに相談したかったわけじゃないから良いのだけれど、まるで断られたみたいで、ナナは何か釈然としなかった。
「……そうね。こんなところで話していい話じゃないかもしれない。ナナ、時間はある?」
「大丈夫!なくてもサボるから!」
その提案にナナは自信満々に乗ったのだが。
「だったら駄目ね。ここで済ませましょう。」
残念ながら一瞬で破棄となった。気を取り直し、再びナナは語りかける。
「でさ、ミユはどう思う?」
「ミルって、学校でたまに見かけるウィード先生にべったりの子よね?マイヤー王のご子息とは聞いてるけど。」
「うん。多分、それであってる。」
ナナがそう答えると。
「多分、って。」
ミユはナナの自信の無さに苦笑した後。
「う~ん。そうね。」
腕を組んで考え込んだ。そして。
「これは私の考えで、ミルさんの考えてることとは違うかもしれないけれど。」
と前置きしたうえで、ミユは話し始めた。
「私たちがあの時、ものを言い辛かったのは恐れ多いから、ってのもあるけれども、それだけじゃないの。あの事故は勇者学園からすれば、王子の安全を脅かしたことにもなってしまうの。」
「そうかなぁ?」
ナナは異議を唱えたが、ミユは続ける。
「そうなの。だから、学園としても事を大きくしたくない、とばかり思ってたわ。少なくとも、私たちは、そう。だからマイヤーもそうすると思ってたんだけど。」
ミユは、ふう、と一呼吸した。
「ミルさんは、皇帝に何か伝えたいことがあるみたいね。」
「それくらいわかるわよ。」
ナナは憤慨した。伝えたいことがあるから企んでるんでしょ、と。それくらい分かってるとミユに文句をつける。
「そうね。でも、ちょっとでも貴族の関係が絡んでしまうと話し合いではなく政治的になってしまう。だから、何も持ってないあなたが選ばれたんじゃないかしら。」
「なるほど?」
「マイヤーは冒険者には強いネットワークを持ってるわ。だから、打算的な話にはなるけれども、恩を売っておく、というのも悪くないと思うの。」
「うまくいけば、ね。」
ナナは呟いた。問題はうまくいかなかった後、だ。自分という人生をかけるのだから、慎重にならなければいけない。ウィードへの対応の様にはいかないのだ。
「……失敗したら、どうなると思う?」
「失敗、ってのがどこまで指すのかわからないし、どうやって直訴するのかもわからないけれど。ナナは冒険者としてやっていくんだったよね?」
「うん。」
ナナは頷いた。冒険者になって、自立して、出世して、人生勝ち組になる。下らないといわれるかもしれないけど、これが一番現実的な、ナナの夢。セントラルに睨まれお尋ね者という未来はあってはならないのだ。
「マイヤーは小さな国だけども、影響力は決して小さくないわ。それは、冒険者学校を通じたネットワーク。たとえ失敗して帝国のお尋ね者、ってこともあるかもしれないけれども。ひょっとしたら、匿ってもらえるのかもしれない。冒険者なんて大体素性が分からない人間が多いしね。でも、でもそんなことはならないと思う。」
「どうして?」
「それはマイヤーがあなたを守るから。」
「ミルが代わりに?」
ナナが笑い飛ばそうとしたが、ミユの真剣な眼差しはそうさせなかった。
「それが王族たる所以だからよ。あなたが領民である限り、あなたは守られるのよ。不安だったら尋ねてみなさい?きっと答えてくれるわ。それが、領民を守る貴族の義務。ノブレスオブリーシュぐらい、知っているでしょ?」
ノブレスオブリーシュ。物語でよく見るやつだ。現実では見たことないけれども。
「聞いたことあるけどさぁ。」
だからこそ、ナナは実際にはどうなのか、不安に駆られた。
「ただし、これは私がミルさんの立場だったらどうするか、って話。実際の所は何もわからないわ。」




